第9章 地方債

第1節 地方債の仕組み

<国債と地方債>
国債
  建設国債→公共事業を行うために発行、将来世代に便益がおよぶケースに発行
  赤字国債→特例公債  人件費等の経常的経費を賄うために発行
財政法第4条「国の歳出は公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費・・・の財源については、国会の議決を経た金額で公債を発行し又は借入金をなすことができる」

地方債 
  地方財政法で発行することが認められたもの
  減税財源など経常的な財源不足に対応するための財源対策債や特例債

地方債の許可制
 都道府県と指定都市の起債は総務大臣(旧自治大臣の許可)、その他の市町村は都道府県知事の許可を必要
  →2000年4月の地方分権一括法によって2006(平成18)年度から総務大臣もしくは知事との協議制へと移行

<地方債の意義>
 地方財政法第5条 地方団体は原則としてその歳出を地方債以外の歳入で賄わなければならない。
              5つの事業を起債が認められる事業(適債事業)として定めている。
 図9−1 起債が認められる事業
@交通・ガス・水道などの公営企業
A出資金、貸付金
B地方債の借換え
C災害復旧事業費
D標準税率以上で普通税を課している公共施設等の建設事業


財源調達機能
 大規模な社会資本の建設事業を実施する場合や、突発的な災害等により復旧事業が必要になった場合には地方税を柱とする単年度の経常的な収入のみでは賄いきれない。
年度間調整
 年度間で発生する地方団体の歳出の変動に対応し、歳入とのアンバランスを年度間で調整する
世代間の公平
 当該年度の社会資本整備に係る経費をその償還というかたちで後年世代に送ることによって世代間の公平を図る
財政政策の補完
 国が財政政策の実施を通じて景気安定策を講じようとする際には、地方が地方債を活用することで補完的な役割を果たす

<住民移動と地方債>

地方債便益の食い逃げ効果
  例:地方債を財源として10年間利用可能な施設を建設
            ↓
    一定期間をおいて
(償還のための負担増
            ↓
    建設時点の住民が転出

食い逃げを回避するには、毎年発生する便益に見合うものとなるように地方債の償還を行うか、あるいは将来の償還に備えて、毎年少しずつ財源を積み立てる必要がある。
国の建設国債の場合は毎年度残高の
60分の1ずつを国債整理基金に積み立てるルールがあり、地方債の場合には、減債基金が積み立てられる
→1999年末の時点で、地方債残高126兆円に対して減債基金の残高は3兆3,000億円、償還資金としての減債基金は過少

赤字地方債の場合には、経常支出を賄った年度以降(たとえば翌年)に住民が地域外に転出するならば、その住民は受益だけをして負担は負わない

<地方債への依存の上昇>
p179
図9−3 歳入に占める地方債の推移

1990年代の地方債依存度の上昇→バブル崩壊後の税収減、景気対策としての地方の公共事業増加

平成26年度決算

地方債の決算額 11兆5,185億円     地方債依存度(歳入総額に占める地方債の割合) 11.3%
        対前年度 7,664億円減              




<地方債の種類>
 
 公営企業債  地方公営企業が発行、公営企業の料金収入によって償還される

 普通会計債  地方税等で償還
   一般公共事業債  一般補助事業債と国が事業主体となる直轄事業債:港湾、河川、都市計画事業 
   一般単独事業債  普通建設事業のなかで国庫補助金を伴わない事業
             
  



図9−4 地方債現在高の目的別構成比  P186

  一般単独事業債が多い、ただし2006年から低下傾向
  2011年度の増加は、臨時財政対策債(元利償還費は基準財政需要に算入) 


平成26年度末 地方債現在高 145兆9,841億円
<地方債の資金>
 
図9−5 地方債資金の分類   P188
       
 地方債の引受け資金
   国内資金  公的(政府)資金                           
          民間資金
   国外資金


平成26年度末 
地方債現在高の借入先別の構成比は、政府資金(31.3%)、市中銀行資金(25.2%)、市場公募債(23.4%)の順

9.3 地方債と国の関与
<地方債計画>

 地方債計画:地方債発行の許可予定額(総額及び事業別の内訳)と、その発行の裏付けとなる資金計画(資金区分別の引き受け額)を提示。
 


<許可制から協議制へ>

2005年度までは地方債は許可制
 都道府県と政令指定都市の起債  自治大臣(現在は総務大臣)の許可
 その他の市町村            都道府県知事の許可を必要。

 起債充当率→当該事業に要する経費から国庫支出金など特定財源が充当される部分を除いた額、つまり地方負担額に一定割合を乗じて発行額が決定
  例)義務教育施設整備では、市町村分が95%、都道府県分が75%。

2006年度 協議制へ(2000年の地方分権一括法)

都道府県と政令指定都市の起債  総務大臣と協議
 その他の市町村            都道府県知事と協議
 
<地方債発行の制限>

 実質公債費比率 18%以上 地方債の発行には許可が必要
             35%以上 財政再生計画の策定義務づけ、地方債の発行も制限
             
 
<地方分権化での地方債>
 地方分権一括法の施行   許可制から協議制へ(2006年)
                     ↓
   各地方団体が発行する地方債は市場での評価にさらされる
                     ↓
             公会計制度の改善が不可欠。

<地方団体の破綻>

旧法
地方財政再建促進特別措置法(昭和30年法律第195号)による赤字の地方公共団体に対する財政再建制度
                      ↓
新法  
「地方公共団体の財政の健全化に関する法律案」(平成19年6月22日制定)
4つの財政指標を健全化判断比率として規定   4章参照
(1) 実質赤字比率
(2) 連結実質赤字比率
(3) 実質公債費比率
(4) 将来負担比率

夕張市も財政破綻したといわれているが、債務不履行が生じたわけではない
→民間企業の倒産とは違う、銀行の債権カットもなし(貸し手の責任は問われなかった)
  


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