-cinema diary-

映画日記


 

2001.1.24 ウソに隠されているモノ

「ホワット・ライズ・ビニース」

監督:ロバート・ゼメキス
主演:ミッシェル・ファイファー、ハリソン・フォード

鑑賞日:2001.1.2



 ノーマンとその妻クレアは、一人娘を大学に送り出して夫婦水いらずの生活が始まったばかり。彼らの新しい隣人はちょっと風がわりな夫婦者だった。ある日クレアが目にしたのは、庭先で泣いている奥さんの姿。そしてとある雨の夜、ダンナが大きな「荷物」を持ち出して……それ以来、奥さんの姿が見えない。次第にクレアの周囲では、風がわりな出来事が起こるようになって……。


 ロバート・ゼメキス監督初のサスペンス映画。……という触れ込みですが、実際には単なるサスペンスには終わっていません。というか、単なるサスペンスなのは最初のうちだけで、徐々に「シックスセンス」ばりの超自然スリラーに変容していきます。
 さらに、謎が明らかになっていくに連れ正調サスペンスらしく復帰していくのですが、後半にはサイコスリラー的なノリになり、そしてラストでは……。とにかく、ジャンル不詳というか、展開を追うごとにジャンルがころころと変わっていく、忙しい映画でありました(笑)
 一貫して追求されているのは「怖さ」。騒々しいバイオレンスとも猟奇性とも無縁のまま、ただひたすら「静かな恐怖」を追求しているのです。なめるようなカメラワーク、神経を逆撫でる音楽・効果音、ちらりと映る「何か」……邦画の「リング」あたりが似たような怖さを出していますが、あちらは畳のじめっとした雰囲気、こちらは洋館の不気味さが印象的でした。つうか、怖いの何のって(笑)
 内容的にはかなりヒッチコックを意識しているようであります。ノーマンという名前は「サイコ」のノーマン・ベイツの引用ですし、ブロンドの女優ばかりヒロインに起用していた彼に倣って、金髪のミッシェル・ファイファーを起用しています(笑) ま、ただヒッチコック的なばかりではなく、隣の家の様子をちらちらと覗き見る前半の展開はなんとなくブライアン・デ・パルマ的とも言えますね(笑) 前述のように超自然描写が絡んでくると「シックス・センス」的になっていきますが、むしろそういう超自然的なものの方が生き生きと描写されているあたり、ゼメキスだなあと思いました(笑)
 古風なサスペンス映画らしい落ち着いた雰囲気は最後までずっと続いていきますが、後半、犯人との対決シーンでのダイナミックなカメラワークなどはかなり大胆。目の高さから足元まですーっと下がっていったカメラが、そのまんま床より下に回り込んで倒れている人物を見上げていたりとか、つり橋の上を自動車で疾走する逃走シーンで、ぐるぐる回り込むカメラワークを実現するために橋とクルマを全部CGで描いてしまったりとか……(そんなSFX大作じゃないっつーの)。


 あと……ネタバレになりますので詳細には描きませんが、ハリソン・フォードの演技というか役回りにも注目。前半〜中盤に至るまで「理想の良き夫」をひたすら凡庸に演じている彼ですが、なんでそんなつまらない演技をしているのかは後半で明らかになってきます。これは見てのお楽しみ(笑)



オススメ度:☆☆☆☆