-cinema diary-

12月の映画日記。


 

2000.12.27 あなただけ見えない

「インビジブル」


監督:ポール・バーホーベン
主演:ケビン・ベーコン、エリザベス・シュー

鑑賞日:2000.11.24



 公開前の前評判では、バーホーベン監督作品という事で不謹慎とかインモラルとかそういう方向で取り上げられていた本作ですが、実際フタを開けてみればなんてこたあないB級ノリのSFX映画でした(笑)


 ケビン・ベーコン演じる主人公セバスチャンは天才科学者。ペンタゴンの極秘研究である、「透明人間」のプロジェクトに従事している。人間を透明化して、諜報活動に取り入れようっていうんでしょうなあ。
 しかし科学者としては優秀でも、人間としてはちょっとアレ。性格の悪さが災いして、恋人であるエリザベス・シューにもフラれる始末。その彼女は実は同じプロジェクトの同僚。彼女自身は現在別の同僚とよろしくやっているのでありました。
 さてある日、ついに実験は成功。透明化したゴリラを、再び見えるように復元する事に成功したのです。しかしセバスチャンは、ペンタゴンに実験の成功を隠してしまいます。何故か? 彼は動物実験から一歩進んで、人間の透明化実験を企んでいたのです……。仲間の反対を押し切り、彼自身が被験者となって、人類初の透明人間となるのですが……。


 ……というわけで、ケビン・ベーコンは透明人間になってしまいます。透明人間モノと言えば、昔チェビー・チェイス主演で「透明人間の告白」という映画がありました。そちらでは、透明人間になってしまった主人公が陰謀に巻き込まれて……というサスペンスタッチの作品でしたが、こちら「インビジブル」では、あくまでも透明人間になった事実そのものにこだわります。そしてそのこだわりは、大変セコい所に現われます。
 もし姿が見えなくなったら? まず身近な人間に、ちょっとしたいたずらでもして見たくなるでしょう。やはり男であるなら、せっかくイタズラするんなら女の子相手にしてみたいですし、どうせやるんなら思い切ってエロい事でもやってみますか? どう? ……というセコい欲求がストレートにそのまま展開されているのが、本作品なのです。
 何せこのセバスチャン、「人類最初の透明人間になる」とか「透明人間化を成功させる」とか、デカい事を言っているわりに、いざ透明になったらやる事為す事セコい事ばっかり! トイレに忍び込んだり、着替えを覗いたり、実にサイテーですな(笑)
 しかも、それがだんだんシャレにならなくなっていくから困ってしまいます。ついには人殺しまでやっちまいますし……。
 ま、そういうイタズラの数々も、人間誰しもちょびっとは、「やってみたいなあ」と思っている事なのかも知れません。そういった欲求は本来理性の力で抑えられているハズなのに、透明になった瞬間から「人に知られたらどうしよう」「悪事がバレたらマズイ」という「抑え」が、途端に効かなくなってしまうのですね。人間の理性なんて、結局はその程度のものだ……そう主張しているバーホーベン、確かに不謹慎かも知れませんね(笑)



 映画的な見せ場は、何と言ってもクライマックス。彼らの研究所は機密保持のため?地下にあるのですが、暴走するセバスチャンは最終的に、悪さをしないように閉じ込められてしまいます。その彼が、ついにキレて……。
 SFちっくな造りの建物。その密閉空間を徘徊する見えない「何か」。それに怯え、対決する人間達……そう、このシチュエーションはまさにB級SFモンスターアクションそのまんまなのです。「エイリアン」か「プレデター」か!? 単なる透明人間ものでこれだけのエスカレートぶり。確かに、バーホーベンはすげえや(笑)




オススメ度:☆☆☆(走れ人体模型!(笑))






2000.12.27 幽玄美

「グリーン・デスティニー」


監督:アン・リー
武術指導:ユエン・ウーピン
主演:ミシェル・ヨー、チョウ・ユンファ、チァン・ツィイー


鑑賞日:2000.11.20



 ……というわけで、「グリーン・デスティニー」です。ミシェル・ヨーとチョウ・ユンファが武侠もので共演というものすごい映画です(爆)
 そう、この映画は武侠映画なのです。以前ここにも書いた「風雲・ストームライダース」のような、超人的武術家達の活躍を描くアクションものなのです。ミシェルはともかくとして、実はクンフーがダメというチョウ・ユンファは果たして大丈夫なのか? と要らない心配をしてしまいますね(笑)
 ま、その辺に関しては心配無用でしょう。武術指導は「マトリックス」で世界的に有名になってしまったユエン・ウーピンです。キアヌに出来たんだから、ユンファに出来ない事はあるまい!(爆)
 しかし、心配な事がもうひとつ。この作品、監督はなんとアン・リーなのです。
 アン・リーと言えば、「ある晴れた日に」などの格調高い文芸ドラマ作品が有名です。もちろんそのフィルモグラフィに、アクションらしいアクション映画の名前など見当たりません。そんな人が、武侠ものなんか撮って大丈夫なのか? と心配になってしまいますね、やはり。
 ま、結論から言えば、心配するような事はありませんでした(笑)
 やはり何と言ってもユエン・ウーピンです(笑) 「マトリックス」で見せたカンフー描写などほんの序の口と言った具合に、本作では香港アクションの真髄とも言える(笑)ワイヤーワークを存分に見せつけてくれます。
 登場人物達は何と言っても「超人的」武術家達ですから、彼らのアクションにはもはや地球の重力などの物理法則による限界がありません。屋根の上まで飛び上がる、壁を走るなどと言った事は当たり前という世界が展開されます(笑) ミシェル・ヨーの華麗なカンフーさばきも見所ですが、注目なのはチョウ・ユンファ。作中では悟りを開いたかのような剣豪という役どころの彼、その剣さばきのひとつひとつが華麗という言葉を超えて優雅ですらあります。物語中盤、竹薮での戦闘シーンなど、香港映画特有のヤンチャくささはどこへやら、幽玄の美すら感じさせてくれます。もはや芸術の域にまで達したワイヤーワーク、必見であります。
 そんなアクションに彩られた物語ですが、こちらはやはりアン・リーらしいというか、しっとりとしたドラマが展開されます。お話も随分複雑に込み入ってますし、その人間関係もかなり複雑です。ドラマが淡々と展開するためにアクション映画らしい盛り上がりには欠けますが、その分しっとりとした、オトナの映画に仕上っていたんじゃないかなー、と思います。




オススメ度:☆☆☆☆(しかし、もしアクション皆無だったら評価出来ないなー(爆))



 


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