第10章 社会保障
1.社会保障制度の概要
(1)社会保障制度の機能
*生活保障機能
最低限の生活水準を保障・・・・・生活保護、身体障害者福祉、母子福祉
 *リスク・プーリング機能
疫病、障害、失業等によるリスクを社会的にプールし、リスクを分散する。
  ・・・・・医療保険、業務災害補償保険、雇用保険
(2)わが国の社会保障の概要

社会保険 医療保険
年金保険
業務災害補償保険
雇用保険
保険料拠出と社会保障給付
児童手当 現金給付
公的扶助 生活保護 現金給付
社会福祉 老人福祉
児童福祉
身体障害者福祉
精神薄弱者福祉
母子福祉
現物給付
(施設での社会福祉サービスの提供)
公衆衛生
医療
伝染病予防
結核予防
精神衛生
予防接種等
公共財・サービスの提供
老人保健 医療、医療以外の保健 公費負担中心(一部自己負担)


部門別の社会保障給付費(平成11年度)

表1 部門別社会保障給付費

表1 部門別社会保障給付費

(注)( )内は構成割合である。

出所:社会保障人口問題研究所http://www.ipss.go.jp/Japanese/kyuhuhi-h11/2/No2.html


表2 部門別社会保障給付費の対国民所得比

表2 部門別社会保障給付費の対国民所得比

出所:社会保障人口問題研究所http://www.ipss.go.jp/Japanese/kyuhuhi-h11/2/No2.html参照。

図1 社会保障給付費の対国民所得比の国際比較

図1 社会保障給付費の対国民所得比の国際比較

表3 社会保障給付費の対国民所得比及び対国内総生産比の国際比較

表1 社会保障給付費の対国民所得比及び対国内総生産比の国際比較

(資料) 日本の国民所得及び国内総生産については、内閣府経済社会総合研究所「平成13度版国民経済計算年報」による(以下同じ)。アメリカ、ドイツ及びスウェーデンの国民所得及び国内総生産については、National Account of OECD countries, volume 2 OECD 2001 による(以下同じ)。
出所:社会保障人口問題研究所http://www.ipss.go.jp/Japanese/kyuhuhi-h11/kyuuhu_h11.html

日本と諸外国の高齢化率(65歳以上人口割合)の推移と将来推計

年次 日本 アメリカ ドイツ スウェーデン イギリス フランス
1850 ... ... ... 4.78 4.64 6.47
1860 ... ... ... 5.22 4.68 6.89
1870 ... ... ... 5.43 4.79 7.41
1880 5.72 ... 4.72 5.90 4.62 8.11
1890 5.49 ... 5.10 7.68 4.77 8.28
1900 5.49 4.07 4.88 8.37 4.69 8.20
1910 5.25 4.30 5.04 8.44 5.22 8.36
1920 5.26 4.67 5.77 8.40 6.03 9.05
1930 4.75 5.41 7.36 9.20 7.40 9.35
1940 4.80 6.85 8.86 9.41 8.97 11.42
1950 4.94 8.26 9.72 10.25 10.73 11.38
1960 5.73 9.19 11.52 11.97 11.68 11.64
1970 7.07 9.84 13.69 13.67 12.94 12.87
1980 9.10 11.19 15.60 16.29 15.07 13.97
1990 12.05 12.39 14.96 17.78 15.72 13.99
1995 14.54 12.54 15.47 17.56 15.87 15.01
2000 17.24 12.51 16.35 17.42 16.03 15.93
2010 22.04 13.20 19.81 19.48 17.13 16.65
2020 26.85 16.62 21.57 23.14 19.82 20.15
2030 27.97 20.65 26.15 25.48 23.07 23.16
2040 30.95 21.51 28.78 27.17 24.95 25.25
2050 32.29 21.73 28.37 26.72 24.89 25.52

出所:社会保障人口問題研究所http://www.ipss.go.jp/Japanese/kyuhuhi-h11/kyuuhu_h11.html

2.わが国の年金制度
(1)年金制度の概要

1986年からの基礎年金の導入
  (新)国民年金+厚生年金
          共済年金等
の2階建て(サラリーマンは企業年金(厚生年金基金)がある場合も)


(2)保険料(平成11年)
社会保険庁運営部監修『平成11年版年金のてびき』社会保障研究所
国民年金
 第1号保険者(自営業者等被保険者)
 平成11年      月額13,300円

 第2号保険者(厚生年金保険の被保険者と共済組合の組合員)
 第3号保険者(第2号被保険者の配偶者)
  厚生年金保険または共済組合がまとめて拠出  

厚生年金
 標準報酬月額(92,000円から590,000円の30等級)の
 一般被保険者 173.5/1000
 特別保険料  ボーナスの1%  
労使折半

(3)現行の給付水準(平成11年)
65歳からの年金
 老齢基礎年金
  月額 6万7,017円
 老齢厚生年金(65歳から支給)                
  月額 平均標準報酬月額×(10/1000〜7.5/1000)×加入期間×1.031
→昭和21年4.2以降は7.5/1000 
 モデル計算
  昭和14年4月2日生まれ、38年加入
   370,000円×8.29/1000×456月(38年)×1.031=1,442,048円(年額)

物価スライドスライド率 1.031

特別支給の老齢厚生年金(60歳から64歳まで) 退職を要件
平成13年から平成25年にかけて、3年ごとに1歳づづ支給開始年齢を引き上げ
該当者は、報酬比例部分相当の部分年金のみになる。

定額部分
1,625円×(1.875〜1.0)×加入期間(上限あり)×1.031

上限 昭和4年4月1日以前 35年

 報酬比例部分
    平均標準報酬月額×(10/1000〜7.5/1000)×加入期間×1.031


標準報酬の再評価
 過去の標準報酬を現在の賃金水準で再評価
 昭和33年3月以前        13.96
↓ ↓
 平成5年4月以降        0.99
ただし、平均標準報酬月額が66,594円以下のときは、66,594円とする

賃金スライド:財政再計算(通常5年おき)時に改定、平成6年10月からネット所得スライドへ変更

(4)公的年金の財政方式
 積立方式 
  加入者が働いている期間に保険料によって積み立てた資金の元利合計を退職
 後に年金として受け取る
 賦課方式
  各年の年金給付額を、その年の保険料収入でまかなう
 修正積立方式
  設立当初積立方式でスタートしたわが国の年金制度は、昭和48年の物価スライド導入に伴い年金給付が増大したのにもかかわらず、保険料が低く抑えられたため、積立金の不足部分を賦課方式で調達している
 国庫負担
  年金の財政方式として賦課方式を採用した場合には、保険としての性格よりも世代間の移転を伴うという意味で税金としての性格が強くなる。したがって年金の財政を国庫負担という形で税金で賄う主張が生じて来る。

2階建て年金 基礎年金 賦課方式
厚生年金 積立方式

(5)現行の年金制度の持つ問題点
 * 高齢化社会における受給者の絶対的増加
   税負担の増加 世代間の公平や労働意欲に大きな影響を与える。
           消費税の導入 高齢化社会に備えたもの
   財源調達方式を消費課税方式に変えても、マクロ的な国民負担は不変
 所得課税方式  自然増収分
   消費課税方式  税率の引き上げ

 *世代間の格差
  年金収益率
  各世代が受け取る年金額がこれまで拠出した保険料をどの程度の利子率で運用したものと等しくなるかを示すもの
  若い世代ほど低くなっている
  負担の引き上げと給付水準の実質的な引き下げを伴う制度改革が不可欠

3.年金税制の見直し

拠出時 運用時 給付時
租税理論 包括的所得税 控除せず 運用収益に課税 非課税(貯蓄の取り崩し)
支出税 貯蓄として課税ベースから控除 非課税 課税
現行税制 公的年金 拠出額全額を社会保険料控除 非課税 原則課税
公的年金控除適用
企業年金(厚生年金基金)