短歌ドリル公式記録簿 2003年5月号
 毎日のお題から即日UP!短歌のWeb練習会、公式記録です。
 Liveは万里子さんのHP<短歌ドリルBBS>で!
【ご連絡】4/10〜4/15不在続きのためUPが滞ります。
Lesson 251  Theme:『石』 by 美作直哉 2003/5/31
帰宅後の 胸元かすかな残り香は あなたの家の石鹸の泡 : とまと
見上げれば君の瞳が輝いてそれが私の素敵な宝石 : shell
水底に沈める石のまろき肌あゝかくまでも海近き河 : 万里子
手の中にアンモナイトの化石ある太古の命の果てし重みよ :
五月雨に敷石ふんでエプロンに包んだ裾分け背戸は留守なる : ゑつ子
培養土鉢に球根植えるには砂利は水切り穴止め石を : zenkyu
石ころを蹴ればぽちゃんと水の音小さな家出おしまいにしよ :
異教徒に砲撃された石仏の欠片翳せど何も起こらず : 美作直哉
石ころを雪のつぶてにしのばせた 殺人者だった幼子のころ : おやなぎ
Lesson 250  Theme:『 副詞・体言止め』 by 美作直哉 2003/5/30
水しぶき蒼穹閉じ込め盛り上がり光弾けてきっぱりと 夏。 : 万里子
出逢いより長く短い日々が過ぎ君を頼りにゆっくりと恋 : shell
日捲りも齢を示し心身の弱音叩いてすべからく今日 : 美作直哉
歩く法故郷に続く長い道デジカメつれてゆうるり歩く : zenkyu
病葉(わくらば)のぽとりと落ちてこころもち波紋の起こるこの潮溜まり : ゑつ子
終点も間近石炭燃ゆ熱くもっともっと!絶頂機関車 : おやなぎ
いましばし世にあるべきを不甲斐なくふわりと雲を踏むごとき脚 :
Lesson 249  Theme:『酔』 by ゑつ子 2003/5/29
銀幕を処狭しにクンフーを若き日のスター酔拳使い : zenkyu
春霞 酔ったあなたに寄り添って 指を絡めて歩くおぼろ夜 : とまと
夕凪におさまりきれず酔いしれて海に漂う木の葉のごとく : 鏡の精 せり
軒先に酔芙蓉咲く路地の家再開発もここには来ない : 万里子
「酔っ払ったね。酔っ払った振りして、かっぱらったね。」酔うて候下戸の母 : 美作直哉
パーティーで酔ったら寝るな寝るならば寝顔に自信ある人だけよ : 下町古娘
痛かった局部麻酔で処置をして声は立てずで涙溢れて : shell
短夜の夢見果てむとめくるめく香にみづからを酔はしむる花 :
Lesson 248  Theme:『ホラー』 by おやなぎ 2003/5/28
言の葉を闇に骨射る想ひあり笑ひの中に刀を研がむ : 鏡の精 せり
黄泉からの調べに迷い夢の中彼岸の人は手招きしてる : zenkyu
せんべいを食む音聞こえ画面にて「せんべい食べてる?」「なんでわかった?」 : ゑつ子
便器から片手が伸びる夢を見てトイレに行けない午前二時半 : 美作直哉
仏壇に鏡がひとつ何時の間にとかざした手から吸い込まれてゆく : 下町古娘
『ぼっけえきょうてい』という響き牧歌的故なお怖し : 万里子
入院中エレベーターに乗ったら途中の階より御遺体と一緒 : shell
夕闇の深まりゆく墓地通り抜け薪を運ぶ背筋冷えつつ :
突き立てた言葉の威力に満足し刻むキャベツにあわせて鼻歌 : よさ
大鍋の秘伝スゥプのトロ味増す コックの妻は里帰りして : おやなぎ
幼き日 誕生会にお呼ばれし おばあちゃんにもご挨拶する : とまと
Lesson 247  Theme:『かがみ』 by zenkyu 2003/5/27
来月は胃カメラ検査の日程を去年は鼻炎で息苦しくて : shell
手鏡の中で見つめる人が居る自分で自分が見えてる不思議 : 下町古娘
清流を釣り糸垂れて岩登り見つけた澱みで水鏡みる : zenkyu
瞬きもせぬ猫の眼に少し照れ新発売のマスカラを塗る : 万里子
砕け散るカーブミラーの断片の数だけ映るボクと太陽 : 美作直哉
「かがみっちょ捕まえちゃるき」兄さまの声のみ留まる神隠しかな : おやなぎ
うとましき夢を見し夜は明けぬれど鏡のわれに目を見合はし得ず :
Lesson 246  Theme:『梅雨』 by とまと 2003/5/26
お蕎麦屋の軒先落ちる雨を見て 予感はしてた 恋の始まり : とまと
蒼い雨窓辺のとまとを濡らす日々葉伸びやかに熟しの日待つ : 下町古娘
空からのおつるなみだや想ひ懸く弥頻く頻くに(いやしくしくに)滝とならまし : 鏡の精 せり
梅雨前に田植えの準備忙しい家族総出の年中行事 : shell
しとしとと滴る雫傘の下紫陽花盛り田んぼは栄える : zenkyu
梅雨の街 サクマドロップ色をしたビニール傘が肩を寄せ合う : よさ
はなびらに梅雨のはしりの球(たま)なして言葉少なくばら園に遊ぶ : ゑつ子
梅雨晴れの朝懐かしき校庭の水たまりに映るガラス窓 : 万里子
紫陽花の葉に雨粒を躍らせて花びら淡く色づき初めぬ :
赤と青レインコートの袖口が結ばれており梅雨の通学 : おやなぎ
のびのびとでんでん虫が伸ばすツノ大きな黄色の傘が見つめる : 美作直哉
Lesson 245  Theme:『日』 by 万里子 2003/5/24
日輪の願いは一つ注ぐこと日光注げと草木は願う : zenkyu
向日葵の万に並びて太陽の光が動く全てが見つめる : 下町古娘
まん丸なルリタマアザミ日向ぼこ 風にゆらゆら心弾ませ :
日焼け顔ビデオに収める運動会 応援団の応援をして : 美作直哉
薄日射す土曜の朝は飼い猫と死体のごとく転がっている  : 万里子
数えちゃう今日はあなたの誕生日もう年なんて取らないのにね : shell
今日の陽を岬に見送り浮き沈みした一日を反芻しており : ゑつ子
想悲川早瀬たぎつ瀬逸りかにいつ藻採りかね日くれたりなば : 鏡の精 せり
若き日に夢に見るさへ怖れゐしまがごと忘る老いは楽しも :
吾が祖母の祖母らの骨と眠りたい葉漏れ日ささぬ世界樹のもと : おやなぎ
Lesson 244  Theme:『む(漢字)』 by shell 2003/5/23
無我夢中パソコンにらみ詩を書く無我の境地は夢の楽園 : zenkyu
春の果て残り少ない行く道は無理せず無心で無駄はそれなり  : 下町古娘
さすがですミットに収まるひと言が外野からとは無性にうれし  : ゑつ子
諸説ある武蔵の生き様僕的は日経ビジネス連載として : 美作直哉
無垢な眼に引き込まれていく図書館蔵『ゴッホの手紙』の著者近影 : 万里子
無理だよと鞭で打たれて霧の中 夢で悪いの惨い言葉ね :
ご謀反ぞ水色桔梗の旗印朝もや篭むる本能寺に満つ :
夢心地あなたと話すひとときは私の想いを再確認 : shell
無花果の葉を脱ぎ捨ててじゃれあった アダムとイブはバスタブの中 : おやなぎ
Lesson 243  Theme:『鳥の名前』 by 径 2003/5/22
鶺鴒の尾羽のリズム軽やかに道でも叩くミミズくわえて : zenkyu
近江のみ水辺に集ふみずとりの万代(ましろ)にかわらぬ色にしあれば : 鏡の精 せり
ただ一語「かもめ」と叫び空と海の青に漂う時間(とき)を見ている : 万里子
愛求め天人鳥の羽ばたきて白と黒との羽衣のごと : 下町古娘
ここに住みアオサギ初めて見た時はその大きさに眼が点になり : shell
納得の素振りと裏腹フクロウは首を傾げて夕暮れを待つ : 美作直哉
低い音たてて帷子川をゆく運搬船はカモメを連れて : よさ
草むらの卵10個は跡もなくキジの親さえ見えず風吹く : ゑつ子
汗拭くと立ち止まりたる岩陰に雷鳥身じろぎもせでわれを見る :
抱っこしてほしい翼の退化したキウイみたいなあたしだけれど : おやなぎ
Lesson 242  Theme:『流』 by 美作直哉 2003/5/21
脳味噌が時々詰る昨今は赤き血潮が良く流れない  : 下町古娘
逞しき生活廃水流れ込む川で生きてる鯉や亀たち  : shell
念願のベストアルバム聴き続けふと気が付けば悔いに似たもの  : 万里子
竹薮を間引いたそこは笙の音の流れるここち曲水の宴  : ゑつ子
櫓も持たず早瀬を下る木の葉舟 揺れど術なし流れのままに :
月の夜も闇にもさらさら小止みなく何に焦がれて流沙さまよふ :
流れるは星のさだめと人は言う巨星落つとも大河は流る : zenkyu
彗星は誕生と死を行き来する流線形のぼくのたましい : おやなぎ
坂の下雨流されてさざめいてハローワークの名は怪しけり : 美作直哉
深情けまづかきやりししとどなきあなたの流れにただまどふなり : 鏡の精 せり
Lesson 241  Theme:『ネット用語』 by よさ 2003/5/20
何度でも目がいってしまう君の背にアクセス禁止今日こそかけよう : よさ
毎日の仕事の効率あげたくてデフラグかける頭脳の構成 : zenkyu
結婚も出産、離婚も自サイトで発表するのがスターのトレンド : 万里子
アクセクトアクセスシテハアキラレテアキラメキレズアスモアクセス : 下町古娘
持つことを考えていなくてホームページ無料サービスであっと言う間に : shell
あの部屋に入ると脳でブラクラが起こる怖いわパパいやよやめて : おやなぎ
うぇぶ風と恋に落ちたのパソコンよ私泣かせて固まらないで : 鏡の精 せり
教えてよあなたの胸のパスワードアクセスするたびNotFound :
パスワード勝手に入るクッキーに昨日の嘘も見透かされてて : 美作直哉
今日もまた教えたがりがオンライン バージョンアップをせよと勧める : ゑつ子
Lesson 240  Theme:『挨拶』 by B13 2003/5/19
中途半端に目を合わす公園の猫の個人主義静けさの中 : 万里子
手を上げて「失礼しまっす」なんだなんだ自信みなぎる齢(よわい)七十 : ゑつ子
750ccを吹かし刹那の春逝けり ドップラーする "ゴッドファーザー" : おやなぎ
「おはよう〜」私の顔見てリラックスもっと話がしたそな素振り : shell
改札がなくした僕の「おはよう」をsuicaに呟く月曜の朝 : 美作直哉
単純なあいさつだけのやり取りのメールに少し毒しみこませ : よさ
アリさんとアリさん出会う走り根で頭撫でっこ「がんばろうね!」 :
名演技拍手の嵐なり止まずカーテンコールで八方美人 : zenkyu
決別に深く頭を下げました今日の私が昨日の吾に : 下町古娘
Lesson 239  Theme:『愛』 by 美作直哉 2003/5/17
害獣も都会に紛れば愛されて帷子川に初雪が舞う : 美作直哉
猿之助演出しているまなざしが愛弟子たちに信頼と厳しさ : shell
故郷を守る人ならそれで良しマスク議員のニュース見守る :
家族愛人に限らず猫も犬も次元を越えて飼い主助け : 鏡の精 せり
花の咲く野原の中で腰掛けて小さな小花愛でるデジカメ : zenkyu
顎先の愛嬌黒子をつまはじき恋人未満の羊膜を剥ぐ : おやなぎ
自己愛の極まりのなかに君逝けり少年のごとき三島由紀夫 : 万里子
たどたどと一年生が書くを見る三年生の兄が隣で : ゑつ子
激しさとたおやかな愛潜む文字与謝野晶子の女の筆跡 : 下町古娘
Lesson 238  Theme:『絵』 by ゑつ子 2003/5/16
デパートの素敵なペンは蒔絵製0を思わず数え直して : shell
12枚向日葵はあるどこかにゴッホ求めた絵の楽園に : zenkyu
五月。夏の予感の風吹き抜ける机の上に わたせせいぞう : 万里子
デジタルの緻密な作業にとりつかれお絵描き掲示板という世界 : よさ
我に似てフレデリックの紫陽花が位置をずらして窓の外見る : ゑつ子
笑み浮かべ遠慮がちな絵姿で 円満そうに餌まかないで :
『接吻』に骨の軋みを耳にする黄金色なるクリムトの愛 : 下町古娘
闕腋(けってき)の袍風吹かざれば靡く様せつなさの絵にならましものを : 鏡の精 せり
山旅を告げる絵葉書さりげなく黒百合の歌書き添えておく :
まなかぶら ほげた おとがひ 嗚呼なぜに君は君よと素描しつ泣く : おやなぎ
鼻先へ突きつけられた客観に耐えられなくて似顔絵の僕 : 美作直哉
Lesson 237  Theme:『朱』 by zenkyu 2003/5/15
朱に染まる空を見上げて待つものは一番星と定食屋さん : zenkyu
朱里エイコ子供の時にあこがれた「北国行きで」「恋の衝撃」 : shell
夢に見し首里城の姿懐かしき想ひなれども行かざらましに : 鏡の精 せり
朱雀門より眺むれば風わたる春野広がる平城宮跡 : 万里子
朱の絹の乙女の長き黒髪に突き上げる風天守閣幻影 : 下町古娘
朱染めせし守礼門は雅だが 古(いにしえ)の味中城(なかぐすく)にあり :
黒檀に彫られた我が名の鏡像を朱泥へ突き刺す 雨は止まざり : 美作直哉
朱の入る18才の習作を取り出せば師がよみがえりくる : ゑつ子
残さるはダブルベッドと憎しみと朱肉の跡の乾かぬ書類 : おやなぎ
鬢付けの香り新たに大銀杏勝利の美酒は朱塗りの大盃 :
Lesson 236  Theme:『麺類』 by 万里子 2003/5/14
懐かしき坦坦麺をオーダーして出されたアツアツ身に染み込むな : zenkyu
サラサラと流れを同じ絹に似て三輪ソーメンの海風に揺れ : 下町古娘
昼休みじゃーじゃー麺と言うけれど何食べるの?君しつこくて : 鏡の精 せり
「行列のできる店」などなき街の昔ながらのラーメンの湯気 : 万里子
グルテンが人気の秘密讃岐うどん同じコピーのヘラブナの餌 : 美作直哉
うどん粉を延ばして切ればどぜうなる母の奥の手大鍋の中 : ゑつ子
蕎麦ならば更科よりは田舎蕎麦 あなたの傍で捏ねて延ばして :
ホッとして食事に行った葬儀の夜羽田以来のラーメン美味い : shell
どんな顔するんだろうな「日曜日冷やし中華を食べにおいでよ」 : よさ
ひとさじのミルク垂らした煮麺のごと含みしやきみのセクスを : おやなぎ
音立てて啜るからこそ蕎麦なんだ西洋マナーはお断りだよ :
Lesson 235  Theme:『まわる・めぐる』 by 美作直哉 2003/5/13
ベイゴマの火花散らしてまた負ける少年の賭け『王』を賭けるぞ : zenkyu
もうもうと牛が出てきて駆け巡り頭の中で闘牛している : 鏡の精 せり
風車あなたのいつも気まぐれな心ひとつで廻れぬ私 : shell
公園の植え込みの陰の白猫の巡回に出会う夜の散策 : 万里子
雨降ってまた雨となるその刹那君の笑窪を巡って落ちる : 美作直哉
めをとじてまわれまわるまわるときひろげたりょうてかぜをつかむ : 下町古娘
2年半経ってようやくわかったよメビウスの輪を歩きつづけて : ゑつ子
見得を切る花形役者奈落にて黒衣黙々舞台を回す :
Lesson 234  Theme:『動物』 by おやなぎ 2003/5/12
淋しくて 眠れぬ夜を過ごす日々 キミの代わりに猫を抱きしめ : とまと
家の壁小さな守り手ヤモリかな見つけて思う小さな喜び : zenkyu
トリップしテラノザウルスいる時代女ターザンやって見たいな〜♪ : 下町古娘
コンクリの床に転がるウサギの糞隠れようにも爪は削れて : 美作直哉
あるじなき犬小屋に向き終日をすごす花子に事故去らぬらし : ゑつ子
散歩中畑で蛇に出くわしてあっちも逃げたが足がすくんで  : shell
海護る社の空をとんび舞うあゝ夕焼けをしばらく見ない : 万里子
水辺よりヌーのやにわに駆け出してサバンナの地に生命(いのち)轟く : おやなぎ
畦道にくろきくちなわおはしまふいとおどろかし息とまりなば : 鏡の精 せり
梅咲けば鴉浮かれて枝の上 ポーズ取り待つ客はまだかと :
「りらちゃん」は虎三頭から飼い主をどんな顔して取り戻したの? : よさ
平和とはあざらしたまちゃん追いかけてマスコミ走る日本国かな :
Lesson 233  Theme:『家』 by shell 2003/5/10
週末は赴くところ多いけどどうしてもいく我が隠れ家へ : zenkyu
ヤドカリは好きな貝殻移り住む結婚したら穴がふたつよ♪ : 下町古娘
いかさまに雲居の家のふかしぎな筝の琴の音きこしめすなり : 鏡の精 せり
家族持ち 分かったフリの本心は 独占したいあなたの事を : とまと
12人家族の想い柱にも残れば夫は建て替えを言わず : ゑつ子
裏庭に小さな犬小屋置いてあり今では猫がお泊りしてる : shell
郷愁と憧憬の空気重たくてドールハウスはもう好きじゃない : 万里子
言えないのいいえ言えるわ言わせてよ 癒えることなき家なき子だと :
速球はホームベースの遥か上マンションの空に一筋の雲 : 美作直哉
三界に家なしといふをみなはも身を焼く恋をよるべとぞなす :
玄室の今際の際の灯も絶えて王家の谷は白砂に埋もる : おやなぎ
Lesson 232  Theme:『赤と黒』 by 下町古娘 2003/5/9
胸よぎる真夏のイメージ懐かしき果肉に埋もれし西瓜の種 : 万里子
夏の空日焼けの腕は赤くなり皮もはがれる黒き思い出 : zenkyu
射千玉(ぬばたま)の黒髪乱れくれなゐの薄様重ね君にまどゐて : 鏡の精 せり
目を閉じてコロナの炎振り払う瞳の奥はじりじり燃える : 下町古娘
赤と黒 お題考えうつむけば 今日のパンツが黒地にハート : とまと
指先で人間界を見渡してナナホシテントウゆっくり飛んだ : よさ
赤土のまじる古巣の補修終え燕はこもる身じろぎもせず : ゑつ子
どうしたのそんなに走って黒髪が火照った頬にほら乱れてる :
さあみんなパネルシアター始めるよ 北風さんと太陽の話 :
鮮やかな赤のブルゾン黒のパンツ「気付いてくれたの?」「すぐわかったよ」 : shell
血圧が奈落飛び込む午後一時名前呼ばれて我に返れば : 美作直哉
Lesson 231  Theme:『逆』 by 径 2003/5/8
逆さ吊り耐えるカードは耐え忍ぶハングド・マンはシャモンのカード : zenkyu
股間から見える景色は日本一 二人並んで覗いて見よう  :
人類の二足歩行は逆上がり初めてできた瞬間に似る : 万里子
逆光が君の表情隠してる卒業式のスナップ写真 :
逆切れの幼い瞳すわりけり流浪の母は暴力の親 : 下町古娘
我を背に気焔を吐いて飛びかかり逆襲にあい ありし日のトラ : ゑつ子
苛立って心にもなく好きなのに「大嫌い」って言いたくなるよ : shell
逆サイド上がり続けどパスはなく息切れだけの営業会議 : 美作直哉
逆茂木をひいて用ゐし堀垣を奈良炎上して哀しからざり : 鏡の精 せり
ジャングルの岸薙ぎ払いポロロッカ逆巻きのぼる大アマゾンを :
Lesson 230  Theme:『五月晴れ』 by 龍 2003/5/7
五月晴れ見上げる空は蒼になり夏の調べは浜辺の波か : zenkyu
五月晴れ 空の青さに目を閉じて「元気でいるの?」とつぶやいてみる : とまと
さて今日も辛い青空 気が散ってばかばかしいほど練習する笛 : よさ
その昔新しい生活に胸はずむスタートきった五月晴れの日  : shell
五月晴れ包みの中は気の早い馬鈴薯の山冷蔵庫にいれ : 美作直哉
ぶらんこを高々とこぐ五月晴れ少女の胸に生(あ)れし策略 : 万里子
最後かな衝かれ血の出る傷見つめ 場末篠降るレインも悲し :
天翔けるひまなき空に亡き人の想ひ偲ばるる皐月晴哀し : 鏡の精 せり
さっぱりと憑きもの落ちて狂騒はバックに流れレクイエムとす : ゑつ子
さつき闇つひに届かぬ君がふみはかなかりしよ連理のちかひ :
五月晴れぐるり360°大地を包む陽光(ひかり)のドーム : おやなぎ
五月晴れ雲に向かった道すがら小さな窓に鯉幟泳ぐ : 下町古娘
Lesson 229  Theme:『色の名前』 by よさ 2003/5/6
探して、と、ぬるいため息つきながら海に投げ込むピンクのミュール  : よさ
傾いた空に夕日は紅に染まる時間を噛み締め行かん : zenkyu
空色を白く切り裂く一本のひこうき雲は異端児の顔  : 万里子
雑居ビル狭い階段這い降りる鶏頭のような深紅のソファー  : 美作直哉
華やかな景色の中に溶けし時モノクロームの吾は風なり : 下町古娘
「たとえたら君は青色」朱色をも持つを知らさず我は青なり  : ゑつ子
スルタンの宴前夜の気怠さや淡きキャメルの君が髪艶  : おやなぎ
黄の花にとまる蝶々ベニシジミ 見詰め合いつつ春風の中  :
想い出はセピア色のアルバムに今この瞬間(とき)はパステル色ね : shell
夕立後 送ってくれたフォトメール あの七色が今は見えない : とまと
ふるさとの小山に風の渡るときさながら緑のカラーパターン :
Lesson 228  Theme:『とき』 by zenkyu 2003/5/2
滅びても飛び立つ翼朱鷺色に鳳凰の羽根拾うか如く : zenkyu
心の矢放たれたときときめきの的は飛びたち空しさ永久に : 下町古娘
泣き濡れてヒロイン気分最高潮 お腹は「ぐぅ〜」ときたもんだ : ★あゆ
鶏が二度鳴く前三度知らないと 説き明かす師よあなたは如何に : ゑつ子
編曳けば脂ののった時不知 塩焼きもよし刺身またよし :
朴訥は「癒し」の資質か森本レオ、常田富士男、田口トモロヲ : 万里子
片時も忘れてないよ君との日々時は解決してくれないね  : shell
キートンとともに走ろう さあトーキー、テクニカラーのブーツ脱ぎ捨て : おやなぎ
時として 気持ちの迷いはあるもので 追ってもらえてハッピーエンド : とまと
新潟へ満席の「とき」は滑り出すお国言葉を取り戻しながら : 美作直哉
ふたりして仲良く老いぼれた時を想像できず 結婚指輪 : よさ
おねがいよときよいかないでちょっとだけいてようれしさにげていくから : 鏡の精 せり
別れても君の幸せ心から祈る私は出発のとき : 美雨
時告ぐる声にややあり鴉添ひ老鶯和せるふるさとの朝 :
ひと時の休暇願いは受理されて短歌ノートは閉じられしまま :
Lesson 227  Theme:『間』 by ゑつ子 2003/5/1
時間には過去にいけない制約が因果を破れば今は泡沫 : zenkyu
さよならと自分で書いたe-mail 追って欲しくて時間を重ね : とまと
わたくしと空ゆく雲の距離感を水平線は一気に埋める : 万里子
太陽に私が向かう影も追う地球が回り時間が進む : 下町古娘
突然の「おげんきですか」を図りかね「おかげさまで」と苦さ甘さに : ゑつ子
幕間に寿司を二折見終わって中華料理も食した昔 : shell
絶え間なき時を刻んで鹿威し呼吸四つで生かされており : 美作直哉
猫を抱きぼんやり空を見上げれば気付けば空はオレンジの色 : さなえ
ニュートンの林檎ひとつが落ちる間にぼくらは何度死んだのだろう : おやなぎ
束の間のきれいなシーズン終わったと18本のろうそく消す君 : よさ
その距離を守ってくださいわたくしの対人バリアー脆弱なのです :