序章 地方分権改革の潮流

第1節 地方分権改革の推移

(1)地方分権改革の推移

1949年 シャウプ勧告     
      市町村優先の原則    



2000年(平成12年)4月地方分権一括法施行
国と地方の役割分担の明確化、機関委任事務制度の廃止、国の関与のルール化

*機関委任事務廃止
    国が直接実施する事務   信用協同組合の指導監督
    自治事務            飲食店営業の許可
    法定受託事務         パスポートの交付



2001年6月 地方分権推進委員会最終報告
「今後の経済運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(基本方針2001) 閣議決定

2002年6月 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(基本方針2002)
      三位一体改革を進めることを閣議決定

2003年度予算
 「三位一体改革」の「芽出し」として5,625億円の国庫補助負担金の削減の先行実施
義務教育費国庫負担金の一部(2,344億円)の一般財源化

2003年6月  「基本方針2003」 国庫支出金削減 4兆円規模を決定

2004年度予算 1兆円規模の国庫補助負担金の削減、所得譲与税(4,249億円)と税源移譲予定特例交付金(2,309億円)の暫定的な税源移譲実施
所得譲与税とは、暫定的な措置として国税である所得税の税収の一部を地方団体に配るもの

2004年度 事業税の一部外形標準化


2004年6月 「基本方針2004」閣議決定  3兆円の税源移譲を決定

2005年11月 三位一体改革について政府与党の合意が発表
 2006年度に税源移譲にむすびつく国庫補助負担金の削減 6,540億円  
税源移譲は、所得税から個人住民税へ3兆円規模

2007年度  個人住民税の比例税率化
「新型交付税」の一部導入

2007年12月 「平成20年度税制改正大綱」
「地方法人2税」の見直し
 地方法人2税とは、法人住民税と法人事業税のことである。
 「地方法人特別税」を創設

2008年  ふるさと納税制度導入

2014年4月  地方消費税を含む消費税の税率が5%から8%へ引き上げ
       地方消費税の税率は、1%相当分(消費税額の100分の25)から、1.7%相当分(消費税額の63分の17)へ引き上げ
 なお、地方消費税を含む税率が10%へ引き上げられると、地方消費税の税率は2.2%相当分(消費税額の78分の22)へ引き上げられることになっている。




(2)地方分権改革の影響


P6 図1 地方歳出比率と地方税比率の推移

地方歳出比率  60%程度で推移
地方税比率   2000年〜2006年  ほぼ40%程度
           2007年〜2008年  40%台の後半  →税源移譲の効果
           2010年以降低下傾向         →所得割と固定資産税の税収比率の低下が原因
                                   

p7. 図2 地方歳入総額に占める主要歳入項目の構成比の推移

     2009年以降  地方税比率の低下
               リーマンショックの影響






第2節 地方分権改革論議

(1)地方分権の理論

マスグレイブ 財政の3大機能 資源配分機能    所得再分配機能   経済安定機能
  
  地方財政の中心的役割   資源配分機能、特に地方公共財の提供
                    地方公共財とは、便益の及ぶ範囲が地域的に限定される公共財(例:消防サービス)
                    中央集権より地方政府が地域の状況にあわせてサービスを提供
                     地方 消防ヘリ  都会 はしご車

  所得再分配は、本来国が果たすべき機能、地方政府は給付窓口としての役割を分担

  経済安定は、財政政策だけでなく金融政策を利用できる国が有利


オーツ   分権化定理を提唱
        →地方公共財の提供は地方政府が提供したほうが効率的
          地方政府の方が住民のニーズを把握できるから


ティブー 足による投票
       消費者が自分の望む地方公共財の提供する地域を選択



ソフトな予算制約 ハンガリーの経済学者コルナイが提唱
            計画経済における非効率の原因
            →社会主義経済では経営が悪化しても政府が赤字を補填

           地方交付税   地方団体の財政が悪化しても地方交付税で補填


(2)地方分権推進委員会最終報告

地方分権推進委員会の最終報告書「地方分権推進委員会最終報告−分権型社会の創造:その道筋−」

○地方税財源を確保の基本的な視点
    地方歳出比率と地方税収比率の乖離を縮小
    税源移譲をおこなう際の歳入中立の原則
    歳入最終両面の自由度を増大させること

○地方税源の充実策
    地域的偏在の少ない税体系の構築が必要:個人住民税の比例税率化
    地方消費税に:交付税財源に組み入れられている部分を地方消費税に組み替えることも検討すべき
    法人事業税の外形標準化の導入
○税源移譲の見合い
  国庫補助金負担金を削減
  地方交付税については、算定方法の簡素化、事業費補正の見直し、地方自治体の自助努力を促す仕組みが必要


(2)地方分権改革論議
   税源移譲の重要性を強調                 神野・金子(1998)
   三位一体改革では、地方の裁量は高まっていない  佐藤(2011)
   固定資産税を中心とした税制が望ましい         土居(2004)
   家屋と償却資産への課税に反対               佐藤(2011)
    →土地だけに課税すると小規模団体の税収が減少 西川(2011)

   三位一体改革の評価
      国庫補助金の削減は奨励的な補助金とすべきだった
       →現実には義務教育費国庫負担金を中心