第4章 地方財政の動向−歳出・歳入構造と財政指標−

4.1 地方の歳出構造
<国と地方の歳出>

図4−1 歳出決算に見る国と地方の役割

http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czb01-01.html


出所:総務省ホームページ 『平成27年版地方財政白書』(平成25年度決算)

国のみとなっているのは防衛費、民生費のうち年金関係
ほとんどの項目で地方の割合が高くなっている。

 
<都道府県と市町村の目的別歳出>
 表4−1 都道府県と市町村の目的別歳出(平成25年度)
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czs01-04.html#s034
出所:総務省ホームページ 『平成27年版地方財政白書』(平成25年度決算)

都道府県 教育費が全体の22.2%超 小・中学校の義務教育職員人件費
市町村  民生費 32.6%     保育サービスや高齢者医療など福祉的なサービスは市町村が主体

<都道府県と市町村の性質別歳出>

 表4−2 都道府県と市町村の性質別歳出                 
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czs01-05.html#s073
出所:総務省ホームページ 『平成27年版地方財政白書』(平成25年度決算)



職員給与などの人件費が大きい

経費の分類(義務的経費、投資的経費、その他の経費)
 義務的経費
  地方財政を取り巻く環境や歳入の状況に関わりなく支出しなければならない経費。
  →人件費、公債費のほか、生活保護や、児童、老人の福祉に要する経費
 投資的経費
  普通建設事業費が大半。それ以外は、災害復旧事業費と失業対策事業費。

 その他の経費 
  物件費や維持補修費といった消費的な経費と公営企業等に対する補助費や繰出金、
  将来的には運用収入や償還が予定されている出資金など。

4.2 地方団体の歳入構造
<歳入の区分>
 表4−3 地方団体の歳入構造   
  http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czs01-02.html#s012
出所:総務省ホームページ 『平成27年版地方財政白書』(平成25年度決算)

 
 表4−4 地方団体の歳入の区分                 
    経常財源   臨時財源

自主財源
 
 

 一般財源
 
  地方税
  使用料・手数料
  
  寄付金
  財産収入
 特定財源     


依存財源



 

 一般財源
 
  地方交付税

  地方譲与税


 

 特定財源

 

  国庫支出金
    (経常分)
 
  地方債

  国庫支出金

<自主財源と依存財源>
 自主財源 地域住民の負担である地方税や使用料等

 依存財源 国から交付される補助金や外部からの資金調達手段である地方債

<一般財源と特定財源>

 一般財源 使途が限定されないで、地方団体が自由に支出することができるもの
 特定財源 資金を充当すべき事業が限定されているものを特定財源

<経常財源と臨時財源>

 経常財源 地方税、地方交付税、経常的な支出に充当される国庫支出金
 臨時財源 建設事業など特定の事業目的で発行される地方債や、投資支出に充当される国庫支出金
      地方団体の資産売却による収入や寄付金収入

4.3 地方財政の実態−財政指標−

<国の赤字と地方の赤字>

国債 
建設国債 社会資本の建設事業に充当されるもの、4条国債
赤字国債 経常的な支出や減税財源に充当されるいわゆる赤字国債、特例公債

地方財政の場合
 歳入マイナス歳出という指標は地方財政の場合注意が必要→地方財政に歳入には国庫支出金、地方交付税などの国からの移転や地方債を含むから。

形式収支  1年間の歳入と歳出の差引額

実質収支  歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源(例:用地交渉等の遅れによりやむを得ず、翌年度に繰り越す事業に充てる等)を控除した額
   

単年度収支 当該年度の実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額
          →たとえば今年度100億円の実質収支の赤字であっても、前年度も100億円の実質収支の赤字の場合、単年度収支はプラスマイナスゼロ。
           当該年度にあらたな赤字は発生していないことがわかる。このように当該年度の姿が把握できる。


http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czb01-02.html#h003


この実質収支でみた赤字団体は少ない→地方団体の財政状況が良好とは必ずしも言えない。

<経常収支比率>

 経常収支比率
 →毎年度経常的に支出される部分が、経常的な財源のどれだけを占めているかを示すもの。地方税、地方交付税、地方譲与税のように毎年度経常的に地方団体の歳入となる一般財源から、人件費、扶助費、公債費といった経常的に支出される経費に充当された割合
                  ↓
           比率が高いと財政運営の自由度が低下する

図4-2 経常収支比率の推移
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czb01-02.html#p01020501
 
出所:平成27度地方財政白書


   都道府県では80%、市町村では75%程度が望ましいとされてきた。
                  ↓
         人口増加がとまり、社会資本整備がすすんだ現在では指標の再検討が必要



 
<地方債の累増と公債費負担比率>

P77
図4−3 地方債残高の推移

http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czb01-02.html#p01020601

出所:平成27年度地方財政白書


地方公共団体の借入である地方債現在高は、平成25年度末約146兆円 

http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czb01-02.html#p01020601


普通会計が負担すべき借入金残高

  地方債+企業債現在高(普通会計分)+交付税特別会計借入金残高
                                 ↑
                     地方交付税の交付に財源が不足したときの借り入れ

地方の借入金残高   H25 201.4兆円 



公債費負担比率:公債費に充当される一般財源が一般財源全体のうちどれだけの比率を占めているかを求めたもの。

http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czb01-02.html#p01020502
 


                    
  

起債制限比率 地方債許可制度のもとで起債に際して制限が加えられていたときの基準であり、公債費が標準財政規模に占める比率

正確には、
地方債元利償還金及び公債費に準ずる債務負担行為に係る支出の合計額から繰上償還された額を除き、さらにこれに充当された一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(臨時財政対策債発行可能額を含み、普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対しどの程度の割合となっているかをみるものである。

平成19年度  11.2%(都道府県11.4% 市町村 11.1%



参考
実質公債費比率 実質的な公債費の負担の程度をみる指標である実質公債費比率は、平成17年度決算に基づき初めて算定された指標

・地方債元利償還金(繰上償還等を除く)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された一般財源のうち地方交付税が措置されたものを除いたものが、標準財政規模及び臨時財政対策債発行可能額の合計額(地方交付税措置分を除く)に対してどの程度の割合になっているかをみるもの

・起債に協議を要する団体と許可を要する団体の判定に用いられるものであり、この比率が18%以上の団体は起債に当たり許可が必要になり、25%以上の団体については、一定の地方債の起債が制限され、35%以上の団体については、さらにその制限の度合いが高まる。

・地方公共団体の財政の健全化に関する法律において、健全化判断比率の一つとして位置付けられており、早期健全化基準は25%、財政再生基準は35%とされている。




実質公債費比率が早期健全化基準以上である団体数 4団体(うち財政再生基準以上である団体数 1団体)

<財政力指数>
 財政力指数→当該年度から前々年度までの3年間における、地方交付税算定において求められる基準財政収入額の基準財政需要額に対する比率の単純平均
          値が高いほど財政力が高い
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/27data/2015data/27czs01-01.html#s003

出所:平成27年版地方財政白書


都道府県の21.3が0.3未満、42.6%が0.3〜0.5



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