短歌ドリル公式記録簿 2003年4月号
 毎日のお題から即日UP!短歌のWeb練習会、公式記録です。
 Liveは万里子さんのHP<短歌ドリルBBS>で!
【ご連絡】4/10〜4/15不在ツヅきのためUPが滞ります。
Lesson 226  Theme:『少年』 by 万里子 2003/4/30
映画観て漫画も買って原作の小説読んだ「少年時代」 : shell
ボール蹴って少年心飛んでいくパスした味方何処にシュートす? : zenkyu
少年のごと『先生』が「うれしいっす」ふふんふふんとオアシスなるか : ゑつ子
家ありし今は空地の日暮れ時少年の日の影が遊べり : 下町古娘
「大丈夫ボクがセツコを守るから」少年、八月、ホタルの乱舞  : 万里子
過去の日に光を奪われ見る夢は少年のような瞳を求めて : さなえ
どことなく秘密の臭い芳(かぐわ)しく 憧れていた少年院  :
勉強の振りで聞いてるDJのトークは素直に受け止める少年 : 美作直哉
初陣や杵つくごとく人の身をくだき少年の時代(とき)は終わりぬ : おやなぎ
自らを扱いかねて少年は若葉の闇をひたすら歩く :
少年はほんの小さな手がかりを見逃さないようアルバム抱え : よさ
少年の心を残し自然体 聞こえはいいが ただガキなだけ : とまと
Lesson 225  Theme:『木偏』 by 美雨 2003/4/28
お題出て困った時は大辞林漢字見ながら歌を詠んでく : shell
窓辺より5月の雨の降るを見る記憶の底の樹液の匂い  : 万里子
いろびとの黒樹の宮に住まいしはいかなるなぞとみまほしかりき : 鏡の精 せり
文机今はパソコン乗っかって役目変われど今も書き込み : zenkyu
残したパン不出来な答案を飲み込んだ机に今日は君の名を彫る  : 美作直哉
やわらかき楠木の芽の茜色かたくなな心真に隠して : 下町古娘
電話にてデイサービスの拡張に不安募らせ休まれずとう  : ゑつ子
お母さんお母さぁんって追憶の柵をつかんで揺すって泣いて  : おやなぎ
もぎたての檸檬みたいな青いキス未熟な彼のせいいっぱいです : 美雨
フォワードが仕事出来ずに、森・樹森、快進撃の水戸を支える : よさ
幹肌の裂けし古木に身を寄せてたしかな鼓動を樹木医は聞く :
Lesson 224  Theme:『携帯電話』 by おやなぎ 2003/4/26
機種換えて最初にカメラで撮ったのはテスト名目あなただったね : shell
電話でしょ聞きたくなるは使い方メールはするは写真はとるは : zenkyu
ケータイは役にも立たぬと叱られぬ電源切つてばかりの母は : ゑつ子
猫友の着信音にセットした 子猫の声が今は空しく : とまと
ジグソーの欠けたピースを埋めるため誰かの心を借りるケータイ : 美作直哉
稽古中着信音のベートーベン和の静寂に延々続く : 下町古娘
made in japanの技術の進化優しくてケータイ・カラオケ日々訴求する : 万里子
携帯で追われるたびに嘘をつき泣かした恋で泣くはめになる : 美雨
天駆ける電磁の波の揺らぎには口ベタ人魚の想いがのって : おやなぎ
ぶるぶると胸のポケット震えてる だって出られぬ携帯電話 :
ブチブチと途切れてしまうケータイの電波と同じきっと僕らは : よさ
嫁という愛しきものより送り来るケイタイメールに顔文字が笑む :
しのぶれどいろにでにけりわがおもひにぎるけいたいももいろになり : 鏡の精 せり
Lesson 223  Theme:『ツキヘンニクツキ』 by shell 2003/4/25
聞いていい?君の胸にあるのかな私の居場所返事に困る? : shell
調べには胡弓が似合う大陸の大らかな音に覚える臆気 : zenkyu
うとまれてゆきどころなくなりにけりひびき豊かな脂肪贅肉 : 万里子
見詰め合い手が触れるのみ若き日よそれだけで良い胸の高鳴り : 下町古娘
腰ほどの高さの波に板を乗せ海亀のように沖へ漕ぎ出す : 美作直哉
腹見せて四肢浮かばせて寝る猫の夢を知りたい平和が欲しい : ゑつ子
夕暮れの明るい空に浮かぶ星腕を伸ばしせば届くきがして : さなえ
床湿る熱帯雨林なキスをしてふたり脂(バター)になってしまおう : おやなぎ
泣きながら押入れの奥逃げ込んだ朧昆布のおむすび持って : よさ
好きな人に尽くすがために頑張った男勝りが嫌われていく : 美雨
Lesson 222  Theme:『揃う』 by 下町古娘 2003/4/24
前足をピッタリ揃えて出迎えるぼろぼろの身の飼い主われを : 万里子
親友とお揃いの靴やバッグで装い歩きからかわれたよ : shell
桃の桃連翹の黄と下草の緑揃えて桃源の郷 : 下町古娘
つば深く帽子かぶって外にでる馴染まぬ毛先気にしたままで : さなえ
憧れの彼女が着てたワンピース 見つけて歓喜着るには勇気 : ★あゆ
「友達」の足並みの乱れ肯ひて結べる紐の敢へてこのまま  : ゑつ子
皿揃へようやくらしく庵には2年たとうが愛は揃わず : zenkyu
合コンの求愛ダンスに欺かれフラットスリーに散財の夜 : 美作直哉
儚さよときじくちがう君ゆえに揃うべきものあらざりければ  : 鏡の精 せり
「おそろいの服ばかりだね」タンス開け双子の姉と捨てる相談 : よさ
オールスターキャストさながらKodakに焼いたぼくらの卒業白書 : おやなぎ
不揃いの胡瓜でいいわお日様をいっぱい浴びた香りが高い :
片割れの行く末気になる夫婦茶碗捨てない理由(わけ)は未練じゃなくて : 美雨
Lesson 221  Theme:『やわらか』 by 美作ミマサカ直哉ナオヤ 2003/4/23
柔らかきベッド寝過ごし慌ててはケイタイ探しジーンズ忘れる : zenkyu
蒲公英の純白の綿毛風に乗り蒼空をゆく春雲となる : 万里子
腰降ろし同じ目線の幼子の笑み柔らかに春の日の降る : 下町古娘
島々の頂きが浮く春霞 舳先(へさき)を並べ出港を待つ : ゑつ子
ふうわりと包み込む雨傘を閉じのら犬君と目配せをして : 美作直哉
窓にさす陽だまりのよに笑う君心安らぐ春風思わす : さなえ
「やわらかい鳥がたくさんいるみたい」白木蓮の下で彼女は : よさ
私を包んでくれるまなざしを他の人には見せないあなた : shell
わが指(および)まだ貫かぬ幼さに薔薇は深紅の棘を伸ばせる :
ブロックをきみの手足にくくりつけ柔き泥土(こひぢ)に沈めてやるの : おやなぎ
強情を湯船に浮かべてほぐしたらごめんなさいの練習をする : 美雨
Lesson 220  Theme:『復活フッカツ』 by コミチ 2003/4/22
還らぬと知りつつ目覚めぬ愛犬に 復活呪文ポツリ唱える : ★あゆ
古書店で埃を浴びたコミック文庫今も私にエールを送る : 万里子
交わらぬ軌道をもてる子羊に復活の日の遠からずある : ゑつ子
巻き戻す人生フィルムの画面には悲喜こもごもが復活をする : 下町古娘
涙して別れた母は仏壇に横じまシャツと笑顔で復活 : zenkyu
切り株にもたれて気付く若い芽は切られる前の姿思わす : さなえ
行かなくちゃ・・目覚まし止めて飛び起きて 熱いシャワーで頭痛流して : とまと
簡単に忘れられるような恋じゃないあなたの顔見て思い知る : shell
火の点かぬzippoにオイルを含ませて狼煙のような紫煙とともに : 美作直哉
リンク切り外した筈の掲示板 カキコの通知に思わずニヤリ :
よいしれるひとのためにも桜咲く永久に復活のただ乱れ舞を : 鏡の精 せり
日輪の再び北を目指すべく力溜めゐる回帰線上 :
早く寝ろよ怒った顔は照れ隠しサンキュ!明日は元気になるよ : 美雨
三度(たび)でも五度でも我が四肢切れとふヤモリ女の誓いは軽し : おやなぎ
Lesson 219  Theme:『』 by よさ 2003/4/21
寄生したサミシイキモチ治療する手段は君が知っているんだ  : よさ
ふしくれた分厚い手の平オヤジの投げたカーブをミットで受けた : zenkyu
父の手の背中に当てた温もりに押された様に一人踏み出す : 下町古娘
手の平の無数に走る河深し 流れるそれの険しさ語り : ★あゆ
ひとの手のふしぎおこないさまざまにひともころせばいとしごもだく : 鏡の精 せり
梅・あやめ菓子職人の指先は手品の如く花を繰り出す : 万里子
指名され一つ覚えの手拍子で「音戸の舟唄」自信ありげに : ゑつ子
悪戯に握らないでよわたしの手 本気にするわ夢の中でも :
歌手気分「浪花節だよ人生は」小さな甥が身振り手振り : shell
パスルートアイコンタクトで走らせる手練手管の中田英寿 : 美作直哉
眠ってるその掌を頬に敷き 目を閉じて聴く朝の静寂 : とまと
かみさまの息吹き流るる断崖を跳ぶんだきみの手房をとりて : おやなぎ
ほの暗き御堂に千手観音は笑みますらしき御頬の照り :
手をつなぎ並んで歩くお買物静かに静かに愛されている : 美雨
Lesson 218  Theme:『カガミ』 by 龍 2003/4/19
厭なのよ見せたくないの疲れ顔 帰り支度の鏡の前で :
白い髭見つけてそるはこの頃の電気かみそり鏡によせて : zenkyu
手術後に鏡で自分の顔を見てそこにいたのはまるで幽霊 : shell
水鏡合わせた指の波紋の輪揺らぎの中の己が姿よ : 下町古娘
かきあげて手鏡にみる我うなじ思いのほかの白さと窪み : ゑつ子
売り物の銀のパンプス履いた脚モンロー気分で鏡に映す : 万里子
三面鏡合わせた中の僕の顔光の速さで増殖をする : 美作直哉
牛頭馬頭(ごずめず)の交はりと見ゆ安宿の古鏡台に映るあやかし : おやなぎ
三角縁神獣鏡のしろがねの鈍き光に時は鎮もる :
試着室の鏡に映る老けた顔ブラウスやめてカスミ草を買う : 美雨
Lesson 217  Theme:『満』 by ゑつ子 2003/4/18
言の葉に満る思いを詩に詠み仰ぎ見る月ほのかな明り : zenkyu
望月の満ちて欠け行く日の影はアポロの嫉妬永遠に続きて : 下町古娘
ぼろタオル伸びたTシャツベランダの満艦飾に青春ぞある : おやなぎ
真夜中に窓辺にすわる飼い猫の視線の先に朧月浮く : 万里子
満載の甲板(デッキ)を駆ける渦潮に抗える間も日は暮れかかる : ゑつ子
顔見たら心満たされ和んでく君はそんなこと気付いていない : shell
奈落へと落ちるスリルに喘ぎ声 怒涛押し寄す満ち潮の刻(とき) :
満ち足りて眠るみどりご口元に神を見るとふ笑みを浮かべて :
満タンにしても足りないこの先もずっと「私」を走るのだから : よさ
つつましくけれど平和な一日が満足そうに並ぶテーブル : 美雨
満を持し迎えた会議で返り討ち桜散る中路上チューハイ : 美作直哉
Lesson 216  Theme:『地名チメイ』 by zenkyu 2003/4/17
天竺は何処にあるか歩く僧たどりつきしはガンダーラという : zenkyu
平福の川縁に並ぶ白壁を朝もや浴びて君と見ていた  : 万里子
バクダット21日境界の戦前戦後の夢千一夜 : 下町古娘
足しげく通った京都のジャズ喫茶探しあてたと写真が届く  : ゑつ子
倫敦の霧を思わす深い闇 耳そばだてて足音待てど  :
一本の枝垂桜に励まされ大手町そうだね四季はある : よさ
もう一度シンガポールとペナン島行きたかったね約束したのに : shell
身を捻り高田馬場に潜り込む黄色の電車を跨いで新宿 : 美作直哉
茜さす昼の新宿ぎやまんのボールの中のジオラマめいて : おやなぎ
初瀬街道をあるきておもふいにしえをしのぶれどただひとのこひしき : 鏡の精 せり
愛されたあの日あの時思い出は小樽運河の絵に閉じ込めて : 美雨
Lesson 215  Theme:『サケ』 by 万里子マリコ 2003/4/16
酒蒸したアサリを食べて一言は料理酒くらい鬼殺しだろ : zenkyu
グイと空け喉が焼きつくウオッカの45度は倒れる角度 : 下町古娘
暮れ急ぐ今庄の宿の「雪きらら」還らぬ日々の記憶のひとつ : 万里子
しゃれたBAR一緒に飲んでもいいけれど後の介抱よろしくお願い : shell
差し出され紫色のカクテルをすまして飲んだ背伸びはたちは : ゑつ子
聞けやしない ベ・ベ・マルティーヌは贈り物?自分で買った?  聞けやしないよ : よさ
むらさきのざくろかくてるこのむねのおもいとなみだぶれんどでのむ : 鏡の精 せり
しんとして花の精舞う緋毛氈 甘酒口に茶屋で憩い :
「クレームドカラメラ」魔法の数滴をアイスに垂らして少女の君へ : 美作直哉
ひとり居の見様見真似にブランデー飲みてむせびてついでに泣いて :
心など通いやしないVOのボトルに胎児がえりしたひと : おやなぎ
杯に桜を浮かべて飲み干せばほろ酔いうれし天下泰平 : 美雨
Lesson 214  Theme:『』 by 美雨ミウ 2003/4/15
今日も書く家計簿赤字しょぼくれる3月決済黒字なしか : zenkyu
ひ弱さは決して見せない若者の背中に響く心臓の音 : 下町古娘
うなだれた11人は反芻すロスタイム中の決勝ゴール : 万里子
わらび摘む野はどこまでもひろごりて昨夜(よべ)の決意を確かめており : ゑつ子
推薦で選出された委員長多数決ときにいじめの助長 : 美作直哉
あなたには私がいるよ今のとこ決して嫌いになったりしないから : shell
出陣の決意を述べる長身の青年 う〜ん演説下手ね :
露天風呂 酔ひて乳房をはだければ決(しゃく)れた月が顔そむけたり : おやなぎ
いつもより口紅朱く粧し決心のいる人と逢う夜 : 美雨
僕たちは行きつ戻りつ決心がつかないままで いちごフラッペ : よさ
却下印押されて休暇申請は既決ファイルに綴じられてをり :
Lesson 213  Theme:『ウラナい』 by コダマ 2003/4/14
特典は高名な師の手相観と実印売る人笑顔で誘う :
占いを「信じるな」と言うあなた不安な想いさせてるの誰? : shell
占いはタロット任せカードする明日をよまずに人に忠告 : zenkyu
ほんとうは決めたくないのかもしれない並べるだけの夜更けのカード  : 万里子
電飾は大嘘つきの星たちに「ザマ見ろ」と言う地上ののろし : おやなぎ
占いを信じてみたい雨の朝 あり得ないよとテレ笑いして : とまと
桜花来るから始め花びらの独り占い君待つ間 : 下町古娘
占いを信じる姪は夢・希望あふれさせては悩めるらしも : ゑつ子
待ち人は来るか来ないか花占い 吉と出るまでまた繰り返し :
なんとまあ豪華なおうち占いでくじでも買って当てたのかしらね : よさ
外出をするなテレビの占いに反逆した日に出会った君は : 美作直哉
星宿にわが運勢は問ふまじく闇突き進むわれも星屑 :
双子座の彼とは別れる運命なり しょうがないよねしょうがないよね : 美雨
Lesson 212  Theme:『野菜ヤサイ』 by 美作ミマサカ直哉ナオヤ 2003/4/12
やさしいなさらにもったるいのちたちからだによくてなくてはならぬ : 下町古娘
朝起きて野菜ジュースを飲んでからデジカメ持って「りら」の散歩に : shell
山羊みたい肴なのかないいけどさ 野菜スティックつまんでごくり :
子供みたいピーマンつまんでふくれっ面メッと叱った幸せな顔 : 美雨
肉厚き蓮根の皮剥き了えて白き裸身をまな板に置く : 万里子
アレルギー人それぞれで我が胃の腑山芋食めばキリキリ痛む :
馴染むかと思えばピリリ大根の如き社員を目指すぞ四月 : 美作直哉
葱刻みエリンギ使いパスタする人参のこし明日汁物 : zenkyu
さあウチをフォークで刺して。フルーツに負けんトマトの甘汁(つゆ)吸って。 : おやなぎ
南瓜だと思えばいいというけれどこんなに多くちゃ南瓜も怖い :
Lesson 211  Theme:『小説ショウセツのタイトル』 by おやなぎ 2003/4/11
紫のにほへるをみなA型の血潮持つべし孤高なるゆゑ  : 万里子
涅槃には蓮の花咲く宮殿が王は知るはず人の業まで : zenkyu
己てふ獄の内より呼ばはりき 嗚呼クオ・ワディス・ドミネ? ドミネ?と : おやなぎ
背の高い鳶色の目の転校生阿Q正伝読む一人のときに :
ひねくれた一茶の涙におせいさんつと立ち上がり墨を飛ばせる : ゑつ子
階段を一気に上り夢を摂る希望が生まれ苦悩が始まる  : 下町古娘
持ち主は戻らず全部ゴミ箱へ たったひとつの冴えたやりかた : よさ
今我はわびぞしにける息の緒を絶えなきものと心むせびて : 鏡の精 せり
ちょっとした誤解が元で失った恋より大きな愛に気がついて  : shell
延々とオウム返しのトラップを放つあなたに溺れる僕ら : 美作直哉
救われしたましい光となりて舞う楽土求めず若き心は :
死ぬことが甘美な終わりと思うとき真砂女の言葉かみしめてみる : 美雨
Lesson 210  Theme:『』 by よさ 2003/4/10
湿り気をおびた心の行く末をあなたが決めてと駄々をこねたい : よさ
気位の高さばかりが鼻につく アジの時代はもうやめにして :
桜呼ぶ気圧配置はわたくしの街を過ぎ去り北へと向かう : 万里子
気心は知れていてもと思えども元気で居るか我が親戚は : zenkyu
気楽だよ一人暮らしはいいことが声を上げて泣くこともできる : shell
真緑(まみどり)の稲を分け来る丘蒸気 明日へ帰ろう汽笛鳴らして : おやなぎ
不倫夫取り戻したと友が言う茶のみ話も気迫が満ちる : 下町古娘
気遣いをさせぬ配慮にたらちねの母の仕草が重なりにじむ : ゑつ子
理路整然飲んでも乱れぬ新人の辞書にもあろう若気の至り : 美作直哉
気がつけばかけ違ったまま編んでいた もう戻れないもつれた長さ :
闇に紛れ忍んでおいで恋人よ罪の褥は正気を奪う : 美雨
Lesson 209  Theme:『ちた』 by 下町古娘 2003/4/9
暗闇に輝き求め仰ぎ見るきらりと光り東に落ちた : zenkyu
気が緩み二人きりなら逞しいあなたの腕に落ちたくなるよ : shell
燃えながら落ちた夕陽の行末を地球儀なぞり確かめてみる : 万里子
ハンカチを落としたふりで拾い上げ そっと拭うの落とした涙 : とまと
春風は落ちた涙を弄ぶ桜吹雪の花びらにして : 下町古娘
提示する金額見ながら落ちた振り バックマージンどれだけくれる? : 美作直哉
手の中に落ちた残骸これがまあ権勢誇るかの日の姿か : ゑつ子
乾かない魔法かかっているらしいフローリングに落ちた涙は : よさ
夜の河岸ひらりはらりと舞い落ちた 花の筏は淀みつ流れ :
わがおもひとめどとまらぬみなぞこにおちるわがみのなおいとおしく : 鏡の精 せり
日が落ちてみんな帰った公園はさらっていくよと風が吹く : 美雨
首が落ちた。腕がもげた。血みどろになってあなたに逢いに来ました。 : おやなぎ
Lesson 208  Theme:『金偏』 by shell 2003/4/8
千本の針をおなかに詰めました。ごめん、「好き」なんて嘘っぱちです。 : おやなぎ
鋸はまだ錆びずとはすごいもの父の形見は鉋と鑿も : zenkyu
あなたから連絡ないまま日が変わり 鉛の心 夜が開けゆく : とまと
知らぬ間に銀の鎖を付けました鎖の距離が貴方の自由 : 下町古娘
傷心の去年(こぞ)水無月の幸(さち)といふ銀環(シルバーリング)は曲折を知る : ゑつ子
琵琶湖ではリリース禁止条例があなたはどこでバス釣りするの : shell
爪きり鋏つかい終えたまかぎる夕陽に透かす勝負のマニキュア : 万里子
原作の未来に住まうモノリスを見つけぬままに鉄腕の夢 : 美作直哉
鍬を持ち大地と話す老人の背中にひとつ大きい夕日 : よさ
鎌倉期古刹に残る晩鐘は今も時報となりて響きぬ :
一木に森羅万象凝縮し春気満ちたる三寸の鉢 :
つくすほど重い鎖の深情け愚かな女と勝手な男と : 美雨
Lesson 207  Theme:『よう』 by ゑつ子エツコ 2003/4/7
春深し花咲き乱れ急ぎ道通勤たのし月曜の朝 : zenkyu
日曜日 何かと用を作っては 電話をかける言い訳にする : とまと
金払い横浜山手の洋館の窓から見下ろす人の生き様 : 美作直哉
いつになく意気揚揚と猫もどり音たて水を飲む風がゆれ : ゑつ子
君なんか嫌い虎屋の羊羹でごまかされない自信はないけど : よさ
萌黄色陽気な柳の風まかせゆらりゆらりと私を誘う : 下町古娘
夢の中あなたの抱擁嬉しくて泣きたくなるよ今すぐ逢いたい : shell
洋梨の質感たのしむ君の掌(て)に心をなでるかすかな疑惑 : 万里子
首すじにまとう匂いの若すぎてあんたの生き血よう吸われへん : おやなぎ
要するに「NO」なんでしょう?立板に水流すように言訳をして :
Lesson 206  Theme:『サカナ』 by 美作ミマサカ直哉ナオヤ 2003/4/5
魚住まぬ川の流れや清廉なる光と影に幻を見る : 下町古娘
広い海魚は自由でいいけれど人に生まれてあなたに逢えた : shell
この想い 口に出したら消えそうな 届かぬ気持ち 私は人魚 : とまと
腸を抜き三枚おろし粋な味鯵の刺身は春告げ味覚 : zenkyu
白魚のつぶらな黒と眼が合えば早口で頼む「ネギトロ1つ」 : 万里子
トトさんに幸あれかしと石を積む 賽の河原に魚影もなく :
漬物と干物を焼いて炊き上がり待つ晩餐の準備完了 : ゑつ子
山里の沼はさわさわ波で泣く海に帰った魚案じて : 美雨
飛魚の鱗一枚口にして水平線を海風の中 : 美作直哉
爪きりの刃でむしる魚の目にはたちの吾の影映りけり : おやなぎ
魚の子お空見上げてねぇ母さんくじらのおじさんあんなに高く :
潮溜まり生物図鑑見るごとく棘皮・軟体・魚類に藻類 :
Lesson 205  Theme:『パステル調チョウのイメージ』 by リュウ 2003/4/4
純白のハートの形のはこべらに桜はなびら舞う春の岸 : 万里子
万華鏡覗き見ては感動すパステルの中鮮やかな色 : zenkyu
Tシャツは淡いピンクが好きなんだ茶髪の君に似合っているね : shell
色重ね光の粒を練り込んで淡き水面にモネの睡蓮 : 下町古娘
エプロンの胸あて裾にたっぷりとレースとフリルが これを私に? : ゑつ子
花隧道薄紅揺れて春霞 そぞろ歩けばひとひらの舞い :
愛想ない売上ダウンのExcelのグラフのベタを春色にして : 美作直哉
雲ややに去りてあらはる山なみの紫紺うるませ朝靄の立つ :
手を見れば苦労がわかるねと言われた日淡いピンクのマニキュアを塗る : 美雨
深呼吸 春の香りに目を閉じて バイクで風切るあなたを想う : とまと
Lesson 204  Theme:『クロ』 by 万里子マリコ 2003/4/3
膝にのせ日向ぼっこをしてくれた老婆は消えて黒猫ひとり : 万里子
おみあげは九州自慢黒豚の角煮を頬張り飯をかきこむ : zenkyu
知らされて三尺ばかり後ずさり思い直してあとは黒衣に : ゑつ子
北海の波涛の洞や風車死鳥の群の黒き羽ばたき : 下町古娘
おにふたりこの地球(ち)につくる黒きえごよりそふごとく生きのありさまや : 鏡の精 せり
いか墨は美味しいけれど食後には鏡見てチェック気をつけようね : shell
暗黒の闇の彼方を見据えてる 二匹並んで何が見えるの? : とまと
ぬばたまの闇和らげて花明かり 重ぬくちびる木陰に濡れて :
降るとしもなき春の雨黒々と古りし桜の幹濡らしをり :
黒豆の照りに映ゆ顔眺むればこんなものかと元旦の朝 : 美作直哉
ささやかな贅沢を買うおやつにと中村屋製菓黒蜜かりんと :
笑ってる写真を黒く塗りつぶす逢えない人を忘れるために : 美雨
Lesson 203  Theme:『新人シンジン特集トクシュウ』 by コミチ 2003/4/2
愛想なし笑顔引きつり口調までマニュアル通りさても肩こる : zenkyu
お化粧で身内もわからぬ初舞台未来のトップ候補生たち : shell
挑みては「畜生!」 悩める十七の柔きペ×スを握り締めをり : おやなぎ
白い歯が38本あるような顔で微笑む新人女子アナ : 万里子
ぼさぼさで童顔のこる15歳しこたま踏んで芽を出せ若木 : ゑつ子
何れにも老いは初めて迎え討つ逆らわぬ事戦わぬ事 : 下町古娘
新人よ初めましてと掲示板 わかるんだよねその言い回し :
お迎えのママ見て目じりに光る露三年保育の第一日目 :
饒舌に業務を話せば自己嫌悪新人達の瞳は澄んで : 美作直哉
気がつけば母親の目で見守りし息子に良く似た新入社員 : 美雨
あらびと(新人)の集う入社式白きおもひの薫りなつかし : 鏡の精 せり
Lesson 202  Theme:『みず』 by zenkyu 2003/4/1
何も見ずただひたすらに仰ぎ見る天からの露命の水と : zenkyu
何も言はぬ 何も感じぬ 地の底の水晶樹海に生まれし我は : おやなぎ
水色のプリンセスラインのワンピースもう還らない夏休み : 万里子
水割りの 氷、カランと一回し 喉にはりつく「さっきはごめん」 : とまと
雲割って光の梯子海に下り何かの気配水騒ぎたり : 下町古娘
朱に白の水玉はねる傘さして一人暮らしの尾道の町 : ゑつ子
「UFJ」「新生」「みずほ」「りそな」って元の名前は何だったかな? : shell
鉢植えのチューリップが飲む水のようどこか冷めてる新入研修 : 美作直哉
「ms.SATO?」パワーランチは上の空 誰かと同じ目の色のせい : よさ
若枝のつけし二輪の初花の白瑞瑞し幹に寄り添ひ :
向こう見ず何の根拠もないくせに俺は受かると願書出す吾子 :
うららかな春のキッチン水温みシャキッと元気な野菜とわたし : 美雨