-cinema diary-

11月の映画日記


 

2001.11.6 ネタバレ

「ファイナルファンタジー」

原作・監督・製作:坂口 博信
脚本:アル・ライナー
CG制作:スクウェア・ピクチャーズ
声の出演:ミン・ナ、アレック・ボールドウィン、スティーブ・ブシェーミ、ビング・ライムス、他

鑑賞日:2001.10.1

公式サイト:http://www.ff-movie.net/



 2065年、地球。隕石とともに飛来した"ファントム"と呼ばれる地球外生命体により、人類は滅亡の危機に晒されていた。
 僅かに残された都市を守るために、軍は武力でもってファントムを制圧しようとする。しかし、科学者アキは武力に頼らずに絶滅の危機に瀕した地球を救う方法を模索していた。そんな彼女が、繰り返し見る不思議な夢……ファントムで埋め尽くされた大地に立つアキ。その夢の意味するところとは? 彼女は地球を、人類を救えるのか……?


    *    *    *


 色々言われておりました「ファイナルファンタジー」の劇場版であります。57億円を投じた超大作、全米で拡大公開して大コケ……などなど色々話題の尽きない本作ですが、はてさてどんなものやら(笑)



 平たく言い切ってしまえば、本作は「エイリアン」っぽいB級モンスターアクションという事になるかと思います(笑) が、そうは言ってもアクションやスリラーがメインの見所というわけではありません。むしろラブ&ピース&エコロジーという恥ずかしげなメッセージ性をストレートに訴求した、ミもフタもない作品になっておりました……。
 上映時間は一応2時間ほどということで、それなりにボリュームのある映画ではありますが……なんか小ぢんまりとまとまった、佳作級の作品だったと思います。
 おそらくは一番の見所である、フルCGの出来映えですが……話だけ聞いてると確かに壮絶ですけどね(笑) 髪の毛や肌の質感を再現するために専用のソフトを作ったとか、炎などの自然物を実写素材の加工ではなく1から描いてリアルに表現しているとか、まあ色々言われてはいるんですが……単にCGアニメとしてみれば、FFXなどのムービーシーンと印象としてさほど大きな違いはないと思います。
 要するに、技術的にはさておき、「きれいな映像で圧倒する」という手法的な部分においては、ゲームの方である程度完成されているんですよね。
 むしろすごいのは、ゲームではどちらかというと「一点豪華」的に使われているそういった映像を、そのまま2時間の映画にしてしまっている事でしょうか。日本製のフルCG映画では「A・LI・CE」という作品が前にありましたが(先日WOWOWで再放送されるまで存在をすっかり忘れていました(笑))あちらが何だかゲームのCGムービーを単に切って繋いだだけのような印象で、90分の鑑賞に耐えるようなテンポを醸し出せていなかったのに対し、FFの方は2時間の映画としてごく自然に鑑賞出来ました。その点は評価してもいいかも知れません。
 ひたすらリアル、リアルと言われている映像ですが……人物描写など確かにリアルなんですけども、それよりもむしろ風景のいかにも造り込んだようなわざとらしい美しさや、メカ関係のセンスのよさ(デザイン的にも、動き的にも)といった方向でFFで培ってきたノウハウやセンスが生かされているな、と感じました。
 「エイリアン風」ということでモンスターもやっぱり出てくるのですが(笑)、造形的には使い旧されたような、「どこかで見たことのある」ものなんですけども、半透明の不思議な質感など、CGとしてのケレン味の出し方などはさすがの一言です。



 ……とまあここまで見てきて、やっぱり疑問なのが、「なんでフルCG」なのか、という事なんですよ(笑) やっぱり人間があそこまでリアルだと、何もCGで描かなくても、とかつい思ってしまうんですよねえ。
 例えば、押井守の「アヴァロン」では、実写映像をCG処理で加工して、逆に人工的な手触りの画作りをしていました。そう考えれば、このFFの方でも似たような手法で、現状と同じような映像効果は出ていたんじゃないかという気がするんですよね。むしろそっちの方が安上がりかもしれませんし(笑)
 ただ、この作品の場合むしろ「CGで映画を造る」という手法的な部分から出発しているだけに、それはしょうがないと言えばしょうがないのかも知れません。結局そこから出発して「実写でも良かった」という方向に落ち着いてしまったんじゃないか、というのが、まず第1になんだかなーといった感じでした(笑)



 とまあ映像面ではそんな感じですが、ストーリー部分でも色々ツメの甘さが見え隠れしている感じです。
 CGアニメと判断すればまあこんなものか、とも思うのですが、実写と変わらぬ映像を見ていると、実写作品としてどうよ、という気になったりもして……。
 まず良く分からないのが、本作で語られている「ガイア理論」なるものです。地球をひとつの生命体と捉えて云々、という設定なんですけども、こういうアミニズム的な発想って欧米の観客にはピンと来ないのでは?という気がします。そういうピンと来ない設定をまず前提と持ってきた上でのラブ&ピース&エコロジーですから、欧米の方でなくとも???という感じです(笑) テーマというか主張自体は、はっきりし過ぎているんですけどね(笑)
 そもそも、キャラクタの善悪があまりにも明快過ぎて、キャラに奥行きがないのも考えものです。もしかしたらこれが生身の役者なら、その辺の奥行きは演技で追い込んでくれるのでは?という気もするだけに、その辺りもかなり勿体無い感じがしました。
 結局、アニメにしてしまうことでキャラが本当に人形になってしまっているんですよね。いやあ、非常に残念。この点が、第2のなんだかなー、であります(笑)



 あと、残念というかアホとしか言いようがないのは、映画冒頭のテロップ、および冒頭の主人公のモノローグで、ストーリーを全部ネタばらししてしまっているという点でしょうか(笑)
 確かに、アミニズム的な発想は欧米の観客には受け入れ難いのかも知れません。でも、ああいう説明が皆無でも、ストーリーをきちんと追いかけていけば理解出来る範囲のお話だったと思うんですけど……。よっぽど映画の内容に自信が無いのか、観客をナメているかのどちらかでしょう(笑)
 内容的に分かりにくかったり一歩及ばずだったりするのはある程度仕方無いのですが、こういう製作サイド&配給元のアホな判断が映画を台無しにしてしまっては元も子もないです。いかにもとってつけたように見えるのがまた何とも……。
 というわけで、これが第3の、かつ最大の「なんだかなー」であります(笑) ASD的に何が一番不満だったって、このネタばらしが最大の不満でした。これじゃ売れるに売れんよなあ……。
 ってゆうかお金返して欲しいです。いや冗談抜きで(笑)



オススメ度:☆☆(CGの完成度だけを堪能しましょう(笑))



 


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