研究計画書

23M3058 林 菜夏

所得税の課税ベースのあり方について

【目次】

はじめに

1章 所得控除の概要

 第1節 所得控除の意義 

 (1) 税法学者の意見

 (2) 財政学者の意見     

 第2節 所得控除の現状と課題   

2章 判例研究          

3章 税制の再分配効果

 第1節 分析手法

 第2節 税制改正による再分配効果への影響

おわりに

 

【問題意識】

現在わが国では、IT化の進展や女性の社会進出、コロナウイルス感染拡大の影響などで、働き方が多様化してきている。

令和元年の政府税制調査会における税制改正に関する答申では、「働き方の多様化や格差を巡る状況の変化を注視しつつ、働き方の違いによって不利に扱われることのない、個人の選択に中立的な税制の実現に向け、所得再分配機能が適切に発揮されているかといった観点も踏まえながら、諸控除の更なる見直しを進めることが重要である」としている。

 

【論文の目的】

税制の構築や改革において基準となる租税の三原則「公平性」「中立性」「簡素性」のうち、本稿では特に「公平性」について再分配効果をみていき、現在のわが国の状況に適した税制のあり方について検討していきたい。

 

【先行研究】

 金子(2007)は、「課税は、国民の財産権への介入である」とし、「日本国憲法は、財産権を保障する一方(憲29条)、福祉国家の理念のもとに生存権を保障している(憲25条)。生存権の保障のためには、各種の社会保障政策が必要であり、そのためには、富の再分配が不可欠である。したがって、日本国憲法が、暗黙の前提として、再分配は国家の正当な任務の一部であると考えていることは、疑問の余地がない。」としている。

 林(2003)は、「税は、法律で定められたうえで課税されるが、課税主体となることができるのは公共部門(政府)のみである。つまり課税権を持つのは、国および地方政府(日本では地方公共団体)だけである。」とし、法と財政との関係について述べている。

藤田(1992)は、控除制度の導入形式について「その控除に期待される役割に応じて行われるべきである。」として機能主義的見地からの簡素化について言及するとともに、「租税簡素化の見地からは、人的控除の数や割り増し控除が適用されるケースをやたら増やさないことの方が重要であるだろう。」と述べている。 

 

【分析手法】

扶養控除、社会保険料控除、寄付金控除を対象とする。

    課税所得の時系列的な変化を推計する

    課税ベースに与えた影響を推計する

    どの程度公平性に影響を与えたのかを推計する(再分配効果)

 

 

【参考文献】

岡村忠生・酒井貴子・田中晶国(2021)『租税法』有斐閣アルマ.

金子宏(2007)『租税法』弘文堂.

田口方美(2022)「所得税の人的控除に関する研究」『関西大学経済論集』第723.

田中康男(2005)「所得控除の今日的意義―人的控除のあり方を中心として―」『税務大学校論叢』48.

橋本恭之(2016)『租税政策論』清文社.

林宏昭(2023)『日本の税制と財政』中央経済社.

藤田晴(1992)『所得税の基礎理論』中央経済社.

松井祐介(2008)「所得税の課税ベース拡大に関する一考察」.

森信茂樹・前川聡子(2001)「わが国所得税課税ベースのマクロ推計」『フィナンシャル・レビュー』第57.

 

【参考資料】

税制調査会(2022)『政府税制調査会第19回総会 説明資料』p7

19回総会 資料1 (cao.go.jp)(閲覧日2023416日)