なぜ萌えるのか

2004/6/5(Sat)



 ……という風にオビにでかでかと印刷された本を手に取るのに、ほんの少し勇気が必要だったある日の昼下がり(笑)
 というわけで、今回は読んだ本の紹介などしてみたり。

 「〈美少女〉の現代史」(ササキバラゴウ:著 講談社現代新書:刊)
 
 ……というちょっとものすごいタイトルの本ですが(笑)
 タイトルから何となくお分かりいただけるかと思いますが、「萌え」について論じた本です。
 と言っても、あちこちで論議されているように「萌え」って一体どういう意味なんだ! てな具合に言葉の定義付けを厳密に行うのがこの本の主旨ではありません。定義はさておき、アニメやコミックに出てくる女の子キャラに、男性の立場からついつい心ときめかせてしまう、萌えてしまう、という行為そのものに対して、その仕組みを読み解いていこう、という主旨の本なんですな。
 いやー、これはかなりためになる本でしたね(笑) アマチュアとは言え一応作り手の側にいる我々としては、「萌える」作品を書かなければ!となったときに、どーしても個々のキャラクタがいかにはにゃーんとして可愛いか、はたまたどういうシチュエーションに読者は萌え萌えになってくれるのかという、ものすごく近視眼的な部分についつい着目がちなのですよ。それが本書では、「女の子キャラに萌える」という男性心理、一体どういう仕組みが男性作者や読者の内面で働いているのか、という根本的なところから考察を行っているのですね。
 また、タイトルに「現代史」とありますように、そういう風に男性が女の子キャラに萌える、という行為を通じて、いわゆる「同人誌」という文化が定着したり、男性ユーザーをターゲットにした作品が多く作られていったり……という流れでもって、アニメやゲームの市場が拡大していくその足跡を過去からずずっと辿っていくような内容にもなっております。そうやって過去の流れを考察することで、ある意味「萌え」の今後の方向性をも考えさせてくれるような内容でもあるかと思いますので、日頃小説とか書いていて「萌えって一体なんなんだー!」と常々疑問に思っているような人には、ぜひとも一読をオススメします。
 とくにライトノベルの場合、悪く言っちまえばジャンル全体が「萌え」というキーワードに踊らされているような状況にあるわけですからね(笑) そういう中で「萌え」ってなんだろう?と考えてみるのは、決して悪いことじゃないはずだ、と思ったり思わなかったり。




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