-cinema diary-

2002年10月の映画日記


 

2002.10.24 RESIDENT EVIL : THE MOVIE

「バイオハザード」

監督:ポール・アンダーソン
主演:ミラ・ジョボヴィッチ、ミシェル・ロドリゲス、他

鑑賞日:2002.9.22

公式サイト:http://www.biohazard-movie.jp/


 巨大企業アンブレラ社の地下研究所「ハイブ」にて、研究中のウィルスが空気中に流れ出すという生物災害=バイオハザードが発生する。メインコンピュータ「レッドクイーン」は研究所を閉鎖、500名以上の所員が犠牲となってしまう。
 研究所への非常通路を守る任務についていたアリス(ミラ・ジョボヴィッチ)はウィルスの中和ガスの影響で記憶を失った状態で目覚める。閉鎖の原因究明のためにやってきた特殊部隊の面々。アリスもまた彼らに同行し、「ハイヴ」へと向かう。そこで彼らを待っていたのは、バラまかれたウィルスによってゾンビ化した所員達だった……。
 ゾンビに囲まれ孤立する特殊部隊。さらにはウィルスの漏洩を防ぐために「レッドクイーン」までもが彼らの脱出を阻む。果たして彼らは無事脱出出来るのか……。


    *    *    *


 ご存じカプコンの大ヒットTVゲーム「バイオハザード」の映画化です。
 という話をすると、最近では某FF、過去にも「ストリートファイターII」とか「スーパーマリオ」とか、色々と思い出したくない思い出が蘇ってきますが(爆) 本作は一応、その種の壮絶なハズレまでは到達していませんでした(笑)
(てゆうか、ASDは「スーパーマリオ」はそんなに嫌いじゃ無かったんですけど(爆))
 監督のポール・アンダーソンは過去にも「モータル・コンバット」という洋ゲーの映画化を手がけた事があります。ASD的には何と言ってもB級SFホラーの密かな佳作「イベント・ホライゾン」が印象深かったので、同じホラーで手ひどい失敗をすることもないだろ、と密かに期待してたんですけどね。
 ……というかそもそも、原作のゲーム自体ゾンビホラー映画を強く意識して作られてたハズですし、映画化が難しかったりするはずも無いんですけど(笑)
 あ、一応補足しておきますと、本作のポール・アンダーソン監督と、トム・クルーズが胡散臭いカリスマモテ男を演じていた「マグノリア」のポール・トーマス・アンダーソン監督とは別人でありますので、念のため。



 さて本作の魅力は、何と言ってもミラ・ジョボヴィッチの……。
 ……の、何だってんでしょうか(爆) まぁ一緒に見に行った友人と、観賞後に見えた見えないで大激論になったのは事実ですが(つうか何がよ(笑))、それはそれとして、B級ホラーとしてもかなりイケてる作品だったのではないかと思います。
 まぁさすがにゾンビホラーアクションとは言え、わらわらと襲いかかってくるゾンビ相手に、ゾンビだとはっきり確認しないうちにマシンガンぶっ放すのはいかがなものかとか思わない事もないんですけどね(爆) その他一部のクリーチャーなど、いかにもCGめいた感じでして……その辺り、B級臭がヒジョーに濃厚に漂う作品だったと思います(笑) むしろそのおかげで、グロいシーンなどをうまく処理出来てた、という見方もないわけではないのですが……。
 ただ、80年代の本気と書いてマジと読むような全盛期のゾンビ映画をガンガンに見倒したツワモノな方々には、多少物足りない映画だったんじゃないですかねぇ……。



 ところで、本作を見ていてひとつ気になったのが、主人公であるアリスの正体です。
 作中では特殊部隊の一員だ、という説明がなされていますし、事実それ相応の戦闘能力を作中で披露し、一部過去の記憶も取り戻していたようですが……実際完全に何もかもを思い出した、というような描写もありませんでした。
 彼女の肩についていた手術跡のような傷跡に関して何の説明もなされていませんでしたし、ネタバレになるので書きませんがあのラストの扱いから察するに、彼女には特殊部隊の一員である、という以外に何か壮絶な謎が隠されているのではないか、と勘ぐってみたり……。
 映画の内容は単なるB級ホラーと言い切って差し支えないと思いますが(研究所が閉鎖された真相もかなりショボかったです。実際のところ(爆))、この主人公の正体にまつわる思わせぶりな描写が、何げに思わせぶりに謎めいた雰囲気を醸し出していたのではないでしょうか。
 お話の進展はほぼ彼女の視点に沿って描かれています。記憶を失った状態で不意に目覚め、有無を言わさずに見知らぬ特殊部隊に同行を求められ、ゾンビのうろつく研究所を逃げ回って……という一連の経緯が、何となく観客の視点とシンクロしてしまうのですね。その辺りのシンクロぶりが、いい意味でゲームっぽかったような気がします。
 というのは、このテのホラーゲームの何が怖いのかと言いますと、それは要するにゲーム中の主人公キャラとプレイヤーが限りなくシンクロしていくから怖いんじゃないかと思うのですよ。
 あいにくASDは「バイオハザード」は未プレイなのですが……例えばいつ破られるか分からない耐え難い静寂を、映画の観客という第三者的立場から見ているのと、プレイヤーとして実際ゲーム中の世界で我が身の事として体験するのでは、やはり感じる恐怖や緊張感に大きな差があると思うのですね。
 死の恐怖に関しても、ゲーム中においては「ゲームオーバー」という形で確かに存在しますし(これまでのプレイが水の泡になる、という焦りがあるのですな)。そう言ったプレイヤーとキャラとのシンクロ感覚こそが、ホラーゲームにおいて「怖さ」をもたらしているのではないでしょうか。
 そういう意味では……まぁ確かに映画として色々ツッコミどころはあったかも知れませんが、ゲームの映画化として、及第点を付けられるデキだったんじゃないかな、とASDは思います。



オススメ度:☆☆☆(で結局、見えたんですか見えなかったんですか?(笑))




2002.10.24 これぞジェット・リー

「キス・オブ・ザ・ドラゴン」

製作:リュック・ベッソン
監督:クリス・ナオン
主演:ジェット・リー、ブリジット・フォンダ、チョッキー・カリョ、他

鑑賞日:2002.9.15

公式サイト:http://www.besson-jp.com/kod/


 中国からやってきた敏腕捜査官リュウ(ジェット・リー)は、フランス警察の刑事リチャード(チョッキー・カリョ)の陰謀によって殺人事件の犯人として追われる身となる。殺害の現場に居合わせた娼婦ジェシカ(ブリジット・フォンダ)と偶然に出会うリュウだったが、彼女は一人娘の身柄をリチャードに押さえられていた。彼女を救うため、自らの身の潔白のために、リュウはリチャードに挑んでいくが……。


    *    *    *


 WOWOWにて鑑賞。「ヤマカシ」の翌日に放送してました。
 というか、ジェット・リー主演、リュック・ベッソンプロデュースという顔ぶれからして、何やら危なっかしい感じがするではないですか!(笑)
 まぁ結論から言えば、相変わらずシナリオはトホホな感じでした(爆) が、唯一救いらしい救いと言えば、本作はベッソンプロデュース作にしては大変珍しく、コメディではないのですよ!
 内容はかなりトホホ感漂う感じですが、一応「ニキータ」「レオン」を多少なりとも彷彿とされるアクション物ということで、これまで散々ダマされてきたASDさんも辛うじて溜飲を下げた、という感じです。
 というかこんなトホホな内容で溜飲を下げざるを得ないのもまたどうかと思うんですけど……(爆)



 まぁベッソン映画としてはそんな感じなのですが、実は溜飲を下げられた、という意味では、ジェット・リー映画としてもそうなんじゃないか、という気がします。
 特にハリウッド進出以降の主演作品としては、ダントツにカッコいいジェット・リーを見る事が出来ます。彼の場合童顔が災いしてかあまりクールでカッコいいイメージ、というのは過去あんまり追求される事はありませんでした。が、本作のジェット・リーは見事黒いスーツでビシッとキメて、華麗なる技の数々をバッチリ披露してくれるのであります!
 そのアクションも殴る蹴るのアクションがたっぷりじっくりと堪能できる、正攻法のクンフーアクションである、というのもポイント高いですね。「ロミオ・マスト・ダイ」「ザ・ワン」ともども、クンフーよりもむしろその身体能力の高さを生かした軽業的スタントの方が印象深かったようなフシもありますので、クンフー純度がより高い本作は何やら希少価値が高いっぽいかも知れません(笑)
 ハリウッド市場ではどちらかというと廉価版ジャッキー・チェン的な意味合いでしか使われていないんじゃないのか、という一抹の不安もあるわけですが……そういう意味も含めて、まさにジェット・リーらしいジェット・リーをたっぷりと堪能出来る映画、だったんじゃないかと思います。
 聞いた話によればこの映画、「ザ・ワン」の準備中にさくっと早撮りした作品という事のようですが……どっちが面白かった、と言われれば、ねぇ(笑)
 まぁ何だかんだ言ってベッソンプロデュース作品ゆえに、いくらマジメに撮ったところでシナリオのせいで結果的にギャグになっているつうのを否定できないのが残念なところではありますが……(笑)
 まぁ、多少のおバカには目をつむれる、懐の広い人向けの作品だったんじゃないでしょうか(爆)



 もう一つベッソンファン向けの事を書いておけば、本作のヒロインであるブリジット・フォンダは「ニキータ」のハリウッドリメイク版である「アサシン」においてヒロインを演じてましたね。その彼女が本家ベッソン映画に出演、というのが何げに嬉しい人もいるんじゃないでしょうか(微妙に他人事)



オススメ度:☆☆☆(シナリオがも少しマトモならなぁ……)




2002.10.24 わるいのはだれだ

「YAMAKASI」

製作:リュック・ベッソン
監督:アリエル・ゼトゥン
脚本:リュック・ベッソン、ジュリアン・セリ、フィリップ・リヨン
主演:ヤマカシ

鑑賞日:2002.9.14

公式サイト:http://www.besson-jp.com/yamakasi/


 7人の若者達で結成されるパフォーマンス集団「ヤマカシ」彼らは鍛え上げられた肉体を駆使し、どんなビルの外壁でもフリークライミングでよじ登ってしまう。彼らを取り締まろうとする警察も神出鬼没の彼らを止めることは出来なかった。
 そんなヤマカシは子供たちにとってはヒーロー。だが彼らのマネをした少年ジャメルが転落事故を起こす。ジャメルは心臓病を煩っており、24時間以内の心臓移植手術以外に救う手だてのない状態になってしまった。だが移植費用は膨大で、貧しい一家にはとても払えない金額。責任を感じたヤマカシ一行は治療費捻出のために、パリの街を駆け巡るが……。


    *    *    *


 WOWOWにて鑑賞。
 えー、今回は都合上、悪口しか書かない予定ですので、そのつもりで目を通していただけるようにお願い申し上げます(汗) この映画のファンの方、リュック・ベッソンのファンの方、もしお気を悪くされましたらば、申し訳ありません。



 とまぁ、あらかじめ謝ってからこき下ろすわけですが(爆)
 そう、リュック・ベッソンプロデュースです。「グランブルー」「レオン」と一時期脚光を浴びた彼ですが、プロデュース業の続く昨今はすっかりおバカ映画の代名詞になってしまった感があります(爆)
 そんなわけで、今更ASDもその名前にダマされる事もないのですが、それにしても本作はさすがにヒド過ぎる感じでありました……(爆)
 ビルの外壁をフリークライミングでよじ登る実在のパフォーマンス集団「ヤマカシ」の華麗なる活躍を描く……というコンセプトは分かりますし、ファッションや音楽なんかも、いかにもイマドキの若い衆にウケそうな感じです。映画そのものの狙いは、分からなくはないんですけどねぇ。
 先述の通りヤマカシは実際のパリの街で、映画の通りの超絶的なパフォーマンスをしている集団です。そんな彼らに惚れ込んだリュック・ベッソンが、「TAXi2」でスタントマンとして起用し、そしてこの「YAMAKASI」では、ついに主演にまで起用してしまったのです。タイトルが示すように、本作はまさに彼らのパフォーマンスをフィルムに焼き付けるため映画、という風に言えると思います。
 ……が。いくらなんでも、このシナリオはヒド過ぎる!(爆)
 「ヤマカシのマネをして怪我をする子供がいる」というのは分かりますが、その子供が心臓病だったために心臓移植が必要になった……というのはイマイチ責任がありそうで無さそうな気もしないでもない、まわりくどい設定ですよねぇ……。まぁそれも一応よしとしようじゃないですか。問題はその少年を助けるために、ヤマカシご一行が何をしたのか、という事なんですけど、ねぇ……。
 あのー、結局のところ、キミたちのやってる事って犯罪なんじゃ……?(爆)
 そもそも彼ら、「オレたちのパフォーマンスは誰にも迷惑はかけてねぇ」とうそぶいていますが、ビルの外壁をよじ登るのはれっきとした住居不法侵入なのでは(爆)
 それに目をつぶるとしても……「心臓移植をしてもらえないのはお金がないから=貧乏人だからだ」→「金持ちからモノを盗んで貧乏人のために使うのは、公平なことだ」というような主張がまかり通ってしまうのは、いかがなものかと思うんですけどねぇ……(汗)
 彼らは結局、治療費捻出のためにその肉体能力を駆使して金持ちの豪邸に侵入、金品の強奪という強硬手段に訴えるわけです。誰がどう考えてもそれは犯罪だ!(爆)
 ……ま、まぁ、それも一応目をつぶろうじゃないですか。短絡的な発想はいかがなものかと思わざるを得ませんが、それをお話の発端として、後々予測もつかない展開になるやも知れませんし……。
 と思って最後までガマンしてみていたのですが、最終的に犯罪以外の展開にはならなかったみたいですね(爆)
 しかも恐ろしいのはラストシーンです。何だかんだで金を揃えてきたヤマカシ一行ですが、タイムリミットをあとちょっとのところで越えてしまい、心臓は別の患者に渡ることになってしまったのでした。そこでヤマカシな皆さん何を言い出すかと思えば……。
 なんと、「金を持ってきたのに移植をしないのは貧乏人を差別しているからだ」「心臓移植をしないとヒドい事になるぞ」と言って病院側を脅迫するのですよ!
 ……どこからどうみても悪者じゃん!(爆)
 考えてみれば病院側って、彼らに憎まれているほど強欲でも冷酷でもないんですよ。患者が移植費用を払えない事を承知の上で、心臓を押さえておいてくれたりもしましたし。患者側に要求したのも海外からの移送費だけで、手術費用は病院が負担する、と言ってますし(はっきりとそう発言しているセリフがあります)。
 ……なんだ、病院側はとっても親切ではないですか! 「金持ち憎し」という発想はどこから出てきたんでしょうかねぇ……??? ここまでお膳立てされて、タイムリミットまでに金を揃えられなかったとしても、それはヤマカシ達の問題であって、病院側にはなんら手落ちはないはずなのです。
 なのに! なのに彼らは脅迫まがいのことをして無理矢理手術を強要するのですよ!
 そもそもこいつらがそのようにして無理矢理心臓を確保したおかげで、世界のどこかには心臓をゲットし損ねた人がいるわけじゃないですか。その人もまた、一刻を争う生命の危機にあったかも知れません。心臓を横取りされたおかげで助からなかったかも知れないんですよ!
 そんなんでいいのか、ヤマカシ!



 ……まぁフィクションの物語の上で、穴だらけのシナリオのせいで結果的に主人公が悪者になってしまったとしても、それは自業自得というものです。
 しかるに、こんな穴だらけのシナリオを押しつけられたヤマカシは、実在のパフォーマンス集団なのです! 実在の善良な人々を、フィクションの中で悪者に仕立て上げてしまうなんて!
 では、このシナリオを書いた人間は誰かといいますと……おやぁ、脚本家の名前が三人もクレジットされてますねぇ。そのうちの一人は……。
 リュック・ベッソン。
 ……あなたなんですね、やっぱり(ため息)
 ちなみにあれこれ調べてたらこんな記事が見つかってしまいました。えーと。えーっと……。
 まぁ色々書いてありますけど、誰のせいでこんなお話になっちゃったのかに関しては、非常に興味深い話でありますな(笑)



 ……以上、この映画のファンおよびベッソン・ファンの皆様、不穏な発言まみれで大変申し訳ありませんでした……(汗)
 つうかオレも一応ベッソンファンだったんですけどね、一応……(笑)



オススメ度:☆☆(取り敢えず、華麗なるパフォーマンスに対して)




2002.10.24 志

「トータル・フィアーズ」

原作:トム・クランシー
監督:フィル・アルデン・ロビンソン
主演:ベン・アフレック、モーガン・フリーマン、ジェームズ・クロムウェル、リーヴ・シュライバー、他

鑑賞日:2002.9.1


※ややネタバレあり?※

 ロシアで大統領が急死。チェチェン侵攻という強攻策を唱えるネメロフが新大統領に就任し、アメリカ政府は警戒を強めていた。ロシア担当の情報分析官としてネメロフに詳しいジャック・ライアン(ベン・アフレック)は、CIA長官キャボット(モーガン・フリーマン)によって、対ロシアの諜報活動に抜擢される事となる。彼はロシアの核兵器解体処理施設から行方をくらませた三人の科学者の行方を、潜入工作員のクラーク(リーヴ・シュライバー)とともに追う。
 やがてチェチェン侵攻が現実のものとなり、国連軍を派遣しようとするアメリカとロシアとの関係は一気に緊迫を増していく。そんな中、ライアンは行方不明の科学者たちの手で密かに作られた核爆弾が、アメリカ国内に運び込まれている事を掴む。爆弾を追って彼はボルチモアに向かうが、そのボルチモアのスタジアムには、スーパーボウルの試合を観戦するファウラー大統領(ジェームズ・クロムウェル)の姿があった……。


    *    *    *


 トム・クランシー原作「恐怖の総和」の映画化であります。
 あの分厚い原作、ASDもさすがに読んではいませんけど……この映画の通りの内容だったらかなりガックリ物のような気がするんですけどねぇ……(爆)
 どーにもこーにも、パラマウントはこのジャック・ライアンシリーズを007のようなヒーロー・シリーズものにしたいらしいです。つうか、その目論見自体かなり無理があるように思うんですけど……。
 過去にはアレック・ボールドウィン、ハリソン・フォードと受け継がれてきたジャック・ライアン役ですが、本作ではベン・アフレックが演じております。原作ではそれなりに偉い人のはずですが、演じるアフレックに合わせて、見事若手のぺーぺーに格下げと相成ったもようです(笑)
 しかし……ベン・アフレックって、スーツをぱりっと着こなすような役どころがゼンゼン似合ってませんねぇ(爆) 過去に似たような悪評を聞いたのがキアヌ・リーブスですが(爆)、彼の場合まだ黙ってスーツ着て立っているだけならなんぼかマシだと、個人的には思います(爆) 「スピード」「マトリックス」などで過去のバカっぽいイメージも払拭できた事と思いますし。
 んで話をアフレックに戻しますが……うむむ、この人の場合スーツ姿が似合わないのは固有の役柄のイメージというよりも……ごにょごにょ。そもそも彼は二枚目役が結構多いですけど、ホントに二枚目ですかね?(爆) 「アルマゲドン」みたいな二枚目半の扱いの方がどーにもこーにもしっくり来るような来ないような……(笑)



 まぁそれはそれとして。
 この映画、見ていて色々と考えさせられる映画でした。
 本作では一発の核爆弾によって、アメリカ・ロシアの関係が核戦争一歩手前にまでなってしまうという、壮絶なお話が展開されております。
 21世紀になったってのに今更核戦争の脅威云々言うてるのもすごい話ですけどね(笑) この核戦争に至るあたりのシチュエーション、やはり見ていて「博士の異常な愛情」「13デイズ」辺りの、キューバ危機をモチーフにした作品を思い出してしまいました。特に全面核戦争に実に安易に到達してしまうおバカっぷりが、どうしても「博士〜」を想起してしまいます(笑)
 そもそも、実際のキューバ危機を描いた「13デイズ」に、シチュエーションの緊迫ぶりにおいて完全に負けてしまっている、というのはどうなんでしょうか……(爆)
 何故に緊迫感に欠けるかと言えば、まず第一に本作がジャック・ライアンというヒーローの物語として描かれているという事が理由として上げられるかと思います。
 お話が情勢そのもの全体の状況を捉えるのではなしに、彼個人の活躍にクローズアップされているせいで、緊迫の群像劇ではなく、ジャック・ライアン大活躍!というような軽いノリになってしまってるんですなぁ(爆)
 第二に、この作品における危機的状況って、よーするにテロリストが意図的に生み出したものなんですよ。つまりこの作品で描かれているような緊迫した情勢ってのが、いろんな細かい事の積み重ねで必然的に起こりうるんだ、と言っているのではなしに……一個人、あるいは特定集団の企みや陰謀によって意図的に引き起こされた、この映画に限った特殊な事例として描かれているのですね。
 この2点が、核戦争=最悪の危機、ものすごい恐怖、というニュアンスを大きくスポイルしていたんじゃないのかなー、という風に思いました。
 んで、最終的にこの状況は、当事者達の回避を願う気持ちや努力ではなく、ジャック・ライアンの個人的な活躍で解決されてしまうのですよ。彼の活躍が危機を救ったんだ!というカタルシスよりは、彼一人活躍する程度で回避できる危機なんだ、という風に事件の重大っぷりが相対的に薄れているような気も……(爆)
 まぁヒーローものとしてはそれでいいんでしょうけど、戦争だのテロだのと昨今かなりビミョーになりつつあるネタを扱っている事を考えれば、ちょっとどうなんだろ、と思ってしまいます。



 もうひとつ気になったのは……誰でも気になったでしょう、例の核爆発のシーンです。公開前からガンガンに露出してましたので今更ネタバレもへったくれもあったものではないのですが(笑)
 しかしねぇ……あちこちで言われているように、このシーンは確かにヘンだと思います(笑) 大統領もライアンも爆心地にかなり近い場所にいながら、ゼンゼン平気な顔をして歩いてましたしね(笑)
 この映画の世界観の中では、核兵器っつうのはこの程度の威力のシロモノなんですよ、と思えばそれで納得出来ない事もないんですけどね。核兵器の攻撃力がどうのこうのというより、ここで重要なのは「アメリカ本土が攻撃された」という事実の方ではないかと思いますので。
 しかしそう考えたら考えたで、やっぱ腑に落ちないと言えば腑に落ちないです。現実の世界でほぼ一年前にこれと似たようなシチュエーションが発生していますので、この事実がいかに衝撃的なのかという事は何となく分かるのですが……。アメリカ全土にまさに衝撃が走ったその事件を横目に見ておきながら、本作はそれをゼンゼン踏まえていないというか、敢えて避けているように思えました。
 配慮だ、と言ってしまえばそれまでなんですけどね。核爆発のシーンも、取り敢えず音でドーンと脅かして、従来のアクション映画でいう所の「大迫力の爆発」という以上の意味合いを敢えて持たせないようにしているように見えましたし。
 一番「避け」を強く感じたのは、あれだけの大惨事があったのにその被害が明確に数字として明示されていないっつう事でしょうか。スタジアムの収容人員だけでも数字としては明確に出てくるハズなのに、死者何名、という表現がきれいに避けられているんですよね。ものすごい大惨事が起きているはずなのに、見ていてゼンゼン痛々しく思えないのは、やはりかなり不自然に思えました。



 何と言いますか……現実の世界ではたくさんの犠牲者が出て、その後の世界情勢も大きく揺れ動いているというのに、この映画は同じ展開をなぞりながら、それらが全く反映されていないんですよね。
 娯楽映画だからそれでいい、と言うのは簡単ですが、むしろ全く反映しない形でなぞり直す事で、現実にあった辛い出来事や混迷した状況をリセットしてしまおう、というような意図を感じる作品だったように思います。
 本来ならば、テーマ的・メッセージ的にもっと問題提起力のある内容に仕上がる作品だったと思うのですよ。それを無理矢理に、ただ消費されていくだけの無難なエンタテインメント作品に仕立て上げようとしている……そんな無理を、そこはかとなく感じられるように思います。
 別に、強烈なメッセージ映画になれ、とは申しません。娯楽映画として徹底しつつも、敢えてそういう難しい部分から逃げない、という選択肢もあったはずなのです。核の脅威、核戦争に至るプロセス、テロリズムと戦争、云々……そういう問題を誠実に描くだけでも、随分違った映画になってたはずなのです。 
 確かに娯楽アクション映画としては、映像や音響面でのインパクトは多々あった映画だと思います。が、別の種類のインパクトがきれいさっぱり消え失せていた……その辺りが、ASDにはものすごく不自然な映画だったように思えるのでありました。



 ただし、こんな映画でもネット上の評価をちらほら見ていると「実際にこういう事がありそうで、怖いと思った」みたいな意見を見かけて結構驚きましたけどね(笑)
 そういう人は、機会があればぜひとも「博士の異常な愛情」「13デイズ」辺りを見て欲しいなー、と思います。
(無理矢理だなー(笑))
 まぁ何というか……本作は要するに、現実の世界での出来事に追いつかないように配慮した結果、過去作にさえ追いつけなかった映画、という風に言えるのかも知れません(爆)
 別にASDは社会性とかメッセージ性を云々するつもりはありませんけど、映画として志が高くないというか、気合いが足りないというか……そういう及び腰を感じてしまいました、という話でした。



オススメ度:☆☆☆(一番感動したのは、リニューアルされたパラマウント・ロゴだったかも(爆))



 


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