2008年09月07日(日)
  「カンボジア訪問Bツールスレン」

カンボジア2日目、ツールスレン刑務所へ行った。

4歳の孫も一緒に行き、見せられない。私は以前
見学したので、外で孫と遊んでいた。

前回初めて見て、余りの衝撃で、夜眠れなかった。

ポルポト時代に、元高校を刑務所にして、反逆分子
を捕らえ、残虐な虐殺に、虐殺を重ねた収容所だ。
家族に憎悪や復讐反逆分子を残さないため、家族皆
殺しにしたとか。
2万人収容され、生還したのはたったの6人。
その内の一人が画家で、当時の再現絵図を描いて
いる。

当時の規則がそのまま掲げられていた。

1. 尋問者の質問には、従うよう答えなくてはならない。
  また、質問に対して背を向けてはならない。
2. あれやこれや弁解を取り繕うことによって事実を隠
  そうとしてはならない。
   また、尋問者に異議を唱えることは禁止されている。
3. 収容者は、あえて革命を妨げようとする奴である
   から、ばかな真似はするな。ばかを装うな。
4. 考えることなく尋問者の尋問に即座に答えなくては
   ならない。
5. あなたの不埒な行為あるいは革命についてわたし
  に言うな。
6. むち打ちの間、感電ショック中は、泣き叫ぶな。
7. 何もするな。じっとすわって尋問者の命令を待って
  いろ。命令がなければ、黙っていろ。
   何かするようこちらで求めた時、異議を唱える事
  なく、ただちに言われた通りにしなければならない。
8. 裏切り者のお喋りをして、自分の考えをを隠すため
  に、Kampuchea Krom について弁解するな。
9. 以上の規則すべて従わなかった場合、電気棒での
  むち打ちを何度も受ける事になる。
10. 規則のいかなる点に反抗した場合、10回のむち
  打ちまたは5回の感電ショックを受けることになる。
 収容者は、すべての規則に従わなければならなかった。

 どんな事をする場合でも、寝ようとする間に体の位置を
 変えようとする事でさえ、収容者は看守からの許可を
 まず最初に取らなければならなかった。
 規則を破ったい人は皆、殴打された。

1979年ベトナム軍侵攻によりプノンペンが占拠
された。
ポルポト軍はすでに逃亡。占拠の翌日、異臭に
より発見された。
一番最初の教室には、敗走直前に殺され、放置され
たままの残忍な遺体の写真が展示してあった。
正視できない残忍さだ。

残虐の限りを尽くして、拷問、処刑して行った。
当のポルポト兵たちも、手抜かり、落ち度があれば、
自分が粛正される。処刑される。
自分たちも命がかかっている。落ち度なく、拷問、
処刑を仕事として、こなして行った。

外観は古い校舎。ごく普通の校庭は木々と緑の草に
おおわれ、明るい南国の陽がさんさんと射している。
静かで、のどかな日常風景だ。

ここで普通に、勉強し、運動し、遊び、笑い、将来に
夢を抱いていたであろうに。

それが一歩校舎に入ると、非日常、異様で異常な
空間、その凄まじいギャップも恐い。

それが、何100年も前でなく、たったの30年前
の出来事。ショックだ。

ある旅行者が記していた「このツールスレンで、
人間の心に何が起きていたのだろう。どす黒い
得体の知れない、底知れない、人間の闇の深さ
を垣間見たようで、戦慄した。だが、同じ人間
である自分も、どこかでその闇とつながっている
と考えると、他人事に思えなかった」

これが人間の罪なのだ。神は創造の時に人間
を良きものとして造られた。
「神はお造りになったすべてのものをご覧にな
った。見よ。それは非常に良かった」創世記1:31

その良きものとして造られた人間が、自ら
選択して、罪を取った。アダムとエバがエデン
の園で神を捨てて、罪を選んだ。
その結果、罪が人間に入った。

罪とはかくも恐ろしい。ポルポトは、既成の価値
観を持つ大人をどんどん抹殺し、既成概念の
まだ無い少年を兵士にした。

子供が大人を銃で見張り、殺害して行った。
「疲れた」と言えば殺され、「腹が減った」と
言えば殺され、人々は黙ったまま、黙々と
働くしかなかった。ろくな食事もなく、飢えと
過重労働でも死んで行った。だいたい
何が起こっているのかもわからなかった。

ごく普通の少年だった者が、殺りくを繰り返す
中で、どんどん残虐になって行った。

普通の人生で、このような特異な経験をする事
はまずない。
そういう状況に遭遇する事がないから、底にある
ものが出て来ないだけで、状況次第でどうなるか
わからない。

聖書によると、罪を犯したから罪人なのではなく、
人間は、罪を持って生まれた罪人だから罪を
犯す。

神から離れた人間の、悲惨、恐ろしさを見る。
十字架の贖いが無ければ、どうなっていた
のだろう。

自ら血まみれになって、何もかも受け取って
十字架で死なれたキリストと、ポルポトの
拷問、虐殺が重なる。

そんなツールスレン訪問であった。