膀胱炎について(2006年9月)

はじめに
脊損になって4,5年の間は膀胱炎になることはまれで年に1度なるかならないかという感じだったのですが、年を経るにつれ回数が増えていき2004年は年に8回膀胱炎になりました。それが2005年の春ごろから極端に増え、月に2,3回のペースで罹患するようになりました。病院で処方された抗菌薬を飲めば良くはなるのですが、薬をやめて2,3日するとまたすぐに膀胱炎の症状が出て病院へ行く、その繰り返しです。漢方薬やらなにやら色々試しましたが良くなることはなく、なかなか辛いものがありました。ただこのせいで膀胱炎の経験だけは豊富に積んだので、膀胱炎についてまとめてみました。私は医学的なことについては完全な素人です。素人が経験をもとに聞きかじったことなどを加えてまとめたものであることを承知の上でお読みください。

膀胱炎の原因
人間の皮膚の表面には大腸菌を初めとする色々な細菌が住んでいて、これらが膀胱に入り膀胱内で繁殖することで膀胱炎になるそうです。細菌は皮膚の表面や尿道の先だけでなく、膀胱内にもわずかながらいるそうで、導尿するときにどんなに手を清潔にし無菌に保ったカテーテルを挿入しても、膀胱炎を完全に防ぐことはできないそうです。

健康な身体なら多少の細菌が入ってきても、免疫が働いたり排尿のときに尿と一緒に排泄されて健康な状態が維持されます。ですが尿を溜めすぎて膀胱に傷ができたり、カテーテルの挿入により尿道に傷ができていたりすると、そこで菌が繁殖し膀胱炎になるようです。尿を長時間溜めておくことも細菌の繁殖を促すことになるのでよくないとのことです。

症状
あくまで私の場合ですが、尿のにごりと臭い、悪寒、倦怠感、失禁しやすくなる、下肢の痺れ(幻視痛などは無いのですが、膀胱炎など体調が悪くなったときだけ痺れるような感じがします)、目がしょぼしょぼする、関節痛、発熱などがあります。

治療法
抗菌薬を用いれば比較的簡単に良くなります。抗菌薬は点滴か錠剤などの飲み薬の形で処方されますが点滴の方が早く良く効くと感じます。抗菌薬には多くの種類がありますが、膀胱炎に効くとされている薬なら短くて3,4日、長くても7日も服用すれば完全に良くなります。ただし感染した菌がその薬に対して耐性を持っている場合、効かないことがあります。薬を服用しても症状が改善しない場合は、医者にその旨告げれば薬を変えてくれます。また炎症がひどい場合は抗菌薬を7日間服用しても治りきらないことがあるようです。薬によって効き方や副作用が違います。多くの抗菌薬は便秘がちになります。これは薬が大腸内の有用な菌まで殺してしまうからだそうです。ファイザー社のユナシンという錠剤は逆に下痢をしてしまいます。あとバクトラミンという抗菌薬では口内炎と酷い陰部のただれが起きました。あまりお世話になりたくない薬です。

症状が軽いうちなら水分を多く摂って、たくさん尿を出すようにすれば自然に治ることもあります。この時自己導尿で出すより漏らして排尿した方が良いようです。ですが、溜めすぎることは良くないので、失禁を防ぐ薬を服用してる場合はその薬は休んだ方が良いでしょう。

尿培養検査(2013年4月加筆)
処方した抗菌薬が効かない場合、医師は尿培養検査をします。普通の尿検査は尿に白血球が出ているかどうかを見て炎症の有無を判断しますが、どんな菌が繁殖し炎症の治癒を妨げているのかはわかりません。そこで尿を培養し菌の種類を特定し、どの抗菌薬が効くのか見定めます。一般的な膀胱炎は大腸菌などの細菌に感染していることが多いのですが、時にカンジダのような真菌に感染していることがあります。抗菌薬を常用していると発症することがあるそうで、カンジダ症には抗菌薬が効かず坑真菌薬を使うことになります。こういうことも培養検査でなくてはわかりません。ただ尿培養検査が確実だとは限りません。尿道の先からウミが出ているような状況でも培養検査で異常が検出されなかったことがあります。多くの病院は検査会社に外注するので結果がわかるまで3日から1週間ほどかかります。

腎盂腎炎(ジンウジンエン)
膀胱炎のときに菌で汚れた尿が尿管を逆流し、腎臓に達すると腎盂腎炎になります。そいうことにならないよう弁があり逆流しないようになっているのですが、うまく働かないことがあるようです。腎盂腎炎になると膀胱炎の症状が更に悪化し、40度近い高熱が出ます。こうなると病院では入院をすすめられます。入院するとバルーンを入れられ抗菌薬の点滴を毎日受けることになります。私の場合、幸い病院が近いので入院せず通院で済ませてしまいます。

医師は水分を多く摂るようにすすめますが、症状が重い場合、いくら水分を摂っても尿として排泄されず、下痢をしてしまうことがあります。自分でバルーンにたまる尿の量や色を見て調節すると良いでしょう。

腎盂腎炎のとき気をつけなくてはいけないのは、解熱剤に頼り過ぎないということです。ボルタレンなどの座薬の解熱剤を使うと熱が一気に下がり身体も楽になりますが、腎盂腎炎自体が改善するわけではありません。週末に高熱が出て解熱剤だけを使い週明けまで病院に行かなかったことがありますが、その時は体調が戻るまでに、いつもの2倍ぐらいの日数がかかってしまいました。腎盂腎炎をこじらせると腎不全や敗血症を起こし、命にかかわることもあります。

また高熱が腎盂腎炎のせいではなくインフルエンザのせいだった場合、解熱剤を使うと脳炎や脳症を発症することもあり、その場合死亡率は3割前後で重度の後遺症が残ることも多いそうです。とにかく高熱が出た場合はなるべく早く病院で診てもらうことをお勧めします。

サプリメント
膀胱炎に良いとされるクランベリーのジュースや錠剤が販売されています。クランベリーに含まれるキナ酸という成分が良いとされているのですが、独立行政法人国立健康・栄養研究所のサイト「健康食品」の安全性・有効性情報によると、一般人が摂取した場合は有効であるという報告がありますが、脊損の人が摂取した場合有効ではないという報告もあります。効くかどうかは、試してみて自分で判断するしかないようです。

マメな尿パッド交換(2012年2月加筆)
2011年の秋頃、新聞の健康相談のコーナーで膀胱炎になりやすい人は尿パッドをまめに取り替えた方が良い、という回答を見て実践しています。多少は効果があるような気がします。

抗菌薬と牛乳について(2013年4月加筆)
これも新聞で知ったのですが膀胱炎などの感染症治療に使われる抗菌薬と牛乳は一緒にとらないほうが良いそうです。ネットで更に調べてみると、なんでも牛乳に含まれるカルシウムが抗菌薬の吸収を阻害し薬の効きが悪くなるそうです。サイトによっては薬の血中濃度が1/3から1/4になると書いているところもありました。牛乳を飲んでも2,3時間あけて薬を飲めば大丈夫だそうです。

抗菌薬の中でもテトラサイクリン系とニューキノロン系が良く無いそうなのですが、クラビットやミノマイシンなど私が良く使う薬も該当します。そして私は毎朝欠かさず牛乳を飲むし夜はヨーグルトを食べ、そのあと薬を飲んでいます。いままでせっかく処方された薬の大部分を捨ててしまっていたということです。 いろんな病院で大勢の医者に抗菌薬を処方されてきたけど、これについて言われたことは一度も無いのですが。

早めの抗菌薬服用(2019年12月4日加筆)
耐性菌の出現を防ぐためには安易に使わない方が良い、といろいろな所で目にしていたので以前は薬を使わないようなるべく我慢して症状が重くなってから病院に行き抗菌薬を処方してもらうようにしていました。

でも膀胱炎歴も長くなり、初期に現れる症状と、体調の変化で現れる似た現象との違いが分かるようになったので早め早めに薬をのむようにしました。そのお陰かどうか断言はできませんが、調子が良くなり薬を使う頻度が2/3程度にまで減っています。

カテーテルの消毒と消毒液の交換(2024年2月10日加筆)
セルフカテーテルを使うようになってすぐに、医師からカテーテルの煮沸消毒と消毒液の交換を週一回行うように言われて、その通りにしてきました。それを二週に一度に変えたところ膀胱炎になりづらくなりました。医師の指示からは外れるし、容器内で雑菌が繁殖する可能性も高くなるのでおすすめはしません。でも、今まで色々な対策を試してみて、これが一番効いた気がします。

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