第17章 地方税の理論
17.1 地方税固有の原則
  租税原則   公平  効率 簡素
  地方税固有の原則  応益性、負担分任、普遍性、安定性と伸張性

(1)応益性
税負担配分の原則としての、応能原則(能力説)と応益原則(利益説)

応能原則  所得、消費などの経済力に応じて負担を配分する考え方

水平的公平 等しい経済状態の人々を等しく取り扱うこと
垂直的公平 異なる経済状態の人々に異なる取り扱いをすること

応益原則 公共サービスからの受益に応じて負担を配分する考え方

国税     応能原則   所得分配、経済安定
地方税   応益原則    資源配分

応益原則からは、租税よりもむしろ使用料や手数料といった形で財源を調達したほうが望ましい

ゴミ収集サービスを完全に有料化した場合には、不法投棄の可能性を増す

応益性の性格を持つ税を地方税として採用することが現実的な対応:例 固定資産税、都市計画税、事業所税など


(2)負担分任の原則
行政サービスの受益者である地域住民がその行政サービスを分担すべきだという考え方

人頭税  サッチャー政権下のコミュニティ・チャージ
1993年に現在のカウンシル・タックス(counsil tax)に置き換えられた

日本では均等割りが存在する。課税最低限が国税より低い理由ともされている。

(3)税源と税収の普遍性


地方税としては、どの地域でも課税対象となるものが存在し、かつ税収が見込めるものであることが必要


(4)安定性と伸張性

17.2  国と地方の税源配分
(1)伝統的税源配分論
   シャウプ勧告   独立税主義 国と地方の税源分離   
               道府県 (所得型)付加価値税
               市町村   固定資産税
   財政の3大機能  資源配分  地方公共財の提供 地方   応益性の重視: 
               所得分配  国
               経済安定  国
                           ↓
                        地方団体の税収不足から税源の重複へ

(2)新しい税源配分論
  地方分権下での課税自主権を持つ地方公共団体の行動は、他の地域の地方公共団体や地域住民の行動に影響を与える可能性がある。
              ↓
       財政的外部性(fiscal externality)

地方公共団体の目的が地域住民の厚生最大化のみと考えると、他地域の住民の犠牲のもとで、自地域の住民の負担を最小化するような行動をとる可能性もある。
→地方税の負担を最小化しても、交付税により全額補てんされるケースなど。


歳出面の財政的外部性
    地方公共財のスピルオーバー(拡散)
    例:河川改修

歳入面の財政的外部性 
   租税の外部性
     租税輸出   
     租税競争
    
税源配分を考えるときは、これらの経済的影響を考慮に入れておこなうべき


17.3 租税の外部性 

表17−2 租税の外部性
水平的直接型   租税輸出         他の地域に直接的に影響    他の地域住民に負担を求める宿泊税
水平的間接型   租税競争         他の地域に間接的に影響    ある地域での税率引き下げにより他の地域から企業・個人が流入
垂直的間接型   課税ベースの重複   法人には国税と地方税の両方が所得に課税している→税率が高くなりすぎる

水平:地域間   垂直:中央政府と地方政府

(1)租税輸出
   租税輸出には、交付税による歯止めあり。

   不交付団体には歯止めなし 東京都 ホテル税

(2)租税競争
   州の権限が強いアメリカの経済学者の研究が多い。

   税率の引き下げ競争→税収が減少→公共財の供給量が過小に