-cinema diary-
2002年6月の映画日記(その2)
2002.6.30 アメリさん |
「アメリ」 監督:ジャン・ピエール・ジュネ 主演:オドレイ・トトゥ、マチュー・カソビッツ、ドミニク・ピノン、他 鑑賞日:2002.4.26 公式サイト:http://www.amelie-movie.com/ ※ややネタバレ気味※ 内気で人付き合いの苦手なアメリ(オドレイ・トトゥ)は、ある日アパートにて以前の住人の忘れ物を発見する。元の持ち主の手元にこっそり戻してあげた事から彼女は「周りの人を幸せにする」という楽しみを発見する。しかし他人の世話ばかりに夢中で、自分の幸せということになると内気で引っ込み思案なままだった。そんな彼女はある日、ニノ(マチュー・カソビッツ)という青年と出会う。 * * * 何だかあらすじが非常に書きにくいですね。何というか結構ヘンなお話なので(笑) それはそれとして、ASD的にどうしても納得いかないのは、この映画が、ちまたの若い女性の間で大人気、という事実。ファッションのセンスがいいとか、お話がメルヘンちっくでかわいらしいとか、「自分探し」的なテーマに共感出来る、癒し系だとか、そんな意見をちらほらと見かけるんですよ。 えーっと、えーっと……ホントにそうなんですか? ASDの目には、ただのヘンな映画にしか見えなかったんですけど……(爆) だってこの映画って、あの「エイリアン4」のジャン・ピエール・ジュネの最新作ですよ?(笑) 「デリカテッセン」とか「ロストチルドレン」とか、まにあっくでディープな映画をバンバン撮ってる人の作品ですよ? どこぞの映画批評サイトなんかでも、「オシャレな映画である」という事実にツッコミを入れている人ってほとんどいなかったんですけども……ううむ、どうなんでしょうか。 まぁ確かに、今回は今までのようなSFとかファンタジーではなくて、現代のパリが舞台ですし、おどろおどろしげなモンスターとかも登場しません。 ですので、あのジュネが普通の映画を撮ったのか!と驚いてみてもいいんでしょうが、ASDの目には充分にヘンな映画に見えました(笑) 何がヘンって、まず登場人物が一人残らず変人ですね、やっぱり(笑) とくに主人公のアメリがやはり一番の変人です(笑) 物語は、彼女が偶然にアパートの前の住人の忘れ物を発見するところから始まります。これを元の持ち主に返しに行こうとするアメリさんですが……素直に渡せばいいのに顔を合わせられずに、こっそりと返す事に。 そうしたらば相手に「奇跡だ!」とかいって騒がれてしまう事になるのですよ。ならば……と、周囲の人々にこっそりと「奇跡」「幸運」をもたらすべく、アメリさんは暗躍を開始するのですな。八百屋さんが配達用に持ってるアパートの合鍵をこっそり複製し、あちこちの部屋にこっそり侵入し……ってアンタそれ不法侵入じゃないですか!(爆) しかも、アメリさんの善行は冷静に考えればいらんお節介ばっかりなんですよ。旦那を戦争でなくした未亡人のために、その旦那からの手紙を偽造したりとか(爆) あのおばちゃん、真相を知ったらどうなる事やら……。 冷静に考えなくても、親切どころかかなりいらんお世話ですよね(爆) しかもしかも、善行もこんなカンジなら、悪いヤツを懲らしめるとなればもう容赦なしです(爆) 意地悪な八百屋のオヤジに下った鉄槌など、もうここに書くのもためらわれるぐらいに陰湿だったりしますしぃ……(爆) それで、ですね。 映画の前半ではそうやって人様を幸せにしようと暗躍(暗躍としか言いようがないのですけど)しているアメリさんですが、後半ではそのアメリさんご自身の幸せについて言及されていきます。人付き合いの苦手な彼女にも、気になる男性が現れて……という感じなのですが、いざその人にアプローチしようってな時に、彼女はこっそりとその男に付きまとい始めるわけです……って、それってストーカーというのでは(汗) そもそも付きまとわれる側の男性も、なんかビミョーにヘンな人だしぃ。 ……とまぁ、そんなアメリさんですが、実際のところはアメリさんだけではなしに、作品世界そのものが何とはなしに「ヘン」ですので、何となく容認出来てしまうから不思議ですね(笑) アパートの住人達とか、彼女が働いているカフェの同僚、常連客……とにかく皆さんどこかしらヘンなのですよ。 善行を受ける人も、鉄槌を食らう人も……そもそも彼らを取りまく世界そのものがヘンなのです。現代のパリが舞台のはずなのですが、そういう風にはとても見えませんし……(笑) さて、このジュネ監督は、先述の通り「エイリアン4」を手掛けたお人です。 「エイリアン」シリーズは元々、人間とエイリアンとの相容れぬ戦いを描いた作品です。エイリアンとは意志疎通を図ることもままならず、彼らはただ人間を殺戮し、卵を植え付けるだけです。そんな人間の側も、とにかく一匹でも多くぶっ殺して彼らを根絶するしかないわけですな。 しかし、ジュネが監督した「エイリアン4」では、過去のシリーズでエイリアンと宿命の戦いを繰り広げてきた主人公リプリーを、エイリアンとのハイブリッド・クローンとして蘇らせてしまいました。 つまりここでのリプリーは、ある意味エイリアンと人間とが融和してしまった姿なのですな。そんな彼女は作中において排除されるべき存在だったかというと、そうではありません。 つまり、ジュネの「エイリアン4」では、エイリアンというのは否定される存在ではなく、ある意味では是正される存在なのです。お話自体もエイリアンとの対決・根絶よりも、エイリアンに襲われた宇宙船からの脱出に主眼が置かれていましたし。 要するにジュネはこういう、本来なら否定されるべきイレギュラーなものを、是正する視点をもった監督なのだと言えるのではないでしょうか。 話はここで「アメリ」に戻りますが……この作品もまた、本来ならば否定視されてしまうような「ヘンな人々」「ヘンな世界観」を、是正的に描いた作品なんじゃないかと思うのですね。 これまでのジュネは、そういう「ヘンなもの」を、エイリアンのように本当にヘンなものを通じて描いてきたわけですが……この「アメリ」の場合、ヘンとは言え人間ですからね(笑) SFやファンタジーといういわば変化球ではなしに、具体的に感情移入出来る「人間」というものを通じて、そういう「ヘンなもの」を是正的に描いてみたのが、この「アメリ」という作品だったのかも知れません。 まあその「ヘン」を「個性」と言い換えて、オシャレ映画扱いにしちゃうのはやっぱりちょっとどうかな、と思わなくもないですけど……。 ……っていうか、ASDの感性の方が世間様とズレているんですかね?(爆) オススメ度:☆☆☆☆ |
2002.6.30 007じゃないぞ(笑) |
「テイラー・オブ・パナマ」 監督:ジョン・ブアマン 原作・脚本:ジョン・ル・カレ 主演:ピアーズ・ブロスナン、ジェフリー・ラッシュ、ジェイミー・リー・カーチス、他 鑑賞日:2002.4.22 運河の所有権を巡って各国が睨みをきかせているパナマ。左遷同然に赴任してきたイギリス情報部員のアンドリュー(ピアース・ブロスナン)は、イギリス人の仕立て屋ハリー(ジェフリー・ラッシュ)に接触を図る。職業柄、彼は政府の要人の多くを顧客に持ち、情報を得られる立場にあると睨んだのだ。 事業の失敗で大金を必要としていたハリーは、うまく口を合わせてアンドリューから金をせしめようとするが、彼がでっちあげた偽情報が、やがて大がかりな問題に発展していって……。 * * * DVDにて鑑賞。 スパイ物を沢山書いている作家ジョン・ル・カレが、原作の他脚本も手掛けているスパイ映画であります。「007」辺りとは一味違う、本物のスパイ映画を! ……という趣向の元、なんとその007のピアーズ・ブロスナンを主演に迎えるというかなり大胆な作品でありました(笑) まあとにかく、そのブロスナンのどうしようもない悪役っぷりが何ともかんとも(笑) 女に弱くてノリだけで動く、ってところがかのジェームズ・ボンドに何となく似てない事もないのが始末に負えない感じです(爆) ある意味、007のパロディのような趣きの作品だったかも知れません……(笑) お話自体は、そのブロスナンとジェフリー・ラッシュの騙し合いというのがポイントなわけですが、どうにも原作者が張り切り過ぎというか……せっかく演技合戦が見物になりそうな配役にも関わらず、ストーリーを追いかけるのが手いっぱい、てな感じの映画だったかも知れません。 ま、ストーリーは結構面白くないこともないんですけどねぇ。 ちなみにジェフリー・ラッシュですが、「シャイン」ではピアニストを演じるためにピアノを習得し、本作では仕立て屋を演じるのに裁断の技術をすっかりマスターしてしまったというからすごいですねぇ。冒頭の長回しでは、カット割り無しの1ショットで実際に型取りをてきぱきこなしてますから、見事なものです。 しかしですね。そんな彼なのに、実は何故か運転免許を持っていないんですよ(爆) 本作でもあちこち車を乗り回すシーンがありましたので、にわかには信じ難いんですけどね。そこは編集でうまく見せているわけで、まさに映画のマジックを目の当たりにしてしまいました(ちょっと違う) 余談ながら……監督による解説音声を聞いてビックリしたんですけど、ジェフリー・ラッシュの息子を演じていた子役の少年は、実はかの「ハリー・ポッター」のダニエル・ラドグリフ君だったそうです。 ううむ、本編見ている間はまったく気付きませんでした……ってゆうか、そう言われてじっくり確認してみたんですけど、あまりピンときませんでした……やはりあのメガネがないとダメなんでしょうか(笑) おすすめ度:☆☆☆ |