〜私と307〜
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■番外編その1〜2つのSW〜

この度、BL宮崎さんで、注目の2台の試乗をさせて頂いた。
その2台とは、「307SW」と「206SW」である。
これまで両者ともHB(ハッチバック)のみであったが、この秋からこれらワゴンが発売され、一気にラインアップが充実したのだ。
絶好の試乗日和となった11月某日、30分ずつほどではあったが大変楽しい時間を過ごさせて頂いたのであった・・・。
この場を借りてBL宮崎さんには御礼を申し上げる次第である。

まずは、両者のおさらいから。

307SW 206SW(AT) 307XS(参考)
全長 4,420mm 4,030mm 4,210mm
全幅 1,760mm 1,675mm 1,760mm
全高 1,585mm 1,475mm 1,530mm
ホイールベース 2,720mm 2,440mm 2,610mm
車両重量 1,430kg 1,150kg 1,260kg
エンジン 水冷直列4気筒DOHC
総排気量 1,997cc 1,587cc 1,997cc
最高出力 137ps 108ps 137ps
最大トルク 19.4kg-m 15.0kg-m 19.4kg-m
乗員定員 7名 5名 5名
燃料タンク容量 60L 50L 60L
燃料 無鉛プレミアム
トランスミッション 4速AT 4速AT/5MT
ブレーキ形式 前:ベンチレーテッド・ディスク
後:ディスク
サスペンション 前:マクファーソン・ストラット
後:トーションビーム付トレーリングアーム
タイヤ 205/55R16 195/55R15 205/55R16
最小回転半径 5.5m 4.9m 5.35m
価格 2,760,000円 2,090,000円 2,390,000円(5MT)

この表をご覧頂ければ、エンジンと車体が違うのが一目瞭然だと思う。
307SWのエンジンは307HBと同一であり、206SWのそれは206HBと同一なのだ。
また、注目すべきは307SWの乗車定員7名と言うことと、同じく車重が1,400kg強もあること。
まぁ、前置きはこれくらいにして早速レポートしてみることにしよう。

●307SW●
第一印象は”国産ワゴンっぽい”と言うこと。
これは別に悪い意味ではなく、ソツなくまとめられており、国産車からの乗り換えも違和感がなかろうと言う意味。
しかし、よくよく見れば随所にフランス車らしいエスプリに溢れているのに気付くことだろう。
HBとの差は全長とホイールベース、車重あたり。



このモデルの最大の「ウリ」は7名乗車と”パノラミック・ルーフ”だろう。
前者は別に必ず7名(3列乗車)でなければならないと言う訳ではなく、5名(2列)でもOKだ。
ただ、HBに比べて2列目は少々狭いのが惜しい所(形状や固さはなかなかイイのだが)。
また、3列目は大人は無理そうなので、あくまでも子供用かエマージェンシー用と考えた方が良いと思う。
勿論、着脱出来るのは2、3列目だけだが、その方法は非常に簡単で確実なもの。
ここ辺りはまさに欧州車の面目躍如である。
子供がいる家族にはうってつけの1台だと言えよう。



ご参考までにフロントシート(左)と2列目のシート(右)を掲載する。
スペースは皆さんでご判断願いたい。



ATセレクター周り(左)とパノラミック・ルーフ(右)。
尚、後者の開閉スイッチはセンターコンソールのエアバッグスイッチのそばにある。



れでは、307SWに乗って触れた感想をお伝えしよう。

★全体的な質感:
これはHBと変わらない。ただ、細かい部分は確実に改良されているのも事実。
例えば、エアコンの温度調整のボタンを押した感じも以前の硬いクリック感ではなく、節度あるソフトなものに変化して大変使い易かった。
ただ、仏車特有の”カタカタ音”はいまだ根絶されていない(笑)。
基本的なクオリティが大きく上がっているのに、この部分はまだドイツ車に及ばない所だろうか。
しかし、更にインターナショナルなものを志向しているプジョーであれば、こうした”悪弊”にもメスが入るのは時間の問題であろう。
★パノラミック・ルーフの印象:
ハッキリ言ってなかなか良い。
これだけの為にこのクルマを買って良いくらいだ(笑)。
しかし、鹿児島のような暑い所ではちょっとツライかも知れない。
これは使う人の価値判断によるだろう。
★乗り心地:
サスペンションはHBと同じだと言われているが、メディア等では多少セッティングが変えられているらしい旨伝えられている。
実際、乗った感じは確かにショック感は多少緩和されているのがはっきり認識出来る。
HBであった後輪のバタバタ感が大分改善されているのは確かだ。
これには延長されたホイールベースも奏功しているのだろう。
HBではどうしても納得出来なかった方々にはこの乗り心地はオススメ出来ると思う。
ただ、昔の(405SRIあたりの)プジョーを知る者にとっては、もう少ししなやかさが欲しいとどうしても無いものねだりをしてしまうのだ。
確かに洗練の度合いと国際化の絶妙のバランスがとられている、と体感出来るのは事実。
しかしながら、ドイツ車然としたものに変化しつつあるのは否定出来ないと思う。
時代とともに人間は勿論、クルマも変わる・・・のだろうか。
★ATについて:
HBでは減速時のシフトショックが大きな話題となった。
今回はどうだっただろうか。
結論としてはかなり改善されたと言うべきだろう。
もともと、加速時のシフトは大変スムーズであった。
減速時、特に2速、1速へのシフトダウンが結構大きかったのだが、以前のショックを100とすれば60〜70くらいに感じられた。
しかし、まだまだ改善出来るはずである。
まぁ、このATも乗る人の感覚によって大分異なって来るものと思われる。
エンジンブレーキを好む方にはかえって乗りづらくなったかも知れない。
ただ、私はエンジンブレーキは好きではないので、もう少し(噂によればシトロエンC3は更に良くなっているとか)和らげて頂きたいと思う。
★運転と遮音:
この部分は基本的にHBと同じだと思った。
最初は大柄と感じるそのボディサイズも慣れて来れば扱いやすいし、何より静かだ。
特にワゴンは後部から様々な音が侵入して来るものだが、プジョーは見事にそれを抑えこんでいる。
見事と言う他はない!
★結論としては:
最近、上昇傾向のプジョーの一つの切り札として鳴り物入りで登場した307SW。
月並みな表現で恐縮だが、その期待に十分に答えていると思う。
手ごろなサイズと価格、そして一昔前からすれば格段に向上した品質と信頼性・・・コレは”買い”だろう。
ただし、シートの広さを求める向きにはちょっとばかり不満が残ると思う。
パノラミック・ルーフが付かない「ブレーク(264万円・Styleは232万円)」にするか否か迷う所だ。

これから先、プジョーがどこへ行こうとしているのか、ちょっと心配な部分もあるのも事実。
ただ、”国際化”の名のもとに、更にドイツ車的なものを目指すのか、はたまた独自な世界を構築するのか・・・・。
40前の一プジョーファンとしては、これからのプジョーの動向が大いに気になるところだ。


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●206SW●

次に206SWを試乗した。
206シリーズはご存知、昨今のプジョーの躍進を支えて来た大ヒットモデルである。
今回、満を持してワゴンが加わった訳だ。
このモデルは「SW」となっているが、実際「ブレーク」である。
勿論、307SWのようなサンルーフ的な装備もない。
また、ホイールベースもHBと全く同じ。
そう言う意味ではもう一つのHBと言ってもよいくらいだろう。
実にスタイリッシュな、そして使い易そうな私好みのワゴンである。



206SWにおいては1600ccでもMTが選択出来る。
また、2000ccを搭載した5MTの「S16」も選択可能だ。
今回試乗させて頂いたのは206や307Styleでお馴染みの1600cc搭載の方である。
トランスミッションは4AT。



室内も通常のモデルと同じである。
私は206の最新モデルには全ては試乗してはいないが、XSのシートと同じであろうシートはなかなか良かった。
体格が太り気味の私にはちょっと小さめかな、と言う気もしたが、程よいクッションが心地よい。
やはり、プジョーはシートが優秀だと実感する。



運転席からの眺めも変わらない。
よく雑誌で206の内装についていろいろと書かれてあるのを目にするが、私はこの内装は好きだ。
いかにもフランス車って感じが横溢しているからである。
尚、206全モデル(確か・・・)では2002年からマルチファンクション・ディスプレイになった。
要するに307XSやXSIと同じになったと言うことである。
荷室については言うまでもないだろう。
また、このクルマでは右の写真のようにリヤハッチを開けなくても荷物が出し入れ可能。
リヤウインドウが国産ワゴンのように開くのである。
これは確かに使い易いモノだと言えよう。
その点、プジョーも年々、改良を推し進めていると感じるのだ。



206シリーズで私が唯一改善して欲しいと思っているのがワイパーだ。
右の写真から分かるように、左ハンドル仕様となっている。
どこかのサイトで知ったのだが、機構上、右ハンドル仕様に変更出来ないらしい。
このような本質的ではない部分でクルマの印象がスポイルされるのは大変残念なことだと思う。
時期207では是非、改善をお願いしたい部分だ。

それでは307SWと同様にレポートしてみよう。

★全体的な質感:
基本的な感じはHBと変わらないと思う。
ただ、206は熟成を重ねて来ており、完成度は大変上がって来ていると感じた。
インテリアの材質等は307に劣るかも知れないが、それでも十分フランス車的な雰囲気に溢れていると言えよう。

★乗り心地:
皆さんの関心はこの部分であろう。
確かに乗った瞬間、「お、いいな!」と思わせる。
後部サスペンションにはカタログには掲載されていないが、SW独自のパーツが追加されているとのこと。
しかし、基本的には206の改良版と言うことが良くも悪くも感じられるのだ。
307の洗練度からすれば、ちょっと苦しいかも知れない・・・。
ただ、206はこのようなクルマなのだ、と私は思う。
決して柔らかくはないが、ちょっと固めではある・・・しかし、307ほどドイツ車的ではない・・・そんな感じである。
ベースのクルマが4メートルに満たないHBであることを考えるに十分かと思う乗り心地なのだ。
最近、ライバルが増えた206シリーズだが、このクラスでは最も好きなクルマ達であることは変わりはない。

★ATについて:
307SWと同様、いかに改良されているかがポイントだと思う。
206は全モデル、「ティプトロ」は装備されていない。
勿論、このモデルもそうだ。
私はかえってその方がシンプルだし、故障も少ないだろうからいいと思っているのだが(笑)。
さて、印象は「307SWほどは改善されていない?」。
ただ、307とはその方向性が全く違うクルマなので、これはこれでいいのではないか、と思うのである。
つまり、キビキビ走る、と言うポイントに重点を置いた場合、これは納得出来るセッティングなのではないだろうか。

★運転と遮音:
206SWはサイズも非常に扱い易い。
また、1600ccのエンジンにしては大変良く走る。
勿論、HBよりは車重は増加しているが、まだまだ大丈夫だ。
何より、運転していて気持ちがいいのである。
遮音はほどほど。
けれども、その音が決して不愉快に感じさせない所が流石だと思うのだ。
つまり、良く言われる「必要な情報をドライバーに伝える」感じなのである。
私が以前乗っていたゴルフ2のような”ただウルサイ”感じとは大きく異なるのだ。
そして、ドライバーはクルマと心地よい一体感を味わえると言う訳。
ただし、あくまでも静粛性を重んじる向きには307がおすすめだろう(笑)。

★結論:
思うに、プジョーは新しいクルマを出す毎にその基本性能をアップさせているようだ。
306〜106〜406〜206〜607〜307・・・・と時代のニーズに的確に応えていると思う。
特に、607から307にかけては品質のアップが著しいと私個人では感じられる。
そう言う意味では、古き良きプジョーとしての最後の生き残りと考えても良いだろう。
確かに、607以降の静かさは無い。
また、基本的な品質も最近のレベルに比べれば絶対的に劣る部分もあろう。
しかし、逆に607以降のクルマが飼い慣らされ過ぎて失った部分も多々あろうと思うのだ。
その点においては、運転して楽しいクルマ、それが206だと思う。
実際、私も307に乗っていて物足りないことが少なくない(笑)。
そう言うときは206シリーズや106に思いを馳せることが多い。
そう、あのダイレクト感が懐かしいのである。

クルマはただ理屈や数値のみで判断されるべきではない。
そのような価値基準が本当に空虚であることを、このクルマは雄弁に語ってくれるのだ。
次期207は2005年にショーデビューを飾る予定だと言われている。
今度はどのように進化するのか大いに気になるところだ。

(2002/12/01)

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