-cinema diary-

2003年2月の映画日記


 

2003.2.8 どこかでみたぞ

「トレーニングデイ」

監督:アントニー・フークワ
主演:デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、他

鑑賞日:2002.11.3

公式サイト:http://www.warnerbros.co.jp/trainingday/


 制服警官から麻薬課へ転属し、念願の刑事になったジェイク(イーサン・ホーク)。その1日目は伝説的な名刑事であるアロンゾ(デンゼル・ワシントン)と組んでの実地訓練だった。そこでジェイクは、通常の警察官の職分を逸脱した過酷な現実を思い知らされる。犯罪者を追うために自ら法を犯すことも辞さないアロンゾのやり方に、ジェイクは次第に疑問を覚えていく。彼の長い長い一日はどのような顛末を迎えるのか……。


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 DVDにて鑑賞。
 主演のデンゼル・ワシントンが、見事アカデミー主演男優賞を獲得した一作です。
 まぁそれゆえに一番の見どころがデンゼルの演技であることは明白なんですが、監督がチョウ・ユンファ主演の「リプレイスメント・キラー」の人だというのには一抹の不安を覚えてみたり(笑) でも実際見てみると、意外にいい映画でありました。
 ちなみにその「リプレイスメント〜」はジョン・ウーのヘタなモノマネみたいな映画でしたが(っていうかそのジョン・ウーが製作総指揮だったんですが)、こちらの方はそういう絵面重視ではなくて、ドキュメンタリータッチの割と地味な作りの作品だったかと。そういう意味では心配は取り敢えずは杞憂でありました。
 ……いやー、しかしとにかくすごい映画でしたな(笑)
 まぁ敢えて言わなくても分かり切っている事ではありますが、やはりデンゼル・ワシントンの演技、これに尽きます。何せほぼ特に全編に渡ってデンゼルがオーバーアクトな一人芝居を延々続けているだけ、と言い切っても差し支えなさそうな感じなんですよね(爆)
 事実、彼の演技を見ているだけで2時間充分に飽きないような映画になっていたかと(笑) ずっと出ずっぱりのデンゼルと相棒のイーサン・ホーク、二人のやり取りを延々捉えているだけなんですよねー(笑) 特にドラマを大げさに盛り上げたりというクサイ演出をせずに、一日の出来事を淡々とドキュメンタリー的に捉えていたわけですが、なかなかイイ撮り方だったかと思います。



 ちなみにデンゼル・ワシントンは今回初めて本格的な悪役を演じているわけですが……悪のカリスマ、と言うような本当にすごくすごく悪いヤツ、というわけではありませんでしたね。
 他の役者だとこういうキャラを演じると、どーしても「悪の美学」みたいな方向で頑張ってしまうんでしょうけど、このデンゼル演じるベテラン刑事はそういう美学を持った確信犯的悪人ではなくて、むしろ元々は正義漢だったのに、何かの拍子に堕落してしまった人物なんですよね。
 そういう風に人間的には弱さを内包した人物なのですが、刑事としては確かにカリスマ性をもったベテランで、人としての強い部分と弱い部分とが紙一重のところで隣り合わせになっている、という感じです。
 ううむ、なんかわかりにくい説明ですけど……。「本当は善人なんだけど任務のために汚い手段も辞さない」という側面と、「任務のためなんだ、と言いつつ悪事を正当化している」という善と悪の二つの側面が描かれて、じゃあ一体この人はいい人なのか悪い人なのかどっちなのよ?と見ていて混乱してくるっつうのが、このお話の最大のポイントなのでありました。
 それって悪役らしい悪役を演じるよりも、確かに難しそうです。まぁデンゼルの場合どの出演作を見ても「オレの演技はすごいだろ!」という分かりやすいオーラが出てますので(笑)、そういう意味でも大変分かりやすい「いい演技」でありました(笑)



 ……あとですね、本作のDVDには映像特典として「未公開シーン」が収録されているのですが。
 でもこれ、見た感じ本物のボツ映像みたいな感じなんですけど……(笑)
 未公開シーンって普通は「公開を前提にしつつも何らかの事情でお蔵入りになったシーン」の事を指すんじゃないかと思いますけど、ここに収録されているのは、どっちかってぇと「編集上不要と判断されカットされたシーン」というニュアンスなんですよね。
 うーむ、こういうのは未公開シーンとは言わないのでは……? 単なる没テイクに過ぎないんじゃないの……?
 未公開シーンを復刻した長尺版の事を「ディレクターズ・カット」という言い方をします。これは何かと言いますと、文字通り「監督編集版」という事になります。
 じゃあ劇場公開されたバージョンってのは何なのかといいますと、これは実際はプロデューサーによる編集版、という事なんですよね。
 普通、一番エライのは監督、という風に思われがちですが、ハリウッド映画の場合はプロデューサーが映画を作るために、監督を雇って撮らせている、というニュアンスなのです。一番偉いのは監督をこき使ってるプロデューサーなんですよ!(笑)
 ジョージ・ルーカスやスティーブン・スピルバーグやジェームズ・キャメロンが自分でプロダクションを設立してプロデューサーも兼任するのは、要するに他人に最終編集権を任せたくないから、というわけでして。
 ……なんか余談になってしまいましたが、本作の場合劇場公開バージョンでもって確かに監督の意図通りの内容になっているのではないかと思われます(笑)
 まぁ、それはそれとして。
 その中にですね、デンゼルが新米のイーサン・ホークに「昔のオレだ」と言って一枚の写真を見せるシーンがあるのですが。
 そこに写っていたのは制服警官姿の若かりし日のデンゼルの姿。これどっかで見たことあるなぁ……と思っていましたら、かつてデンゼルが主演していたアクション映画「リコシェ」の1シーンではないですか(笑)
 これってスタッフのお遊びだったんでしょうかねぇ?(笑) そのシーン自体は、作品のテーマをちょっとあからさまにほのめかし過ぎかなぁ、という印象で、カットされたのは何となく頷けるのですが、この写真はどうにかして残して欲しかったかも……(笑)



おすすめ度:☆☆☆☆(デンゼルの演技に対して)




2003.2.8 「ポーの一族」じゃないぞ(笑)

「インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア」

原作・脚本:アン・ライス
監督:ニール・ジョーダン
主演:ブラッド・ピット、トム・クルーズ、キルスティン・ダンスト、アントニオ・バンデラス、クリスチャン・スレーター、他

鑑賞日:2002.11.2

 ラジオ番組を制作しているマロイ(クリスチャン・スレーター)は、自ら吸血鬼だと名乗る不思議な男ルイ(ブラッド・ピット)にインタビューを試みる。
 ルイの物語は18世紀末、アメリカ建国以前にさかのぼる。吸血鬼レスタト(トム・クルーズ)との出会いによって永遠の命を手に入れたルイ。人の血を吸って生きる吸血鬼としての宿命を受け入れられずに苦悩を続ける彼だったが、少女クローディア(キルスティン・ダンスト)を吸血鬼の仲間に引き入れたことから、数奇な物語はさらに数奇な命運を辿るのだった……。


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 「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」を鑑賞しましたので、比較検証の意味でもってDVDにて久々に再見しました。
 1994年の作品ですからこれも結構昔の作品になりますねぇ。改めて見返してみると、キャストがかなり豪華です。トム・クルーズは今みたいに自分のプロダクションを設立してオレ様映画(爆)を撮り始める前でしたが、この当時ももちろんスターには違いありませんでしたし、ブラッド・ピットもこの当時まだまだハンサムなキャラで通ってた頃。今のようにちょっと小汚いワイルドなイメージが出てくるのは、もう少し後の話です。
 この二人がくんずほぐれつ……でもありませんがまぁ共演するという事で、確かに一部の女性ファンにはたまらん感じの内容だったかと(笑)
 あと意外だったのは後半登場するアントニオ・バンデラスまでもが、ラテンの濃ゆいイメージを抑えて結構頑張って少女漫画的な美形に挑戦していたのが印象的でした(爆) まぁ成功していたかどうかは定かではありませんが……(笑)
 他にも、インタビュアーとして登場するクリスチャン・スレーターもこの当時はまだ青春スターのイメージを引きずってましたし……禁煙して太る前ですし、パクられて株が下がる前ですし(爆) 当時としてはやっぱり一部の女性に……もういいか、それは。
(ちなみにスレーターは当時急逝したリバー・フェニックスの代役でした)
 続編である「クイーン〜」がゲイ的雰囲気が濃厚なアンダーグラウンドな世界だったのに対し、こちらは至って正調な、耽美ロマンのイメージだったように思いますってそれは正調なのか? まぁともあれ(笑)、アメリカ建国以前の時代までさかのぼる堂々たるコスチュームプレイで、歴史ロマンとしても充分な見応えのある作品だったのではなかろうか、と思いました。「クイーン〜」よりは吸血鬼モノとして全然真っ当な内容だったのではないか、と(笑)
 ちなみに「スパイダーマン」のヒロイン役が割と不評っぽかった(爆)キルスティン・ダンストですが、本作出演当時はまだれっきとした子役で……可愛らしいお子さまだったんですねぇ……(苦笑)



オススメ度:☆☆☆(「クイーン〜」よりはオススメだと思います(笑))




2003.2.8 Welcom to the Xander Zone!

「トリプルX」

監督:ロブ・コーエン
主演:ヴィン・ディーゼル、サミュエル・L・ジャクソン、アーシア・アルジェント、他

鑑賞日:2002.11.1

公式サイト:http://www.xxx-triplex.com/


 過激なパフォーマンスでもって裏世界でカリスマ的な存在である悪党ザンダー(ヴィン・ディーゼル)。彼はNSAのギボンズ(サミュエル・L・ジャクソン)に目をつけられ、潜入捜査官として抜擢される事になる。腕利きの捜査官よりも、同じ札付きのワルの方が任務に適している、という判断だった。犯罪歴の抹消を条件にプラハに送り込まれた彼は、「アナーキー99」と呼ばれる凶悪犯罪組織に単身乗り込んでいくが……。


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 というわけで、「トリプルX」です。
 ってゆうか、ものすごくコメントに困る映画なんですけどぉ……。
 そもそも主演のヴィン・ディーゼルですが、どこがイイのやらASDにはサッパリ分かんないんですけよ(爆) 「プライベートライアン」に出てたときなんか、確かに結構イイ味のある役どころだったかなぁ、という気もしないでもないですが、実際主演作である本作を見ても、一体どういうところが評価されているのか、なんかよく分からないんですよねぇ……むむむ。今度同じロブ・コーエン監督とのコンビ作「ワイルド・スピード」も見てみるとしましょうか。



 さて……先述の「ワイルド〜」は、アメリカの若者に実は密かに人気だという、改造日本車によるカーアクションが満載だったわけですが(注:欧米ではスポーツカーというのはリッチな人向けのクルマであり、若い衆がヤンチャ出来る安いスポーツカーを作ってるのって日本のメーカーぐらいなんですよね)、本作でもヴィン・ディーゼルは議員さんのクルマを谷底に落としてフリーフォール&スカイダイビングをするわ、モトクロスバイクで銃撃戦の現場を逃げ回るわ、雪崩の雪山で決死のスノーボードを敢行するわ……というわけで、いわゆるエクストリーム系のアクションが満載の映画でありました。
 うーん。アメリカ人の若い衆はこういうのがスキなんですかね。
 ま、実際見てみましたらば、意外に真面目にスパイものっぽい展開になってたのでちょっと意外でした(笑) 007もビックリなハイテク小道具を使いこなしてたりしますし……ハイテク装備満載のクルマとか、割とベタなものも出てきますし(笑)
 まぁアクション映画としてそこそこ面白いとは思うのですが、何となく予定調和的で盛り上がりに乏しいのも古き良きスパイ映画っぽく無いこともないな、と思ってみたりして(笑)
 大人数で気軽に見るにはそこそこイケてる映画だったんじゃないでしょーか、という事で。



オススメ度:☆☆☆(特に不可も可もなし)




2003.2.8 うーむ

「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」

原作:アン・ライス
監督:マイケル・ライマー
音楽:ジョナサン・デイビス
主演:スチュワート・タウンゼント、アリーヤ、マーガリート・モロー、ヴァンサン・ペレーズ、他

鑑賞日:2002.10.31

公式サイト:http://www.queenofthevampire.jp/


 長き眠りについていた吸血鬼レスタト(スチュワート・タウンゼント)はロックミュージックの破壊的な響きによって現代に目覚め、やがてカリスマ的なロックスターとして一躍スターダムにのし上がってゆく。彼の行動は吸血鬼の実在をアピールするものであり、それに怒りを覚える他の吸血鬼達が彼の命を狙おうとする。そんな中、やがてレスタトの歌声は数千年の眠りについていた吸血鬼の女王アカーシャ(アリーヤ)までもを目覚めさせてしまう……。


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 「インタヴュー・ウィズ・ザ・ヴァンパイア」に続く、アン・ライス原作の吸血鬼物の映画化です。と言っても小説の続編エピソードを映画化したというだけで、「インタヴュー〜」とはキャスト・スタッフともに直接の関係はないみたいですけどね。
 しかし……何やら忙しい映画でしたなぁ。現代に甦った吸血鬼レスタトと彼を狙う吸血鬼達との戦い、吸血鬼でありながら人間的な弱さをもったレスタトと人間でありながら吸血鬼に惹かれていく人間の女性ジェシーとのあれやこれや、さらには吸血鬼の女王アカーシャが復活してああ大変だ!てな風に、何ともサービス満点の内容なのですが……。何だかビミョーにまとまっているようで、まとまっていなかったような気もしないでもないです(笑)
 復活したアカーシャを演じているのは歌手のアリーヤ。「ロミオ・マスト・ダイ」でジェット・リーと共演し、「マトリックス」の続編にも出演が決まっていましたが、2001年5月に惜しくも飛行機事故のために若くして物故してしまいました。
 本作はそんな彼女の、遅れてやってきた遺作、という事になります。
 が。それはいいんですけど、ぶっちゃけた話これが遺作ってのもキツいような気が……(汗) 役柄上確かにものすごい存在感はありますので、そこから本作の彼女を評価する声もあったりなかったりするんですけどねぇ……このアカーシャ、ストーリー上の扱いといい、実際の絵面といい、「登場人物の一人」っていうよりはそのまんまモンスターみたいな感じだったかと(汗) それこそエイリアンとかプレデターみたいな……(爆)
 まぁ確かにすごい強そうでしたけどね。でもねぇ……まぁそれ以上は何も言いますまい(汗)



 主人公レスタトですが、前作「インタビュー〜」ではトム・クルーズが演じておりました。40歳になってもまだハンサムな美青年という考えてみりゃ謎な人ですけど(笑)、そのせいかどうしても比べちゃいますよねぇ……。
 本作でレスタトを演じるのはスチュアート・タウンゼント。結構頑張っていたとは思いますが……吸血鬼ないしカリスマロックスターというのに難のある容姿だった、というわけではありませんが、圧倒的なカリスマ性という意味では完全に負けていたような気がします(爆)
 まぁそうは言いましても、同じレスタト役でも前作と本作とでは役回りにビミョーに違いがあるのですよ。前作のレスタトはブラピ演じるルイを吸血鬼の世界に導く側でしたが、今回登場するその他の吸血鬼の皆さんって、基本的にはレスタトより目上な人たちばかりなんですよね。レスタト自身が吸血鬼になった経緯も回想シーンの中で描かれていますし、人間の女性との間に恋愛的な要素もありますし……ちょっと人間らしい弱みを含んだような役回りでして、そういう意味ではあまり完璧なカリスマではない方が作品的にはプラスだったのかも知れません。
 それとですね。前作や原作の場合、萩尾望都の「ポーの一族」との類似を指摘されていたようにどっちかってぇと少女マンガ的なセンスで言うところの「耽美」な作品だったわけですが、今回はそういうボーイズラブ的な側面よりも(いや前作がボーイズラブだったと断定するものではありませんが(笑))、むしろストレートにゲイちっく、ホモちっくな雰囲気が濃厚だったかな、というような気が……(爆)
 彼を吸血鬼にしたヴァンサン・ペレーズ演じるマリウスも、性別を超越した美形っていうのではなくてなんか妙にオッサンくささが濃厚な感じの人ですし、その他顔見せする吸血鬼の皆さんにしてみても、華麗で耽美でっていう絵に描いたような無味無臭の美しさというよりは、全体的にナニかが濃厚に匂ってきそうな感じなんですよねぇ……(苦笑)
 それに前作では意外にも、直接的にセクシャルなニュアンスというのが希薄だったわけですが……本作は直接エロいシーンはないものの、セクシャルなイメージは割と濃厚だったように思います。そういう目で見るとレスタト自身もホモちっくというか、バイセクシャルっぽいというか……(爆)
 だってさー、血を吸う目的で女の子に近寄ったものの、イチャついてる時に股間に触れられるのをロコツに避けるのはどうよ、と思ってみたり(爆) それをしっかり意識的にカメラに収めている演出も演出だな、とも思いますが(爆)、そもそもそういうセクシャルなイメージが濃厚なのに、襲われる被害者は明らかに男性の方が数が多いような気もしますし……それもまたどうかと(笑)



 あと肝心な事を言いますと、レスタトに惹かれていく人間の女性ジェシーが、何と言いますか作品の妖しげな雰囲気にそぐわない、あまり容姿端麗な感じがしないってのもどーかと思ってみたり(爆) これは演出や設定がどうこうというより、単純にキャスティングのミスのように思えました。
 あとは……えーと、えーと、何か書くことありましたかねぇ。あーそうそう、カリスマロックスターなレスタトですが、バンドの歌は個人的には結構イケてたように思います。サントラ盤を思わず買いそうになりましたが、探しても見つかりませんでした……(笑)



オススメ度:☆☆☆



 


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