-cinema diary-

2002年1月の映画日記


 

2002.1.11 一銃士

「ヤング・ブラッド」

監督:ピーター・ハイアムズ
主演:ジャスティン・チェンバーズ、ティム・ロス、カトリーヌ・ドヌーヴ、スティーヴン・レイ、他

鑑賞日:2001.11.30

公式サイト:http://www.youngblood.jp/


 1625年、フランス。青年ダルタニアン(ジャスティン・チェンバーズ)は亡き父の意思を継ぎ、銃士になるべくパリへと向かう。だが、パリでは国王ルイ十三世を差し置いて、リシュリュー枢機卿(スティーブン・レイ)が権力を握り、肝心の銃士隊は半ば解体されていた。
 ダルタニアンは銃士隊の面々とともに、リシュリューの陰謀を食い止めようと立ち回る。その活躍が王妃(カトリーヌ・ドヌーブ)の目に止まり、ダルタニアンは王妃の元で動く事になるが、そんな彼の前にリシュリューの片腕である黒装束の男、フェブル(ティム・ロス)が立ち塞がる……。


    *    *    *


 うーむ、なんかあらすじが書きにくいですね(笑)
 なんだか意味不明な邦題のついている本作ですが、「Three Muskuteer」という原題が示す通り、本作はアレクサンドル・デュマの古典的名作「三銃士」の映画化です。
 ま、三銃士自体は過去に何度か映画化・映像化されているんですけどね。過去にディズニーが実写映画化してますし、ASDさんと同じ世代の人ならば、NHKでやってたアニメなんかもよく覚えているかと思います(知らないぞ、とか言わないでぇ……)。また、ディカプリオ主演の「仮面の男」も、三銃士のお話でした。
 とは言え、三銃士は実はかなり長大なお話でして……日本では以前、「ダルタニヤン物語」とかいうタイトルで、講談社文庫から全12巻とかの分厚く長大な翻訳が出てましたが……。まあ読んだことないですし、あまりくどくどと言ってもボロが出るだけなので何も言いませんけど(笑)
 てゆうか、何で今更三銃士?という疑問は、やはり拭い切れませんよね(笑) 監督はシュワルツェネッガー主演の「エンド・オブ・デイズ」のピーター・ハイアムズ。割とマニアックなファンの多い監督なんですけど……(まあASDさんもその一人なんですけど(爆))。色々と名の知れた俳優も出てますが、肝心の三銃士やダルタニアンがゼンゼン見たことの無い役者ですし……公開自体、異様にひっそりとしてましたし、どうなんでしょうかね、これって(笑)
 見所らしい見所と言えば、スタントコーディネイトを「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」のシャン・シンシンが手掛けている、という事でしょうか……と書いても誰にも分からないかも知れませんが(笑) 「ワンス〜」は、ジェット・リーが香港時代に主演していた、彼の代表作とも言える作品です。
 そんなこんなで、中世ヨーロッパ版「グリーン・デスティニー」と言えるような超絶ワイヤーワークアクションが全編に展開されているのでは?と期待を持たせてくれますが、実際は所々ちょろっと吊りが入っている程度で、さほど大した事はありませんでした(爆)
 ……ただ、ラストの対決シーンは、いきなり香港映画になったような感じです(笑) ってゆうかその対決シーン、「ワンス〜」のクライマックスシーンに限りなくソックリなんですけど……(爆) まあ手掛けている人が一緒ですから、もはや確信犯ですよね(笑) ……というか、クレジット表記によればシャン・シンシン本人がスタントを担当しているもようです(笑) あのシーンだけ、マジで香港映画です(笑)



 むしろアクションのデキ云々と言うよりも、中世フランスなのにどこか西部劇っぽい雰囲気が少し面白かったかも知れません。冒頭の酒場での乱闘シーンなんて、西部の荒くれガンマンかお前らはっ!と思わずツッコミそうになりましたし(笑) 疾走する馬車に敵がわらわらと取り付いてくるシーン、ほとんど「駅馬車」状態でありました(爆)
 そういう西部劇っぽさを感じさせるのは何も画ばっかりではなくて、ストーリーも実はそういうカンジになっていたりします。
 元々ダルタニアンというキャラは、銃士に憧れてパリに出てきた、田舎出身の青二才、という描かれ方をされることが多かったのですが、実は本作のダルタニアンにはもうひとつ目的があります。それは、両親を惨殺した男に復讐する、というもの。
 そういう目的もあってか、本作のダルタニアンは、三銃士が霞んでみえるくらいにカッコよく描かれているのでした。ま、ホントにカッコいいかどうかは別の話ですが(笑)
 そんなこんなで、本作は「三銃士」という物語をダルタニアンの復讐譚として捉えているという、何気に画期的な作品なのですね(笑) その辺り、単なる勧善懲悪ものではない、イイ感じで緊張感を感じる作品になっていたと思います。
 ……ただし、肝心の三銃士であるアトス、アラミス、ポルトスが霞んで見えるっつうのはどうかと思いましたが……だって、一応タイトルロールじゃないですか(笑) 役者が無名なばかりか、明らかに扱いが脇役だったりしますし(笑) 単なる銃士その他大勢のうちの3人、という以上の扱いではありませんでした。タイトルに偽りあり、ですな(あ、だから邦題があんな感じなのか)。



 ……しかし、なあ。カトリーヌ・ドヌーブとかティム・ロスとか、それなりに大物の出ている映画なのに、お金のかかったコスチューム・プレイ映画なのに、そこはかとなく漂うこのB級テイストは一体なんなのでしょうかね? ま、それがハイアムズらしさだと言えば、確かにその通りなのですが……(爆)
 「仮面の男」とどっちが面白いかと問われれば、ちょっと微妙な感じです……(爆)



オススメ度:☆☆☆(悪くはない、ハズなんですが……ううむ)




2002.1.11 逆エクソシスト?

「スティグマータ・聖痕」

監督:ルパート・ウェインライト
主演:パトリシア・アークエット、ガブリエル・バーン、他

鑑賞日:2001.11.16

公式サイト:http://www.uipjapan.com/stigmata/


 「スティグマータ」……聖痕現象。磔にされたイエス・キリストと同じ傷を身体に負うという、不可思議な現象である。
 ピッツバーグに住むフランキー・ペイジ(パトリシア・アークェット)はある日突然、両腕に原因不明の裂傷を負い、血を流す。突然のことに戸惑うフランキーだったが、この現象はこれだけではすまなかった。
 やがて彼女の前に現われたのはバチカンからやって来たアンドリュー神父(ガブリエル・バーン)。聖職者であると同時に科学者でもある彼は、バチカンのために聖痕現象など世界中で起きている「奇跡」の真贋の調査をしているのだった。
 フランキーの身体に起きたのは、紛れもなく聖痕現象であった。だがフランキー自身は、カトリックどころか無神論者を自認しているのだ。信仰心の無い人間に、聖痕現象が起きる事はありえない……だが、聖痕は彼女の身体に次々と現われていく。やがてそんなフランキーに、聖痕以上の変化が訪れて……。


    *    *    *


 WOWOWにて鑑賞。この作品、以前にも取り上げてますが、結構ヌルイ事しか言ってませんでしたので、今回もうちょっとディープな見方をしてみたいと思います。
 この映画、実は「エクソシスト」をかなり強く意識した作品だったんじゃないのかなー、と、ふと思ってしまいました。
 「エクソシスト」……ああ、これもここでまだ取り上げてないや(笑) 一人の少女にある日突然悪魔が取り付いて、家族や悪魔祓いに当たる神父ら周囲の人々がそれに翻弄される、というお話です。少女に取り付いた悪魔は目に見えて恐ろしい変化を少女にもたらしますが、それもさることながら、そういう風に悪魔に付け入られる隙は、誰の心にもあるのだ……というような事を言っている作品です(なんかいい加減な説明でスンマセン(笑))



 で、その「エクソシスト」ですが、実は悪魔が少女にとりついたのには、これと言った理由がありませんでした。
 そこで明確な因果関係を示さなかったことが、この作品のミソだったわけです。敢えて理由を描かない事で、「悪」は誰にでも普遍的に訪れる敵であること……作中で描かれるエクソシストVS悪魔という構図のままに、善と悪の戦いは誰の心の中にでもある普遍的なものだと言っているのではないかと思うわけですね。
 面白いことに、「スティグマータ」という作品はこれといい感じで対照を成しています。悪魔にとりつかれる代わりに、本作では逆に何の理由も無く、無信心な人間に聖痕が現れるわけですね。唐突に「悪」が訪れる代わりに、唐突に「善」が現れてくる……なかなか、興味深い符号のような気がします(実際は、残念ながら「スティグマータ」には実はちゃんと理由があるんですけど……それはここでは置いておきます(笑))。それがいい事なのか悪い事なのか、どちらにせよどっちもかなり理不尽な事には違いありません。
 そして、その理不尽な事件に助力する人間の側にも、ある種の共通点が挙げられます。「エクソシスト」のカラス神父は真面目な神父のように見えて、スポーツマンとしての荒々しい側面や、病気の母親との問題?を抱えていたりします。絶対悪たる悪魔に立ち向かうには、ちょっとばかり彼の信仰は頼りないという事がほのめかされています。彼もまた、悪魔によって動揺を吹き込まれる人間の一人なのですね。
 「スティグマータ」のアンドリュー神父は、フランキー・ペイジに起きた聖痕現象を、「信仰心が無ければそれは聖痕ではない」と一蹴してしまいました。……実は彼には元科学者という経歴があり、必ずしも100%の信仰を寄せているわけではありません。少なくとも聖書の記述にある生命の誕生が「不正確」であるとは思ってるわけで……。そもそも彼は聖痕現象の調査員という、「神の奇跡に疑惑を投げかける存在」だったりするわけですし、バチカンという組織に不満や疑問を持っているような描写もほのめかされています。つまり、彼は聖職者でありながら、その信仰にはかなり迷いがあったり、冷めたりしているようにも描かれているのです。そんな彼にとって、フランキー・ペイジの身に起きた聖痕現象は、無条件で神さまを信じなきゃいけないような、かなりの突発事件なわけですね(笑)
 つまるところ、「エクソシスト」という作品が、悪魔によって信仰を揺らがされている人々の物語であるように、この「スティグマータ」という作品は、神によって自らの不信心を揺らがされている人々を描いた物語である、という風には言えないでしょうか。



 この2作品は、映画そのもののスタイルも、作られた時代背景もまるで違います。
 「エクソシスト」は今ではすっかり古典になってしまいましたが、公開された当時はこれでも、かなりショッキングな作品として話題を呼んだものです。解釈次第では、まるで悪魔の勝利を描いたような作品にも見えてしまう、というのもショックを与えた一因なのですが……そういう、善と悪を巡る戦いをシンプルかつストレートな人間ドラマとして描写したのが「エクソシスト」だったわけです。
 それに対して、「スティグマータ」はいかにも90年代風の、MTVテイストなビジュアル・ホラーです。今風の、スタイリッシュな映像とハデな音楽で綴られる、けばけばしいオカルトストーリーとして語られてますし、実際先述した通りにフタを開けてみれば、聖痕現象にもある程度の理由付けがなされ、その謎を巡るお話として、一応の完結は見ています。そういう意味では、「ストレートに信仰を問う物語」を敢えて逸脱した、という風にも言えます。
 そういう、変化球っぽい映画ではないと受け入れられない時代なのだ、と言ってしまえばそれまでですが……意図したのかしていないのかはともあれ、まさかこのテのMTV風ホラー映画でこういう興味深い考察を垣間見せてくれるとも思いませんでしたので、なかなかの収穫でありました。



オススメ度:☆☆☆(とは言え、人を選ぶ映画ではあるよなぁ……)




2002.1.11 犬猫映画

「キャッツ&ドッグス」

監督:ローレンス・グーターマン
声の出演:トビー・マグワイア、アレック・ボールドウィン、スーザン・サランドン、他
出演:ジェフ・ゴールドブラム、他

鑑賞日:2001.11.2

公式サイト:http://www.warnerbros.co.jp/catsanddogs/


 天地創造以来、争い続けている二大勢力。人間の共存による平和な世界を目指す「犬」達と、人間を隷属化し世界支配を企む「猫」達。彼らは人間達の目には触れないところで、熾烈な戦いを繰り広げていたのだ!
 猫たちの標的は、犬アレルギーの特効薬の研究をしているブロディ教授の、その研究の阻止だった。一家の愛犬バディは猫たちによって拉致されてしまい、一家の新しい飼い犬として、犬達は優秀なエージェントを送り込もうとする。だが、手違いからブロディ家の新しいペットとして選ばれたのは、何も知らない子犬・ルーだった……。


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 というわけで、大体ほぼ期待通りの、おバカな映画でありました。つうか、上のあらすじを大真面目に書くのもかなり馬鹿馬鹿しかったりするんですが……(笑)
 まず、犬と猫の熾烈な戦い、という構図自体がかなりバカな感じなんですけど(笑) 犬の側がハイテク装備で身を固めていたり、地下に巨大な秘密基地があったり……ハリウッド製のキッズムービーとしては、それはちょっとやり過ぎではないか、という気がするんですけど(笑)
 ただ、お話自体は子犬の成長物語だったり、ブロディ一家の家族のドラマだったりして、おバカなだけではない、割と正統派っぽいつくりにもなっていたりします。も少しバカっぽく突き抜けて欲しいなあ、と思わない事も無いんですけど(笑)、映画としてかなり丁寧にまとめられていた方なんじゃないかな、とも思います。
 犬猫の演技は、基本的にはトレーニングされた動物による演技、という古典的な手法なわけですが、「ベイブ」のようにCGでリップシンクロしていたりしますし、二足歩行している奴はCGアニメで描かれたりしています。「マトリックス」のパロディみたいなアクションシーンもあったりしますので、「何だ、ただの動物映画か」とか思われているような方にも安心してオススメできる内容になっています……と思います(笑) 逆に、おバカ過ぎてついていけなかったりして……(笑)



 ちなみに、ASDが見たのは吹替え版の方だったりします。つうか、金沢ではそちらしかやってなかったもので……(泣) ですので、声の出演もかなり豪華ではあるのですが、言及は出来ません。スンマセン……。
 ブロディ教授を演じているのは、「ザ・フライ」でハエになる科学者を、「ジュラシックパーク」で恐竜に襲われる数学者を、「インデペンデンス・デイ」でエイリアンと戦う?MIT出身の電波技師?を演じているジェフ・ゴールドブラム。つうか、こんなに理数系の役ばっかり演じている人もこの人ぐらいなのでは……(笑) 他にも色々出演しているはずなのですが、学者以外の役がとっさに思い出せません(爆)
 うーむ、それはともかく、早く字幕版を鑑賞したいです。吹替えも決して悪い出来ではないのですが、いかにも子供向けっぽい演出でもありますし、それなのにギャグが古いのがちょっと……(笑)
 ただ、イヌの組織のボスの声を大平透が当てていたのはちょっと笑えました。冒頭で犬のエージェントが結集してくるシーンで、「今回の任務は……」とかいうナレーションを当てているのですが、これが「スパイ大作戦」そのまんまなノリなんですよね(笑) さすがにこれは、吹替えのみのギャグだと思われますので(笑)



 ……それはそれとして、猫好きな人には結構不本意な作品ですよねぇ、これって(笑)



おすすめ度:☆☆☆☆


 


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