短歌ドリル公式記録簿 2003年8月号
 毎日のお題から即日UP!短歌のWeb練習会、公式記録です。
 Liveは万里子さんのHP<短歌ドリルBBS>で!
Lesson 322  Theme:『ガラス』 by 美作直哉 2003/8/30
水槽の魚と我を阻むもの水 ガラス 空気 飼い主 : 橘真知子
贅肉(あまりじし)なき十代の躍動は四方(よも)にこぼれるクリスタルの粒 : ゑつ子
彫像のごと猫見つめゐる窓に晩夏のきざし雨粒流るゝ : 万里子
外に出て思わず見入ったその先のショーウインドウに痩せた私が : shell
こころとはガラスにも似て壊れると教えてくれた爺ちゃんの声 : zenkyu
たわむれに光るかけらに指触れて滲む血を吸う夕焼けの海 :
唇の白いワインを染め上げた切子ガラスの青に嫉妬す : 美作直哉
Lesson 321  Theme:『火星・接近した星』 by 下町古娘 2003/8/29
南東の空にしっかと輝けり夜の銀座のネオンに負けず : 下町古娘
あの星は遠くにあっても見えるから今の君より近くに感じる : shell
ほうき星尾をたなびかせ夜空行く何故か信じる生命の種 : zenkyu
ライン際ギリギリ狙いすまし打つ軍神マーズの化身になって : よさ
火星人ゐると書かるる本を読み侵略におびえし頃は六歳 : 橘真知子
死産した双子の兄を探すように双眼鏡の火星は赤く : 美作直哉
ふるさとは水と緑のこの星ですと火星の人に伝えてみたい : 万里子
Lesson 320  Theme:『新学期』 by よさ 2003/8/28
新学期ひとつ空いてる席がある「なみえちゃんってねぇ結婚したのよ」 : shell
新学期赤いランドセルが揺れるはずだったのに黒い額縁 : よさ
新学期いきなり欠席翌日にランドセルには連絡帳を : zenkyu
宿題は八割がたを終えゐしも新学期はじめの五日が勝負 : 橘真知子
遠い日のセピア色した新学期はにかむ赤きセーラー服 : 下町古娘
子らの声街から消えて雲白し新学期前の三日四日 : 万里子
新学期実力テストが控えれば秀才の席に人だかりして : ゑつ子
金色の髪で迎える新学期ちょっと背伸びの夏休みたち : 美作直哉
Lesson 319  Theme:『細工』 by zenkyu 2003/8/27
彼の部屋小さなSONYを仕込みをくアリバイ崩す楽しい細工 : 橘真知子
アイコンのファイルを間違い削除してX(バッテン)だらけでああ不細工やなぁ : shell
奪うほど欲しくなくなり投げ出してガラス細工の君を壊した  : よさ
満月を毎日毎日細工して座りごち良い三日月にする  : 下町古娘
不細工な人生されど味わいは人一倍の母のごった煮  : 美作直哉
おみやげの寄せ木細工がおとといは愛しく今日はこ憎らしくて : ゑつ子
見るだけで買ってもらえぬ飴細工今も眺める夏祭りの夜 : 万里子
小細工を仕掛けて待つは浮きの先なにがかかるか釣りは楽しい : zenkyu
Lesson 318  Theme:『油絵』 by 橘真知子 2003/8/26
パレットへ搾り出す黒カンバスのいちめんに塗る闇夜の鴉と : 橘真知子
カンバスに三角波を描きなぐり差し出す牧師29歳 : ゑつ子
油絵で初めて描いた静物は「夢の世界のようだ」との評  : shell
放課後を君と過ごした部室には描きかけの絵と油のにおい : 万里子
覗き込む公園の画家筆ふるう並んで書くは三法寺池 : zenkyu
ゲルニカの牛の瞳の夢を見た かの地の黒い叫び今でも : よさ
わが為に描きくれたる山の絵の朝焼けの色褪せず三十年 :
厚塗りの絵画のごとき向日葵も溶け出すようなアブラ蝉時雨 : 美作直哉
朝市でゴッホの描いた向日葵を一束買った南プロバンス : 下町古娘
Lesson 317  Theme:『本』 by ゑつ子 2003/8/25
上代の一律一割古本屋 十人十色の情報社会 : 美作直哉
無人島遥か彼方を眺めつつ歳時記持ちて砂浜に書く : 下町古娘
本屋さんひとりで行くのがいいようだ時間気にせず気楽に見られる : shell
『大草原の小さな家』を読めば聞こえる母の懐かしき声 : 万里子
復刻の『みだれ髪』など読みをれば仮名づかひにも晶子いましも : ゑつ子
進められ手にした本はエッセイ集紅いカバーをかけて読んでる : zenkyu
返さなきゃマイルドセブンのしみた本 一行読むと抱かれたくなる : よさ
手に取れば聖書のごとき重みありハリー・ポッター英文を買ふ : 橘真知子
Lesson 316  Theme:『お菓子』 by shell 2003/8/23
ギヤマンにくろもじ添えた葛餅をぜいたくとして時にたしなむ : ゑつ子
ギリギリに決めた旅行の行き先は名古屋泊まりでお菓子の城へ : shell
柿の実を餡に加えて艶やかな形そのまま和菓子の妙 : 下町古娘
お店屋さんお菓子屋さんになるのだと幼心を躍らせた日よ : 橘真知子
プティングを最後に食べるアラモードお袋好きなルノワールにて : zenkyu
小六の息子の作るデザートの伝説となるチョコムースの味 :
窓辺より家々の屋根見下ろして食べる飴玉夕暮れの味 : 万里子
ポッキーを一箱全部食べれるもん!タクヤ君ちの子でもいいもん! : 美作直哉
Lesson 315  Theme:『最後』 by 万里子 2003/8/22
晩夏光少し黄ばんだ葉の陰に最後の小さき朝顔開く : 万里子
最後には味醂で締める鍋の味緊張の時おたまが震える : zenkyu
何処までも追いかけて行き見たいもの地球をめぐる風の最後を  : 下町古娘
後ろ髪引かれる思いで落ちのびて「木曾の最期」の巴御前 : shell
蓖麻子油の底付くビンを逆さにし最後の一滴冷夏に注ぐ : 美作直哉
最後までみる義務感にとらわれてスタッフロール穴があくまで : よさ
「最後まで泣かずにゆうたよ」診察を終えて出てくる男(おのこ)がこれに : ゑつ子
風邪を引き喉を嗄らして咳き込めば箱ティッシュには最後の一枚 : 橘真知子
五七五七と流るる言の葉の最後の七に行きなづみをり :
Lesson 314  Theme:『夏の終わり』 by みか 2003/8/21
見上ぐれば空には秋の茜雲死に急ぐやうに蝉は鳴きをり : 橘真知子
海藻の打ち上げられた真昼間のだあれもいない海水浴場 : ゑつ子
始まらぬ夏のパラソル砂浜に涙の深き後残す果て : 下町古娘
セミの声テレビの音をかき消しぬ短かき夏の切実な生 : 万里子
バスタイム水着のあとをなでてみる想い出すのは別れたアイツ : shell
風鈴の断末魔響くベランダは砕けた金魚台風襲来 : 美作直哉
亡骸の蝉を見つけてふと思う鳴いてうるさし泣いて悲しい : zenkyu
Lesson 313  Theme:『ならべる』 by 美作直哉 2003/8/20
美辞麗句並べ立ててる人よりもぶっきらぼうな君のひとこと : shell
思い出を古い順から並べます最初の頃の鮮やかな色 : 下町古娘
あまたからジャワ更紗とりスカートを縫うて我への処方箋とす : ゑつ子
ミニチュアの酒瓶並べてミニバーをささやかに真似る飲めないくせに : 橘真知子
Tシャツが並んで揺れるベランダに朝顔の青涼やかな朝 : 万里子
王将を最初にならべ後手番に相手は甥と思えず負ける : zenkyu
モー娘。にコナンにキティ子供らの夢を並べる商談会場 : 美作直哉
Lesson 312  Theme:『癖』 by 美作直哉 2003/8/19
ねえじーじ、あのねままがね、ないてるの。どろぼうねこってなあに、じーじ : よさ
左足親指の爪痛むのは歩き方ゆえ爪の形ゆえ : 橘真知子
右爪が左の爪を研ぎ始め忘れ去られたカバンのナイフ : 美作直哉
笑顔みせ君の前での強がりは心配させたくないだけなのよ : shell
「要するに」くくってしまえの術をもち階段上がる人の口癖 : ゑつ子
癖のあるあなたの足音近づけば背中を伸ばしてわずかに気取る : 万里子
気がつけば頭を書いてる左腕右でしごと落ちる髪の毛 : zenkyu
笑っちゃう あなたの癖に指先に 咳払いさえまだ恋しくて : とまと
肩までの髪の寝癖を抑えかね輪ゴムカチューシャ総動員する :
Lesson 311  Theme:『誕生』 by 径 2003/8/18
双腕に伝ふ躍動縁ありてわが血受け継ぐいのち愛しむ :
幼子に見入る瞳に光る汗眼の汗は喜びのもの : zenkyu
をさなごの眉根のしわも談笑の一つとなりて要(かなめ)は寝入る : ゑつ子
産み月に満たず生受く幼子にバグダッドの空疾く青くあれ : 万里子
誰もある生まれた日とそのうち訪れるだろう命終える日 : shell
カーテンの裾翻して生まれ出る秋の気配に紅茶はいかが : 美作直哉
来年の誕生日には誰といて 笑っているやら泣いているやら : とまと
新芽吹く幾千年を生きるため腐海の底の清き砂より : 橘真知子
Lesson 310  Theme:『コントラスト』 by 美作直哉 2003/8/9
吾が放つ手裏剣を受く君がいてその後ろには可憐なあの子が : ゑつ子
柔順さ私と違う理想像作り上げて押し付けないで : shell
白は星黒は闇とは囲碁のこと宇宙をめぐる壮大なもの : zenkyu
喧騒の海水浴場背に登る暑中見舞いの赤い自転車 : 美作直哉
「赤と黒」感想文のために読み途方に暮れた中三の夏 : 万里子
白と黒余儀なくされて付けられる心の中の想いなるかな : 鏡の精 せり
Lesson 309  Theme:『とり』 by zenkyu 2003/8/8
焼鳥の串と串との行間に熱きものあり夏の納会 : 美作直哉
モノ・ジ・トリ・地学教師の手拭いとセットで出てくる科学者気分 : ゑつ子
わかってる楽しくないと損なのにひとり相撲の取り越し苦労 : shell
鳥たちのついばむ空き地生業か虫をつついて雛にお土産 : zenkyu
おっとりと眠る我が子の左手に赤い誘惑 キンカン塗りたい : よさ
台風の多い年だけ思い出す日本の一部沖ノ鳥島 : 万里子
山奥に青極めたる鳥兜燃ゆる瞳に見つむをとめご :
Lesson 308  Theme:『焼けつく』 by ゑつ子 2003/8/7
お日様の恩恵うけて生まれては暑いといえど駆け回る肌 : zenkyu
喉元の焼け付く感触楽しみて夏の真昼に蒸留酒飲む : 万里子
軋轢で炭素に還つたくさぐさは自嘲の笑いを交わすのみなる : ゑつ子
暑いから朝は早めに散歩しよ寝坊したら道路が鉄板 : shell
SFのアニメの如く卓上のレーザーが彫る僕の表札 : 美作直哉
唇蒼むまでわたつみになぶらせて少年熱砂に細き身を投ぐ :
Lesson 307  Theme:『都市の名前』 by 万里子 2003/8/6
ビル崩壊遺恨の街のニューヨーク 広島南京共に笑う日 : 美作直哉
行商の魚の脇を潮風が駆け抜けてゆくわたしの尾道 : ゑつ子
「ヒロシマ」「オキナワ」カタカナの騒がしき祈り疎まし靖国の霊(たま) : 万里子
逢いたいよ君住む町はすぐそこで同じ大阪なのに遠いね : shell
四街道 通い倒した一年間 十年後には住んでるのかな : とまと
ビル影が辺りを覆う雑踏は人の人情消えた新宿 : zenkyu
Lesson 306  Theme:『水着』 by shell 2003/8/5
5年前飛び込むつもりで買う水着 流行(はやり)とあればまたも飛び込む : ゑつ子
手術痕もうビキニにはなれないね今更別に着たくないけど : shell
アーカイブフィルムニュースのおみなごは胴長水着で輝く笑顔 : 万里子
彼の目になって選んだ水着かもしれない夏の一大決心 : よさ
なんとなく興醒めをした初水着あの日のことは語れないまま : 美作直哉
 ただ一度水着姿を見せしひと炎暑の街のゆらめきに消ゆ :
トランクスはき心地よい水着だと思ってみてはプールに飛び入り : zenkyu
水着きてわざと寄り添いVサイン ちょっとあなたに妬いて欲しくて : とまと
Lesson 305  Theme:『青いもの』 by よさ 2003/8/4
青切りのミカンに耳の下あたりあっと声あぐ一年ぶりに : ゑつ子
この先に別のわたしが住むかもと路線マップのブルーをなぞる : おやなぎ
柔らかきロシアン・ブルーの眼の色に過ぎゆく夏のけだるさ残れり : 万里子
夏向きに色の合せは難しいサイトの基本はブルーとピンク : shell
南国を甲冑にしてアオブダイ光溢れる珊瑚の上に : 美作直哉
緩き坂登りゆきつつ振り向けば一筋青き海面きらめく :
いつまでも蒼き地球と言われたい薄汚れても水の惑星 : zenkyu
青が住む君の心に届かない言葉たくして朝顔よ咲け : よさ
Lesson 304  Theme:『刃物』 by みか 2003/8/2
刃こぼれの多い刀は無粋ゆゑせめてスパッといくやうに研げ : ゑつ子
お互いについ口を吐く言葉が小さな氷の刃のように : shell
打ち刀抜きていのちを奪ふとき修羅を抱いて九品念仏 : 鏡の精 せり
床に落つカッターナイフの刃が折れる高校受験の無理が祟れば : 美作直哉
初めての鉛筆削りは包丁で仕込んだ親父ほくそえみ見る : zenkyu
研ぎたての柳刃包丁の輝きを曇らせて行く鰤の脂身 : 万里子
研ぎあげし刃に指の腹当てて吸われる感触確かめている :
Lesson 303  Theme:『風呂』 by 美作直哉 2003/8/1
この肩を流れるお湯を浸礼とみなして毎夜清くおもへり : ゑつ子
髪すすぎ睫毛の雫見つめれば5個にひとつは君への思い : 美作直哉
本当は何もしないで浸かりたい あなたと二人夕日の露天 : とまと
 温泉に「行きたい」気持ち「行かれない」現実、浴槽を洗う、キュッ。 : よさ
リフォームのガスの工事が済まなくて水のシャワーで「海は広いな」 : shell
「風呂釜の点検します」とマイク越し詐欺師の声は爽やかすぎる : 万里子
溢れいずる乳もてあましし時は過去湯船に浮かべ水母のごとく :