-cinema diary-
2002年11月の映画日記
2002.11.9 ホリョ・ダ! |
「ウインドトーカーズ」 監督:ジョン・ウー 主演:ニコラス・ケイジ、アダム・ビーチ、クリスチャン・スレーター、他 鑑賞日:2002.10.1 公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/windtalkers/ 第二次世界大戦。アメリカ軍はネイティブ・アメリカンのナバホ族の言語を元に新暗号を開発し、通信兵として訓練を受けたナバホの新兵達が各部隊に配属される事になった。ジョー・エンダース軍曹(ニコラス・ケイジ)に下された任務は、彼らナバホ通信兵が敵の手に落ちることのないように護衛する、というものだった。 だが彼の任務には、もう一つの意味があった。暗号の秘密保持のために、護衛しきれなくなったら通信兵を殺してでも暗号の機密を保守せよ、という指示が下されていたのだ。 彼が守るのはベン・ヤージー二等兵(アダム・ビーチ)。情が移らないように、と距離を置くエンダースだったが、戦場で共に戦ううちに、二人は徐々に友情を深めていくのだった……。 * * * ジョン・ウー監督の最新作であります。 そう、弾丸バラ巻きまくりの犯罪ノワールアクション物で香港映画界を風靡し、全世界の映画人に影響を与えまくった彼が、初めて挑む戦争映画です! と大嘘をつくのはやめましょう(笑) 彼は香港時代に「ワイルドブリット」という戦争映画を手がけているんですけどね。ASDさんそれに関しては未見のまま、本作に挑んでしまいましたけど。 まぁハリウッドの側の状況で言えば、第二次大戦を舞台にした戦争物って随分流行ってますよねぇ。「プライベートライアン」「シン・レッド・ライン」に始まって、「パールハーバー」のようなおバカ映画もありました(笑) まぁ「パールハーバー」はともかくとして、どの作品も戦争映画といいながら、アクション描写やエンタテインメント性を前面に打ち出すのではなく、戦場における人間ドラマに主眼が置かれたりしていたわけですけどね。 (いや、「パールハーバー」も一応そういうノリでしたかね?(爆)) 本作でも日本軍が悪役になっていて、日本人の観客にはもしかしたら居心地の悪い作品になっているのかなー、とちょっと心配していたのですが……実際見てみましたらば、昨今の戦争映画のようなメッセージ性とか、テーマ性とか、ヒューマンな感動とか、そういう要素のほとんど見られない、純粋な戦争アクションものだったように思います。 戦争映画ではなく、戦争アクション映画、ってところがミソです(笑) 昨今の戦争映画は同様に、迫真のドキュメンタリー風というか、生々しい臨場感を重視するというような手法が大半なのですが、そこはそれジョン・ウーですから、ものの見事に娯楽アクションらしい活劇タッチになっておりました(爆) なんといいますか、ねぇ……画面でマシンガンを撃ちまくってるのは確かに海兵隊員のはずなんですけども、どうにもこうにも、いつものヤクザ映画とやっている事が一緒にしか見えません(爆) 何ででしょうかねぇ……と、ちょっと考えてみました。 まず思いつく理由として、戦争映画によくある「集団のドラマ」が描けていない、ということが挙げられると思います。 描かれているのはあくまでもニコラス・ケイジであったり、同じ任務を帯びたクリスチャン・スレーターだったり、ナバホの通信兵達であったり……そういう「個人」なのですね。顔のない一兵士の集まり、というキャラクター描写がなされていないというか、出来ていないというか……その辺りが、あんまり戦争映画ちっくに見えない原因なのではないか、と思います。 まぁそれも善し悪しなんでしょうけどね。ジョン・ウーらしいという意味では、相変わらず銃の突きつけ合いとかやってますし(爆)、今回ハトや教会は無しですが、キリスト教っぽい描写もきちんとありますし。 そしてやっぱりテーマは男の友情と裏切りなのですよ。いざとなったら仲間を殺さなくちゃイカン男と、いざとなったら殺される側の男との、揺れ動く男心! いやホモちっくとかいうたらイカンです(爆) 戦場を舞台にジョン・ウーが撮ったのは、名もなき1兵士の姿ではなく、やはり熱い男達の生きざまだったのでありました。 やはり何を撮っても、ジョン・ウーはジョン・ウーなのでした……(笑) しかし、何だか世間の風評はあんまりよろしくないみたいですねぇ……。 というわけで、もうひとつツッコミどころを挙げてみたいと思います。 ジョン・ウーの作品は、そのほとんどがアクション映画です。それも犯罪アクションといいますか、ヤクザとか刑事とかが、銃をとにかくぶっぱなす個人プレイがメインなんですよね。事実ハリウッドに来てからも、ほぼそういうアクション映画しか撮っていないと思います(笑) 何故かというと、これには理由があります。彼が常に描いているのは男同士の友情とか、裏切りとか、そういうクサいドラマなわけですが……要するにジョン・ウーの映画の中では登場人物たちの間に常に乗り越えがたい大きな誤解があったり、お互い強く憎み合っていたりと、ドラマ的に明確な対立関係にあるのですな。 そして、そういうドラマ的な対立を決して曖昧に受け流したり、衝突を回避して逃げたりしないで、お互い真っ向からぶつかり合ってしまうのですよ。話し合いで平和に穏便に解決するなんてとんでもない(笑) 彼らが真っ向から衝突し、お互いぐっと抱え込んだ感情が一気呵成に爆発する、その瞬間をジョン・ウーは「アクション」として表現しているわけですね。 逆に言えば、アクションという形でキャラクタの感情をどかんと爆発させる必要があるゆえに、描かれるドラマは常にシンプルで、かつベタな感じなのです(笑) そして、ドラマ的に一番盛り上がる部分にアクションシーンを据えているがゆえに、アクションシーンがハンパじゃなく盛り上がるわけですよ。何もスローモーションを多用してたり、銃の残弾を気にせずに撃ちまくってたり、銃を突きつけあったり二丁拳銃でジャンプしてたりするのがイイわけではないのです(笑) (いやもちろんそれらもイイんですけど(爆)) ……ところがこの「ウィンドトーカーズ」の場合、「戦争映画」であるゆえに、一部ドラマの流れとは無関係に、あくまでもストーリー的な流れの必要性からアクションシーンが入ってこざるを得ないのですね。 まずドラマありきで、ドラマからアクションを構築していった従来とは違って、最初に「戦争」というアクション的状況ありきで、そこにドラマを当てはめていく、というような印象です。その辺りが、いつものジョン・ウーっぽさとちょっと違うな、と思ってしまいました。 まぁおおむねジョン・ウーっぽいっていうか、最大限戦争映画らしさは曲げてあったように思いますけどね……(爆) ちなみにニコラス・ケイジは相変わらず顔もヘンでしたが、今回は操る日本語まで奇妙でした……いやこれは余計なお世話でしょうけど(笑) おすすめ度:☆☆☆☆(個人的には悪くなかったッス) |
2002.11.9 宇宙人襲来 |
「サイン」 監督・脚本:M・ナイト・シャマラン 主演:メル・ギブソン、ホアキン・フェニックス、他 鑑賞日:2002.10.1 公式サイト:http://www.movies.co.jp/sign/ ※ややネタバレあり※ 元牧師のグラハム(メル・ギブソン)は妻を交通事故で亡くして以来、すっかり信仰を捨ててしまった。今は二人の子供達と弟メリル(ホアキン・フェニックス)の四人暮らしで、郊外の農場を経営している。その農場に、ある日突然謎のミステリーサークルが出現する。誰かのいたずらか? それとも本物の宇宙人の仕業なのか? やがてグラハムの農場だけではなく、全世界で同様の事例が多数報告されるようになって……。 * * * しかしまたわかりにくい、マニアックな映画でしたな……(爆) というわけで、「シックスセンス」のM・ナイト・シャマラン監督の最新作であります。一応本作はそれなりにヒットを記録したようですが、これを見た人の意見で、誉め倒している意見ってあまり聞いたことがないような気が(爆) ううむ……前作「アンブレイカブル」もかなり評判悪かったですからねぇ。それでも本作がヒットしてしまうのは、「シックスセンス」のインパクトがよほど強かったのか、それとも予告編の作り方が相当に巧いのか……(爆) まぁこのように書いているASDさんとしては、「アンブレイカブル」はDVDを買ってしまうぐらいにお気に入りの一作だったのですが……さすがに本作はあまりピンと来ませんでしたな。 一応これまでの三作に共通しているのは、「霊視」「不死身人間」「宇宙人」と、一見キワモノ的なネタを通じて、「主人公の人間的な成長」という映画的にはきわめて地味な、真面目なドラマを丹念に描写している、という事でしょうか。本作「サイン」の場合はそれが主人公の信仰および家族の絆の二つの回復という形で描かれるわけですが……。 ピンと来なかった理由はですね、多分演技的な見所に乏しかったのが要因なのではないかな、と思ってみたり。 前二作では、ハーレイ・ジョエル・オスメントとサミュエル・L・ジャクソンという、テンションの高い分かりやすい熱演を見せてくれる、演技バカ(爆)な感じのお二方がいたおかげで、素人目にも演技合戦的な部分を楽しめたわけですが……。 過去作で主役を演じていたブルース・ウィリスは演技派というわけでもありませんが、彼は実はひそかに、演技バカと組み合わせるといい味を出す、という特徴があるのですよ(爆) サミュエル・L・ジャクソンとのコンビで言えば「ダイ・ハード3」も良かったですし、タランティーノ絡みの作品なんかも結構面白い感じです。 (他にも、彼の場合は子役と組むとイケる、というジンクスもありまして、そういう意味では「シックスセンス」のハーレイ君はかなり強力なタッグだったことが分かります(笑)) 本作の場合、メル・ギブソンとかホアキン・フェニックスとか、確かに演技は確かに巧いのですが……いかんせん二人とも本作ではかなり抑え気味の、テンションの高くない落ち着いた演技を披露してまして、「オレの巧い演技を見ろ!」的なオーラが今回は少々乏しかったように思います(爆) まずそこが、ピンと来なかった理由のひとつなんじゃないでしょうか。 (ちなみにメル・ギブソンで言えば、「リーサル・ウェポン」シリーズとか、「パトリオット」辺りで割とわかりやすいテンション高い演技を見せてくれます(笑)) もう一つの理由は……こっちの方が重要かと思いますが、この映画に描かれている事件に関して、メル・ギブソン一家は必ずしも作中における「事件」の中心にいるわけではない、という事が挙げられると思います。 過去の二作の場合、幽霊騒動にせよ不死身騒動にせよ(騒動と言えるかどうかはともかく(笑))、ハーレイ君やブルース・ウィリス当人がバリバリに当事者でありました。「彼らの身に何が起こったのか」がストーリーの主眼だったわけで。 しかるに本作の場合、ミステリーサークルは確かに一家の畑に発生しましたが、その後騒動は世界規模の話になって、一家は事件の当事者から傍観者へと立場を変えたように思います。 もちろんその後の展開で、メル・ギブソン達もあれやこれやと荒波に揉まれるわけですが、それは彼らだけの身に起きた出来事ではなくて、あくまでも世界のあちこちで起こっている出来事の中の、ひとつの事例に過ぎないのですね。 そういう意味では、家族愛や信仰という地味なテーマを問いかけるのが必ずしも悪いわけではないのですが、そのテーマを語るためのストーリー運びにおいて、「謎をグイグイと引っ張っていく」というような風味にイマイチ乏しかったのではないかと思います。謎は謎として、やはり当事者と傍観者では、受けるインパクトや意味合いも変わってくるでしょうしね。 とまぁ大きく気になったのは以上2点です。 ですが、実は世間一般で大きく不満の集まるUFOネタ・宇宙人ネタに関するショボさに関しては、ASD的にはさほど不満はありませんでした(笑) まぁ宇宙人侵略ネタに関しては頑張ってる作品が他にも色々ありますしねぇ。「インデペンデンスデイ」とか「X−ファイル」とか。そういうビジュアル的、SFガジェット的な驚き、あるいはUFOマニア的な納得(笑)が本作のメインディッシュではないのは明らかですし、むしろありがちな宇宙人像であったからこそ、そういう事態に直面している一家のリアクションに、説得力があったのではないでしょうか。 ここで重要なのは、一連の宇宙人描写が観客の目から見てイケているものになっているかどうか、ではなしに、メル・ギブソン達の目から見てどうだったか、という事なんですよね。見どころは宇宙人騒動ではなくて、宇宙人騒動に遭遇しているギブソン一家のリアクションの方にあるわけですし。 それゆえに、宇宙人関連のネタはむしろごく平凡なものでなくちゃならなかったのではないか……という風に、ASDは思いました。 でもまぁ、ASD自身はあんな宇宙人でも結構ビビってしまいましたけどね(笑) 映像的には確かにどこかで見たような感じだったかも知れませんが、やっぱり見せ方が巧いです。ホアキン・フェニックスのビビり方とかも良かったですし(笑) そもそもシャマラン監督自身、「シックスセンス」の幽霊描写とか、「アンブレイカブル」の列車衝突シーンとか、ああいうスリラー演出がかなり巧いですからねぇ。何でも彼がこの作品を撮るに当たってモチーフにしたのは、ヒッチコックの「鳥」と、ジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」なのだそうであります。 (ちなみに、「ナイト〜」もまた「鳥」に強く影響を受けた作品だった、とどこかで聞いたような気も……) つうかこれ2本ともバリバリのスリラー映画、ホラー映画じゃないですか! 家族愛とか信仰とか言ってますが、ホントはそんな地味なだけのドラマなんか最初から撮るつもりなんてない、って言っているようなものではないですか!(爆) ……まぁ偉そうなことを言いつつ、実はASDさん上の二本は未見なんですけどね(爆) そんなこんなで、ASD的には「意外とキチンとした宇宙人侵略モノだったな」という風に感じました。まぁ直接的に侵略SFアクションとかが見たい人は、それこそ「インデペンデンス・デイ」とか「Xファイル」とか、他に見るモノは色々ありますんで、ソッチを見ていただければいいんじゃないでしょうかね(やや投げやり) それじゃ、この「サイン」って、一体どんな人が見れば楽しめる映画だったんでしょうか……という風に考えてみると、ねぇ……。 ……誰なんでしょうか(笑) ちょっと思いつきませんね(笑) なんかそういう、ツボの狭さというか、そういうところがめっちゃマニアックだなぁ、と思ってみたり……ううむ、シャマラン監督、侮りがたし! 願わくば、こういうマニアックな映画で全世界の純真な映画ファンをずっとだまし続けて欲しいなぁ、と思ってみたり……(爆) オススメ度:☆☆☆(つうかこれ、生半可な映画マニアでも付いていけない内容かも知れませんな(爆)) |