-cinema diary-

2002年10月の映画日記


 

2002.10.15 泣ける映画

「アイ・アム・サム」

監督:ジェシー・ネルソン
脚本:クリスティン・ジョンソン
主演:ショーン・ペン、ダコタ・ファニング、ミシェル・ファイファー、ダイアン・ウィースト、他

鑑賞日:2002.7.25

公式サイト:http://www.iamsam.jp/


 知覚障害者のサム・ドーソン(ショーン・ペン)には一人娘のルーシー(ダコタ・ファニング)がいた。同じ知恵遅れの仲間たちや、外出恐怖症の隣人アニー(ダイアン・ウィースト)らに支えられながら、一人で彼女を育ててきたのだったが、彼女が7歳になったある日、そんなサムに将来的な子供の養育は無理なのではないかという疑惑がふりかかり、児童福祉局によって二人は離れ離れになる事に。サムは弁護士リタ・ハリソン(ミシェル・ファイファー)とともに養育権を争うことになるが……。


    *    *    *


 うーん、泣ける話だ……。
 てゆうかヤバイですよ。始まって20分目くらいで思わず泣きそうになったASDです(マジか!?)
 本作では見事ショーン・ペンがアカデミー主演男優賞に輝きました。その他の役者さんも大変な熱演をみせておりまして、それだけでも結構見所のある作品だったな、とは思います。
 ですが、いくら何でも「家族愛」がテーマの作品で、ASDさんみたいなショボい独身男性がさほど感激できるとも思えません(爆) 果たしてASDはこの作品の何に感動したんでしょうかねぇ。
 ショーン・ペンも確かに巧いのですが、やはり何と言ってもこの映画を支えているのは、わずか7歳のルーシーを演じた、ダコタ・ファニングでしょう。壮絶なまでに萌え萌え! ……ではなくて(爆)、彼女の演技がヒジョーに素晴らしいのですよ。
 どのくらい素晴らしいかというと、ASDさんが思わず3700文字近くも熱弁を振るうくらい素晴らしいのです(笑)
 以下、解説していきたいと思います。



 作中で、サムの知能レベルは7歳児並みとされています。その娘ルーシーもまた7歳という設定ですが、この二人、明らかにルーシーの方が賢く見えるんですよねぇ(笑)
 まぁチョット冷静な見方をすれば、彼女のような子役が巧い演技を見せれば、どうしても利発に見えてしまう、という事は言えると思います。
(「シックスセンス」「AI」のハーレイ・ジョエル・オスメント君とか、頭悪そうにはちょっと見えませんよね(笑))
 サムは確かに親としては頼りないですが、彼の周囲には手助けをしてくれる親切な人々が大勢います。隣人のアニーは女性の立場からいろいろなアドバイスをしてくれますし、どうにもアテにならん連中ですが知恵遅れの仲間達も、サムやルーシーにとっては大事な友人達です。それにサムは職場であるスターバックスでも、同僚や常連客に小馬鹿にされるような描写はほとんどありません。
 つまるところ、サムは非常に恵まれた環境にいて、そういう環境の元でルーシーは充分に満足に、幸せに育てられてきたわけです。
 しかし、ルーシーが小学校にあがった事で、この状況に変化が訪れます。
 従来の環境では誰もサムを悪く言わなかったのに、小学校に上がった途端、「サムは普通の父親ではない」事がクローズアップされてくるわけですね。他の子供たちを見ることでルーシー自身、自分がかなり特殊な状況にある事を知るわけです。勉強することで、自分が父親よりも賢くなってしまうという事実に直面してしまうわけですね。
 それにルーシーは戸惑うわけですが……ここでの彼女がまた素晴らしいのですよ。サムが読めない単語を自分も読めないとウソをつくシーンに、いきなりジーンと来てしまったASDさんでした(笑)
 物語はサムと弁護士リタが協力して裁判に挑む部分を中心に据えているために、ルーシー自身の動揺とか苦悩は、あまり前面には出てきません。というか、直接的にはほとんど触れられていません。
 それゆえに見過ごしがちなんですけど、実際ルーシー自身も何も盲目的に自分の父親を慕っているわけではなく、父親と自分の関係についてあれやこれやと悩んでいるわけです。
 親子が愛しあっているのが前提条件、絶対条件で、子供は自分の親の所にいるのが一番なんだ……というのがテーマだったとしたら、この映画はかなりトホホな感じになっていたと思います。「愛だけで人間幸せになれるんとちゃうのやぞ!」とかツッコんでいる声も某映画批評サイトで見かけましたけどね、実際(笑)
 それでも、先述のようにルーシー自身の葛藤や選択に関しては、作中でそんなに深くツッコんだ描写がされているわけではありません。そこを表現しているのは、弱冠7歳のダコタ・ファニングの演技ひとつ、ほとんどこれだけと言っても過言ではないのです。
 ルーシー自身が問題ときちんと向きあって、答えを出す……そういう彼女自身の葛藤がきちんと描かれているからこそ、この映画で描かれている親子愛には説得力があったのではないでしょうか。



 さらに検証をすすめると、上記の事柄から本作がただの親子の愛情物に終わっていない事が明らかになってきます。
 先にも述べましたが、この作品における事件の発端は、ルーシーが小学校に上がった事にあります。
 彼女が小学校に上がる事で感じた戸惑い。父親を拒絶するか(ホントの父親ではない、と級友にウソをつきました)、成長を拒絶するか(単語が読めない、とウソをつきました)……彼女はそういう風に揺れ動いているのですね。
 これが、今度はサム自身に転機をもたらす事になります。それまでは職場でも友人からもバカにされたりしなかったのに、ルーシーが父親のことでからかわれ、彼女の級友たちが彼自身をもバカにしたりもして……挙げ句の果てに児童福祉局とかいう連中がやってきて、彼からルーシーを取り上げようとするのですね。
 自分の内側の世界で平和に生活していたサムは、ここで外側の世界と向き合う事を強要されるのです。ルーシーにとって愛する父親である、というのではなしに、社会が要求する「父親」としての役割がサムには求められているわけです。
 つまりこの物語には、サムとルーシーの親子が、「社会」という外部に立ち向かっていくという側面があるわけですね。
 これに関してひとつ象徴的なシーンがあります。ルーシーと離れ離れになって意気消沈しているサムが、無数に作った折り紙をつなぎ合わせて、柵というか壁のようなものを無数に築き、その内側に閉じこもろうとするのですが……。
 このシーンこそ、サムが内にこもるか、外に出て立ち向かっていくかを問いかけるシーンだったのではないでしょうか。
 振り返ってみれば、このモチーフは他にも存在します。非常に分かりやすいのがアニーの存在。彼女はサムのために証言台に立つべく、外出恐怖症を克服しようとするのですね。
 同様に弁護士リタも、家族がバラバラになっているという問題から目を背けて仕事に没頭しようとしますが、それが「逃げ」であることをサムによって気付かされてしまうのです。「問題に逃げずに立ち向かう・向き合う」という意味では、彼女もまた皆と同様の課題を背負っていると言えるでしょう。
 サムは、ルーシーのために「社会」と向き合う。
 ルーシーは、自分の父親が障害者である運命と正面から向き合う。
 リタは家族の問題に目をむけ、アニーは外出恐怖症を克服しようとする。
 ……つまりは、そこがこの映画のポイントなのではないでしょうか。
 この映画に感激し、これだけの長文を書いているASDですが、実際のところはさみしい独身男性に過ぎませんからね(笑) 親類に可愛い子供がいるわけでもないですし。サムとルーシーが親子だから愛し合ってて当然だろ、と言われたら、「はぁ?」と思ってた事でしょう。こういっちゃ何ですが障害者が頑張ってるから感動的、っていう風にもひねくれもののASDさんは考えないと思いますし(爆)
 そんなASDさんでも、この映画を見て感動出来たのには、ここまでだらだらと書いたような理由があったんじゃないかな、と思います。



 でもやっぱりダコタ・ファニングは可愛いなぁ(全てをぶち壊す一言(笑))



オススメ度:☆☆☆☆☆




2002.10.15 満員御礼

「スターウォーズ・エピソード2/クローンの攻撃」

監督・製作総指揮:ジョージ・ルーカス
主演:ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、他

鑑賞日:2002.7.17

公式サイト:
http://www.starwars.com/(ルーカスフィルム・英語)
http://www.foxjapan.com/movies/episode2/(20世紀フォックス)


 ナブー封鎖騒動から十年、共和国は徐々に衰退を見せ始めていた。
 女王を退き、今はナブー選出の議員として活躍するアミダラ(ナタリー・ポートマン)は、ある日何者かに命を狙われる。護衛の任についたのは若きジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)。彼は幼い頃からずっと彼女に憧れていたが、恋心を抱くことはジェダイの戒律によって禁じられていた。それでも二人の仲は急速に接近していく。
 一方で、オビ・ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)は、アミダラを狙った暗殺者の行方を追ううちに、共和国に対立する勢力の動きに接近していく事になる。そんな彼の前に、賞金稼ぎのジャンゴ・フェットが立ち塞がる。


    *    *    *


 えー、というわけで、随分と遅くなってしまいましたが、「エピソード2」でございます。これ見たのいつの話だっけ……(爆)
 「スターウォーズ」待望の新作、という事なのですが、前作エピソード1が割と世間的にはガッカリな出来映えだったようで……(汗) 本作に関しても「これどうなのよ?」的な危惧の声が結構聞こえてたような聞こえてなかったような。
 まぁ何と言いますか、結局前作の「エピソード1」って、かなりのんびりした内容でしたしねぇ。辺境の惑星でのちょっとした紛争っつう事で、戦争という割には何やら牧歌的なムード漂う中、アナキン坊やがちょこっと活躍しただけで味方が大勝利をおさめたりというノリでありまして……まぁ、イマイチ緊迫感に乏しい内容だったのではないかな、とは思います(爆)
 では本作エピソード2は、どうだったのかと言いますと、そんな前作を見事にひっくり返すような充実ぶりでありました。
 今回はアナキンもちゃんと立派な若者に成長してますし(笑)、それに合わせてかアクションも物騒なチャンバラが増え、ストーリーも陰謀につぐ陰謀、謎につぐ謎と、かなり緊迫した内容になってました。つうかかなり込み入った感じでしたかねぇ。一度見ただけでは「説明してみろ」と言われてもちょっと困ってしまうくらい、ややこしい様相を見せております。
 最大の見所は、やはりその映像でしょうかねぇ。もはやSFXというよりは、全編CGアニメなのではないか、というくらいにCG使いまくりです。実写の俳優さえも、単なるCGの素材であるかのような感じで。
 その辺りの俳優の使い方なんかが前作では批判の対象になってたりもしましたが、CG自体のクオリティとか質感とかも大幅にアップしてますし、ここまで到達しちゃうと手作りの特撮が懐かしいとかなんとか、そういう愚痴をこぼすだけ無意味というか、何と言うか……(爆)



 ともあれ本作の場合、そうやってSFX映画としてのデキがどうのこうのとか、娯楽映画としてイケてるかどうかとか、そういう部分を厳密に問うていく事に、実はさしたる意味はないんじゃないか、という風に思わない事もないのですよ(爆)
 今回のエピソード2は、旧三部作としてすでに提示されているものと、新三部作の開幕篇としてエピソード1で提示されたものとの、その間を埋めるようなネタがガンガンに登場してきます。
 本作を見ることで、観客の頭の中にある「SW世界」のまだ埋められていない部分に、ひとつひとつピースがあてはめられて……それでようやく全体像が見え始めてきた、といった所なのではないかと思います。しかしながら一番肝心な部分がまだ埋まっていなくて、それに関しては次のエピソード3で明らかになるわけですねぇ。
 こういうのって、シリーズ物で無ければまず出来ない楽しみ方なんじゃないかと思います。まぁシリーズ展開される作品も決して少なくはないですが、映画以外のところで世界観が勝手に広がっていく、そういう楽しみ方は、割とスターウォーズ独自の楽しみ方なんじゃないのかなぁ、と思ってみたり。
 そういう面も含めて、「スターウォーズ」の場合単に映画を鑑賞するというのとは違って、「映画を見る」という行為を通じて「スターウォーズ」というイベントに参加し、体験する……というような醍醐味があるんじゃないのかなー、と思うのですね。
 ASDも別に熱心なSWファンというわけでもないんですけど、それでもエピソード1鑑賞時には、冒頭の「a long long time ago....」をナマのスクリーンで見られた事に、めちゃめちゃ感激してしまいましたからね(笑)
 確かに、一本の映画としては、数ある「SFXがすごいだけの大作映画」の一本に過ぎないと思います。内容に関する評価は人それぞれでしょうが……まぁ、SFXがすごい映画なんて探せばいくらでもありますし、技術がいずれ進歩すれば、後発の作品に追い越されていく宿命の映画なのかも知れませんけどね。
 旧三部作なんか、そういう意味ではすっかり「追い越されてしまった」映画なんじゃないかな、と思いますが(爆)、それでもやはり「スターウォーズ」は、一生のうちに滅多に体験出来るものではない、空前の映画的イベントなのではないかなー、と思います。
 ……まぁ何と言いますか、これを書いている時点でもすでに公開が終了した劇場もたくさんあるんじゃないかな、というのが少々アレなんですけども(爆) やはりこの映画、劇場で見てナンボ、ではないかと思うのですよ。それも、大画面・大音響で見ろ、とかいうのではなしに、出来るだけ大勢の人と一緒に見て欲しいな、と思うのです。
 そう、公開初日とか、あるいは先行ロードショーとか、とにかく満員に近い映画館で見る事を強くオススメします。まぁエピソード2に関してはどう考えても今からでは無理ですので(笑)、2004年か2005年に公開される事になる「エピソード3」では、ぜひともそうやって見て欲しいな、と思います。
 そう、別に「映画を見に行く」のではないのですよ。満員の映画館で、観客全員でスターウォーズを一緒に『目撃』する、という体験を、しに行って欲しいなぁ、と思うのでありました。
 ……かく言うASDも、エピソード2を初日に見に行かなかった事、実はちょっとだけ悔やんでいます……(笑)



オススメ度:☆☆☆☆☆(空前の映画的イベントをリアルタイムに体験出来る幸運に対して)
純粋に映画としてのオススメ度:☆☆☆☆(まぁCGは確かに凄いけどなぁ……という感じです(爆))



 


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