-cinema diary-

2003年4月の映画日記


 

2003.4.20 一番心に残ったのは……

「ロード・トゥ・パーディション」

監督:サム・メンデス
主演:トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウ、他

公式サイト:http://www.foxjapan.com/movies/roadtoperdition/

鑑賞日:2002.11.21


 マイク・サリバン(トム・ハンクス)はマフィアのボス・ルーニー(ポール・ニューマン)の無二の片腕。だがある晩、彼は自分が居合わせた殺しの現場を息子のマイケルに目撃されてしまう。それが原因で追われる身となったサリバンはマイケルを連れて逃亡の旅に出るが、そんな彼らに殺し屋マグワイア(ジュード・ロウ)が迫る……。


    *    *    *


 アカデミー作品賞を獲得した「アメリカン・ビューティ」のサム・メンデス監督の最新作です。またトム・ハンクスが初めて悪役らしい悪役を演じた事、ポール・ニューマンとの共演もトピックでしょうか。
 あらすじだけ読むとすげぇベタなギャングアクション物のような印象も受けますが、実際にはサム・メンデスですから、そんなにすんごいアクションが展開されているわけではありません(笑) むしろ逃避行の中で父と子が絆を確かめ合う、ロードムービー的な作品だったように思います。
 そんな感じですので、トム・ハンクスもゼンゼン汚れ役じゃないですよねぇ。殺しの現場と言っても、物騒に殺しまくってたのは同行していた連れの方でしたし(笑)
 本作のポイントとなるのは、やはり「父と息子」という関係でしょう。汚れ仕事をしているおかげで家族に負い目を持っているサリバン、厳格で良き父親ではあってもどこか家族との関係に溝があって……そういう親と子が、旅を通じて絆を取り戻していくわけですね。
 同時に、トム・ハンクス演じるサリバンとポール・ニューマン演じるマフィアのボス・ルーニーの関係もまた、仕事を通じてのまさに「ファミリー」なわけなんですよね。ハンクス親子の命を狙っているのは、このルーニーの不肖の息子なわけですが……そんなデキの悪い実の息子とよく出来た義理の息子との間で揺れ動く父親ってのを、ポール・ニューマンが演じているわけです……って。
 ……すいません、まるでどっかからの引用みたいな事を書いてしまいました……(爆)
 サム・メンデスの映画って、こういう通り一遍の解釈をするとある程度深みのある作品のように思えるのですが、実際のところはそれ以上の深読みやウラ読みにはあんまり対応していないような気がしてみたり(爆)
 むしろ、人間ドラマとして何か深いものを描こうとしているのではなしに、そういう「ドラマのある風景」を映像的に美しく捉える方に興味があるんじゃないのかなぁ、とASDは思うのですが……。
 前作「アメリカン・ビューティ」と同じように回想から始まる本作ですが、冒頭のモノローグ部分、キラキラと美しく輝く湖をマイケル少年がぽつんと眺めている立ち姿だったり、あるいはハンクス親子二人がなんにもない田園風景の一本道をクルマで延々と走り続けてたりする、その風景の何気ない美しさだとか。あるいは彼らが途中で世話になる農場の、平和でのどかで実に静かな姿だったり……。そういう風に淡々と流れていくなんでもない映像の数々が、さりげなく美しかったりするわけです。
 考えてみればこの映画自体、いかにもベタなギャングらしい様式美みたいなものを、単にスタイリッシュに描きたかっただけなのかなー、という風にも思えますし……アカデミー賞の名前を前にちょっと構えてしまいますが、実は意外と浅い所で勝負かけてる人なんじゃないかなー、という気がしました(笑)
 そういやジェシー・テイモアの「タイタス」なんかも奇天烈なビジュアルが印象的でしたし、舞台出身の演出家って意外とドラマ性よりもビジュアルにこだわりがあるのかも知れません。
 舞台に疎い我々からすると、舞台劇って演技とかドラマがメインのような気がしますが……CGを使えば何でも出来る映画の世界よりも、ステージ上という限定空間かつリアルタイム進行、ごまかしの効かない制約の中で物語世界を構築していかなくちゃいけない舞台演劇の方が、演出家のビジュアルセンスっつうものが強く要求されるのかもなー、と思ってしまったのでありました。



 ……という分かったような分からない話をしつつ、本編に関して今まで意識的に触れなかった事がひとつ。
 本作で一番印象に残るのは、サム・メンデスの演出アプローチでもトム・ハンクスの悪役でもなしに、殺し屋役のジュード・ロウなのではないでしょうか。
 何と言っても衝撃的なのが、あの頭髪……!(笑)
 まぁしかし、電撃的なショックを受けるほどにはっきり写ってるシーンが無かったのがチト残念かも知れませんが(笑) 丁度フレームが切れてたりとか、帽子かぶってたりとか……そんな中途半端なら別にやんなくてもイイじゃん、という気もしないでもなかったり(笑)
 まぁ猫背で神経質な印象のサイコ野郎ってだけで充分ファンにはショックだったかも知れませんけどね(笑) そういうキャラを、実に生き生きと演じていましたが……頭髪のせいもあってかビミョーにジョン・マルコビッチとキャラがかぶってない事もなかったりするような気がしました……(笑)



オススメ度:☆☆☆(そんなすげぇ映画というわけでも……(苦笑))




2003.4.20 あの人は昔……

「リコシェ」

監督:ラッセル・マルケイ
主演:デンゼル・ワシントン、ジョン・リズゴー、アイス・T、ケビン・ポラック、他

鑑賞日:2002.11,15


 ニック・スタイルズ(デンゼル・ワシントン)はかつて新米警官だった頃に凶悪犯ブレイク(ジョン・リズゴー)を逮捕したことをきっかけに、出世の階段を上り始める。検事補になった今では最愛の妻と二人の子供という大切な家族も出来、更には青少年を犯罪から更生させる施設を作ろうと、募金活動にも躍起になっていた。
 そんな中、刑務所に送られたブレイクは日増しにニックへの復讐の思いを募らせていく。ついに脱獄を果たした彼は、巧妙な罠でニックを追い詰めていくが……。


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 デンゼル・ワシントン、ジョン・リズゴー主演の1990年の作品です。
 当時から演技派として知られていたこの二人が、ジョエル・シルバー製作のプログラムピクチャー的アクション映画で対決を果たすという辺り、当時でもそれなりにすごかったかも知れない映画だったわけですけども(笑)
 ってゆうかアクション映画だと思っていたんですけど、10年ぶりくらいに見返してみると、どっちかてぇと普通のサスペンス映画といった方がいいような気がしました。なにせクライマックス以外はアクションらしいアクションも特別ありませんでしたし……。
 で、やっぱり見どころは二人の演技。デンゼルは娯楽サスペンス映画の主役だというのに、いつもの調子で快調に飛ばしております(笑) 冒頭の遊園地でのストリップ(爆)に始まり、検事補として法廷で熱弁を振るう様子、さらにはリズゴーに追い詰められ、ラストでキレてしまうくだりまで……いかにも役者バカ・デンゼルらしい熱演ぶりでありました(笑)
 しかしもっとすごいのはジョン・リズゴーの方でしょう(笑) デンゼルの役者バカっぷりはある意味「いつも通り」なのですが、このジョン・リズゴーの場合はちょっと見逃せない感じです(笑) デンゼルに刑務所送りにされた事を逆恨みし、復讐を胸に誓うのはいいんですけど……刑務所の独房の中で、彼は冷静沈着なプロの犯罪者から、キチ(ピー)へと華麗なる変貌を遂げるのですな(爆) にっくき敵に関する新聞記事を全部スクラップするあたりはまだいいとして、デンゼルの写真をコピーしまくって切り抜いて壁にベタベタ貼って悦に入ってる様子なんか、「復讐に燃える」を通り越して、ストーカーちっくなヤバイ世界にすっかり足を踏み入れてしまっています(爆) 変質者めいたサイコ犯を喜々として演じるリズゴーが、悪役らしい凄みやら貫禄などは違うイミでかなり怖かったです(笑)



 ちなみに本作はレンタルビデオで鑑賞したんですけど、テープのコンディションが結構ツラい感じでした。まぁ劇場公開当時に発売になったソフトでしょうから、すでに10年もののビンテージソフトですよ(笑) ワイドスクリーンが無惨にトリミングされていたりして、近年DVDとかWOWOWでしか映画をみていない身にはかなりフラストレーションの溜まる仕様でありましたとさ(笑)



オススメ度:☆☆(色々書きましたが特に見なくちゃイカンというものでは……(爆))




2003.4.20

「スズメバチ」

監督:フローラン=エミリオ・シリ
主演:ナディア・ファレス、ブノワ・マジメル、サミー・ナセリ、パスカル・グレゴリー、他

公式サイト:http://www.suzume8.jp/

鑑賞日:2002.11.15


 東欧マフィアのボス・アベディンはドイツで逮捕され、裁判のためにフランスに移送されることとなる。護送任務に当たる特殊警察のラボリ中尉(ナディア・ファレス)らだったが、そんな彼らはマフィアの武装集団の襲撃に遭遇し、護送車ごととある工業倉庫に逃げ込むこととなる。
 たまたまその倉庫に強盗に押し入っていたナセール(サミー・ナセリ)ら5人の若者達、当直の警備員だったルイ(パスカル・グレゴリー)らは、成り行きから銃撃戦に巻き込まれることになる。倉庫は重武装のマフィア達に包囲され、一行は絶体絶命の篭城戦を強いられるのだが……。


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 えー、何と言いますか……この邦題、もーちょっと何とかならなかったものでしょうかね(笑)
 多分原題は「蜂の針」とかいう意味なんだろうと思いますけど、そのまんまじゃねーか、というかなんというか……(笑)
 ちなみにASDはこの映画をタイトル以外ほとんどなんの情報もないままに見に行ってしまいました。無謀だなー(爆) まぁそういう意味では、何げに気になるタイトルが付けられていた、という事なのかも知れません……って、何だそれじゃ成功しているんじゃないですか(笑)
 見に行く前は「エイリアン2風のSFアクションもの」と小耳に挟んでたんですけど、実際見てみたらゼンゼンSFじゃなかったです。まぁ確かにエイリアン2っぽいアクション映画ではあったんですけど(笑)
 どういう事なのか、以下説明してみますと……。
 あらすじにありますように、本作の舞台は「倉庫」です。ここに立て籠もって、マフィアの襲撃に耐えるわけですな。これは植民惑星の居住施設にこもってエイリアンの襲撃に耐えようとした「エイリアン2」に、確かにシチュエーション的に似ています(笑)
 ナイトシーンの多さ、倉庫内の雑然とした雰囲気、わらわらとモンスターの群れのように襲ってくる敵(全員暗視ゴーグル装備で、顔がまったく見えません)、そして篭城による銃撃戦……と、まぁ確かに、エイリアン2的な要素がぞろぞろと揃っているわけですよ(笑)
 立て籠もって戦う、という以外にはあまり人間ドラマの方に振らない淡々とした演出も、それっぽさに拍車をかけているのかも知れません。こういう犯罪アクションものの場合、どうしても友情とか復讐とかいう方向にお話を持って行きがちなのですが、本作の場合むしろ淡々と立て籠もりの状況の推移を描写していくことで、こういう状況に巻き込まれた人々の心情よりも、正体不明の敵に囲まれて絶体絶命!っていう臨場感の方を重視していたんじゃないでしょうか。特殊部隊の面々とか、渋い夜警のおっさんとか、個々のキャラクタも割と印象的でありましたが、これはむしろヘタに掘り下げない分、底の浅さが露呈せずに済んだ、という感じでしょうか(爆)
 あと「TAXi」のサミー・ナセリがギャグではない真面目な役で出ているのにちょっとビックリしてみたり(笑) しかもアクションで活躍するのかと思わせておいて……まぁネタバレになりますので敢えて書きませんけど、TAXi2のバカイメージは割と上手く払拭できていたんじゃなかろうかと思います(笑)
(でもTAXi3がまた公開になるんですよねぇ……(苦笑))
 ラストシーンもハッピーエンドと言えるのかどうかかなり曖昧ではありましたが、そういう娯楽映画的な「おせっかい」な描写をしないクールさが、この作品の魅力だったのかも知れません。
 ……ただやっぱり、この邦題はなんとかならんかったんか、と思ってみたり(爆) そもそも意味がわからないよ!(笑)



おすすめ度:☆☆☆☆(フランス発エンタテインメントですが、ベッソンのおバカ映画とはまた違った趣きだったり……(苦笑))



 


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