電動車椅子サッカーとは

「電動車椅子サッカー」とは?
試合の様子
電動車椅子サッカーの試合の様子です。選手は電動車椅子を動かし、先端のバンパーで大きなボールをドリブルしていきます。
 「電動車椅子サッカー」は、電動車椅子に乗ってプレーするサッカー競技です。体育館のバスケットボールのコートで、1チーム4人の選手が電動車椅子に乗ってプレーします。電動車椅子で自在に動き回ったり旋回したりしながら、先端に取り付けた専用のバンパーや電動車椅子の側面を使って、直径50センチの大きなサッカーボールを運び、キックし、ゴールをめざします。

 運動機能の制約が大きい比較的重度の身体障害者でも、電動車椅子の操作さえできれば電動車椅子に乗ったままで電動車椅子の動きだけで楽しめるという数少ないスポーツです。ここ数年競技人口が拡大し、2000年度は全国で41チーム368人が日本電動車椅子サッカー連盟に登録しています。日本電動車椅子サッカー連盟のもと各地域のブロック連絡会に組織化され、日本選手権やブロック予選などの大会が毎年定期的に行われています(詳しくは連盟のホームページを参照されて下さい)。

 電動車椅子の巧みな操作を駆使したボールコントロール技術チームの戦術・組織力が勝敗のカギを握ります。電動車椅子どうしが競り合いぶつかり合う激しさ・迫力も満点です。また、電動車椅子に乗っていれば、年齢や性別を問わず同じ条件で楽しむことができるスポーツでもあります。

競技の説明
 基本的なゲームの進行やルールはサッカーと同じですが、以下のような違いがあります。
電動車椅子サッカーのボールと普通のサッカーボールの比較写真
右側の黄色い普通のサッカーボールと比べて、左側の電動車椅子サッカーのボールはこれだけ大きなものです。
競技用のバンパー競技用のバンパーは、軽自動車のタイヤを半分に切って電動車椅子のフットレスト(足を乗せるプレート)に固定して作りますが、固定の強度と着脱のしやすさの点から Yokohama Crackers ではほとんどの選手が「有限会社エルピダ」さんでフットレスト一体型のバンパーを制作してもらい愛用しています。
  • 施設・用具
    体育館のバスケットボール・コートにおいて、1チーム4人の電動車椅子に乗った選手によって行われます。直径50cmの大きなサッカーボールを使用し、専用のバンパーを電動車椅子の先端に固定してボールコントロールします。
  • 試合時間
    前後半20分ハーフです。
  • 電動車椅子の速度
    電動車椅子の速度は2種類で、コート内の1チーム4人のうち2人を6km/hに、もう2人を4.5km/hに合わせます。6km/hの選手はヘアーバンドをします。試合中の選手交代は何度でも行えます。
  • サッカーのスローインはキックインとなります。
  • キーパー
    ルール上、キーパーとフィールドプレーヤーの区別はありません。但し、1人を守備的なポジションに下げたり、4人全員攻撃全員守備であったり、チームの戦術によりシステムは異なります。
  • オフサイド
    ゴールエリア内にボールがあるときに、1チーム3人以上の選手がゴールエリア内に入った場合、オフサイドとなります(ゴールエリアには1チーム2人までしか入れません)。攻撃側のオフサイドの場合は守備側のゴールキックに、守備側のオフサイドの場合は攻撃側のペナルティーキックになります(「守備側のオフサイド」も発生します)。ペナルティーキックはキーパーのいない無人のゴールにキックします。
  • 主なファール(試合中によく見られるもの)
    チャージ・・・相手のバンパー以外の部分にぶつかる
    オブストラクション・・・進路妨害
    警告・・・危険行為や不正行為など
  • 選手の退場
    1人の選手が1試合で3回ファールや警告になると3分間の退場に、4回目には15分間の退場に、5回目にはその試合から永久に退場になります(サッカーのイエローカードやレッドカードはありません)。ファール回数のカウントはコートサイドのオフィシャルが行います。
  • 介助員
    電動車椅子の転倒などの危険時や電動車椅子が故障した場合、選手の介助が必要になった場合などに、インプレーでもすぐにコート内に入って対処する介助員が1チーム2名ずつコートサイドに立ちます。
  • 電動車椅子サッカーのコート図
    コート図

    ゴールネットラインとゴールネットラインとの間のゴールラインをボールが通過すると、得点になります。
    水色のエリアがゴールエリアで、この中にボールがある場合1チーム3人以上がこのエリア内に入るとオフサイドになります。
    (以上は、説明のためわかりやすくポイントをまとめたものですので、詳細や正式な競技の規定については日本電動車椅子サッカー連盟競技規則でご確認下さい)
    電動車椅子サッカーの見どころ
    1.ボールコントロールの難しさ
     電動車椅子サッカーでは先端のバンパーや電動車椅子の側面を使ってボールをコントロールしますが、サッカーの足のように自由に動かしてボールをトラップしたり止めたり変化をつけてキックしたりすることができないので、ボールのコントロールが大変難しくなります(バンパーは電動車椅子に固定しますのでバンパーそのものを動かすことはできません。トラップもキックもすべて電動車椅子の前後左右への動きや旋回の動きだけによってボールにタッチします)。それだけに、6km/hあるいは4.5km/hという限られた電動車椅子のスピードの中で、いかにボールをはじかずに自分でキープしていけるか、一瞬のボールコントロールやドリブルの技術がポイントになってきます。

    2.混戦の中でのボール支配をめぐる攻防
     ボールをセットしない流れの中でのキックやトラップが困難なため、サッカーのように人から人へパスがつながりシュートするという場面を電動車椅子サッカーではあまり作れません。何人もで大きなボールに関わりキープしながらボールを運んでいく攻撃、それに対してボールを止めに行き、次に次にとカバーに入る守備、その繰り返しの攻防でゲームが進んでいきます。ときには、ボールを囲んで両チームの選手が集まり、ボールが動かなくなる場面さえあり、初めて電動車椅子サッカーのゲームを目にされる方は「動きが少なくて何をやっているのかわかりにくい」と感じられるようです。ところが、この選手が密集した中盤の混戦の中でいかにボールを自分たちの攻撃につなげて支配していくのかという、実は激しい攻防戦が繰り広げられており、電動車椅子サッカーのひとつの見どころ・醍醐味でもあります(と思います)。ただボールを押し合っているのでは効果がありませんので、例えばスクリーンプレーなどの連係プレーを駆使して混戦からボールを出しドリブルするスペースを作ります(最近では混戦からの攻撃の組立にもチーム連係プレーが重要になってきました)。混戦の繰り返しからドリブルで突破できるチャンスを作れれば、いっきに得点のチャンスにつながります。

    3.オフサイドをめぐるゴール前での攻防
     得点に絡むゴール前での攻防でポイントとなるのは、「ゴールエリア内にボールがあるときに1チーム3人以上の選手がゴールエリア内に入るとオフサイド」という電動車椅子サッカー独特のオフサイド・ルールです。攻撃側・守備側ともゴール前では何人の選手がエリアに入っているのかを常に意識してプレーしなければなりません。特に攻め込まれている守備側は、押し込まれてゴールをさせないように流れの中でボールをカバーしながら戻りますが、誰がゴールエリアに入って、誰がゴールエリア手前でストップし受け渡すのか、自分がこのままエリアに入っていいのか、という判断が難しくなります。まさにチームの連係プレーが必要になる場面です。また、エリア内の2人が6km/hの選手なのか4.5km/hの選手なのかによっても攻防が左右されますので、ときにはひとりがエリアから出て他の選手と入れ替わったりすることもあったり、逆にボールがエリア内にないタイミングで3人以上の選手がゴールエリアをまたいで反対のサイドに移動したりすることもあったりと、オフサイドをめぐる攻守のプレーは見どころが多いです。

    4.チーム戦術の面白さ
     どのような基本的なチームの戦術(システム)を採用するのかという点も、電動車椅子サッカーのポイントのひとつです。フィールドプレーヤーとキーパーとの区別がないので、1チーム4人の選手は制限なく動き回れますが、一人をディフェンシブに後ろに残して3人で攻撃するのか、4人全員が攻撃にも参加するのか、1−1−2なのか1−2−1なのか、など各チームによりシステムが異なり、ここに注目して観戦するのも大変面白いところです。特に、速度の違う6km/hの選手2人と4.5km/hの選手2人とをどのように配置し、それぞれのポジションにどんな役割を持たせるのかによって、各チームにより大きな違いがでます。また、キックイン、コーナーキック、フリーキックなどのセットプレーのときのフォーメーションや動きのパターンもチームにより様々で、興味深いところです。


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