第5章 地方税原則と地方税体系

5.1 地方税原則

<租税原則>

租税の3原則   公平、効率、簡素

公平 納税者間の税負担を求める時に公平な配分を求めるもの
効率 課税による経済活動に対する阻害効果をできるだけ少なくすることを求めるもの
簡素 徴税コストと納税協力費の最小化をめざしたもの

地方税固有の原則  応益性、負担分任、普遍性、安定性と伸張性

<応益性の重視>

税負担配分の原則としての、応能原則(能力説)と応益原則(利益説)

応能原則  所得、消費などの経済力に応じて負担を配分する考え方

水平的公平 等しい経済状態の人々を等しく取り扱うこと
垂直的公平 異なる経済状態の人々に異なる取り扱いをすること

応益原則 公共サービスからの受益に応じて負担を配分する考え方

国税     応能原則   所得分配、経済安定
地方税   応益原則    資源配分

応益原則からは、租税よりもむしろ使用料や手数料といった形で財源を調達したほうが望ましい

ゴミ収集サービスを完全に有料化した場合には、不法投棄の可能性を増す

応益性の性格を持つ税を地方税として採用することが現実的な対応:例 固定資産税、都市計画税、事業所税など



<負担分任の原則>

行政サービスの受益者である地域住民がその行政サービスを分担すべきだという考え方

人頭税  サッチャー政権下のコミュニティ・チャージ

1993年に現在のカウンシル・タックス(counsil tax)に置き換えられた

日本では均等割りが存在する。課税最低限が国税より低い理由ともされている。

<税源と税収の普遍性>


地方税としては、どの地域でも課税対象となるものが存在し、かつ税収が見込めるものであることが必要


図5-2 都道府県別1人当たり県民所得(単位:千円)   現実は地域間に経済格差が存在する


図5-3 1人当たり地方税(1999年度)            税収は東京に集中している。
   
<安定性と伸張性 >


図5−4 地方税収と国内総生産の対前年変化率

道府県税、市町村税ともに、傾向的にGDPの変動幅よりも大きな増減。
90年代の変動幅は拡大→事業税、法人住民税という企業課税に依存している度合いが高いため

5.2 国と地方の税源配分

<地方の役割と税収配分>

H25年度決算における国と地方の税収総額 86兆6,017億円
 国税  51.2兆円  59.2%
 地方税 35.3兆円 40.8%


歳出面 国 4割 地方 6割
歳入面 国 6割 地方 4割
       ↓
国庫支出金、地方交付税、地方譲与税という形での国から地方への財政移転


国庫支出金:使途が限定されるため歳出面、歳入面ともに意思決定が国に委ねられる
地方交付税:その財源は国税収入にリンクして決定されるのものの、地方の側では使途が限定されない一般財源

地方譲与税:国が一旦徴収した税収を特定の配分基準で各地方団体に配分
 
歳出と歳入のギャップはできるだけちいさく。地方税比率を高めるべき。

 
<税源配分の国際比較> 

p91
表5-1 主要国の税源配分の比較
http://www.soumu.go.jp/main_content/000377231.pdf

<税源の分離と重複>

表5-2 国税と地方税の税目
  国  税 地 方 税   国  税 地 方 税
所得課税
 
所得税★ 個人住民税★ 消費課税
 
消費税 地方消費税
法人税★


 
個人事業税★ 酒税 地方たばこ税
法人住民税★ たばこ税 軽油引取税
法人事業税★ たばこ特別税 自動車取得税
道府県民税利子割★ 揮発油税 ゴルフ場利用税
資産課税等



 
相続税・贈与税★ 不動産取得税







 
地方道路税 入湯税
地価税★ 固定資産税★ 石油ガス税 自動車税★
登録免許税 都市計画税★ 自動車重量税 軽自動車税★
印紙税




 
事業所税★ 航空機燃料税 鉱産税★
特別土地保有税★ 石油税 狩猟者登録税★



 
電源開発促進税 入猟税★
関税 鉱区税★
とん税
 
特別とん税
(注)★印は直接税、無印は間接税等
出所:財務省ホームページhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/gen/gen02.htm
 
 国税、地方税とも所得税に集中
 

5.3 地方税体系

<シャウプ勧告における地方税体系>

シャウプ勧告の地方税制 1949年のシャウプ勧告 独立税主義
 
 <シャウプ勧告以降の主な改正>

1951年度改正 法人税割が市町村民税として創設
 1954年度改正 道府県民税の創設、たばこ消費税、不動産取得税の創設
            シャウプ勧告により導入が決まりながら一度も実施されることなく附加価値税の廃止され、事業税が存続

1960年代 個人の市町村民税における課税方式の統一

<抜本的税制改革から地方消費税の導入>
   
 H1 消費税の導入 
   消費譲与税(消費税の5分の1)の創設  人口と従業員で再配分 
 
村山税制改革 消費譲与税廃止と地方消費税の創設(税率1%相当)
           消費基準で再配分

 <現在の地方税体系>
P97
 図5-5 地方税体系



表5−3 地方税の税目別収入額
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/pdf/ichiran06_h28/ichiran06_h28_10.pdf


図5−5 都道府県と市町村の基幹税
都道府県 道府県民税、事業税、地方消費税
市町村   市町村民税、固定資産税

<地方税法と地方自治の原則>
「地方自治の原則」→条例で定めることによって税率に変更を加えたり、独自の課税を行うことができる。
 
標準税率
超過課税  
制限税率 超過課税の上限

例:固定資産税の標準税率は1.4%、制限税率は2.1%(平成16年に廃止)


超過課税の状況       
http://www.soumu.go.jp/main_content/000417081.pdf

p101
法定外普通税、法定外目的税の状況
http://www.soumu.go.jp/main_content/000417083.pdf



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