-cinema diary-

9月の映画日記。


 

2000.9.23 Everyday is wilding road.

「エリン・ブロコビッチ」

監督:スティーブン・ソダーバーグ
主演:ジュリア・ロバーツ

鑑賞日:2000.7.12



 実はジュリア・ロバーツ主演と言うことで、ちーっとも期待していませんでした(笑) 監督がスティーブン・ソダーバーグと聞いて、慌てて見に行った次第です。
 ソダーバーグと言えば、「アウト・オブ・サイト」でも淡々としたスタイリッシュな映像を見せてくれました。この淡々としたノリは、芝居というよりはドキュメンタリー的なテイストです。
 しかし、ジュリア・ロバーツは過去最高額と噂されるギャラのおかげか、これまでにない熱演ぶり。せっかくのドキュメンタリータッチがだいなしでした(笑) そのギャップが、独特のノリをかもしだしているとも言えますが……(笑)
 ところで、この話は実話なのだそうです。ジュリア演じるエリン・ブロコビッチも、実在の人物。それどころか、彼女は実はこの映画にもちらりと顔を出しているのです(笑) 冒頭、交通事故の裁判に負けて意気消沈の彼女が、子供を連れて訪れるファミレス。そこのウェイトレスが、実はエリン。何でも、彼女の名札には「ジュリア」と書いてあるそうで……ビデオが出たらチェックしてみましょう(笑)
 まあ、実話ものと言うことで若干展開が物足りないのは否めません。裁判ものなのに裁判のシーンがほとんどありませんが、まあこれは演出の意図もあったみたいですね。
 最後に。ゼンゼン関係ないのですが、冒頭でジュリア・ロバーツはぼろぼろのオレンジのセダン(シビックか?)に乗っています。考えてみると、「アウト・オブ・サイト」でジョージ・クルーニーが乗ってたハッチバック、これもオレンジ色でした……しかもこれもシビックだったような(笑)
 オレンジのシビック。なんか、こだわりでもあるのでせうか?

おすすめ度:☆☆☆






2000.9.23 2020年火星の旅

「ミッション・トゥ・マーズ」

監督:ブライアン・デ・パルマ
主演:ゲイリー・シニーズ、ティム・ロビンス

鑑賞日:2000.7.7



 ううむ、この映画ってやっぱり「2001年宇宙の旅」なんでしょうなあ。とは言え、オイラは実はあれを最後まで見ていないんですよ。
 ファーストコンタクトをCG満載で描く、というのは「アビス」とか「コンタクト」でもやってました。似たようなノリで、事件に遭遇する調査隊というシチュエーションを描いていた作品としては、「スフィア」なんかもテイストが近いかも知れません。そう考えるとこの映画、実に「ありがち」な作品だったんじゃないかという気がします。ラストで、「彼ら」が実際に姿をあらわした時も、結局「ふーん」の一言で終わってしまいましたし。
 ところで映画、ファーストコンタクト云々だったり、地球人類のルーツがどうこうと広義的なSF要素を追求する一方で、宇宙船や無重力描写のリアルさなどのSF的ガジェットの魅力でみせていったり、宇宙船の故障、不時着といった派手な展開が描かれていたりする、狭義的なSFアクション映画であったりもします。それも結構息つく間もないスリリングな展開で、あれっと思ってパンフレットに目をやると脚本は「スピード」のグラハム・ヨスト。ならばまあ、無理はないですな(笑)。
 狭義的SF、という意味では、本作では現在進行形の計画に則した宇宙開発計画……火星着陸計画がかなりリアルに描写されています。そう言った部分も「ガジェット」として、とても魅力的に描けていたとは思います。ただ、やはり現実よりも進んだ描写を取り入れている分、完全にリアルに徹し切れていないのも確かで……。ここらへんをリアルに、という話をすれば、実話ものだった「アポロ13」の方が、実はSFでもないのにSF的リアリズムに満ちた傑作となっています(笑)
 どうでもいいんですけど、この作品のキャスティングはかなりアヤシイ顔ぶれが揃ってますねえ……(笑)。ゲイリー・シニーズが主演、しかもいい人を演じるなんてかなり珍しいかも知れませんし(笑)、ティム・ロビンスは「隣人は静かに笑う」のサイコぶりが記憶に新しいです。そしてクルーの一人を演じるジェリー・オコーネルは、「スクリーム2」でヒロインの彼氏を演じていました。そういう意味では、疑わしい顔ぶれがずらりと並ぶ、結構奇妙な映画でした(笑)

おすすめ度:☆☆☆






2000.9.23 アメリカの美

「アメリカン・ビューティ」


監督:サム・メンデス
主演:ケビン・スペイシー、アネット・ベニング他

鑑賞日:2000.6.30


 アカデミー作品賞受賞作です。凝ったシナリオにありがちな、何が言いたいのかよく分からない話です(笑) 基本的には、ありふれた中流家庭の、その崩壊を描くブラックコメディなのですが……ここで崩壊していく家庭というのは、実にありふれた家庭です。そういう家庭のあり方……それはアメリカ的な価値感において、美徳とされるもの……つまり、「アメリカン・ビューティ」なわけです。本作は家庭崩壊を描きながら、そういうアメリカ的価値感の崩壊をシニカルに描き出している、と言えるでしょう。
 崩壊崩壊と言いますが、別にそこにはヒサンな所はひとつもありません。例えば主人公を例に見ると、彼は娘の同級生(高校生ですな)に一目ボレし、彼女をゲットするために肉体を鍛え、それを咎められれば逆ギレ。首を切ろうという会社を、逆に恐喝して退職金をゲット。マリファナを吸い、レッド・ツェッペリンを聞き、あこがれの真っ赤なスポーツカーを乗り回し、自由気ままに生きる彼……家庭の中で片隅に追いやられていたダメ中年親父が、魅力的な不良中年へと華麗なる転身を遂げるのです。それはつまり、彼らは先述の「アメリカ的価値感」の元では抑圧され、その枠組を逸脱したときに初めて個性的に光り輝くことが出来る、という事を示しています。
 個性的に光り輝くこと……美しくあること、つまり、旧来の価値感(アメリカン・ビューティ)を逸脱して、彼らは初めて美しい個性(ビューティ)を手に入れることが出来る……そんな皮肉な巡りあわせを、この映画は言いたかったのかも知れません。

おすすめ度:☆☆☆☆






2000.9.23 不可能的任務之二

「M:I−2」

監督:ジョン・ウー
主演:トム・クルーズ

鑑賞日:2000.6.24



 気をつけなくてはならないのは、今回タイトルはあくまでも「M:I−2」であって「ミッション・インポッシブル2」ではないと言う事でしょう。来日時のインタビューでトムもそう言っています(笑) そういうわけで「ミッション・インポッシブル」とは、関連がありそうでいてあんまりない映画ですので、お間違えの無きよう。
 内容はと言うと……まあとにかく、トム・クルーズが活躍する映画です。「スパイ大作戦」の映画版には違いないのでしょうが、前作以上にその関係は希薄になっています。主人公が変装の名人、という所が唯一の類似点でしょうか。むしろトムのスーパーマン的な活躍ぶり、ヒロインとの電撃的恋愛(笑)を見ていると、どっちかっつうと「007」なんじゃないのかとすら思えて来ます(笑)
 それにしてもさすがジョン・ウー、やってくれます。前作・旧来のテレビシリーズ、そのどちらの存在もきれいさっぱり切って捨てた上で、潔いまでに見事にジョン・ウー節炸裂の一作になっていました。
 前作のブライアン・デ・パルマは、それでもサスペンスの面白みを何とか追及しようとしていましたが、ジョン・ウーにはそんな気持ちはかけらもないのでしょう。アクションにつぐアクション、それを支えているのはサスペンスやスリラーではなく、あくまでも人間同士の熱いドラマなのです。ま、今回はオンナを巡るライバル関係という事で、熱くたぎる男のドラマはお預けだったわけですが、とにかく人間同士の対立がアツイ。オンナを巡って火花を散らす二人のスパイ、あまりにベタなので逆にホレボレとしてしまいます。そして、「やり過ぎ」というのも恥ずかしくなるような、メチャやりすぎの怒涛のアクション展開……スローモーションは相変わらず、今回はMTV的な早送り?も活用してますね。様式美あふれる銃撃戦は相変わらずため息が出るほど素晴らしく、ハトもばんばん飛んでいます。そしてカーチェイス。考えてみたら、ジョン・ウーの映画でカーチェイスというのは意外と珍しいかも知れません。あと、彼の映画はいつもメカの壊れ方がなんかヘンです(笑)。「ブロークン〜」のヘリは墜落した後必ずローターから倒れてきますし(笑)、「フェイスオフ」ではボートがタテ向きに宙を飛んでいました。
 そんなこんなで、相変わらずの部分、結構新鮮な部分、ややトホホな部分も含めて、どこを切っても「ジョン・ウー」印でありました。
 まあ、確かに「ミッションインポッシブル」と言うからには(一応劇中でアンソニー・ホプキンスがそう言うとります)、もう少しサスペンステイストが欲しかったところですが……残念ながらドンデン返しみたいなものはまあ皆無と言っていいでしょう。そういう「裏切らなさぶり」も、ジョン・ウーテイストと言う事で(笑)

おすすめ度:☆☆☆☆



追記:  上のタイトルの件ですが、トム・クルーズが来日時のインタヴューでそう言っていたのでASDもすっかり信じていたんですが、後にDVDで見返してみましたらばしっかりと「MISSION:IMPOSSIBLE II」と書いてありましたとさ……(爆)






2000.9.23 釘の跡

「スティグマータ・聖痕」

主演:ガブリエル・バーン、ロザンナ・アークエット

鑑賞日:2000.6.16



 「オーメン」「エクソシスト」に代表されるような、聖書ネタのオカルト映画……と言ってしまえば手っ取り早いのでしょうか。最近では「エンド・オブ・デイズ」なんてものもありました。そっちで悪魔を演じていたガブリエル・バーンが、こっちでは牧師……聖痕の真偽を追う調査員を演じています。
 聖痕というのは、磔にされたキリストが負ったのと同じ傷を、身体に負ってしまう現象の事を言います。これはこの映画独自のフィクションではなく、実際にそういう症例は存在するらしくて、WOWOWで放送されていたメイキングでも事例がいくつか紹介されていました。本作では、その聖痕が信仰心ゼロのおねいさんに現われて……と言うお話。
 こういうキリスト教的なお話は、素養のない日本人には馴染めない……とはよく聞く話ですが(エンド・オブ・デイズの時もそういう意見はあった)、MTV的な凝ったヴィジュアルを目の当たりにしていると、こいつら本当に真面目に信仰しているのか、と疑いたくもなってきます。ようは信仰云々よりも、どれだけ馴染んでいるか、ですね。こういう宗教オカルトものというのは、考えてみれば日本の伝奇小説やコミックで、陰陽道とかをネタにしているのとおんなじ感覚なんじゃねえのか、という気もします。
 そう言う意味では、MTV的なノリの良さの中で語られるオカルト・スリラーとして捉えれば、あやしげな雰囲気が醸し出されていて、結構好みの一本でありました。でも、見る人を選びそうな作品ではあるよなあ……。

おすすめ度:☆☆☆






2000.9.23 レオ様大冒険

「ザ・ビーチ」

監督:ダニー・ボイル
主演:レオナルド・ディカプリオ、ヴィルジニ・ルドワイアン、ロバート・カーライル他

鑑賞日:2000.6.1



 一言で言ってしまえば、レオ様ちょっと背伸びして大冒険、てなところでしょうか(笑)
 都会の生活に嫌気が差し、新たな刺激を求めてタイを訪れたレオ様。しかし観光地にそんな異質な刺激はあるはずもなく、彼はホテルで会ったアヤシイ男・ロバート・カーライルから託された謎の地図を便りに、幻の楽園「ビーチ」を目指す……。
 ……というあらすじを見る限りでは、問題の「ビーチ」を探し求めるロードムービーのように思えますが、実際は「ビーチ」はかなりあっさり見つかります。むしろ映画は、その地上の楽園「ビーチ」において、「異質な刺激」を求めて集まった若者たちが築いたコミュニティの、その理想と現実、繁栄と崩壊を描きます。
 彼らはモノや情報に満ち溢れ、それに翻弄される生活を否定し、南海の孤島にてそれらを拒絶した、彼らだけのコミュニティを築きます。この、「物質社会を否定した先の理想を追求する」というテーマは、実はブラピ主演の問題作「ファイトクラブ」でも似たような事を言っております。物質に毒された生活を捨て、自らの本質に忠実に生きる……その「本質」を端的に表現する手段として使われていたのが「ファイトクラブ」つまりケンカサークルだったわけですが……(まあ、あれはあれで他にも意味はあるんでしょうが)。
 しかし我らがレオ様の「理想の追求」は、ブラピほど真に迫ったものにはならなくて、とってもツメの甘いものとして描かれています。物質社会を否定したはずなのに、ビーチにはそれでもモノが満ち溢れています。何せレオ様は、浜辺でゲームボーイに興じる毎日ですから(笑)
 つまり彼らはそう言った「物質社会」を完全に否定しているように見えて、実は彼らだけの、外界から隔絶した閉鎖的コミュニティを築き、維持し、そんな中で「必要なもの」と「いらないもの」を選定しているのに過ぎないのです。そのアマイ考えを具現化しているのが、我らが王子様であるレオ様の存在なのです。なんせ彼が何気なしに「ビーチ」を訪れた事で、楽園は崩壊を辿るわけですから……。コミュニティの脆弱さ、危うさに彼がまったく無頓着だったからこそ、楽園は崩壊を許してしまうのでありました。
 そう言う意味では、この作品は「ファイトクラブ」のようなプロパガンダ映画ではなく、楽園の崩壊を実に冷静に見据えたドラマだったわけです。見比べてみると、他にも発見があるかも知れませんぜ(笑)


おすすめ度:☆☆☆


 


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