-cinema diary-

1月の映画日記


 

2001.1.23 見た事のある映像


ダイナソー

鑑賞日:2001.1.1



 ディズニー初のCGアニメです。しかし、「ダイナソー」とはまたストレートなタイトルですね……直訳すれば「恐竜」です。ヒネリないなー(笑)
 「トイストーリー」があるのにディズニー初なの? と思われるかも知れませんが、あちらはあくまでもピクサー社の作品。この「ダイナソー」は、ディズニーが独自に製作したという意味で、初CG作品なのですね。
 「見たことも無い映像」。キャッチコピーにはそうありますが……。

 これって「ジュラシックパーク」じゃん!
 
 ……と、誰しもが思った事でしょう(笑) そんなわけで、今更恐竜がリアルに描かれているくらいではさしたる驚きはありません。ま、「ジュラシック〜」の場合は意外とCGのカットは少なく、アニマトロニクスが頑張ってますから、登場する恐竜(およびその他の生き物)を全カットCGで描いていると思えば、確かにすごいと言えばすごいんでしょうけど……。
 過去のピクサー作品との手法的な違いは、これらの映像が実写との合成である、という点でしょうか。「トイストーリー」などでは背景などもすべてCGで描かれていますが、このダイナソーの場合ロケーション撮影による自然の風景に、CGによる恐竜を合成しているのです。
 そういう意味では、実写に馴染む映像を描く必要があります。アニメ的なディフォルメはあまり効かせられず、ひたすらリアル路線に徹しているのですね。……むむ、考えてみたら、これは実はすごいんじゃないでしょうか。
 ところが。この作品には、そのリアリズムを根本からひっくりかえす、驚愕の事実が存在するのです。
 そう……。本作では、恐竜がなんと人語を喋るのです! 英語をペラペラと! 日本語吹き替えなら日本語を!
 そうです。この時点で、極限まで追求されている映像上のリアリズムはものの見事に瓦解してしまっているのです。ただ英語を喋るだけでなく、ある程度の身振り手振りも、人間的なんですよね……。
 そんなこんなで本作は結局の所、「喋る動物」の活躍するいつも通りのディズニーアニメになっています。しかも、いくつかの点で過去の作品を連想してしまうシチュエーションも少なくないです。主人公のイグアノドンが哺乳類に育てられるというくだりは「ターザン」ですし、彼が恐竜社会に復帰してからそこで認められるまでのお話は「ライオンキング」ですね。さすがにミュージカルシーンこそはありませんが……技術的な目新しさをうたってみても、結局ディズニーはいつも通りのディズニー、という事でしょうか。

    *  *  *

 恐竜たちの住む大陸に、突如として飛来した流星群。その衝突によって、恐竜たちの住む土地は一瞬にして砂漠と化し、彼らは残された「楽園」をめざし旅に出る。
 卵の頃に離れ小島に漂着し、サルに育てられた主人公。流星の衝突によって彼はサルと一緒に恐竜たちの社会に戻り、そこで衝突を繰り返しながらリーダーになっていって、皆を「楽園」へと導くのだった……。
 というお話。ま、この種の健全なサクセスストーリーというのはディズニーらしいとは思うんですけど……。
 冒頭の流星衝突のシーン、ハンパじゃないくらいの大迫力です。その後写し出される一面の砂漠の景色に、その威力のすさまじさが窺い知れます。その砂漠を、水も食糧もないままにただ死の行軍を続ける草食恐竜達……飢えと渇き、体力のないものは容赦なく捨てていかなくてはならないほどに逼迫した、絶望的な状況。しかも彼らの背後からは、彼らを付け狙うやはり飢えた肉食恐竜が迫って来ているのです。
 何と過酷! なんと絶望的! 水も食糧もなくどうやって生きているんだ? とかいうツッコミもシャレにならないほどに容赦のない絶望の旅を、ディズニーはいつものお気楽調で描いてくれているのです。横暴なリーダーとの対立、助力してくれるヒロイン……「落ちこぼれ」が知恵と勇気と機転でサクセスしていく、黄金パターン。
 しかし、彼らは所詮は恐竜なのです。旅のはてに「楽園」にたどり着いたとしても、今日現在彼らが歴史の影に消えていった、滅びた種であることはこの映画を見ているチビッコ諸君も知っている事でしょう。
 せつない! あまりにもせつなすぎます! 何とやるせない、はかない映画なのでしょうか。悠久なる時の流れの無情さを垣間見るような、そんな作品でした。
 だというのに……だというのに、このバカみたいな脳天気ぶりは一体ナニ?



おすすめ度:☆☆(CGアニメーター達の努力に対して+3。企画のヒネりの無さと恐竜のかわいくなさ加減(笑)に−1)






2001.1.18 がんばれシュワ


シックス・デイ

監督:ロジャー・スポティスウッド
主演:アーノルド・シュワルツェネッガー

鑑賞日:2001.1.1



 さて、21世紀一発目はシュワ主演の「シックス・デイ」です! 何故にシュワなんじゃー! と思うんですけどその辺はLDで「ガメラ3」を見て帳尻合わせてあります(爆) ガメラは3月にDVDが出るので、その頃にここに何か書くかも知れません。
 さて、「シックス・デイ」です。どうでもいいんですけど、思わず「シックスデイズ」と口走ってしまいますね。同時期公開の「13デイズ」とカブってしまいますね。ついでに「シックスセンス」ともカブってますが……ネタはともかく、おんなじくらい面白けりゃあなあ(13デイズは未見)。


 で、肝心の内容の方は……どうしよう、あんまりアレコレ言うようなものでもないような気がしますね(笑) 多額の制作費を投入したSFアクション大作ということで、「トータルリコール」やら「ターミネーター2」やらで、シュワ的にはおなじみの路線です。ただ、前作の「エンド・オブ・デイズ」もそうですが、イマイチかつてほど内容的に成功しているとは言い難いです。
 近未来。「6d法」と呼ばれる法律によって人間のクローンは禁止されていたが、ペットや臓器移植用の臓器など、クローン技術は新たな産業として注目されていた。
 主人公は、チャーターヘリのパイロット。ある日家に帰ってみると、そこにはすでに家族と一緒にすごしている「自分」の姿が……。そう、「6d法」が破られたのです! 訳も分からないうちに命を狙われる主人公。奪われた家族を、自分の人生を取り戻すために、彼は反撃に出ますが……その事件の背後には、クローン技術を操る某巨大企業の陰謀がちらついていて……。
 というお話です。ある日突然覆された日常。奪われた自分の生活。自らのアイデンティティを模索するための冒険……。このパターン、実は同じシュワ主演の「トータル・リコール」と一緒だったりするんですよね(笑) 近未来の描写といい、アイデンティティ回復の物語といい、意図的に真似ているような印象もあります。
 違いと言えば、「トータルリコール」では幾つかの謎?が曖昧なままの状態で、何が真実なのかは敢えて語られていませんでした。火星を解放するための戦い……単純にそう捉えてもいいのですが、よくよくみて見れば、あの大冒険はすべて「体験ツアー」なのだ、と解釈する事も出来ます。ヒロインの設定も、ラストの遺跡も、ツアープログラムに組み込まれていたものと同一ですから。
 つまり、「トータル〜」は単純なSFアクションであると同時に、物語の現実性を物語自身が否定している、メタフィクションなわけです。バーホーベンが単純なアクション映画である事を嫌がったのか、フィリップ・K・ディック原作という事でシナリオの段階で盛り込まれていた要素なのか……そこは分かりませんが。
 で、「シックスデイ」です。クローン人間というネタそのものは、タイムリーかつ非常に魅力的だと思います。しかし、そうでありながらSF映画としてのこの凡庸さは一体なんなのでしょうか。いや、むしろこの作品、SF的なアイデアを前面に押し出しながら、実はそういうクローン技術を悪用する悪徳企業との戦いという、どちらかと言うとサスペンス的な持ち味がメインになっているのですね。問題提起力を充分持っているネタを扱っておきながら、その内容はかなりお気楽な「娯楽」作品なのでした。



 ところで、前述のSF大作2作でスターダムにのし上がったシュワルツェネッガーですが、本作は近年の彼の作品が抱えている問題を何一つ解決していないというのも問題と言えば問題です。
 シュワルツェネッガーはかつて、ミスター・ユニバースに6回も輝いた肉体美の持ち主です。それに象徴されるように、彼はこれまで、「マッチョ」という方向性で常識を逸したキャラクタを多く演じて来ました。悪い言い方をすれば、彼はそのキャラクタの性質上、「筋肉バカ」として描かれるのを回避出来ない宿命にあるのです。
 彼自身どう思っているのかは別として、今の時代のアクション映画は「強靭な筋肉」だけでは成り立たなくなりつつあります。フィジカルな方向性で見せるのなら、ジャッキー・チェンやジェット・リーのような本質的に優れたスタント能力が要求されているのです。アクションはスタントマンに任せていいのなら、シュワほどにマッチョである必要はありません。ブルース・ウィリスが「ダイハード」シリーズで演じたように、筋力ではるかにシュワに劣っていようともタフなヒーローは充分に成立するのです。逆に言えば、シュワほどの筋力があると「絶体絶命的な危機」がそういう危険なものに見えないという欠点すら持っているのです(笑)
 しかも、シュワルツェネッガーはアクションヒーローを演じるにはもはや高齢です。前作「エンド・オブ・デイズ」でも本作「シックスデイ」でも、ついにその筋肉を晒す描写がありませんでした。
 かくしてシュワは、そのマッチョぶりを持て余したまま、現代的な脆弱な等身大のヒーローを演じなければならないというジレンマを抱えているのです。残念ながら、アカデミー賞に手が届くような演技力の存在は証明されていません。政治家としてやっていけるぐらいのネームバリューはあるでしょうが、それプラス演技力のあるアクション俳優は他にもいるでしょう(政界進出が可能かどうかはさておき)。前述のブルース・ウィリスは「シックス・センス」などで演技派としての側面にも挑戦していますし、それなりの評価も得ています(そのはずです)。
 結局、彼の主演映画はそのネームバリューを活かしつつ、多額の制作費をつぎ込む事で大作映画としてのボリューム効果を狙うしかないのでしょう。皮肉な事に、大作として大きく取り上げられることで、彼の作品は常に彼自身のアクションスターとしての資質を問われる試金石のような役割を果たしてしまっているのです。決して本作「シックスデイ」がアクション映画として素性が悪いと言っているわけではないのですが、「アクションスター・シュワルツェネッガー」として求められているのは、こんなものではないハズ……と僕は考えますけど、いかがでしょうか?



 ところで、この映画にはクローンという事でシュワが二人登場します。あいにく二人が戦ったりとかいう展開にはならないんですけど、かつてジェームズ・キャメロンが「ターミネーター2」を撮る時、最初に考えていたのがT-800の同型2機によるバトル……つまりシュワの2役でした。当時は今ほどCGによる合成技術が発達していなかったために、ボツになったのですが……。そういう意味では、その雪辱戦をこの映画でやって見ても面白かったんじゃないかな、という気もしないでもないです、ハイ(笑)



おすすめ度:☆☆☆(ま、なんも考えなければこれはこれで楽しめるハズ)






2001.1.4 たましいの歌声



「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

監督:ラース・フォン・トリアー
主演・音楽:ビョーク
主演:カトリーヌ・ドヌーブ、デビッド・モース

鑑賞日:2000.12.31
公式サイト


※ちょいとネタバレを含んでいます。注意!※


 ビョーク主演。なんとミュージカルであります。
 トリッキーな映像美で知られるラース・フォン・トリアーですが、本作はドキュメンタリー風の手持ちカメラとデジタルビデオで撮影されており、映像上のトリックはほぼ皆無です。通常のドラマ・シーンをフィルムで、主人公セルマの夢想であるミュージカルシーンをデジタルビデオで撮り分けているんですね。
 なぜデジタルビデオかと言えば、ミュージカルシーンがロケーションで撮られているから。工場など、クレーンカメラなどを使えないようなシーンで縦横無尽のカット割をするためなんですけど、屋外のシーンでもやっぱりデジタルビデオです。映像に整合性を持たせるためでしょうか……。
 いや、もう一つ理由があります。それは、ミュージカル・シーンの存在意義です。
 作中のミュージカルシーンは、ほぼすべて主人公セルマの「幻想」――はっきり言ってしまえば妄想なのです。だから、これらのシーンは現実のシーンと比べてやたらカラフルです。フィルムで撮影された現実シーンは色調を抑えたモノトーンのような色使いですが、空想のシーンはやたら色がくっきりと鮮やかになっており、現実と空想が、一目ではっきりと区別出来るようになっているのです。
 肝心のミュージカルシーンですが……ビョークの歌唱力もあいまって、楽曲はホント素晴らしいです。劇場の売店にサントラ盤が置いてあれば、飛ぶように売れるんじゃないでしょうか(笑) けれど、ミュージカルを見慣れない今時の映画ファンには、それらのシーンそのものは随分と寒いシーンに見えるんじゃないかな、と要らない心配をしてしまいます。「突然意味もなく歌い踊り出す」というリアリティの欠如、そういう「欠点」が如実に表れているんですね。それがゆえに、「映画=リアリズム」に慣らされた今時の観客の目には、相当な違和感を持って写っているハズです。
 しかし、そう見えて当然と言えるかも知れません。何せ、それらのミュージカルシーンはほぼすべて主人公の空想なのです。空想であるがゆえに、非現実的なのは当たり前なのではないでしょうか。
 現実のドラマシーンも、実に見事です。セルマが視覚を失い、泥棒の濡れ衣を着せられ、刑務所へ……息子を溺愛するあまりに心を閉ざした彼女、そんな彼女を待ち受ける現実は非常に重く、辛いものです。ドキュメンタリータッチのその映像は、「現実」の持つその重さを、圧倒的な迫力・リアリティでもって伝えてくれます。それがゆえに、「非現実的」なミュージカルシーンはますます浮いていくのです。
 ……ところが、最後の最後になって彼女が歌い出すその歌、その一曲だけは、極彩色の幻想シーンにはならないのです。モノトーンに近い渇いた映像で語られるそのラストシーン、この歌だけはまさに現実なのです。
 非現実が、現実を浸食する瞬間……。「リアリティ」(現実)を持って「大ウソ」(非現実)を語る、それはまさに「映画」の持つマジックです。現実が非現実を侵食する事で、「現実」と「非現実」が見事に乖離していたこの映画の中で、初めてそのマジックが実現するわけです。そしてその瞬間に、映画は実に衝撃的なラストを迎えるのですが……。



 ……とまあそれはそれとして、例の手持ちカメラですけど、前から4列目で鑑賞していたASDには、「ブレアウィッチ」なみに船酔い必至のシロモノでした(笑) これから見るという方はなるべく後ろの方で見ましょう(笑)



おすすめ度:☆☆☆





2001.1.4 男のロマン



「スペースカウボーイ」

監督・主演:クリント・イーストウッド
主演:トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナー

鑑賞日:2000.12.14
公式サイト


 ぶっちゃけた話、年寄り版「アルマゲドン」です(笑)
 なかなか興味深いのは、こういうSFX大作を撮ったのが実はイーストウッド自身だと言う事でしょうか。これは結構スゴイですよ(笑)
 予告の雰囲気がモロにそうだったせいもあるんでしょうけど、一見アルマゲドンのパクリ&パロディに思えてくるのは仕方がないと思います(笑) しかしそこはやっぱりイーストウッド作品、単なるプログラムピクチャーには終わりません。過去に逃したチャンスをもう一度追いかける男たちの悲哀、そして熱いドラマが、やや渇いたタッチで、力強く描き込まれています。その辺りはまさにイーストウッド作品、といったところでしょうか。
 熱いドラマ、という意味では「アルマゲドン」のマイケル・ベイも負けてはいないんですけどね……彼の場合、どちらかと言うと男臭い世界、男のロマンに憧れている子供の視点……つまり、外から見上げているような視点に立っているのに対し、イーストウッドの場合はまさにそういう視点に憧れられている「男臭い世界」の住人そのものなのです。しかもそれを自慢するでもなく、「そんな大したものじゃない」と謙遜しながら、男臭い年寄りばかりツラを並べて、余裕の表情を浮かべております。年寄りがちょっとふざけて見せているような、そんな懐の深さ。そこまで含めて、まさに「男の映画」でありました。
 単純にSF物として見ても、かなりデキがいいです。イーストウッドが、というよりはまわりのスタッフが頑張ったんでしょうけど、科学考証も割としっかりとしていますし、衛星の回収シーンや帰還時のスペクタクルなど、そう言った科学的なリアリティが見せ場に直結しているのもグッドです。「アルマゲドン」ほど根性論に寄りすぎもせず、「ミッション・トゥ・マーズ」のように場当たり的にもなりすぎず、SF映画として素直に出来のいい映画だったのではないでしょうか。
 イーストウッドらしい落ち着いた大人のドラマと、イーストウッドらしからぬ派手なSFXエンタテインメントがいい感じでバランスを取っている、良作でした。


 どうでもいいんですけど、一つ気になる事と言えば70にもなろうというイーストウッドと肩を並べている、まだ50代のトミー・リー・ジョーンズの存在。違和感は確かにありませんけど、それはそれでどうかと思うんですけど……(笑)


おすすめ度:☆☆☆☆






2001.1.4 これも血まみれ(笑)


「タイタス」

監督:ジュリー・テイモア
主演:アンソニー・ホプキンス、ジェシカ・ラング

鑑賞日:2000.12.14
公式サイト


 シェークスピアです。どうでもいいんですけど、シェークスピアって何でこんなに喋りまくりなんでしょう(笑) 「ロミオ+ジュリエット」の時は多いに面食らったものですが、「恋に落ちたシェークスピア」を見れば大体慣れて来ます(笑) つまりは、この当時の演劇ってセリフだけで全部を語らなくちゃいけなかったわけですよね。そんなこんなで、「恋に落ちた〜」はシェークスピア入門としてぜひおススメです(笑)
 さて、「タイタス」です。しかしこれまた奇天烈な作品ですね(笑) 一応、舞台となるのは古代ローマなんですけど、クラシックな車が出てきたり、兵士がバイクを乗りまわしていたり、ハリボテのような(意図的だろうな、やっぱり)戦車が出てきたり。演説にマイクが出てきたり、挙げ句のはてにゲーセンまで出てきますし(飢狼伝説が出てきた!)。どう考えても古代ローマじゃないッスね(笑) 若き皇帝がヒトラーみたいなスタイルだという部分を見れば、ナチスドイツがモチーフなのかなあとも思いますが……。
 そもそも、戦争ごっこに興じる少年が古代ローマ世界に入り込んでいく導入からして意味不明です(笑) ま、冒頭&ラストの円形劇場のシーンで明らかなように、この作品にはリアリズムからあえて逸脱しようと試みている部分が多々見受けられます。史劇というよりは、異世界ファンタジーと言った方がいいかも知れません(笑)
 そもそも、シェークスピアの当時から、同時代の物語だったわけではありませんし、そういう意味では、舞台なんてどこでもいいのでしょう。当時のロンドン市民には、古代ローマも架空のファンタジーな国だったのかも知れません。
 むしろヘンにリアリズムを追求しない事で、史劇的なリアルさよりもいっそうドラマの方に重きが置かれているように見えます。時代がかった、やや自己陶酔気味なセリフの数々も、逆にドラマチックに聞こえてくるから不思議です。相当ボリュームのある作品ですが、演技の面でもあやしげなビジュアルの面でも見所は多く、なかなか飽きない作品に仕上がっていたと思います。
 しかし、グロい……(笑)


おすすめ度:☆☆☆(結構カルトな映画ですぜ(笑))






2001.1.4 良い事もしよう(笑)



「悪いことしましョ!」

監督・脚本:ハロルド・ライミス
主演:ブレンダン・フレイザー、エリザベス・ハーレー、フランシス・オコーナー

鑑賞日:2000.12.8
公式サイト


 ふう、久しぶりにどうコメントしていいのか分からん映画ですよ……(笑)
 この映画の見所はズバリ、ブレンダン・フレイザーの芸達者ぶりとエリザベス・ハーレーのコスプレ三昧です(笑) この2点が堪能できればこの映画は十分に楽しめると思います、ハイ。
 しかしブレンダン・フレイザー……すごいですな(笑) 「ハムナプトラ」の時は結構ヒーロー然としていたんですけど、本作でのダメ男ぶりは一体何なんでしょう(笑) さらに彼は、エリザベス・ハーレー演じる悪魔の誘惑にのって、7つの願い事を体験します。それに合わせて、彼もまさに七変化を見せてくれます(笑) 謎の麻薬ディーラー、バスケ選手、ダンディな作家、「世界一繊細な男」……ま、願い事自体金持ちになりたいとか有名になりたいとか結構ありきたりなんですけど、オチがいちいちしょーもないんですよね……(笑)
 も一つ見所は、エリザベス・ハーレーのコスプレ。魂をゲットするためにブレンダン・フレイザーをあの手この手で誘惑するとあって、いろんな姿に変身してくれます(笑)
 そんなこんなでかなりおバカな一作ですが、ラストは意外にしんみりというか、爽やかでした。必見! とは言いませんけど、まあ観て損はないかと……。


おすすめ度:☆☆(コメディが好きな人に)






2001.1.4 血まみれ(笑)



「BLOOD」

監督:北久保博之
声の出演:工藤夕貴

鑑賞日:2000.12.1
公式サイト


 素晴らしいです。とにかく、絵がべらぼうに美しいです。
 アニメの絵の素晴らしさを、よく「実写のようにリアル」などと言いますが、これにはちょいと語弊があります。と言うのは、アニメの絵というのは実写と違って実に無機質で、かつ異常なまでに清潔感があります。画を奇麗に仕上げていけばいくほど、その傾向が強くなる事を考えれば、「写実的」かどうかはちょっと疑問です。
 にも関わらず、この「BLOOD」は実に実写映画的な作品です。
 無論、無機質でクリーンなタッチはアニメならではのものです。しかしながら、いわゆる「アニメちっく」なデザインは極力廃されています。それに加えて本作では、カメラワークや空気感など、これまでのアニメでは「無かった」事になっている部分に徹底的にこだわっています。
 映像は常にソフトフォーカス気味、色味も薄くまるでモノクロ映画のような印象すらあります。そんな映像で強調されているのは「照明」。光の強弱が実にはっきりと描かれています。セル画をそのまま撮影しただけでは出現する事のない「光源」を、わざわざ意識的に画に描き現しているわけですね。光源が移動するようなカットも少なくないです。
 さらに、この作品では多くの「背景」が3DのCGイメージで描き出されています。本作ではクレーンカメラや空撮と言った、実写的なカメラワークが多用されています。手持ちカメラのブレなども、見事に再現されています。それらは平板なセル画に平板な一枚絵の背景、という従来の技法ではまず出す事の出来ない効果で、これを出すためにわざわざ背景を全部CGIで描いていたりするわけです。
 密度の高い、圧巻の映像美。では、そんな映像で語られるストーリーとは、一体どんなものでしょうか。
 街を徘徊する謎の怪物。その怪物を狩る謎の組織と一人の少女――作品で語られるのは、両者の壮絶なバトル、ただそれだけなのです。上映時間はなんと僅か48分! なんと1時間もないのです。劇場映画と言うよりは、一昔前の単発ビデオ作品と言った趣きです。
 それで果たして映画と呼べるのか? という疑問もないわけではないですが……ま、良いんじゃないでしょうか。設定も実にシンプルですし、ネタ、ストーリー、キャラ造形ともにコミックやアニメで散々語り尽くされてきたような内容です。そう言った作品を、ただ映像の迫力だけで一気に押し切ってしまおうと言うのですから、なんと大胆な映画なのでしょう(笑)
 もちろん、尺が短いのは予算や手間などの制作上の都合かもしれませんが(笑)、映像の持つ訴求力アップのために、ムダなシーンはすべて剥ぎ取ってあるのだという解釈も出来なくはありません。むしろ、変な中だるみがなくてよかったのかも知れません。
 ところでこの作品、主演が何故か工藤夕貴です。この絵柄で甘ったるいアイドル声優の声で喋られても確かに困るんですけど(笑)、ジブリ作品といい非声優の一般の役者さんを起用した作品は、必ずと言っていいほど「声」の印象が希薄なんですよね(笑) 国際配給を狙った作品だからと言って、安易に「国際派」の彼女を起用したんじゃないかとちょっと心配だったんですけど、結構いいセン行ってました。実はこの作品、セリフは英語と日本語のチャンポンで、実際は大半が英語なんですよね。そんなこんなで、英語のセリフがめちゃくちゃ自然なのにちょっと感心してしまいました。ただし、日本語の演技がイマイチっていうのはどうかと思ったんですけど……(笑)


おすすめ度:☆☆☆☆(でもやっぱり48分は物足りない……)



 


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