-cinema diary-

2004年3月の映画日記(復活篇・その1)


 

2004.3.28 冒険だって悪かないぞ

「トレジャープラネット」

原作:ロバート・ルイス・スティーブンソン
監督:ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ
声の出演:ジョセフ・ゴードン・レヴィット、エマ・トンプソン、ブライアン・マーリー、マーティン・ショート、他

鑑賞日:2003.8.1


 ジム少年は幼い頃から冒険に憧れていたが、父親のいない家庭環境のせいか、素行不良で母親を困らせてばかりいた。
 そんな彼はふとしたことから、伝説の海賊フリントが宇宙のどこかに隠したという財宝の在処を示す地図を手に入れる。それを手に念願の冒険の旅に出たジムは、乗り込んだ船でシルバーという男に出会い、船乗りとしての様々な事を学ぶのだった。だが、実は彼はフリントの財宝を狙う海賊だった……。


    *    *    *


 んー、どうなんでしょ、これは(苦笑)
 かの名作「宝島」の舞台を宇宙に置き換えて云々……というのはまぁ、安易といえば安易ですが悪くない発想だとは思います。が、ねぇ……。
 伝説の海賊の財宝を求めて、宇宙の果てまで行って帰ってくるようなごっつい大冒険が繰り広げられているというのに、終劇後のこの達成感の乏しさは一体何なんでしょうかねぇ……(笑)
 うーむ。
 このジョン・マスカー&ロン・クレメンツの監督コンビって、「リトルマーメイド」「アラジン」という、ディズニーが80年代の低迷期から大復活を遂げるに当たっての大重要作を手がけていますので、ASD的には結構注目してフォローしているつもりなんですけど……。その次に手がけた「ヘラクレス」辺りからどーにもこーにもおかしな事になっているように思います。何と言いますか、お話がとても説教くさいのですよ(爆)
 この辺り、順を追って説明してみたいと思います。
 まず「リトルマーメイド」ですが、原作はアンデルセンの「人魚姫」。主人公の人魚姫が海のもくずになって終わる悲劇的結末を大幅に改変し、あこがれの王子様をゲットするためにヒロインが華麗に奮闘するという、活劇調のサクセスストーリーになっておりました。ここで提示されたアクティブなヒロイン像は、それ以後のディズニーアニメに多大な影響を与えました。
 続いての「アラジン」は、アラビアンナイトの「アラジンと魔法のランプ」をモチーフにした作品です。アラジンという若者がランプの精の力を借りて憧れのお姫様に近づこうとしますが、邪悪な魔法使いの陰謀に巻き込まれる中で、ランプの精に頼らずに敵を打ち破ることで、若者が一人前の大人に成長する過程を描いている作品でありました。
 ……まぁここまでは、いかにもアメリカ映画らしい、実に健康的な成長物語なんですよ。これが「ヘラクレス」になると、随分とおかしな方向に向かいます(汗)
 「ヘラクレス」はタイトルの通り、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスの活躍をモチーフにした作品です。一介の若者ヘラクレスが、怪物を倒し英雄になるまでのサクセススストーリーとなっております……って、本来はそのはずなんですけど、実はこれはちょっと変則的なんですよね。確かにヘラクレスはいっとき英雄としてもてはやされるわけですが、そういうのは一時的な虚栄に過ぎないわけで、ホントに人間的に一皮むけた成長を遂げてこそ、「英雄」と呼ぶのに相応しいのだ……というようなお話になってるわけです。
 まぁこれはそれなりに破綻無くまとめられていますのでそんなにおかしいという気はしないのですが、冷静に考えると「ヘラクレスが怪物を倒して、英雄になる」という冒険活劇としての正当なプロセスが、そのままヘラクレス自身の人間的な成長とシンクロしないのは、「若者の成長を描いた物語」としてはビミョーに不自然ではないでしょうか(汗) この不自然さが、本作「トレジャープラネット」においてはかなりあからさまになっているのですね。
 本作のストーリーの骨子は言うまでもなく「主人公ジムが、冒険を乗り越えて伝説の財宝を手に入れる」というお話です。ところが「財宝を手に入れる」という目的と、ジム自身の人間的な成長の物語とが、やはり一致していないのです。何せ憧れの冒険行の真っ最中だというのに、相方であるシルバーはしきりに「人生に目的を持て」「冒険なんかよりももっと大切な事がある」というような事を、延々ジムに対して諭しているのですよ(笑) まぁ言いたいことは分かるんですが、それではまるでせっかく華々しく映画として描いているこの冒険行そのものが、主人公の人生の中であまり重要なものにはならない、脇道に過ぎないかのような言われようじゃないですか。
 敢えてオチをあかしてしまうと、ジムら一行は財宝は発見出来たものの、持ち帰ることは出来ないわけですが……多くの冒険物語で、最終的に財宝が手に入れられずに終わるケースが多いのは、「財宝」という具体的なアイテムが肝心なのではなくて、それを手に入れるまでの冒険行で手に入れたもの……経験なり、成長なりと言ったものの方が大事だ、という事を言っているからではないでしょうか。
 なのに、本作のラストシーンはまさに手に入った財貨の量に比例するかのように、達成感が実に希薄、非常に慎ましやかなのですよ。ジムは結局不良少年から立ち戻って、母親をしっかり助ける好青年に成長するわけですし、それはそれで子供だった彼が真っ当な大人になった、という事なんでしょうが……本当にそれで良かったんでしょうかね。それらを踏まえた上で本作のテーマを敢えて言うならば、「冒険よりも、人生を真面目に生きていく方が大事なのだ」という事なんじゃないでしょうか。冒険物語なのに、冒険を通じて何かを達成する事を、本当はこの作品は否定しちゃっているんじゃないでしょうか。それだけは違うんじゃないか、とASDは思うんですけどねぇ……。
 以前「アトランティス」の感想を書いたときに、ディズニーは少年の成長物語としてのジュブナイルを描くのがヘタ、という事を書きましたけど……本作に限って言えば、これはむしろディズニー云々というより、この両監督の持つ資質の問題なんじゃなかろうか、という気がします。まぁ仮にこういうテーマに落ち着いたのがクリエイターではなくスタジオ側の要求だったとして、子供に見せる映画としてはあまりに夢のない映画だったなぁ、と思ってみたり……。
 何と言いますか、ねぇ……「リトル・マーメイド」を初めて見た時からはや十年以上の年月が流れ、今やASDもただのオッサンになりつつあるわけですが、そんなオッサンに「夢がない」と言われるような映画を作るなよ、と正直ディズニーには言いたいです(苦笑)



オススメ度:☆☆(作画の頑張りに対して一応義理程度に(笑))




2004.3.28 マトリックス・フルスロットル

「チャーリーズエンジェル・フルスロットル」

監督:マックG
主演:ドリュー・バリモア、キャメロン・ディアス、ルーシー・リュー、デミ・ムーア、他

鑑賞日:2003.7.26

公式サイト:http://www.charliesangels.jp/


チャールズ・タウンゼント探偵事務所のエージェント、ナタリー(ドリュー・バリモア)、ディラン(キャメロン・ディアス)、アレックス(ルーシー・リュー)のおなじみチャーリーズエンジェルの面々は、誘拐されたレイ・カーター(ロバート・パトリック)をモンゴル奥地から救出する。彼の持つ指輪にはとある重要データが暗号化され記録されており、それを狙っての拉致だったのだ。ところが、その指輪のもう一つの片割れが何者かに奪われ、エンジェル達は奪回任務に当たる事に。そのさなか、彼女らはチャーリーズエンジェルの先輩に当たるマディソン(デミ・ムーア)と出会うが……。


    *    *    *


 前作の方がよかった、というのが世間的な評価なようですが、個人的にはこちらの方が好みだったり。
 「マトリックス」風の香港的ワイヤーワーク&トリッキーなカメラワーク、というのをいち早くパクっていた前作ですが、あの当時はまだマトリックス的な映像がパクられまくって一般化する前の話でしたので、ややこなれていない印象が強かったかと。もちろんエンジェル達三人のコスプレも見所のひとつだったわけですが……言い切ってしまえばそこしか見所のない映画だったなぁ、というのがASDの所見です(爆)
 基本的には「〜フルスロットル」もそういう路線をバッチリ踏襲しているわけですが(笑)、前述のマトリックス的な映像ってのもここ最近は手法として一般的になってきましたし、CGによるマンガちっくでウソくさい画づくりというのも、やはりここ数年で見慣れたものになってきましたし……全体的にマンガちっくなノリを突き詰めた結果、前作よりも1歩突き抜ける事に成功した、という感じでしょうか。なんか興行的には失敗らしいですしパワーダウンしている、というのが一般の評価ですが、個人的にはバカ映画により一歩近づいた感じで、結構ツボでありました(笑)
 あと、前作でそういう傾向があった、というのはゼンゼン記憶していないのですが、今回はちと露骨なまでにパロディだらけでしたねぇ……こんなノリのシリーズでしたっけ?(笑) 何せデミ・ムーアが登場するビーチのシーンはそのまんま「ベイウォッチ」でしたし(爆)、エンジェルの三人が素っ裸で「ターミネーター」の格好でひざをついてるカットとかもありましたし……。
 まだまだありますよ。造船所に潜伏するシーンに「フラッシュダンス」の主題歌がかぶったり(「フラッシュダンス」の主人公の女性は鉄工所でアルバイトしてました)、悪役は「T2」のT-1000そのままに炎の中からぬっと現れますし(そのT-1000を演じていたロバート・パトリック当人が本作に出演している事に注目(笑))、デミがグライダー?で空を滑空して逃げるシーンはバットマンかスパイダーマンか、と言ったところですし……。
 あと、テレビの「CSI科学捜査班」のそのまんまベタなパロディシーンがありましたし(まんまテーマ曲がかかってました(笑))……その他TVドラマ関連のネタとしては、ルーシー・リューの恋人役のマット・ルブランクが見逃せません。トム・クルーズばりのハリウッド・スターといういかにもパロディめいた役どころですが(作中の主演映画のポスターイメージがまんま「M:I-2」)、これって「フレンズ」のジョーイ・トリビアーニ役(売れない役者という役どころです)そのまんまじゃないですか(爆) そもそもルーシー・リュー自身がTVドラマの「アリーMyラブ」でブレイクした女優さんなので、TVドラマ界を代表するスターの二人が恋人同士、という辺りがポイントらしいですけど……。なんのかんので、海外ドラマネタにある程度詳しい人じゃないと楽しめないネタが多かったような気がしますね(笑)
 それにしても、デミ・ムーアの悪役っぷりもある意味すごかったですねぇ……(笑) その昔「ゴースト」とかに感動してしまった人とかにしてみれば、随分遠くまで来ちゃったなぁ、と感慨深くなること必至かも知れません(笑) 金ぴかの二丁拳銃ってのがまた「フェイス・オフ」のニコラス・ケイジみたいでしたし……。



 ……ところで、ASD的にこの作品を見ていて思ったことがひとつ。
 作中での活躍を見る限り、エンジェル達三人やデミ・ムーアは、到底この世の物理法則を無視しているとしか思えない行動をいくつも見せてくれるんですよね。
 もしかしたら本作の世界観というのは、実は現実の世界ではなくて、あのマトリックスの中にでも存在しているのではないでしょうか(爆) エンジェル達は格闘技その他の才能を極限まで磨き上げた結果として、彼女達自身も知らないうちに、マトリックス内の仮想の物理法則を、彼女達自身の意思の力で超越してしまったのではないでしょうか!(笑)
 そう考えれば、この映画の中の色々と不自然な部分にも容易に説明がつくような気がします。確かに彼女たちは現実離れした才媛なのかも知れませんが、とっさに軍用ヘリを軽々と操縦して見せたり、モトクロスバイクで華麗なテクニックを披露してくれたり……おおよそ、実際に訓練したことがあるとは到底思えません(笑) そんな技術を都合よく身に着けているはずもなく、あれはきっとどこかからデータをインストールして、それで修得しているのですよ、きっと!(笑)
 それに何と言ってもあのコスプレ! いつどこで着替えているのか分からないあの多彩な衣装、誰がどうみてもコスプレにしか見えないハデさ加減なのに、周囲の人間も誰一人として違和感を感じてませんし(笑) そういう部分の整合性もまた、マトリックスの中でなら何でもありという事なのではないかと思いますが……(笑)
 モーフィアス達はサイファのように途中で裏切る役立たずではなしに、彼女たちをザイオンの戦士としてスカウトすべきじゃないかと思うんですけどねぇ……(笑)
(マトリックス見てない方スンマセン(笑))



オススメ度:☆☆☆☆(前作より世間の評価は低いみたいですが……)



2004.3.28 本当はミニじゃなくてMINIなんですが

「ミニミニ大作戦」

監督:F・ゲイリー・グレイ
主演:マーク・ウォルバーグ、シャリーズ・セロン、エドワード・ノートン、ジェイソン・ステイサム、セス・グリーン、ドナルド・サザーランド、他

鑑賞日:2003.7.18

公式サイト:http://www.minimini-jp.com/


 チャーリー(マーク・ウォールバーグ)は仲間と共に、ベニスにて大がかりな金塊強盗を行うが、仲間の一人スティーブ(エドワード・ノートン)に裏切られてしまう。金塊は横取りされ、さらには長年の相棒でベテランの老金庫破りジョン(ドナルド・サザーランド)も命を落とすのだった。
 それから一年後、チャーリーはスティーブがハリウッドにいる事を突き止め、金塊を奪回するためにかつての仲間達を再び集めるのだった。難攻不落の金庫を破るためにジョンの一人娘ステラ(シャリーズ・セロン)も仲間に加わり、奪取計画は実行に移されるのだったが……。


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 んー、なんか邦題がちとアレな感じではありますが(苦笑) いかにもB級くさいといいますか、センスが今ひとつと言いますか……。
 そもそもこの作品、原題を「The Italian Job」といいまして、1969年にマイケル・ケイン主演で作られた同名映画のリメイクなんだそうです。旧作の舞台はイタリアのトリノだったので、タイトルに偽りはなかったんですが……ううむ。上記あらすじの通り、本作はメインの舞台がハリウッドですからねぇ。いっその事タイトルを「The Hollywood Job」にでもあらためるとか……ダメっすかね(笑)
 まぁ新旧どっちにせよこの邦題ならば内容の通りなんですけどね。旧作では往年の名車ミニが、そして本作ではBMW MINIが果敢なカーアクションを見せておりますし。
 見ればMINIが欲しくなる……とまでは言いませんが(笑)、実際に三台のMINIが綺麗に隊列を組みながらハリウッドの市内やら、地下鉄の駅の構内やら、地下鉄の線路やらを果てしなく疾走し続ける一連のシーンは確かに見物でありました。
 とは言え、MINIに終始しているわけでは勿論無くて、「オーシャンズ11」のジョージ・クルーニーの親友であるマーク・ウォルバーグが、11とまでは行きませんがオーシャンズ5ぐらいの微妙に豪華なメンツ(笑)を率いてそれなりに華麗な盗みを披露してくれるのですなぁ。エドワード・ノートンの微妙にヤル気のない悪役っぷりに「ザ・スコア」なんていう作品もちらっと脳裏をよぎりましたが(笑)、個人的には結構イイ感じの作品でありました。
 まぁサスペンスとしては微妙にヤル気のなさそうな雰囲気を「おしゃれ」と言い張っている「オーシャンズ11」よりは、より犯罪映画らしくなってるんじゃないでしょうかねぇ……(苦笑)



オススメ度:☆☆☆(MINI以外にもちゃんと見所はあります!(笑))



 


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