04M3073 松井佑介

 

『所得税の課税ベース拡大に関する一考察』

 

目次

 

1章 はじめに

 

2章 所得税の意義

 

3章 所得税による非効率性

 第1節 超過負担と労働供給への影響

 第2節 労働供給に関する先行研究

 

4章 所得税制の再検討

 第1節 控除制度の意義

 第2節 控除制度の再検討

 第3節 課税ベースのイロージョン

 

5章 所得税制の改正の方向性

 第1節 課税ベースの推計の先行研究

 第2節 課税ベースのマクロ推計

 第3節 所得税制の改正のための提言

 

6章 おわりに

 

 

 

 

 

修士論文研究計画書

 

『所得税の課税ベース拡大に関する一考察』

 

問題意識

現在の日本の社会は、高齢化の一途をたどっている。このままでは我が国の基幹税である所得税の税収が大幅に減ってしまい、財政崩壊に至るのは明らかである。そこでこの未曾有の財政危機を乗り切るためには、課税ベースを拡大し税収を増加させる必要があると考えられる。しかし、それによって経済効率が阻害されることや公平性を欠くようなことがあってはならない。そこで、これらのバランスがうまく釣り合い、また社会的弱者に負担の少ない方法を考えていきたい。

 

目的

所得に対する課税は、課税ベースを狭くして税率を高くする形態と、課税ベースを広くして税率を低くする形態の二つが考えられる。すなわち、税率と課税ベースの改革は同時に行なわなければならないものである。しかし、日本では所得税の税率だけが変更されて、所得控除等による課税ベースのイロージョンの問題については十分な解決がなされているとは言いがたい。 そこで、所得税制における所得控除等を見直すことにより、課税ベースを拡大する方法を検討する。

 

先行研究

・橋本恭之(2000)では、1997年の厚生省の公的年金改革案による公的負担と給付額の分析がされている。そこでは社会保険料控除の問題についての指摘がなされている。そこで、2004年の年金制度改正の影響はどうなのであろうか。特に、年金課税の見直しについては老年者控除の廃止や公的年金等控除の水準の縮小がなされているが、社会保険料控除の見直しがなく高齢者世代の負担のみが増えているようである。

  林宏昭(2002)では、年金税制の見直しついての考察が述べられている。ここでは、課税ベースのイロージョンやどの段階で課税するかについて論じられている。年金税制についてはどの段階で課税するかが大きなポイントであると考えられる。

 

 

参考文献

石弘光(1979)『租税政策の効果』東洋経済新報社.

井堀利宏(2003)『要説:日本の財政・税制』税務経理協会.

金子宏(2007)『租税法』弘文堂.

小西砂千夫(1986)「勤労所得税の超過負担とその計測」『関西学院経済学研究』19,pp43−56.

小西砂千夫(1997)『日本の税制改革−最適課税論によるアプローチ』有斐閣.

野口悠紀雄(1989)『現代日本の税制』有斐閣.

橋本恭之(2000)「年金改革のシミュレーション分析」『国際税制研究』4,pp91−97.

橋本恭之(2006)「税・社会保障制度と労働供給」樋口美雄編『転換期の雇用・能力開発支援の経済政策』所収,pp323−341、日本評論社.

林宏昭(2002)『どう臨む、財政危機下の税制改革』清文社.

藤田晴(1992)『所得税の基礎理論』中央経済社.

水野忠恒(2003)『租税法』有斐閣.

森信茂樹・前川聡子(2001)「わが国所得税課税ベースのマクロ推計」『フィナンシャル・レビュー』第57号,pp103−122.