-cinema diary-

9月の映画日記


 

2001.9.1 とらとらとら

「パールハーバー」

製作:ジェリー・ブラッカイマー
監督:マイケル・ベイ
主演:ベン・アフレック、ジョシュ・ハートネット、ケイト・ベッキンセール、他

鑑賞日:2001.8.24

※注意! ネタバレを含みます!※


 1941年。世界大戦が迫りつつある中、混迷のヨーロッパの情勢を後目に、アメリカは未だ参戦の意志を保留していた。
 アメリカ軍のパイロットであるレイフ(ベン・アフレック)とダニー(ジョシュ・ハートネット)は幼い頃からの親友同士。だが、レイフは一人実戦に志願し、恋人である看護婦イヴリン(ケイト・ベッキンセール)とも離れ離れになって、ヨーロッパの戦場に身を投じる。ダニーとイヴリンはヨーロッパ戦線から遠く離れたハワイ・真珠湾に配属され、平和な日々を送っていた。そんな中、太平洋上では日本の艦隊が不穏な動きを見せていた……。



 というわけで、「パールハーバー」です。
 しかしこの映画、何かと批判的な意見多そうですよね(笑) しかも映画も見ないで、真珠湾攻撃で日本人が悪役だからイカン、という意見が大半で閉口してしまいます。
 確かにアメリカの映画はアメリカの正義を押し売りする作品が多くてまいってしまうのも事実なのですが、少なくともアメリカ人のクリエイターが自国を是正的に描くのは、そんなに異常でしょうか? 少なくとも真珠湾攻撃そのものはひとつの歴史事実に過ぎないわけで……まあ、そういう難しい話はこちらを参考にしていただくとして(手前ミソだなあ)、ここではあくまでも映画の内容に関してのみ、うだうだと語っていきたいと思います(笑)



 で、実際見てみての率直な感想ですが……一言で言えば、何を言いたいのかよく分からない映画でありました(爆)
 確かに、一番の見せ場である真珠湾襲撃シーンはものすごい大迫力であります。CGてんこもりの予告篇とブラッカイマー/マイケル・ベイの名前を見て、「これはきっとすごいバカな映画になるに違いないっ!!」と確信したASDの予感は間違ってはいなかったようです(笑)
 しかし……その他の部分が、これがもう……(爆)



 まず第一に、この映画は戦争映画ではありません。
 この映画を戦争映画と言い切るには、「風と共に去りぬ」を南北戦争を描いた戦争映画だ、と言い切るくらいムチャな思い切りが必要です(笑)
 いや確かに、戦争映画の名にふさわしい作品ではあると思うんですよ? 問題の真珠湾攻撃シーンではものすごい大迫力のスペクタクルが展開されていますし、精鋭部隊が反撃ミッションに赴く後半部分の展開もいかにも戦争映画然としていますが、ストーリーの基本になるのはあくまでも「戦争に翻弄される3人の男女の物語」なんですね(笑)
 ですので、実際はどんなに戦争映画っぽく盛り上げようとも、例えそれが本末転倒的に最大の見せ場になっていても、すべては恋愛を盛り上げる添え物に過ぎないわけです。
 ならば……ねえ。少なくとも恋愛物として深みのあるドラマが展開されていて欲しいなあ、という気がするのですけど……。  上にもあらすじ書いてますが、もう少し詳細にストーリーを追いかけてみます(ネタバレになりますので、未見の方はご注意)。  単なる飛行機乗りではなく戦闘機乗りとして実戦に出る事に憧れるレイフ(ベン・アフレック)。彼は同僚であり親友であるダニー(ジョシュ・ハートネット)を差しおいて、自ら志願して戦場に赴きます。彼には、軍の看護婦である恋人イヴリン(ケイト・ベッキンセール)がいますが、結局彼女とも別れて、遠くヨーロッパの地に赴くことに。
 けれどそこには、厳しい現実が待っていたのでした。ナチスドイツとイギリスとの激しい制空権争い。毎日のように戦友が死んでいく中、レイフは恋人の事を思いながらひたすらに飛び続けます。しかし、彼の乗る機体はついに撃墜され、死亡報告がイヴリンの元にもたらされるのです。
 彼女はダニーとともに、ハワイ・真珠湾に配属になっていました。恋人の死に悲嘆にくれるイヴリンと親友の死にショックを受けるダニー。二人はお互いを慰め合ううちに、次第に惹かれていくのでありました。
 うーん、結構ベタな展開……。
 ところが、死んだと思われたレイフはなんと生きていたのです! 遺された二人がよろしくやっている中、不意に現れるレイフ。当然ながら、三人の人間関係は一気に気まずくなるのでありました。レイフは自分を裏切った二人を呪いつつヤケ酒をあおり、ダニーは荒れる元親友に手を焼きつつ、イヴリンは二人の間で揺れ動くのでした。
 つうか、君らも少しヒネリのあるリアクションをしてくれよ……(笑)
 もちろん娯楽映画である以上展開がアリガチだからと言って罪ではないのですが、ありがちなシチュエーションをありがちに描くのはやや犯罪です(笑) まあ、それはそれとして……3人はこの最悪な状況を、どう乗り越えようとするのでしょうか……。
 ……ん? 日本軍の動向があやしいぞ……?
 というわけで、この日は運命の12月7日。三者三様の思いに揺れる中、そんな状況をぶち破るかのように、ゼロ戦の集団が飛来するのでありました!
 うわー、大変だ! 三角関係のメロドラマなんかやってる場合じゃないぞ!(爆)
 ……というわけで、戦艦がバンバン撃沈されていく中、レイフとダニーは反撃のために、何とか戦闘機に乗り込もうとします。しかし、滑走路や格納庫は当然ながら敵の格好の攻撃目標……。
 そんなこんなで、映画はついさっきまでやってたメロドラマをぽいっと放り出して、レイフ&ダニー、そのパイロット仲間達が日本軍に対して徹底抗戦する、戦争アクション巨編にさまがわりするのでありました。全員で一致団結し、機銃をうちまくりながら、何とか戦闘機を離陸させて……素晴らしいチームワークで、非道なる日本軍に一矢報いるのでありました。
 ん? チームワーク……? 君達、さっきまでケンカしていたはずじゃあ……?
 というわけで、戦闘をきっかけに一応和解した二人は、ここでの抗戦の戦果が評価され、反撃のための極秘作戦に抜擢されます。  その作戦とは……。真珠湾攻撃はその戦闘によるダメージ以上に、奇襲を受けたというショックが大きかった。よって、そのお返しとして、日本にも相応のショックを与えなければ。そうだ、そっちが真珠湾ならば、こっちは東京を空襲してやるぜ!  ……ってアンタら、子供のケンカじゃあるまいし……(爆)
 とまあ、結局映画の後半は、選抜された若きパイロット達の、この過酷なミッションへの挑戦が描かれていきます。
 当時のアメリカ軍の機体は、離陸のための滑走距離が長くて、空母上での離着陸は無理とされていました。しかし、この反撃ミッションに挑む彼らは、機体を徹底的に軽量化し、さらには血のにじむような特訓の結果、見事にこれを実現させるのでした。
 結果、爆撃機からは銃弾を避ける装甲板はおろか、機銃すら軽量化のために撤去されるありさま。
 そしてそんなミッションに挑むのはわずか十数機の爆撃機のみ。しかも航続距離の都合上、帰還の事は全く考えていないのです!  なんと過酷な作戦! 男達は悲壮感を漂わせながら、決死の作戦に身を投じていくのでありました……って、これってホントに史実通りなんですか? なんかギモン……。
(どうもホントらしいんですけど、やっぱウソくさいな……)
 ああ、そう言えば例の三角関係はどうなっちゃったんでしょうか。男二人は作戦に参加するからアレとして、恋人イヴリンの存在が遠い彼方へ……三角関係を整理するための都合の良い展開にも、見えないこともないですなあ……。 


   *   *   *


 ……とまあ、ここまでの解説ではかなりどうしようもない内容にしか見えませんので(爆)、もうちょっとツッコんで見ていきましょう。
 そもそも、この映画は何を描こうとしていたんでしょうか。
 プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、真珠湾攻撃の生き残りである元軍人達から奇襲当日の様子を聞き、このヒサンな出来事を後世に伝えなければ! と思ったそうであります。
 つまり、「真珠湾の悲惨さを後世に伝えるため」の映画がこの「パールハーバー」だったわけですね。
 それが「真珠湾攻撃=日本が悪」に直結するわけではありませんが、アメリカ側に起きた悲劇を強調すれば、これが天災ではない以上は結果的に日本が悪であるように扱われる傾向は否定できないと思います。……これが、一部の日本人にこの作品がバッシングされる理由なのでしょう。
 無論、ブラッカイマーの意図として日本バッシングを目的にしていたのかどうかは定かではありません。していたようにも解釈出来ますし、ただ単に世の中にはこれで気分悪い思いをする人(=日本人)がいるのだという事に頭が回らなかっただけかも知れません(笑)
 ただし、あからさまにマンガみたいな悪役描写をすると映画のリアリティ自体が危うくなりますし(笑)、たとえバカ映画コンビとは言え今回は真面目な歴史ものですからねえ……。
 ですので、さほど日本人の扱いが酷すぎるという事は無かったと、ASDは思いました。
 多少穿った見方をすれば、ジェリー・ブラッカイマーはかつてアメリカ本国で興行的にずっこけた「アルマゲドン」を日本市場に救ってもらったという前科がありますし(笑・日本では大ヒット作ですがアメリカではそこそこだったようです)、それを考えれば純粋に「日本憎し」の一念で押していくわけにはいかないんですよね(爆)
 そういう意味では、お話を「風と共に去りぬ」風の大河ロマンス映画にしたてあげてしまおう! という着想は悪くなかったと思います。映画本編ではちょっと勘違いした形で語られてますが、この真珠湾奇襲という事件は沢山の人が死んだ惨劇であると同時に、ヨーロッパの戦況に知らぬ存ぜぬを決め込んでいたアメリカに参戦を促すきっかけになる事件でもありました。そういう意味では、特に敵国である日本の事に触れなくても、アメリカ国内の問題として描き切る事も可能なわけですね。
 キューバ危機を扱った「13デイズ」という映画では、史実的な忠実さをこころがけつつも、アメリカ国外の動向を伏せることで、相手国の意図を掴めずに右往左往する、アメリカ内部の混乱というか恐慌というか、そういう雰囲気を描き出す事に成功していました。
 この路線で、「パールハーバー」もうまく行けば……まあ、そう思った事でしょうなあ(笑)
 ちなみに脚本を手掛けたのはランダル・ウォレス。メル・ギブソン監督・主演の歴史大作「ブレイブハート」のシナリオを手掛け、ディカプリオ主演の「仮面の男」では脚本の他監督までつとめています。このテの歴史ものはお手のもの……といったところでしょうか。
 第2次大戦を舞台にした大作ロマンスものと言えば、アカデミー賞を取った「イングリッシュ・ペイシェント」とか、サンドラ・ブロック主演の若き日のヘミングウェイを描いた作品とか(うわ、タイトル失念……)、まあ色々無いこともないですので。
 し・か・し!
 考えてもみりゃ、監督は誰でもない、あのマイケル・ベイなのです!(爆) 「ザ・ロック」「アルマゲドン」と男くさい(そしてウソくさい)アクション大作ばかり撮ってきた彼が、そんな甘いロマンスだの歴史ものだのをきっちりと描くことが出来るんでしょうか?



 ……繰り返しになりますが、確かにILMが手掛けたCGてんこもりの真珠湾攻撃シーンはものすごい大迫力でありました。こればっかりはもう劇場の大画面、大音量でぜひとも鑑賞してもらいたい、手に汗握る屈指の名シーンであります。
 その点は、「アルマゲドン」「ザ・ロック」を手掛けたマイケル・ベイだけあって、期待通りの仕上がりでありました。
 しかし、その他のシーンが……。
 思った通り、前半のメロドラマのシーンはとにかくヘタレの一言です。まあ見ていて苦痛とまでは言いませんが、展開があまりにもベタ過ぎますし……2度以上見るのは苦痛かも知れませんなあ。
 ベン・アフレックも単なるつまんない2枚目に徹していて面白みがまるでありませんし、ケイト・ベッキンセール演じるヒロインは非常に気の映りやすい人で、男性の観客にはあんまりいいふうには見えませんでしたし(爆)
 やはり、そういうメロドラマはマイケル・ベイの作風じゃないんでしょうな(笑) 彼が得意とするのは、やはり男くさいアクションものなのです。
 彼は過去の作品において、繰り返し熱い男のドラマを描き続けてきました。彼らは常に無謀とも言える、不可能な事柄に挑み、そして時には命を落としていきます。自らの信念のためならば、マイケル・ベイの描く男達は何のためらいもなく、命をポイポイと捨てる事さえいとわないのです。
 そういう、「信念に殉ずる男」の姿を、悲壮感たっぷりに、ダイナミックかつおセンチに描く……それがマイケル・ベイ作品なのです。
 例えば「ザ・ロック」では、エド・ハリス演じる将校は無謀とも言えるテロ行為に及びますし、それに向かっていく海兵隊達も、信念・理念のためにバタバタと倒れていくのでありました。
 さらに「アルマゲドン」になるともっと露骨で(笑)、巨大隕石から地球を救うために、命知らずの石油採掘屋達がそれこそバタバタと死んでいくわけです。ブルース・ウィリスの自己犠牲的活躍に至ってはもう何もいうことないです(爆)
 要するに彼は、男くささの醸し出すヒロイズムではなく、そういう悲壮さが醸し出すセンチメンタリズムを追求しているのではないか、とも思うのです。そう、それは一種の、彼なりの「ファンタジー」なのではないか、という気がします。
 しかし……「パールハーバー」は戦争大作でメロドラマですから、そういうファンタジーが入り込む余地は、一見無いように見えます。事実、日本が攻めてくるまでの前半部分はマイケル・ベイらしさはほとんど感じられませんし。
 ところが、これがいざ日本軍の攻撃が始まると、途端に演出が生き生きとしてくるのですね(爆)
 いうまでもなく、このシーンこそ特撮的に最大の見せ場であります。それまで平和な日常を送りながら青春を謳歌していた若者達は、突如として一致団結して、敵に立ち向かっていく事を強要されます。
 要するにこのシーンは、そういう若者達が、「侵略者から国を守る」という、「殉ずるべき信念」を見出すためのシーンなのですね。「国を守る」というのは実に右翼的発想で、中には毛嫌いする人も多いと思いますが……。やはりここで強調されるのは、立ち上がった若者達をどこか英雄視する視点なんですよねえ。逆に、ルーズベルト大統領なんか逆にものすごいエゴイスティックな人物として描かれていますし、イデオロギー的な見方をするとこの作品、かなり支離滅裂なんじゃないかという気がします(笑)  ともあれ、「信念」を見出した若者達は、いよいよ東京空襲という、不可能ミッションに挑んでいくわけです。先述のように味方はわずか数十機、装甲も武器も持たない、ただ爆弾を抱えて、落として、そして帰ってこない……そんな無謀なミッションなのです。
 そんな作戦において「パールハーバーの仕返しだ!」と息巻くのはジョン・ヴォイト演じるルーズベルト大統領。彼の「アメリカの正義を示す」云々というエラソウな演説をバックに、若者達は飛び立っていきます。
 まるで撃ち落してくださいと言わんばかりのムチャな作戦。「いざとなったら体当たりしろ」という恐ろしい指示まで下っているのです。アメリカ人なのにカミカゼアタックですか!(爆)
 そう、これこそマイケル・ベイ好みの、悲壮感あふれるシチュエーションではありませんか。彼はこのシーンにて、その悲壮さを思いっきりドラマチックに盛り上げてくれます。
 先述のルーズベルト大統領の演説も、政治的な見方をすれば「アメリカ流正義の押し売り」にしか聞こえませんが、考えてみりゃマイケル・ベイ作品では「アルマゲドン」でも似たような演説シーンがありました。
 そう、あれはポリティカルなメッセージではないのです。あれは、死地に赴く勇者達を鼓舞するためのメッセージなのですよ!(笑)
 そして物語は悲壮感あふれるシーンを勇壮に描きつつ、二人の若者の友情を巡る物語として帰結するのでありました。考えてみりゃ、冒頭には子供時代の彼らの姿が描かれています。一見大河ロマンスもののように見えた本作は、実は男達の美しい友情と美しい信念を描いた、マイケル・ベイお得意の「男のロマン」を充足させる映画だったのでした。
 そうか、そういう事だったのか!(笑)


   *   *   *


 一大戦争スペクタクルを描こうとしたブラッカイマー。
 「風と共に去りぬ」ばりの大河ロマンス・エンタテインメントを展開しようとしたランダル・ウォレス。
 そして、自らのもっとも得意とする「男のロマン」を高らかに謡い上げたマイケル・ベイ。
 いうなればこの「パールハーバー」という映画は、この三者三様の、バラバラのもくろみがそれぞれに達成された、何ともちぐはぐな作品になっているわけですよ(笑)
 前半のメロドラマは、完成度はともあれ「大河ロマンス」にふさわしい展開になっていたと思います。
 中盤の真珠湾攻撃シーンは、ブラッカイマーの意図する戦争スペクタクルとして、実に満足のいくシロモノに仕上がっていたのではないでしょうか。彼のもくろみである「あの空襲の悲惨さ」――ある意味では、日本軍の卑劣な行いの悲惨さも――が、充分描けていたのではないでしょうか。
 そして後半は、マイケル・ベイお得意の、信念に殉ずる男達の悲壮感たっぷりのドラマが展開されていました。前半〜中盤の流れの読み解き方次第では彼の意図は充分に伝わらないかも知れないかも知れませんが……。
 ともあれ、上に上げた3つの要素は、確かに3つともこの映画の中にきっちりと描き出されています。
 そしてそれら3つは……まあ、ものの見事に噛み合っていないんですな、これが(笑)
 いうなれば、前半は恋愛映画、中盤は戦争映画、後半はアクションドラマ、という風に、3時間の映画が見事に1時間ずつ別の映画になっている、というふうにも言えるかも知れません。
 「一貫性の無い映画」というのも世の中珍しくないでしょうが、この映画の場合一貫性どころか、3つのテーマ?にそれぞれそこそこ奇麗に収束してしまっている分、余計にややこしいと言えるかも知れません(笑)
 冒頭に書いたように、大まかなところでの枠組は、あくまでも「恋愛映画」でしかないわけです。しかしながらそれもあくまで方便に過ぎなくって……。それを方便に戦争の苛烈さを描こうにも「プライベートライアン」「シン・レッド・ライン」あたりの生々しさには到底及んでませんし、さらにそれを方便としてマイケル・ベイが好きなような事をやってしまっている、というわけで……そういう風に説明するとホントちぐはぐな映画に聞こえますよね(笑)
 そういう意味で、この映画は「何が言いたいのか分からない」映画に見えてしまう、という事なのでありました。
 まあ娯楽大作ですから、そんな難しい見方をする必要もないのかも知れませんけどねえ……。フレッシュな若手俳優の魅力を堪能するのもアリでしょう。甘ったるいベタな青春ドラマがお好きな方には前半も決して退屈ではないでしょうし。
 脇役に目を向ければ、「プライベート・ライアン」で古参軍曹を演じていたトム・サイズモアがまんま同じような面構えで登場しているのがなんかおかしかったです(笑・つうか歩兵が整備兵に変わっただけでキャラはまったく同じ)
 また、日本側の描写もものすごい勘違いちっくで結構笑えます(笑) 日本兵士の演技も結構勘違いちっくではありますが、セリフがきちんとしたイントネーションに吹き替えられているので(リップシンクロしてないのでバレバレ……(笑))、雰囲気的に萎える事もないでしょう。本編で名前は出てきませんけど日本側の司令官は山本五十六だそうで……彼が空母で真珠湾に出向いているのは史実に反するウソだそうであります(笑)
 戦闘シーンの生々しさが不足、とは申しましたが臨場感はタップリでております。バンバン沈む戦艦、逃げまどう兵士達……プチ「タイタニック」状態でありました(爆)
 また、メインのお話にはまったく絡んでこないエピソードでは有りますが、黒人で初めて銀星勲章を授与されたという兵士のお話は何気にグッと来るいいエピソードでありました。まあ、これに関しては黒人は平等に描いて日本人はバッシングするのか、と口さがない意見も出てましたが(笑)
 この黒人兵士を演じるのは「ザ・エージェント」でアカデミー主演男優賞をとったキューバ・グッディングJr。物語本筋にまったく絡まないのが非常に勿体ないカンジでした。まあ、こっちの話は実話で本筋の人間達はフィクションの存在ですから、絡ませようがないのも事実なんですけども(笑)
 もちろんSFXが見所なのはいうまでもありません。大作映画らしい、娯楽度の高い作品でしたが……やっぱり、焦点が曖昧なのは残念なところでありました。
 例えば映画のラストでは、今も真珠湾の海底に沈む戦艦アリゾナの事にも言及されていて、確かに「戦争の悲惨さ」も積極的にアピールされていたりもしています。
(余談ですが、ここのくだりではどうしてもえひめ丸の事を思い出してしまいますなあ……)
 しかしながら、このテの戦争映画でここまでアメリカ側に偏った描写をしておきながら、ありがちな「この映画を戦争の犠牲者に捧げる」みたいな献辞が一切ないのもなんかスッキリしないものがあります。
 これだったらまだ連合軍側の兵士に捧げられていた「U−571」あたりの方が、クリエイターの意図が明確で好ましいのではないかという気がします。
(ちなみに「プライベート・ライアン」も献辞は無しでした)
 確かに、ASDだって腐っても日本人ですから、日本人が悪意をもって描かれていればフクザツな気分にもなります。とは言え……むしろ、お金をかけてここまで主張の曖昧な映画しか作れないのなら、日本バッシングなら日本バッシングでいいんで、もっと明確に、一貫した主張を展開して欲しかったと思うんですけど……。
 そんなこんなで……色々バッシングを受けている本作ですが、ASD的には、それ以前にクオリティ的な側面から出直してこい!と言いたくなる一作でした(笑)



 そんな事を言っていたら、何でもアメリカ本国ではシーンを大幅追加した「完全版」がDVDにてリリースされるそうです。海外市場を意識してメロドラマになり過ぎたのを、戦争映画らしい方向に修正するんだとか……。
 ちなみに発売日は12月7日です。……そこまでやるか、アンタら。
(まあ、クリスマス商戦向け、という事なんでしょうが……)



おすすめ度:☆☆(決してボロクソに酷いというわけではないのですが……)
SFXシーンのクオリティ:☆☆☆☆(そこだけ見て帰るのも良し(笑))



 


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