湾の税制改革による不動産市場の影響

-日本を参考として-

 

蘇 ワンティン

 

.研究動機・背景

台湾では2008年リーマンショックの影響で、不動産価格が高騰した。その結果、投資家ではない一般の人々は不動産を購入することが非常に困難となったため、台湾政府は居住正義1を目指し、2016に不動産所得税が改訂された。分離課税制度を維持したが、改訂後の所有期間は二年から十年に延ばし、税率も本来の二段階累進税率から四段階累進税率に変更した。元の建物、土地を分けて課税することから土地と建物を一括して実勢価格課税に変更した。不動産所有者は所有権移転登記が完了した日の翌日から30日に申告する義務がある。劉(2018)はこの改革が政府や国民の予想通り、居住正義の効果に達しているかについて研究を行い、改革後は、台湾全体の不動産投機行為や価格が抑えられ、政府は目標を達成したと述べている。税制改革によって一見住宅の価格が安定したように思われるしかし、学者と立法者たち喜んでこの改革の成果を見る一方、不動産業界では不動産の交易量が著しく減少し、また外資企業に対して高い税率を課するのは国際競争力が低下という懸念があり、実際に台湾の経済市場に良い影響を与えたかどうか断言はできないように思う。なぜなら、投資家のように利益を稼ぐためではない一般のお客様も、単に古い建物を新しい建物に買い換えただけで高い税金納めさせられたからである。

台湾は税制改革によって不動産供給量が縮小されれば、外国の投資家が台湾への資産投資から退くのではないかと懸念の声も上がっている。金本(1994)は凍結効果が存在すると、土地利用の転換が抑制され、その結果、土地の有効利用が阻害されると述べている。譲渡所得は一時に、集中的に実現するの特性により、譲渡所得は資産の譲渡によって一挙に実現するため、高い累進税率が適用されることになり、結果、資産を所有者の手に封じ込める効果(lock-in-effect)ないし凍結する効果freezing-effectがあるという問題がある(須藤・谷光2004)。改革が成功」し、投資家が建物の移転を制限されれば利益が出なくなり、不動産関係の産業にも影響を与え、景気の冷え込みが起こるのではないだろうか。

日本は1980年代バブルの原因で土地への投機が盛んになって、不動産価格は上昇した。土地価格を抑止するため、19903月に土地関連融資の総量規制などの政策が相次ぐ出されて、土地取得後二年以内に譲渡した場合の譲渡益に対する超短期重課制度が作られた。また近年アベノミクスと東京オリンピックの影響で価格が再び上がった。台湾も2003年から2014年にかけて不動産投機が盛んになったため、政府は次々と不動産価格を抑える税制を出した。台湾の所得税は1910年代日本統治時代には、所得税が初めて台湾に導入されて、租税体系が建てられました。新制不動産所得税は増加益の獲得を依存し、短期間不動産を売却する投資者から高い税率を課するのは社会の格差を取り除き、社会資源を合理的に配分するのが政府の期待である。しかし、相続、贈与で取得する不動産に対する取得金額の認定、更に台湾国内と国外企業の税率の違いという問題点が存在する。したがって本研究では、台湾の不動産譲渡所得税改革前後の不動産市場の違いを明らかにして、日本の譲渡所得税を手本として台湾の不動産譲渡所得税の問題点を見つけ、日本の不動産市場と税制を比較したいと考えている。この研究を通じて、台湾の経済環境により適切な税制、国民が納得できる不動産税制を検討したい

 

.研究目的

そこで、本研究では主に以下の点で進めていきたいと考える。

①改革前後の不動産所得税の比較

   まずは台湾における不動産譲渡所得税の旧税制と現行税制の差異を分析して、台湾不動産市場の景気がどのように変化したのかを明らかにする。

②現行台湾不動産所得税と日本不動産譲渡税の比較

   日本の不動産税制と今日の不動産市場の現状を明らかにして、台湾の不動産市場の現状と現行不動産譲渡所得税を比較する。

③改革後の台湾不動産譲渡所得税の適切性の検証

2016年に新たな税制が実行されて以来、不動産譲渡所得税が台湾市場に与えた利点を 

検証するそのうえで、日本の不動産譲渡所得を参考に、日本の税制の問題点で台湾で現在実行されている不動産譲渡所得と比べ、現行税制の適切性を検証したい。

 

.研究方法

 ①文献調査

  一年次に政府の資料を基にして、台湾の所得税制改革前後の市場変化を分析する予定である。また、日本の所得税のうち不動産譲渡税の部分を取り上げ、台湾の所得税の法律と比較し、検討を進めていく。

②回帰分析

  台湾の不動産実勢価格登録システムでの売買実例の価格、取引量を取り上げ、改革前後の税制が市場の影響を分析する。また、税制の時間区分では価格と取引量にの影響を明らかにするではないかと思っている。最後に所得税改革がもたらした影響をまとめ、劉(2018)等、先行研究者の結論を再検証する。

 

参考文献

劉芸靈(2018)「探討房地合一制實施前後對房地交易價格之影響」臺中科技大學會計資訊系碩士班學位論文

金本良嗣(1994)譲渡所得税の凍結効果と中立課税」『住宅土地経済』第13巻夏季号,pp.12-23

須藤芳正・谷光透(2004)譲渡所得税制に関する一考察―2分の1課税方式を中心に」『川崎医療福祉学会誌』第14巻第2,pp.395-401

(2016)奢侈課徵,歸咎到房持有移轉時間

https://sensory-re.goodideax.com/article018/ (2019618日参照)

The News Lens 關鍵評論(2016)甚麼是「居住正義」?張金鶚:讓每個人安居樂業https://www.thenewslens.com/article/49127(2019618日参照)

1 政治大学土地経済学部教授張金鶚によると、居住正義とは、不動産取引市場の情報公開、税制平等、投 

機行為の抑制、更に都市再開発や都市建設と文化の続きを保つこと。広義では、皆が幸せに住めること

と定義されている(The News Lens 關鍵評論)。