-cinema diary-

2002年12月の映画日記


 

2002.12.27 実験アニメ

「ミニパト」

監督:神山健治
脚本・音楽演出:押井守
キャラデザイン:西尾鉄也
アニメーション制作:プロダクションIG

鑑賞日:2002.10.28

プロダクションIGのサイト:
http://www.production-ig.co.jp/
上記サイト内の「ミニパト」のページ:
http://www.production-ig.co.jp/anime/minipato/


 1990年代に開発・実用化された多目的汎用機械「レイバー」。東京湾干拓という大事業「バビロン・プロジェクト」にあわせて一気に普及していったこの機械は、同時に犯罪に使用されるなどの社会問題を引き起こした。多発するレイバー犯罪に対応するために警視庁内に設立されたのがパトロール・レイバー中隊、通称パトレイバー隊であった――。


    *    *    *


 えーと……ホントは「独り言」の方でさらっと紹介する予定だったんですけど、結局こっちに移動してきました。あんまり大したことを書く予定もないんですけどね(笑)
 今年の春に劇場公開されていた「機動警察パトレイバーXIII」の併映だった短編「ミニパト」です。
 まぁパトレイバー自体金沢で上映してませんでしたのでASDは最初からビデオ待ちだったんですけどね。無事にレンタルビデオにて、3話とも鑑賞することが出来ました。
(ちなみに、この映画日記の原稿を書き終えた直後にWOWOWで3話とも放送してましたね……(笑))
 さて、ASDはそれで無事に鑑賞できたわけですが、実際の劇場公開に関しては少々変則的な形式で上映されておりました。全部で3話あるうち、1話だけを週替わりでバラバラに公開されるという、マニア泣かせな事態になってたんですよ。全部見ようと思ったら、劇場に三度も足を運ぶはめに……。
 ASDの場合は一番近い上映館が富山県でしたからねぇ。さすがにそこまでの気合いはありませんでした(笑)
 そーいえば、「ターンAガンダム」の時も前編と後編が一日おきに交互に上映、というヘンな形式でした。金沢ではクルマでは行きにくい映画館でやってたので、交通費を考えるとかなりの出費とあって、こちらも結局見逃してしまいました……ま、「ミニパト」とは無関係ですけど、なんでこんなヘンな形式ばっかり続いたんですかね、一体。



 で、肝心の本編ですが……一応「パトレイバー」本編のパロディっぽい話をチビキャラでやる、みたいなコンセプトなんですけど、何故か割り箸人形劇風の内容になってるんですよ。
 で、実際の作画は3D。割り箸人形をわざわざ3Dでつくって、それをCGアニメとして動かしているという……なんちゅうムダな事に挑戦しているんでしょうか(笑) しかもメイキング映像を見てみると、検証のために割り箸人形劇作家みたいな人に取材して、実際にスタッフの手で人形劇芝居を演じたものをビデオ撮影して、それを元に作画のタイミングを合わせている、というものすごい手間暇をかけているんですよ(笑) すげー。
 肝心の内容の方は、本編のキャラによるモノローグ的な一人語りによる小咄的なシロモノなんですが……その内容がひたすら濃ゆいのなんのって(笑) 
 何せ普通にパロディをやるんじゃなくて、「パトレイバー」本編の設定に関する検証を、本編のキャラ自身がひたすらマニアックに掘り下げていくという……ものすごいシュールな展開、かつ異様なテンションに唖然としてしまいました(笑)
 一応1話と2話がそんな感じ。第1話「吠えろ!リボルバーカノン」は、主役マシンである98式の主要武装である「リボルバーカノン」についての考察。ハンドガンの形状をしているのに「カノン」、つまり砲とはこれ如何に?というところから始まって、設定上の口径と実際の作画から見る口径に随分隔たりがあるんじゃないかとか、この大口径から発射される銃弾は果たしてどんなのだ、とか……(笑) マニアックな内容ですがミリタリー関係に乏しい方にはむしろヒジョーに分かりやすい入門編になってるんじゃないかと思いました(笑)
(てゆうかASD自身、大変参考になりました(笑))
 第2話では同様に「パトレイバー」という作品の企画上における、主役ロボットのコンセプトについて延々と語り続けてますし(笑) 第3話だけフツーにパロディでしたが、逆に一番マトモな内容だったかと……(笑)



 ちなみに「パトレイバー」が最初にビデオアニメ化されたのは1988年の話。その後TVアニメになったりして、1993年につくられた劇場版2作目が、多分アニメでは最後だったんじゃないかと思います。10年後の近未来という設定でしたが、実際に10年が経過した今見返すと、ちょっと感慨深いものがありますね(笑)
 「ミニパト」自体はその「パトレイバー」のまったくの楽屋オチ的パロディに過ぎませんので、当時本編を見ていた人以外にはまったくオススメ出来ませんが(笑) まぁ一応「少年サンデー」でコミックも連載していましたし、TVシリーズにもなりましたし、かつてちょっとでも見ていたぞ、という方はぜひ一度ご覧になってみて下さいませ。



オススメ度:☆☆☆☆(あくまでも本編を知る人向け)




2002.12.27 トンメメ

「メメント」

監督:クリウトファー・ノーラン
主演:ガイ・ピアース、キャリー・アン・モス、ジョー・パントリアーノ、他

鑑賞日:2002.10.19

公式サイト:http://www.otnemem.jp/memento/

 最愛の妻を暴漢に殺されたレナード(ガイ・ピアース)。彼自身も頭部を負傷し、新しい事が何も覚えられなくなるという、一種の記憶障害を煩ってしまう。その症状から彼の目撃証言は警察には信用されず、犯人は結局見つかることはなかった。独自に犯人を追う彼は、記憶をもてない代わりに自らにメモを残し、それに従って行動するのだったが……。


    *    *    *


 DVDにて鑑賞。これは……これは傑作ですよ!
 まぁ一応あらすじは書いてみましたが、特殊な構成なのであらすじというよりは、設定ですな。上記のような経緯で犯人探しを続ける主人公なのですが……この設定が、実に秀逸なのですよ。
 あらすじに書いたとおり、彼は新しい事を覚えた先から忘れてしまう、という難儀な症状を抱えています。そこで彼は常にメモをしたため、そのメモに従って行動するわけですね。常にポラロイド写真を携行し、誰かに会ったら写真を撮り、そこにメモする。何かを発見すれば、写真を撮ってメモを書き込むわけです。
 そして、どうしても忘れてはならない重要な事……例えば犯人の手がかりなどは、イレズミとして身体に書いておくわけです。そんなこんなで彼は身体中イレズミだらけなんですけど(笑)
 で、ですね。問題なのは、これで本当に犯人を追えるのかどうか、という事なんですけど……。
 まぁこれでそのまんま犯人探しミステリを展開するとスゴイ事になりそうですが、本作にはもうひとつ仕掛けがあります。お話を始まりから語るのではなく、結末を最初にバーンと描いて、そこから順番に過去にさかのぼっていくのですね(笑)
 主人公は数分という短い時間は記憶を保てますので、その記憶がもっている間の数分を1シークエンスとして描き、それを本当に時間を逆行して並べてあるのですよ。さすがにそれでは構成として不自然なので、シーンとシーンの合間はモノローグを語る別のシーンで繋がれています。
 さらには、そのモノローグの時間軸にお話が合流して……そこで最終的に、何故冒頭の結末に至ったのか、という真相が明らかになるわけです。
 この構成もまた実に秀逸です。各シーンがいきなり訳の分かんないところから始まるので戸惑わない事もないんですけど、これは主人公自身がそうなのだ、と思えば納得いくんじゃないでしょうか。何せふっと記憶を失って「ここどこ?」状態になるわけですし(笑)
 まぁ、そういうイレギュラーな構成が災いして、最後までお話の筋道を理解しながら鑑賞するのはチト難しいかも知れませんが……そこでつまづかなければ、あっと驚く驚愕の真相を知る事が出来ます。
 いやー、これは見事です! その一言に尽きます!



 ちなみにDVDには、時間軸通りにチャプターを並べ直して再生するという画期的かつベタな機能がついていたりします(笑)
 一応本編観賞後に、この機能でも一通り見てみたんですけどねぇ。これを見ると、主人公がメモだけを頼りに犯人探しをしているのが、実に危なっかしい行為である事が分かります(爆)
 そういう意味では、単にトリックがすごい、というわけでもないんですよ。作中で主人公は何かにつけ「人間の記憶は曖昧だ」というような事を繰り返し言っています。そんな症状なんて無くても、覚え違いなどしょっちゅうあることだ……というわけですが、かと言えばメモさえとっていれば完全、というわけでもないんですよね。
 特に小説を書いている方などで経験のある方もいらっしゃると思いますが、何かすごい画期的で斬新でめちゃくちゃ面白いネタを思いついて、「こいつは傑作だぜ!うははははー」とか思いつつ張り切ってメモするじゃないですか(笑)
 それを後から、ぽつんと1行だけ何か書いてあるのを読み返しても、ゼンゼン意味が思い出せなかったり(笑) 「オレって何がいいたかったんだろう……」とか「これのどこが面白いの?」と真剣に悩んでみたりとか……(爆) そういう事は、確かにあります(笑)
 そういう意味では、記憶もメモも、本当に人間が頼れる確かなものなんてないんだぞー、てな物ですけど、本作の主人公はその一方を現実に失っていて、その事実がもう片方も危うくしているわけで……。
 そういう拠り所の無さっつうのが、何げにやるせないというか、切ないというか……そういう気分にもさせてくれる映画でした。
 そういうテーマ的な裏読みをしてもよし、トリック性をとことん追求するもよし、繰り返し繰り返し見る価値のある映画だったのではないかなと思います。
 ううむ、これは傑作だー!(ちょっとしつこい)



おすすめ度:☆☆☆☆☆


 


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