国道439号全線走破の旅(2012年5月)

高知県四万十市から徳島県徳島市まで四国山地を縦断するように走っている国道439号線(通称ヨサク)。国道とは名ばかりで、カーブの連続する一車線の峠道が多く天下に酷道として名高いのですが、この酷道439号線全線走破1泊2日の旅に出かけてきました。

国道439号・ルートマップ

四万十市・国道439号始点:10時40分━0キロ
安並水車の里公園 国道439号始点
サンリバー四万十

国道439号の起点は四万十市の中心部にある交通量の多い交差点です。右上の写真、奥に向かって国道439号が走っています。右下写真は交差点横にある道の駅様施設サンリバー四万十です。レストラン、物産館、身障者用トイレ、車イス用駐車場などがあり、敷地の一角には四万十市観光協会もあります。市街地を抜け郊外に出ると田園風景が広がっていて、その中に左の写真の安並水車の里公園があります。フジテレビのドラマ「遅咲きのひまわり」でよく登場した場所で、国道からすぐです。地図では漏れていますがここにも身障者用トイレがあります。


サンリバー四万十
高知県四万十市右山383−7
TEL:0880−34−5551


四万十市・杓子峠:12時10分━28キロ
後川 国道439号・狭い道
杓子峠

国道は四万十川の支流、後川沿いにどんどん山奥へと向かって行きます。水が澄んでいて橋の上からでも泳いでいる魚の姿がはっきり見えるほどです。そして439は住次郎という集落を過ぎたあたりから酷道の本領を発揮し始めます。この先幅員が2.8〜3・5メートルしかないカーブの連続した道になります。やっとという感じでたどり着いたのが右下の杓子峠です。残念ながら眺望はききませんが四国の峠道は眺望の開けている方がまれです。


道の駅四万十大正:12時40分
中山間道路走行支援システム案内板 道の駅四万十大正
下津井めがね橋

杓子峠を下ると道は四万十川に行き当たり、川にかかる橋を渡ると右手に道の駅四万十大正(右上写真)があります。439は国道381号と兼用になり、少しだけ四万十川沿いを走ったあとすぐに梼原川沿いに北上する酷道に戻ります。ここからは津野町で国道197号と合流するまで長い長い狭隘路となります。右下は下津井にあるめがね橋で、かつての森林鉄道跡です。今も歩いて渡ることが出来ます。流域では明治44年に中津川・大奈路間に初めて軌道が敷設され、その後も順次路線は延伸されていき、昭和41年頃まで列車による木材搬出が行われていました。

439にかぎらず高知の山道で特に離合が困難な場所には左写真のような電光掲示板が設置されています。高知工科大学と高知県が共同で開発した中山間道路走行支援システムです。とてもよく出来ており、この案内に従えば対向車と離合するために延々バックするような羽目に陥らずに済みます。たまに表示を無視して突っ込んでくる車もあるのでご注意を。


道の駅四万十大正
高知県高岡郡四万十町大正17-1
TEL:0880−27−0113


シェ・ムア:14時00分
山のパン屋、シェ・ムア シェ・ムアの店内
八百とどろ

国道439号を走るドライバーやライダーにとってオアシスのような場所です。ホントに辺ぴな場所にあるのですが天然酵母を使ったしっかりしたパンからデニッシュやドーナツなどの甘いパン、食事にもなるサンドイッチなど焼き立てのパンが種類豊富に並んでいます。奥にはイートインコーナーもあり、入れたてのコーヒーと美味しいパンでほっと一息つくことが出来ます。店を出て1キロほど行くと八百とどろ橋があり、橋の上から八百とどろの景色(右下写真)を見ることができます。奇岩に挟まれた急流で、岸辺にはトサシモツケが群生し白い可憐な花を咲かせています。


シェ・ムア
高知県高岡郡梼原町松原401番地
0889−40−2727
定休日:毎週月曜日&第5日曜日


津野町・宮谷の大わらじ:15時00分
下折渡の橋の上から 名称不明の花
金剛ばっこ

トサシモツケらしき花の写真を撮り(実際は違うみたい)梼原川から北川沿いを北上します。左は下折渡(シモオリワタリ)地区の橋の上から旧道?の橋げたを見下ろしています。もうしばらく走り、やっとこさ国道197号に合流しちょっと寄り道。左手の天忠トンネルを抜けると右手に地元の人が金剛ばっこと呼ぶ大わらじがあります。「わしらの地区にはこんな大きなぞうりをはく大男がいるぞと」言って悪霊を脅し退散させる魔除けとして作られているそうです。


津野町・長沢の滝:15時40分
長沢の滝 津野町・公衆トイレ
津野町・トイレ内部

197号とすぐに分かれた439も天狗高原へと上がる県道48号との分岐の向こうまで改良が進んでいます。道の駅・四万十大正を出てから無かった身障者用トイレですが、東津野の集落を抜けると案内板が出ていて、それに従い進むと右写真の公衆トイレがあります。学校やB&G海洋センター、運動公園などのある一角です。こんな山の中に障害者が使えるトイレがあるだけでもすごいのに、ちゃんと身障者用トイレがあることを知らせる案内板が立っているというのがまたすごい!

しばらく進むと「日本一・長沢の滝」の看板があります。地元の人が日本一と言いたくなるのも分かるような気がする名ばくです。滝の水が洞窟の穴から出ていて、瑞々しい新緑の中を流れ落ちる白く美しい滝に興趣を添えています。国道から滝までは約1.6キロです。


津野町・天狗荘:16時00分━112.7キロ
天狗荘の夕食 天狗荘バリアフリールーム、浴室
天狗荘バリアフリールーム、トイレ

この宿があったから今回の旅が実現したと言っても過言ではありません。身障者室のある宿が439沿いの、そろそろ泊まりたいなという場所にあり本当に良かったです。元は国民宿舎だった公共の宿なので料金はリーズナブル、部屋はゆとりがありベッドとベッドの間で車イスが回せるほどです。洗面台が客室内にあるという珍しい作りなのですがトイレと洗面を2人が同時に行え具合が良かったです。ベッドは電動で浴室用のシャワーチェアも借りることが出来ました。掃除は隅々まで行き届き、サービスも気持ちよく、山菜と川魚中心の料理も美味しかったです。写真は三種類の中で一番安いコースで、これにご飯とお吸い物(料亭の味!)がつきます。天狗荘は439から県道48号に入り約10キロ、20分の距離にあります。県道は一車線でカーブの多い道です。


天狗荘
高知県高岡郡津野町芳生野乙4921−22
TEL:0889−62−3188


天狗荘:7時50分━112.7キロ
天狗高原・セラピーロード 矢筈峠
石灰石輸送用のベルトコンベア

起きた時間が早かったので、宿の近くを散策したのですが気温がなんと7℃。車から予備の防寒具を取り出して着込みました。左の写真は宿の近くにあるセラピーロードというハイキングコースです。車イスでも行けないことはないけど、地面にウッドチップが敷いてありアップダウンもあるので激しく体力を消耗します。朝食は7時半からなので宿を出たのが8時前。食べずに出るというのもありかも。

439に戻り山道を上り矢筈トンネルを抜けると右上写真の場所に出ます。ここから右の道を下っていくと四万十川源流点に続いているのですが数年前に行った時は未舗装(船戸から上がるルートは舗装路)でした。439を下る途中、道の上を大きな構造物が横切っています。これ実は石灰石輸送用のベルトコンベアです。鉱山のある鳥形山から須崎湾まで続いていてなんと全長23キロもあります。大人の事情であまり宣伝は出来ないようだけど、この石灰石の露天掘り鉱山としては日本一の規模を誇る鳥形山鉱業所の景観はすごいです。関係者以外立ち入り禁止の鳥形山トンネルなんか金払っても入りたいぐらいです。


ドライブイン引地橋:9時00分
長者川沿いの狭い道 ドライブイン引地橋・公衆トイレ
ドライブイン引地橋・トイレ内部

矢筈トンネルまで上って来た道沿いを流れる北川も、今下っている道沿いの長者川もきれいな川です。その清流沿いを走る439は改良工事が進行中で、二車線から一車線また二車線と道路の状況はめまぐるしく変化します。旧仁淀村の集落を抜けると国道33号と合流するのですが、合流後4キロ強ほどで左手にドライブイン引地橋があります。ここには駐車場の一角に右写真の公衆トイレがあります。


ドライブイン引地橋
高知県吾川郡仁淀川町引地62


京柱峠:11時15分━250キロ
京柱峠 京柱峠看板
京柱峠の猪肉うどん

439は旧吾川村、旧池川町、旧吾北村、土佐町、本山町などの山間の町村を通り抜けます。一部に未改良の区間もありますがほぼ二車線の走りやすい道です。道沿いの清流や山肌に広がる茶畑などきれいな景色もたくさんあったのですが、2日目の疲れと先をあせる気持が出て写真は撮っていません。この区間では439沿いに道の駅・633美の里や道の駅・土佐さめうらがあり、ほかにも所々に公衆トイレがあるので身障者用トイレに困ることはないでしょう。

大豊町でいよいよ難所中の難所、京柱峠への上りが始まります。一車線でカーブの多い道を30分ほど上ると峠に到着です。峠には茶屋があり、名物の猪肉うどん・800円を食べました。猪肉は程よい歯ごたえがあり味わい深く美味しかったです。そしてなんと言っても京柱峠一番のご馳走は、その眺望です。峠からは西を見れば高知県、東を見れば徳島県の山並みが一望できるのですが、訪れる人は少なく辺りには寂ばくとした雰囲気が漂っています。茶屋は峠が通行止めになる冬の間休業し、それ以外の期間は無休で営業しています。なお入り口には10センチほどの段差があります。


三好市・東祖谷歴史民族資料館:12時40分━271.3キロ
東祖谷歴史民族資料館内部 東祖谷歴史民族資料館
東祖谷歴史民族資料館・トイレ

京柱峠から東祖谷への下りは439が最も酷道らしい表情を見せる区間です。道幅は広めでカーブもゆるめなんだけど路面が荒れていて穴ぼこが多くカーブミラーが少ないため走行にはかなり気を使います。歴史民族資料館はトイレを借りるだけのつもりだったのですが、入館料を払いしっかり見学してきました。平家の落人である阿佐家に伝わる平家の赤旗(レプリカ)などが展示されています。ここで次に寄る落合集落のことや周囲の観光スポット、道路情報などを教えてもらいました。寄って良かった。


東祖谷歴史民族資料館
徳島県三好市東祖谷京上
TEL:0883−88−2286


三好市・落合集落展望所:13時20分
三好市、落合集落 落合集落展望所、公衆トイレ
落合集落展望所・トイレ内部

事前にノーマークだった絶景ポイントです。急傾斜地に石垣を積み、畑と人家が混在する姿は日本のマチュピチュと呼ばれているそうです。誰が呼んでいるのかは定かではありませんが。また集落は重要伝統的建造群保存地区に指定されています。この地の山深さと傾斜の急さを考えると、この集落の存在は奇跡のようです。一点だけ、トタンの色はベンガラ色で統一した方が景観が良くなると思うのですがどうでしょう。写真は谷を挟んだ対岸の山にある展望所からの眺めで、ここには身障者用トイレがあります。展望所は439から脇道に入り約2.5キロ、6分ほどで着きます。


三好市・名頃駐車場:13時55分
名頃駐車場近くの川 三好市、名頃駐車場
名頃駐車場・公衆トイレ内部

439を走っていると、三嶺山登山口という案内板があるので橋を渡ります。するとすぐに駐車場と公衆トイレがあります。私の調べでは、ここを過ぎると神山町まで身障者用トイレがありません。写真は橋の上からで右奥のガードレールが走ってきた439です。ここを過ぎ、少し行くと奥祖谷二重かずら橋があります。野猿(ヤエン)などもあり、西祖谷のかずら橋より更に秘境感が強い場所です。有料ですが歩ける方は是非見学してください。


剣山見ノ越:14時17分━297.2キロ
見ノ越 見ノ越からの眺め
見ノ越近くの悪路

東祖谷山方面から来るとあまり上がった感じがしないのですが、実は標高1410メートルもある見ノ越。写真の通り、同じ新緑とはいえまだ新芽が開ききっていませんでした。ここには剣山登山者用のリフト乗り場や食堂、みやげ店などがあります。トンネルを美馬市側に抜けると右写真のような景観が広がります。ここからは国道438号と共用区間になり、ちょっと寂しいけど国道標識から439の数字は消えます。峠からコリトリまでの下りも断崖絶壁を縫うように走る迫力満点の439らしい道です。そして木屋平の集落まで下りて2車線になり、もう徳島市までクルージングかと思えば、さにあらず。川井トンネル越えという最後の難所が待っていました。


徳島市本町・国道439号終点:16時50分━370キロ
徳島市本町、国道439号終点 道の駅、温泉の里神山
道の駅、温泉の里神山・トイレ内部

川井トンネルを抜け神山町まで下りてくるとあとは普通の国道と変わりません。右の写真、道の駅・温泉の里神山到着が15時46分、走行距離348キロです。佐那河内村を抜け徳島市の市街地に入る手前で、道は二車線あるんだけど歩道はなく、そのくせ車やバイク、自転車、歩行者の通行量がやたらと多い場所がありました。439を通して走ってみて一番道路整備の必要性を感じたのはこの区間です。人が歩くから道が出来るのであって、道があるから人が歩くのではない。そんな当たり前のことを今の道路行政は随分ゆがめてるなと思いました。そして徳島市の中心部で439は国道11号に突き当たり終点となります。


酷道と言われるだけあって道幅は狭くカーブの連続で運転には気を使います。でも走っている車の前をカワセミが横切ったりして大自然の中を走る爽快感を味わうことができるコースです。ゴールした時は達成感よりも、やっと終ったというヤレヤレ感の方が強かったのですが、徐々にまた走りたいという気持が湧いてきました。
「東野・岡村の旅猿」という番組でも取り上げられたことがある酷道439号ですが全線走破は大変です。完全走破にこだわらないなら徳島自動車道の脇町ICから国道492号経由で439に入り、剣山見ノ越と京柱峠を越え高知自動車道の大豊ICまで走るというコースがお勧めです。439の醍醐味が手軽に味わえるでしょう。

事故に巻き込まれたくないので蛇足ですが最後に走るときの注意を。
・一車線の区間では昼間でもライトを点けブラインドコーナーの手前ではクラクションを鳴らす。
・クラクションが聞こえ対向車の接近に気づいたら広い場所で待ち離合する。
・対向車が待っていてくれたり、バックしてくれた時はお礼の合図を!
・峠道では大抵のバイク(下りでは自転車も)は車より速く走れます。追いつかれたら先を譲りましょう。
これらを実践すれば事故に遭う確立がかなり減ります。

酷道439号があなたを待っています。是非楽しんできて下さい。

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