第13章 資産課税制度
資産課税
保有資産から生じる所得への課税 利子・配当や株式や土地のキャピタル・ゲイン(譲渡所得)などへの課税
資産価値そのものへの課税 固定資産税(地方税):資産保有税(第16章で言及)
相続税・贈与税(国税):資産の所有者が移転した場合に課されるもの
13.1 資産課税制度の変遷
(1)資産所得課税の変遷
シャウプ勧告 利子・配当所得も総合課税の対象
1953年度改正 利子所得 分離課税(税率10%)
配当所得へ20%の税率での源泉徴収制度が復活
株式の譲渡所得 原則非課税 税務行政上の理由
1955年度改正 利子所得の全額非課税、配当所得の源泉徴収率の引き下げ
少額配当の申告調書提出不要不要限度額が1万円に引き上げ
1963年度改正 利子所得の分離課税の税率 5%まで引き下げ
配当所得の源泉徴収率 5%まで引き下げ
少額貯蓄非課税制度導入
1965年度改正 少額配当申告不要制度と源泉分離課税(当時15%)創設
1971年1月 利子所得についても源泉分離課税の選択制実施
1988年度 利子所得 総合課税と源泉分離課税の選択制から、源泉分離課税へ
税率 国税としての利子所得税が15%、地方税としての住民税が5%
少額貯蓄非課税制度(いわゆるマル優制度)が原則廃止
1989年度 株式の譲渡所得 原則課税化
申告分離課税と源泉分離選択課税のいずれかを選択
2002年度 利子所得 老人等少額貯蓄非課税制度が廃止
、障害者等少額貯蓄非課税制度に改組
2003年度改正 配当所得 源泉徴収だけで申告不要に
申告した場合 総合課税となり、法人税と所得税の間での二重課税を調整するために設定されている配当控除を適用
上場株式等の配当所得 株式投資促進のための優遇税率として、10%(国税7%、地方税3%)で課税
株式の譲渡益所得課税 申告分離課税制度に一本化
2002年度改正で創設された特定口座を利用すれば、源泉徴収だけで申告が不要
特定口座とは、銀行や証券会社に個人の投資用の口座を開設し、その口座において損益を通算する制度
確定申告することで金融機関にまたがる特定口座についての損益通算可能
2008年度改正 上場株式等の譲渡損失と配当等との間の損益通算の仕組みが導入
上場株式等に対する優遇税率は、2008年以降も延長され、2011年度改正において2013年末まで延長された。
(2)相続・贈与税の変遷
昭和24年9月 シャウプ勧告 「累積取得税」の採用
累積取得税とは、相続や贈与があるたびに取得した財産の累積額に対して累進税率を適用し、
算出された税額から過去に支払った税額を控除して納税額を決定
1953年の相続税法改正 財産取得に関する公的記録の維持が困難であるという税務行政上の理由から累積課税廃止
1958年改正 遺産税的な要素を加味した取得税体系である法定相続分課税制度に移行
法定相続分課税制度とは、遺産総額から導かれる課税価額の合計額から基礎控除を差し引いたものを、
法定相続人が民法に規定される相続分を取得した場合を想定して相続税額を算出し、
この総額について各相続人の実際の財産取得額に応じて按分する
→シャウプ勧告がめざしていた富の集中排除という性格は大幅に弱められた
1975年改正 農地の細分化防止を理由として相続税の納税猶予制度創設
その地域において恒久的に農業の用に供されるべき農地等として、自由な取引が行われるものとした場合におけ
る取引において通常成立すると認められる価格を農業投資価格とし、農業投資価格を超える農地の評価額に
課税する相続税を、相続人の農業の継続を条件として納税猶予
農地の相続人が死亡時までないしは20年間農業を継続した場合には、納税猶予が免除され、納税の義務は消滅
1983年 小規模宅地等の課税価格の計算に関する特例創設 表13-1 小規模宅地等の課税の特例の推移参照
2003年度改正 相続時精算課税制度創設(図13-1参照)
贈与税の負担を先送りすることで、生前贈与を促進し、親から子どもへの資金移転を奨励することで、住宅建設促進を図り、
景気回復に寄与することが期待されて導入
2013年度改正
(2015年1月1日以降適用) 相続税の基礎控除引き下げ 3000万円+法定相続人当たり600万円
13.2 資産課税の仕組み
(1)相続税の仕組み
出所:財務省ホームページhttps://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/e01.htm(閲覧日2021年10月6日)
(2)贈与税の仕組み
出所:財務省ホームページhttps://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/e06.htm(閲覧日2021年10月6日)