行きたいんじゃあー!!



一人の高校生。

青年達にとって、ひときわ楽しみである、青年バイブルキャンプ。

世代を同じくする若人達が、悩みや、喜びを語り合い、御言葉に強められ、リクレーションに興じ、 キャンプの醍醐味、夜を徹して、語り合う。
一年中の、一番の楽しみかも知れない。毎年、指折り数えながら、待つほどに。
そのキャンプ、数日前になっても、彼の父親から、許可が降りなかった。
ただただ、祈りしかなく、祈りが積み重ねられた。不安な中に、彼は置かれていた。
キャンプ前日となっても、許可は降りず、いよいよ、当日と、なってしまった。

その日も、彼は朝早く、祈るために、教会へやって来た。
とにかく、祈りの中で、神様にすべてをお任せする。もう、出発まで、1時間しかない。
帰宅して、もう一度、お父さんに、最後のお願いをしてみることにする。そして、そのためにも、切に祈った。

帰宅した。もうぎりぎちの瀬戸際。その時、自分の心の底をはっきりと見せられた。
それまでの祈りは、一貫して、「神様、みこころならキャンプに行かせて下さい。 もし、みこころでないなら、行かせないで下さい。」

気づかされた。自分は行きたいのだ。「みこころでないなら、行かせないで下さい」などと、全然思ってなんかいない。
教理にのっとった、きれい事の祈りをしていることに。

心の底から、神様に向かって、叫んだ。
「みこころなんか、くそ、くらえー!! わしゃあー 行きたいんじゃあー!!」
本音を、本当の気持ちを、はじめて神様にぶつけた。それまで、本心なんかではない、建前の祈りだった。

もう出発まで、数10分。
その後、すぐ、お父さんに、最後のお伺いを立てた。「行ってもいいでしょうか。」

「しょうがないな。行け」。なんと、お許しが出た!!

どんなに頼んでも、だめだったのが、神様が、事を成して下さった。 きれい事で、いくら祈っていても、少しも神様に触れていない。

教えられた、出来事でした。


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