第4章 地方交付税改革の概要

第1節 地方交付税の仕組み
 地方交付税
    普通交付税  全体の96%
    特別交付税  災害など特別な財政需要のある地方団体のみに交付

(1)交付税財源
 交付税財源:国税収入の一定割合  国と地方の財源配分機能

   総務省の説明 国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分
             国が地方に代わって徴収する地方税」(固有財源)という性格を保持

    地方消費税  国税である消費税の一部が、消費基準により各地方団体に配分
              →地方交付税も同様に、共同税的な性格を持っている

     ただし、地方消費税は、消費税法ならびに地方税法において規定


 
 表4-1  p.97  交付税率の変遷

 国の税体系の変化が地方財政に及ぼす影響を小さくするために入れ替え

   国税3税(所得税、法人税、酒税)の一定割合
             ↓
       1989年 消費税とたばこ税の一定割合
             ↓
        2015年 たばこ税除外  地方法人税を追加

   地方法人税とは  都市部に偏在する地方法人課税の税収の偏在を是正するために創設


  2001年度から      国:交付税財源を赤字国債で補填
            地方団体:臨時財政対策債(臨財債)を発行 
           
   臨時財政対策債   国と地方の責任分担の明確化、財政の透明化
                 交付税特会の財源不足額のうち財源対策債等を除いた額を国と地方で折半
                 元利償還費用は、基準財政需要に100%算入

(2)交付税配分方法:基準財政需要の算定
 

基準財政需要額 標準的な行財政運営に必要とされる額

            各行政項目:例 土木費、教育費
                 経常的経費
                 教育費
  

基準財政需要額=単位費用×測定単位×補正係数

単位費用:標準的な歳出をおこなう場合に必要な一般財源の金額を測定単位1単位当たりで示したもの

標準団体 表4−2


測定単位:財政需要の大きさを合理的・客観的に反映した指標
       例:  教育費  教職員数    土木費  道路面積、道路延長

補正係数:地理的、社会的条件を配慮
        例:寒冷地補正   段階補正


態容補正  都市化の程度、法令上の行政機能などに応じて補正
        投資補正     投資的経費の必要度で補正
                   未舗装整備延長比率  交通事故件数などを利用
        事業費補正   公共事業費の地方負担分等を反映

 補正係数は総務省の省令で決定、地方交付税法の修正は不要
  →国が地方自治体の非効率を事後的に補正できる
    ソフトな予算制約

p100 表4−3 個別算定経費と包括算定経費の測定単位

 包括算定経費  新型交付税
            地方交付税は人口と面積でほぼ説明可能
     
@「国の基準付けがない、あるいは弱い行政分野」(基準財政需要額の1割程度)の算定について導入
A人口規模や宅地、田畑等土地の利用形態による行政コスト差を反映
B算定項目の統合により「個別算定経費(従来型)」の項目数を3割削減
C離島、過疎など真に配慮が必要な地方団体に対応する仕組みを確保(「地域振興費」の創設)

(3)交付税の配分方法:基準財政収入


 基準財政収入 各自治体の財政力を合理的に測定するための通常に見込まれる税収



  基準財政収入額=標準的な地方税収入×75%+地方譲与税等

p105
表4-4 基準財政収入額の対象税目

法定普通税を主体:超過課税分は含まない

標準的税収のうち、基準財政収入に算入される比率は基本的(表4-5参照)には75%
残り25%は留保財源比率→徴税努力すると25%は手元に残る

(4)地方交付税配分の仕組み


各団体の普通交付税額=(基準財政需要額 − 基準財政収入額) = 財源不足額

p107 図4-2

     基準財政需要 人口一人当たり金額に直した基準財政需要は、人口規模に対してU字型

      基準財政収入 一人当たりの金額でみると、人口規模に対して比例的に増加


      不交付団体  基準財政収入>基準財政需要


(5)交付税総額の決定
    入口ベースの交付税  国税収入にリンク
    出口ベースの交付税  財源不足額

     両者の合計額が一致する保証はない

  
地方交付税の総額は、地方財政計画にもとづいて決定

地方財政計画  地方団体の歳入歳出総額の見込額
           国が国会に提出、一般に公表

 交付税財源と財源不足額の不均衡は、地方財政対策で埋める


p110 表4−7 2016(平成28)年度地方財政対策の概要

p111 図4−3  交付税財源と交付税総額の推移
       バブル崩壊後に交付税財源が低迷し、乖離が拡大


第2節 地方交付税改革の議論
(1)地方交付税の機能
 
交付税による財政保障機能:どの地方団体においても最低限必要な行政サービス水準、ナショナル・ミニマムを確保

           強力すぎるという批判も

地域間での財政調整機能:国が地方交付税を財政力の低い地方団体に手厚く配分し、富裕な団体は、不交付団体

        間接的な財政調整  垂直的財政調整システムを採用
                          ↓
                      水平的財政調整システムに変更すべき?
                      逆交付税

(2)地方交付税改革の推移
 地方分権推進委員会の最終報告(2001年6月13日)
「国による歳出や事務事業の義務付けの廃止・緩和を進めるとともに、地域の実情に即した地方公共団体の自主的・主体的な財政運営に資する方向で、基準財政需要額の算定方法のあり方の検討を行い、その一層の簡素化等の見直しを図るべきである。」

2001年〜20007年  補正係数    都道府県 146→73
                          市町村 176→143

p113 表4−8 地方交付税改革の推移


(3)交付税改革の議論

交付税廃止論

吉田(1998) 「地方交付税制度はもともとはナショナル・ミニマムを実現するためのものであったが、可能限り地方行政を拡大させるナショナル・マクシマムを実現する制度となっている」

「地方交付税は矛盾でしかなく、この制度が廃止されるときが、日本に地方自治が生まれるときである」

廃止されるまでの過渡的な措置としては、水平的な財政調整を提案


 赤井・佐藤・山下(2003)「従来の地方交付税と国庫支出金を統合した、新たなブロック補助金を創設」すべき

交付税のおける財源保障を強化すべき

川瀬(2011)
「地域間格差の拡大に対しては、地方交付税制度のもつ財源保障機能を高めていく必要がある」
 →三位一体改革で地域間格差が拡大していると主張