第3章 消費税の改革
第1節 消費税の廃止・凍結論
短期的な消費税凍結論 景気対策として一時的な税率引き下げ
長期的な消費税不要論 八田(1994) 野口(1994)
第2節 所得税体系から消費税体系への移行
ケース1:所得税減税による税収減を消費税率の引き上げで調整する場合
ケース2:所得税減税による税収減を利子所得税率の引き上げで調整する場合
図3-1 一人当たりの資本の経路
ケース1:勤労期間にのみ課税される累進所得税の減税が資本蓄積の増大につながる
ケース2:利子所得への課税が直接的に資本蓄積の減少につながる
図3-2 税制改革前後の厚生変化率の比較
ケース1:当初の数期間においては厚生水準悪化、その後厚生水準改善
ケース2:厚生水準悪化
所得税体系から消費税体系への移行は経済成長にプラス
→負担の逆進性より、所得不平等が拡大する恐れ
第3節 消費税の複数税率化
(1)逆進性の計測
逆進性の緩和措置
大平内閣の「一般消費税」、中曽根内閣時の「売上税」:食料品が非課税
平成9年当時社民党:複数税率化
表3-1 消費税の逆進性と複数税率化
所得分位 |
T |
U |
V |
W |
X |
Y |
Z |
[ |
\ |
] |
負担額(万円) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
消費税 |
10.9 |
13.6 |
15.2 |
16.1 |
17.8 |
19.6 |
20.9 |
22.6 |
24.7 |
30.3 |
複数税率 |
10.1 |
13.1 |
14.9 |
15.8 |
17.5 |
19.6 |
20.9 |
22.8 |
25.3 |
31.8 |
負担率 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
消費税 |
4.5% |
3.7% |
3.4% |
3.1% |
2.9% |
2.8% |
2.6% |
2.5% |
2.2% |
1.7% |
複数税率 |
4.2% |
3.6% |
3.3% |
3.0% |
2.9% |
2.8% |
2.6% |
2.5% |
2.3% |
1.8% |
|
出所:『家計調査年報(平成7年)』総務庁より作成
表3-2 諸外国の付加価値税率
(単位:%)
国名
|
導入年
|
現行税率(1998.1.1) |
標準 |
軽減 |
(EU)
EC指令
フィンランド
デンマーク
フランス
ドイツ
オランダ
スウェーデン
ルクセンブルグ
ベルギー
アイルランド
イギリス
イタリア
オーストリア
ポルトガル
スペイン
ギリシャ
(EC以外)
ノルウェー
韓国
ニュージーランドカナダ |
1964
1967
1968
1968
1969
1969
1970
1971
1972
1973
1973
1973
1986
1986
1987
1970
1977
1986
1991 |
15以上
22
25
20.6
16
17.5
25
15
21
21
17.5
20
20
17
16
18
23
10
12.5
7 |
5以上(2本以下)
8,17
-
2.1, 5.5
7
6
6, 12
3, 6, 12
1, 6, 12
0, 3.3, 12.5
0, 5
4, 10
10,12
5,12
4, 7
4, 8
-
-
-
0 |
|
(注)ECでは、市場統合の一環として間接税の調和のため、付加価値税の標準税率を15%以上、軽減税率を5%以上とし、割増税率を廃止しなければならない旨の指令を1992年10月に出している、なお、ゼロ税率については、EC指令において、従来からこれを否定する考え方が採られている。
(出所)政府税制調査会付属資料。
(2)複数税率化と納税方式
1994年6月21日 政府税制調査会の「税制改革についての答申」
@国民の消費態様が多様化している今日、対象品目を客観的な基準により選択することは困難である
A対象品目とそれ以外の価格に異なる影響を与えることになる
B納税義務者の事務負担をはじめ、国民全体で膨大な社会的・経済的コストを払うこととなる
図3-3 消費税の仕組み
納税額=税込み売上額×5/105−税込み仕入額×5/105
インボイス方式と帳簿方式の違い
第4節 簡易課税制度、免税水準の見直し
「免税業者」「簡易課税制度」「限界控除制度」
→益税
図3-4 免税による益税の発生(単位:円)
図3-5 簡易課税制度の仕組み
税額=売上高×税率−みなし仕入税額
=売上高×税率−売上高×税率×80%
=(売上高−売上高×80%)×5%
=売上高×20%×5%
=売上高×1%
簡易課税制度:適用上限は平成9年4月1日以降、4億円から2億円に引き下げ
限界控除制度:平成9年4月1日から廃止
[Reading List]
野口悠紀雄(1994)『税制改革のビジョン』日本経済新聞社.
橋本恭之
「国民福祉税の是非と福祉目的税化」『税経通信』49巻7号,1994年
橋本恭之(1998)『税制改革の応用一般均衡分析』関西大学出版部.
橋本恭之・上村敏之(1997)「村山税制改革と消費税複数税率化の評価
− 一般均衡モデル によるシミュレーション分析−」『日本経済研究』, No.34,
35-60.
八田達夫(1994)『消費税はやはりいらない』東洋経済新報社.
林宏昭・橋本恭之(1987)「売上税の価格効果−『産業連関表による分析』−」『大阪大学経済学』第37巻,第3号.
林宏昭・橋本恭之(1991)「消費税の価格分析−昭和55年産業連関表と昭和60年産業連関表による分析−」『四日市大学論集』第3巻第2号,
本間正明・跡田直澄編(1989)『税制改革の実証分析』東洋経済新報社.
宮島洋編『消費税の理論と課題』税務経理協会,1995年7月
吉田和男(1996)「消費税率をどこまで上げるべきか」『税研』96年7月号.
吉田和男・八田達夫(1998)「特別対談:景気後退下の税制改革」『税研』.
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