ROCK ARTISTS BIOGRAPHICAL DEPARTMENT
JAPANESE ROCK ARTISTS SECTION



イヌ / INU 

「極上のポップアルバム」
           Pantetsu

作家先生である。芥川賞の選考委員の先生方も何か訳が有ったのだろう。まー芥川賞がナンボのもんかも知らないけど・・・。エコーズの辻人成が、無知で盛りのついた女子大生やOLにインチキ青春メルヘン小説で金稼いで、 バンドまで再開させたりする勘違い行動に走っているのと同じ道を歩みつつある?無知な為に平凡な生活をしている女にかぎって、インチキな変態をインテリの様に見せかけて、孤立した個性を演出している、勘違い男に弱いのか・・イヤ、勘違いは女の方だ。先日、我が妻が観に行ったトークショーに「町田康」も出演していたらしい。帰ってくるなり妻は怒り心頭で「町蔵はバカ田大学」だともらしていた。町田康は、「品良く利口に見せたいけどファッションセンス無いし、でもスーツなんて顔が見えなくなるからイヤ」なんて人が選んでしまうような知識人定番スタンドカラーのシャツを着て、事あるごとに「自分はパンクロッカーですから」なんて自分に言い聞かせるように繰り返していたらしい。司会者は「町田康なら何か変わった事を言うかもしれない」なんて事が見え見えでコメントを求めまくり、それに媚びるように町田氏は訳の解らないコメントを返してテーマを終了させ、観覧している女達に「パンク恐い−、でも町田さん素敵ー」なんて黄色い感想で溢れ返らせたらしい。

もし、「メシ喰うな」のジャケット写真の町蔵が不細工なパンク顔だったら、こんな事には進展しなかったように思う。ジャケ写の鋭い眼光と言うよりも「かわいい坊や」としてのビジュアルが先行していたのではないだろうか?

しかし、INUの「メシ喰うな」は極上のポップアルバムである。パンクと言われているが、いわゆるパンクロック的な8ビートで掻き鳴らすギターもミュート刻みのギターも無い。町蔵の髪型だけが既存のパンクと呼ばせたに過ぎない。当然、本人はパンクの影響を受けてパンクバンドを作ったのだから、パンクバンドと呼んでも、パンクロックと呼んでも差し支えは無いだろうが、このアルバムを一緒くたにパンクの名盤と呼ぶには、いささか範囲限定で勿体無い気がする。それほどの名盤だ。若干齢の町蔵の凄まじい歌と歌詞、町蔵の声は絶叫する為に、そして呟く為に素晴らしく整って生まれた声で有ることを実感する。歌としての存在感は完璧である。曲、詞、演奏と全てに素晴らしいアルバムだが、特筆すべきは北田昌宏氏のギターの技術とセンスだ。そして北田昌宏氏の楽曲は引き合いに出す曲が無いほどに自世界を作り上げている。ココまでの能力が有りながらも、その後メジャーに留まらない所が憎い。

おそらく音のinitiativeは北田氏が取っていたのだろう。完璧に構築されたアレンジの中、パンチインの嵐のごとく音色を変え、複雑怪奇なフレーズを正確に決めまくる。そして町蔵の声をSEの様に随所に散りばめられコラージュされた音は、ストレートを売りとする従来のパンクロックの録音方法とは正反対の方法論だ。本人たちが、この録音方法を望んだのか、エンジニアのエゴで出来上がったのかは定かでないが、結果として出来上がった本作は日本ロックの名盤で有る事には間違いない。パンクなんて狭い範囲で評価するべき物では無いので、パンク嫌いなプログレ君なんかにも自身を持って勧められるタイトルだ。又、ギターアレンジやミキシングセンスだけを参考にしても十分に楽しめるクセの無いPOPアルバム。

後にも先にも、INUとしての、まともなスタジオ録音はこの作品しかない。作家先生の文章や名前に惹かれて、悪戯に他のタイトルに手を出すと痛い目に遭う。「メシ喰うな」だけが若干コマーシャルな作りになっているだけで、その後は本来のアバンギャルドな世界を突き進んでしまい、聴くものでは無く、味わう物に変わり、商業音楽とは遠い場所に価値観を置いているからだ。

 今の町田康は作家先生と呼ばれることに照れながらパンクロッカーを自称している。「ミラクル・ヤング」は、やっと活動に勢いが出てきたのだが、全盛期狂気の町蔵を知るだけに、なんとも中途半端な印象は拭えず、客の大半を占めるパンク無縁の作家先生大好きギャルの為にも、無理してパンクを自称しなくたって十分にアンタはパンクだって理解している人も大勢いるのだから。

先生様、アンタのパンクって、一体何だよ? 

メシ喰うな INU 「メシ喰うな」  TKCA-71438
パンクなんて枠では測る事の出来ないほど優良なポップアルバムである。
全体的に演奏の手法はプログレ的な臭いも有り、練りこまれた楽曲アレンジは一般的に言われるパンクの音とは程遠い所で驚くべき完成度に達している。
日本の音楽において、ここまでルーツの見えない確立した個性を表現できているアルバムは他には中々無い。とにかくパンクとは別次元で、アルバムとして素晴らし過ぎる。


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