〜私と307〜
このページは少々”重い”かも知れません。ご了承下さい。
■番外編その2〜106の誘惑〜 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
現在のプジョーのラインナップの中で一際、異彩を放つクルマがある。 106S16がそうだ。 日本に導入されているのは「S16」と言う最強モデルのみ。 従って一番下の車格であるにもかかわらず、独自の世界を感じさせてくれる。 ちなみに価格は225万円。 これはちょっとした他のプジョーが買える金額である。 このプライスが高いと思うか、低いと思うか・・・それは貴方にお決め頂きたいと思う。 さて、11月の初旬、BL宮崎さんに106S16が入荷した旨の情報が入った。 早速、試乗をお願いした。 試乗すること30分。 そこには、あの”懐かしい”プジョーの世界が広がっていたのであった。 それから約20日。 わが307の点検入院の代車として、その106をお借りすることになった。 BL宮崎さんの何と粋な計らいだろう! わずか3日間の蜜月であったが、その素晴らしさを十二分に堪能することが出来た。 BL宮崎さんには心から御礼を申し上げる次第である。 (また、よろしくお願いします・笑) さて、前置きが長くなったが、早速レポートをお伝えすることにしよう。 ■おお、この感じ!■ 206以降はかつてのピニンファリーナとの新たな協調関係を絶ってしまったプジョー。 必然的にそのデザインは相当変化し、アグレッシブなものへと移行した。 そのデザインの良し悪しについて述べるのがこの稿の本題ではない。 ただ、私個人ではピニンファリーナの息がかかったデザインは秀逸だと思う。 下の写真を見てお分かりの通り、まさしく106には同社の美点が凝縮されているのだ。 ただ、このモデルは3ドア、左ハンドルのみなので使い勝手は皆さんの判断にお任せしたいと思う。 ■スペックは・・・■ それでは、ここでこのクルマについておさらいしてみよう。
■ドアを開ければ・・・■ このクルマが225万円!と聞けば、「えらく高いクルマだなぁ」と誰でもが感じてしまう。 しかし、丸1日も付き合えば、その素晴らしさがひしひしと伝わって来るのだ。 ドアを開けて乗り込んでみる。 室内には何とも言えない匂いが漂う。 そう、このクルマはレザーとアルカンタラ(ランチア等で有名なスエード調の生地)のコンビネーションのシートを採用しているのだ! もう、この瞬間、乗った人間は金の工面を考えている、と言っても過言ではなかろう(笑)。 そして、目の前には見慣れた印象の計器類が並ぶ。 一昔前のプジョー乗りにはたまらない光景だと言えよう。 シートは身長177cmの太目の私でも十分にサポートしてくれる非常に上質なものだ。 固さもちょうどいい。 307でちょっと気になった”あんこ”の不足も微塵も感じられない。 そうそう、プジョーのシートって、昔はこうだったよね・・・・私は何度も呟いていた。 ホワイトメーター化された計器類はいやが上にもスポーティさを盛り上げる。 う〜ん、これはイイ。 再び、何度も頷く自分を発見する・・・。 このクルマは3ドアなので、それ相応の使い勝手は覚悟しなければならない。 フロントシートを倒すにはシート左中央部のレバーを操作するが、思いの他カッチリ作ってあって好感が持てた。 また、リアシートの材質もレザー+アルカンタラで全く同一だが、広くはない。 まぁ、私のような大柄な大人が長時間座るにはちょっとキツイと思う。 しかし、206ccのようなエマージェンシーっぽい訳ではないので念の為。 ■本国仕様?■ このクルマは基本的に本国仕様をそのまま持って来たような印象が強い。 それはドアミラーを見れば明らかだろう。 下の左側の写真では分かりづらいかも知れないが、307では右ドアミラーに入っている破線(つまり屈折率が変化させてある)がこのクルマでは左側に入っているのだ。 また、エンジンルームは以外にギッシリと詰まっている。 そして、感心したのはボンネットがダブルストラット式で開くこと。 最近のモデル(206と307)は残念ながらここまで贅沢ではない。 このように106は随所にコストがかけられているのだ! (ちなみに、ボンネット裏の遮音財やフロントグリル辺りの余計なパーツは一切ない。いたってシンプルなのだ。) ■随所に懐かしさが■ 天井には懐かしい「リーディング・ランプ」がある。 これは205や405にもあった。 また、リアハッチもどことなく205を彷彿とさせるものがある。 室内にはドリンクホルダーは無いし、エアコンスイッチ等も懐かしい意匠である。 ここ辺りはさすがに設計年次の古さが伺える部分だ。 また、グローブボックスも最低限の容量しかない。 更に、パワーウインドースイッチもシフトノブのすぐ後ろにあり、使いやすいとは言えない(笑)。 しかし、このようなものがどう言う意味を持つのだろうか! 問題はその走りである。 ■素晴らしい走り!!!■ とまぁ、細かい点を指摘して来た訳ではあるが、その走りはなかなか強烈だと思う。 車重が960kgしかないのだから、その程度は皆さんにも想像が付くことだろう。 一言で言えば、「パワフル」である。 いや、「粗暴」だとも言えよう! そう、「洗練」と言う大義名分の下に、すっかりおとなしくなってしまったプジョー車の中で唯一骨太さが健在なのだ。 もともとフランス車と言うのは、軽いボディに小排気量のエンジンを搭載してガンガン走る、のがモットーであった筈。 私がかつて所有した「205」然り。 また「405Mi16」然り。 高回転まで良く回る1600ccのDOHCエンジンは割合ギア比が低く設定されており、なかなかイイ感じの音を発しながらついついその気になってしまう(笑)。 このクルマは現代のプジョーが失ってしまったモノを私たちにまさしく思い出させてくれるようだ。 真のクルマ好きならば、このクルマは絶対に「買い」だと思う。 ABCペダルの位置は左タイヤハウスに少々蹴られたのかちょっと右よりに感じられる。 最初に乗り込んだときは、体をちょっと右へひねって運転しなければならないような感じであった。 しかしながら、5分も運転すれば、このペダル配置も慣れてしまう。 また、各ペダルの重さは丁度いいくらいで、これまたプジョーの面目躍如と言う所だろう。 ちなみに、クラッチの左側にちょうどいい塩梅にタイヤハウスがある。 これがフットレストになる訳だが、私も405では同様に足を置いていたものだ。 サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット、リヤがトレーリングアーム。 少し前までプジョーがメインに使っていたものだ。 206からリヤが変更になり、トーションビーム付となっている。 ボディ剛性が上がったからこのような変更を受けたのだろうが、個人的にはやはり古いタイプが好みだ。 運転した感じは、専用スポーツサスの関係でまさに405的! う〜ん、これはなかなか良い。 これぞ、フランス車って感じだと思う。 MTのシフトもこれまた優秀。 307では若干、軽すぎるきらいがあるその入り具合も丁度いい節度感があってなかなか良い。 各シフト間のストロークの長さも伝統に沿ったモノだ(笑)。 私はつくづく「プジョーのギアボックスはどのモデルも素晴らしいなぁ」と痛感する。 スポーティさと経済性、安全性を絶妙なバランスで両立させているのは賞賛に値すると思うのだ。 高速道路での走りも素晴らしい。 ドイツ車のような重厚感はないが、直進安定性は特筆に値すると思う。 以前の「VITA」では同じようなボディサイズであったが、疲れることが多かった。 やはり、ここはプジョーの伝統の力と言うべきか。 比較的小型軽量のボディに良く回るエンジン、快適なシート、しなやかなサス・・・。 もう、私は夢見心地であった。 ■結論のようなもの■ 以上、いろいろと述べて来た訳だが、そろそろ結論を申し上げなければならない。 簡単に言ってしまえば「絶対買い」なのだが、それだけではどうかとも思う。 そこで、以下、箇条書きにいい点、悪い点をお伝えしたい。 (勿論、これはあくまでも私個人の意見であって、相対的なモノであることを予めご了承願う次第である。) ★いい点 (1)ピニンファリーナの気品あふれるデザイン (2)素晴らしいシート(材質・サイズとも) (3)粗暴とも言える痛快な走り (4)良く回る痛快なエンジン (5)ボディサイズを感じさせない高速安定性 (6)小さく軽いボディと取り回しの良いハンドリング (7)カッチリ感のあるシフト (8)405に通じる、所謂「猫足」っぽいサスの動き(ただし、専用スポーツサスの為、固い) (9)フロントウィンドーの意外な広さがもたらす開放感と見晴らしの良さ (10)金をかけるところにカッチリコストをかけてある点(でも、少々オタクっぽい?) (11)「あ〜、これだ!」と思わず古いプジョーファンを微笑ませるその魅力(笑) ★悪い点 (1)一見して「高い!」と思わせる、その価格。 (2)エアコンの効きの悪さ(仏車の悪しき伝統か?) (3)パワーウィンドースイッチの位置 (4)左ハンドル故の使いにくさ (5)ABCペダルの右オフセット (6)3ドア故のドアの大きさ (7)室内灯の暗さ (8)自称オーディオ好きにとっては物足りない標準装備のオーディオシステム(307のPSSのMDアンプ&6連想CDチェンジャー) (9)あまり伸びない燃費(予想) 以上、思いつくままに書き連ねてみたが、皆さんのご感想は如何だろうか? 結局、ハンドルの位置やボディサイズから、家族持ちのファーストカーにはなかなかなり得ないかも知れない。 しかし、セカンドカーとしての魅力は十二分にあると断言出来る。 個人的には、現在のプジョーのラインナップでスポーティさでは白眉だと感じられた。 確かに欠点はいろいろとあるだろう。 しかし、その運転する楽しさの前にはそのようなネガティブなモノは何の意味もなさないのだ! そう、ここには今のプジョーが確実に失いつつある”ダイレクトさ”が横溢しているのである。 かく言う私も307と言う”洗練されたクルマ”に乗っている人間だ。 そんな私も、余裕があれば是非所有したい1台であると言えよう。 そして、個人的にはこのクルマはアルファを凌ぐ、とさえ考えているのだ(笑)。 ■最後に・・・■ 以上、述べて来たように、このクルマは痛快無比である。 単なる数値的なモノは実体験の前ではたちまち空虚なものになることを証明してくれる貴重な存在でもあろう。 個人的には、絶対おすすめである。 しかし、このクルマの良さは、30分くらいではその良さは分かりづらいかも知れない。 出来れば1日、お乗りになることをおすすめする。 そして、欲しいと思った方は、可能な限り早目に購入することだ。 なぜなら、このクルマの生産が終了するのはもはや時間の問題だからである。 勿論、私だって欲しい(笑)。 どうこう言いながらも、購入シュミレーションを繰り返している自分に気付いて、ハッとする今日この頃である。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2002/12/02) |