短歌ドリル公式記録簿 2004年9月号
 毎日のお題から即日UP!短歌のWeb練習会、公式記録です。
 Liveは万里子さんのHP<短歌ドリルBBS>で!
【ご連絡】短歌ドリルの年末年始休暇 : 12/27〜1/4     
Lesson 605  Theme:『月末』 by 橘真知子 2004/9/30
真っ白な飯と切り身の魚ひとつ長月晦日の慎ましき膳 : 橘真知子
振込みと引き出し多い月末に数字が見難い老眼初め : zenkyu
マイサイト月末だから模様替えしようとしたらサーバーメンテ : shell
月末のキャッシュコーナー人多く警備の人も活気に満ちて : 万里子
心にも締め日ありかな省みて遣らざる事の塵と積りし : いちみ
2年後の商品戦略立て切れず月次報告来月回し : 美作直哉
Lesson 604  Theme:『気分』 by shell 2004/9/29
今のうち気分逆さにしたいから眠る前にはぼやきを言おう : zenkyu
忙しくてタバコ吸う間もないようね一息入れて私待つから : shell
イチローが記録を破りしお祝ひを月末なれどしたき気分なり : 橘真知子
駅前の広場に一人ギター弾く男の思ひはマチユピチユに立つ : 万里子
アバターをジーンズにする昼休み残業続きに台風警報 : 美作直哉
久方の夕寝醒むるや仰ぎ見る空にぽっかり今日の笑顔 : いちみ
Lesson 603  Theme:『月』 by いちみ 2004/9/28
兎は遊び蟹が潜む明るさが太古の人々求めたロマン : zenkyu
寝る前に「りら」の最終散歩出て明かりは消えて月が見てる : shell
満月に服従強ひられ人狼の哀しきさだめどこまでも孤独 : 橘真知子
お忍びで地球に降りた分身のクラゲをゆらり波間に照らす : 美作直哉
神様が慌て転んで満月を落とし泣き出す今日の夜空や : いちみ
Lesson 602  Theme:『身体の一部』 by 美作直哉 2004/9/27
猫の爪切りつつふと見る我が足の爪の長さに驚いている : 万里子
はずかしくてついつい君の指先を見てしまっている初秋の午前 : shell
勲章の如く黒ずむ十本の指に抱かれ秋の新作 : 美作直哉
霜焼けの出来た手の甲むき出しで炊事を始める母は笑顔で : zenkyu
夜も更け一人ひっそり爪を染め君を思いし聞く虫時雨 : いちみ
Lesson 601  Theme:『お彼岸』 by zenkyu 2004/9/24
おはぎ見てついつい買い込む秋の日苦いお茶入れ彼岸をすごす : zenkyu
彼岸との交信ありや 飴色の羽ゆれやまぬ道の落蝉 : むつき
わが母の逝く日彼岸の中なれど忘れなきよう暦に置きて : いちみ
墓参り霊園までのナビをして後ろの席は寝られていいなぁ : shell
和菓子屋に並ぶおはぎの数を見て今日の休みの由来に気付く : 万里子
Lesson 600  Theme:『祝う』 by 万里子 2004/9/22
晴れ着着る写真館では子供たちレンズの前で泣いては笑う : zenkyu
誕生日ひとり祝へり 泣きながら馬に縋りしニーチェ思ひつつ : むつき
三十過ぎショートケーキにロウソクを立てるが如きレノマのネクタイ : 美作直哉
来月は誕生祝い言うからね 私の時は君だけだった : shell
優勝の祝賀会でのビールかけ今は遠き日球団合併 : 万里子
Lesson 599  Theme:『食欲の秋』 by 橘真知子 2004/9/21
茶碗蒸しの中の銀杏探しをり秋の初めの汗を拭きつゝ : 万里子
熱々のビーフシチューを作っても帰ってくる人なんていないけど : shell
まだ固き梨をぐわりと噛みくだき父はひたすら金の話す : むつき
栗飯を頬いっぱいに味わえる添えた青菜が甘味をかもし : zenkyu
待ってねとレモンソーダ飲み終わり 後姿を追って小走り : いちみ
おろしたて炊飯器から湧き上がる舞茸御飯の香を囲む : 美作直哉
Lesson 598  Theme:『南』 by 美作直哉 2004/9/17
南の風少し東へ捩れつつ北の風かな肌の寒さや : いちみ
南北に分かれて暮らす家族さえ民族の血は国境を越え : zenkyu
逢いたいな君住む町はわが町より南にあって近くて遠い : shell
南北の融和のために帰国せりボートピープルなりしわが友 : 万里子
南頂の光も入らぬ尖塔の獄にドレスを着たる骸骨 : むつき
海南の「常勝」と染め抜きし旗今も重みを増しゐたりしや : 橘真知子
 憧れた南国行きの夜行には乗らじ空へと明日へと逃げる : 美作直哉
Lesson 597  Theme:『月の入った漢字』 by shell 2004/9/16
「肌の色艶もよくなった」「ケアしたもん」ホントは君に恋してるから : shell
腰痛に顔をゆがめて座り込む見上げる空に月はぽっかり : zenkyu
白煙が昇るか如き雨脚の 強く降る様スコールと知る : いちみ
 愛ならぬものを抱きて窓に寄れば格子の奥に膿みてゆく月 : むつき
「酒臭い」軽口叩いて部屋へ行く娘の肩にはタトゥーのシール : 美作直哉
Lesson 596  Theme:『末っ子』 by zenkyu 2004/9/15
甘えんぼ田舎飛び出し街の中生業大工我が父は空 : zenkyu
甥っ子が映画見に行く夏休み兄の彼女が世話をしてくれ : shell
もうこれで最後と名付けた末っ子に救われているキリコの父さん : 美作直哉
末っ子の我が弟は一人身で 先世を安じ姉の説きつつ : いちみ
笑ふとき八重歯の見える末っ子の君とわけあふミルクキャラメル : むつき
Lesson 595  Theme:『歌』 by むつき 2004/9/14
体調が悪くなるからカラオケは禁止されててストレスたまる  : shell
海外のアーティスト来て久々のライブへ行かむ渋谷のホール : 橘真知子
歌人とは詩を詠みつつ時を知り伝える事を筆に託して : zenkyu
風の歌と呼ぶには荒し台風の最中に窓の外より聞こゆ : 万里子
萌葱色日に出揃う新芽大根の間引きしながらハミング一つ : いちみ
謳歌した生き様に見ゆる隣人のベランダに貼る人工芝青く : 美作直哉
たましひは歌より遁れゆくものを星座のやうに留めんとする : むつき
Lesson 594  Theme:『思』 by 橘真知子 2004/9/13
憧れはノースショアとふ十三歳稲村ガ崎の日焼けしたる子 : 橘真知子
押し寄せる波のパイプをくぐりぬけ空と海底逆さに感じ : zenkyu
恋の波ときどきバランス崩すけど大きなのでも平気だからね : shell
円筒のやうな波からきらきらと透けゐる空を見つつ滑りぬ : むつき
腰ほどの波と戯るサーファーが上手いか否かは知らず江ノ島 : 美作直哉
Lesson 593  Theme:『思』 by 万里子 2004/9/10
思いとは時を超えても伝わると爺ちゃんの文今読み返す : zenkyu
もの思ひは逡逡として枸杞(くこ)の実をこぼせるごとくひとの名を呼ぶ : むつき
思慮深く接してくれる君が好きだけどたまにはハメはずしてよ : shell
田の土の底に憩へる魂を見つめる如き表意文字「思ふ」 : 万里子
ゆっくりと思考は止まるどどどうと天より唸る瀧をただ見る : 美作直哉
Lesson 592  Theme:『開く』 by 美作直哉 2004/9/9
こんなことで壊れるくらいの縁ならばしかたないさと開き直って : shell
馴染みなきアドレスのメール削除せり玉手箱とう教訓あれば : 万里子
ふたを開け味を確かめまた閉じて時間のかかるポトフを作り : zenkyu
踏み出した新たな一歩もクレパスに呑まれ奴らの酒の肴に : 美作直哉
手のひらに秋風つかみスーパーへカゴ取りしとき薄暮へ逃がす : 橘真知子
頬を撫で髪へと至るきみの掌よ 雪受けとむるやうに開きて : むつき
Lesson 591  Theme:『米』 by zenkyu 2004/9/8
お茶碗にこんもり盛り付け夕飯おかず一品男の料理 : zenkyu
食欲がなくても入るおにぎりとサンドイッチをコンビニに求め : shell
無洗米意外な美味さに教育の恐ろしさなどを話し二杯目 : 美作直哉
ナイフもてフォークの背に米を盛る父の手際を見つつとがめず : むつき
誇らしく従姉の夫の名の入る十キロ米の袋を開く : 橘真知子
Lesson 590  Theme:『揺れる』 by shell 2004/9/7
ぐるぐると電気の傘のまはりゐて目眩ではなきなゐの所為なり : 橘真知子
君のこと人がなんと言おうとも私の心揺れたりしない : shell
揺れている百日紅の花の房見上げる先は行合いの空 : 万里子
地震(なゐ)なれや 蛍光灯ゆ下がりゐる紐のさゆらぐさまを見守る : むつき
誘惑と理性の間で揺れ動く振り子の僕が齢を刻む : 美作直哉
胸のうち揺れる感情おしころし指し出す包み心を込めて : zenkyu
Lesson 589  Theme:『怨』 by むつき 2004/9/6
怨念を感じる視線感じられ差し出すものは秋刀魚の水煮 : zenkyu
「怨むわよ」思わせぶりな態度して気がないなんて言ったりしたら : shell
二百年受け継ぎし怨み晴らさむと幼を殺むひとのかなしさ : 橘真知子
再会の声は咽喉を越えぬまま怨恨は満つ 剣のごとくに : むつき
ボクの顔「怨」に見えると笑う君お前の顔は「善」に見えるよ : 美作直哉
怨といふ執着持つや持たざるや荒ぶる神は大地揺さぶる : 万里子
Lesson 588  Theme:『ピアノ』 by 橘真知子 2004/9/3
淋しさを埋むとはなく寄り添ふはラフマニノフのピアノの響き : 橘真知子
幸せな気分のはずなんだけど歌いたくなる「わたしはピアノ」 : shell
もしでいいピアノの旋律弾けたなら届けて欲しいこころの音 : zenkyu
ほそき身を揺らして君の弾きそむるピアノのなかに遊ぶ木漏れ日 : むつき
10本の指で操る鍵盤の端っこにある僕の休息 : 美作直哉
照れながら「乙女の祈り」を弾いている姪の視線はわたくしを見る : 万里子
Lesson 587  Theme:『ヨーロッパの都市の名前』 by 万里子 2004/9/2
雨音に傘のグリップ握り締めシェフィールドに舞うは女王陛下 : zenkyu
「ベルばら」でパリ、ベルサイユ「オル窓」でレーゲンスブルク行きたくなって : shell
霧雨にけぶる夕べのロンドンよ 低き空まで鐘鳴りひびく : むつき
低き響きのエンヤの声はダブリンに焦がるゝ想ひかき乱す : 万里子
Lesson 586  Theme:『刹那的な事象』 by 美作直哉 2004/9/1
幸せを零さぬようにお互いの 手は彷徨いつ握り握られ  : ドラゴンナイト
河川敷高架を過ぎる銀色の列車かすめし打ち上げ花火 : 橘真知子
川面には蜻蛉の群れ舞い飛び明け方の河流れる星たち : zenkyu
忙しい君との会話は貴重だわ次に逢う日を心待ちする : shell
軒下の誘蛾灯にてうす蒼く火花の散るを見つつ待ちをり : むつき
ベランダの鉢土の上の秋の蝉標本めきて静まりてをり : 万里子
この躯廻る命の停車駅そう言われても今は困るよ : 美作直哉