最終更新日 H 20.2.1
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時 候 天 文 地 理 |
【時候】 「初夏や小さき順にシャツを干し」原田蓮江 「初夏に開く郵便切手ほどの窓」有馬朗人 「銃のごとパンもつ初夏のパリジェンヌ」岡谷 湖 「夏めいて乳房大きく反らしけり」猪原丸甲 「夏めくや脚立の人にのぞかれて」高橋みづき 「鉄片のようなジーパン干して夏」中 近江 「こんにやくを閻魔に供え街薄暑」山崎祐子 「街薄暑力士こつそりメロンパン」梅川ふみ江 「栄養剤飲んで薄暑の薬売り」山田一良 「痒ゆさうに野川流るる麦の秋」清崎敏郎 「匙見れば口あく吾子や麦の秋」村井正子 「梅雨に入る客引男腕組みて」あべはこべ 「梅雨明けぬ猫が先づ木に駈け登る」相生垣瓜人 「傘乾して我が家梅雨明け宣言す」吉岡春府 「炎帝に身じろぎもせぬ道祖神」今井節子 「炎昼のすぐそこといふ遠き道」志村平太 「炎昼に目も口も剥く鬼瓦」加藤節雄 「短夜や夜討をかくるひまもなく」夏目漱石 「みじか夜や明て寝所へ誹諧師」立枝 「一つ目小僧めつむつてゐる暑さかな」正木ゆう子 「きんたまの置所なき暑さ哉」盾山 「昼見ればあつい物なり廓町」羅城 「一番の暑さと聞けばなほ暑し」田口サク 「釘一つ打つに指打つ大暑かな」北美枝子 「蓋あけし如く極暑の来りけり」星野立子 「無人島の天子とならば涼しかろ」夏目漱石 「涼風の曲がりくねつて来たりけり」一茶 【天文】 「大島に来て椿なし夏の雲」高橋淡路女 「空港に眼鏡の力士雲の峰」吹野 保 「夏雲やくりくり洗ふ子のつむり」木附沢麦青 「わらうてはをられずなりぬ梅雨の漏」森川暁水 「軍艦のやうな靴ある梅雨の土間」砂山節子 「梅雨と書き陳者(のぶれば)と書き嫌になりぬ」永作火童 「梅雨晴れの馬や筋肉ぷるぷるるん」福富健男 「一病を何処かに忘れ五月晴」小島左京 「夕立もやみたる頃の迎へ傘」高橋淡路女 「夕立去り仕立下ろしの街となる」増山 登 「夕立や子を横抱きに軒の下」田中稔子 「山小屋を袋叩に夕立去る」佐川白水 「デパートのごつた返しの大夕立」池ヶ谷夏子 「スコールが来るぞ来るぞと騒ぐ椰子」古谷彰宏 「風に騎り鬼神のごとく喜雨来る」河野静雲 「かばかりの雨に雷鼓の仰々し」鶴田豊川 「空腹に雷ひびく夏野かな」一茶 「遠雷やなんだかんだと妻は留守」戸田善藏 「長電話きるきつかけにはたた神」安部しずほ 「雹しばし主客の話またもとに」河野静雲 「大夕焼言葉見つからねば黙す」山口美瑳代 「ゆうやけこやけだれもかからぬ草の罠」穴井 太 「宍道湖の湯になるやうな大夕焼」吉岡和子 「日盛りに将棋倒しの陶狸」能村登四郎 「サラリー数ふ恋ざかりなる日盛に」高山れおな 「故郷(くに)の電車今も西日に頭振る」平畑静搭 「ビタ一文まけしまへんえ西日射す」久門 南 「炎天を槍のごとくに涼気すぐ」飯田蛇笏 「炎天や十一歩中放屁七つ」永田耕衣 「炎天下迷子に年はなかりけり」高本登志 「炎天へ打つて出るべく茶漬飯」川崎展宏 「世田谷の鴉天国油照り」津田美智子 「湖底より廃墟あらはる大旱」宮下翠舟 「みほとけの千手犇く五月闇」能村登四郎 「片蔭を翻りゆく大司教」九鬼あきゑ 「蝮屋がありて片蔭ゆきがたし」谷野予志 「マンホールより首出でて青嵐」後藤 徹 「夕凪や仏勤めも真つ裸」宮部寸七翁 【地理】 「空へ消えゆく人を見てお花畑」加藤三七子 「馬に乗って河童遊ぶや夏の川」村上鬼城 「整然と植田の列の曲りをり」鳥塚春郊 「利き酒のごと含みけり山清水」冨沢久枝 「二人してむすべば濁る清水哉」与謝蕪村 「絶壁に眉つけて飲む清水かな」松根東洋城 「お滝道僧腹這ひて渡りけり」河野静雲 「作り滝懸命に水落ちにけり」中村奈果 |
生 活 行 事 |
【生活】 「更衣なきロボットと住む未来」荒野桂子 「転生もならず衣を更へしのみ」筺ひろし 「蚤とりの上手しれたり更衣」方錐 「シスターの黒から黒へ更衣」坂口晴子 「看護婦の白から白へ更衣」岡本正敏 「妻たちの羽化おそろしき更衣」中村あきら 「うすものをはみだしてゐるからだかな」藤谷和子 「羅にちかよりがたくちかよりて」岬 雪夫 「羅を着し自意識に疲れけり」小島照子 「甚平や肩書とれてただのひと」岬 雪夫 「甚平の紐むすびやる濡手かな」皆吉爽雨 「借りて着る浴衣のなまじ似合ひけり」久保田万太郎 「夕風や男四角に浴衣着て」清水良江 「よきみくじ四つに畳んで単帯」星野立子 「吾子着て憎し捨てて美しアロハシャツ」加藤知世子 「帰国して着る勇気なきアロハかな」広田祝世 「アッパッパーアッパッパーに行き遭いぬ」花眼亭椋鳥 「誰よりも先に夏服着て寒し」田代草猫 「街を行くモンロー腰の夏帽子」渋谷雄峯 「サングラスかけても人目避けられず」鈴木真砂女 「サングラスかけ知らぬ妻現はるる」辻田克巳 「知りたくて知られたくなくサングラス」舟まどひ 「たら/\と老のふり出す新茶かな」村上鬼城 「便りより先に厚意の新茶着く」貞弘 衛 「冷酒や老いて達者に嘘もつき」赤尾恵以 「冷し酒帰るかへると言ひながら」中田多喜子 「だば此方さ寄れと夜汽車の麦酒かな」平井さち子 「ビアホール女たること忘れゐし」吉木フミエ 「前おきのながきビールの泡しづむ」宇野常人 「氷食ふ二階の欄にまたがりて」松本たかし 「女同士氷水飲み身を歎く」堀内 薫 「氷店一卓のみな喪服なる」岡本 眸 「近づいて驢馬に氷菓を食はれけり」市村芳子 「毒舌の舌黄に染めし掻き氷」鈴木照子 「かちわりが口にあふれてもの言へず」辻 桃子 「ラムネ飲む壜の底まで天に向け」永川絢子 「どちら兄どちら弟ラムネ飲む」古谷多賀子 「別々の空を仰ぎてラムネ飲む」松内佳子 「無防備な喉をさらしてラムネ飲む」吉田鐡雄 「上品にラムネ飲むことむつかしく」石川宣子 「唇にラムネの壜のいかめしき」相生垣瓜人 「サイダー売一日海に背を向けて」波止影夫 「娘等のうか/\あそびソーダー水」星野立子 「真青な身元怪しき薄荷水」如月真奈 「お互ひに相席をしてところてん」竹中碧水史 「広言の一つもなくて心太」宮沢和子 「柱噛む馬を叱りつ心太」佐藤紅緑 「蜜豆や三人寄れば恋ばなし」村上梔子 「枝豆や三寸飛んで口に入る」正岡子規 「浸け西瓜くるりくるりと濡れ難し」堀 葦男 「土用鰻店ぢゆう水を流しをり」阿波野青畝 「家長われ土用鰻の折提げて」山崎ひさを 「山椒くる鰻丼をはる頃」かたぎり夏実 「はとバスが老舗に並ぶ鰻の日」中西永年 「鰻重のあと錠剤を食べ始む」尾関乱舌 「鮓なるゝ頃不参の返事二三通」前田普羅 「九十九夜通ふ損あり一夜鮨」虚舟 「出されたる白玉に顔かいてある」星野立子 「はつたいや鼻毛のびたる相撲取」村上鬼城 (「はつたい」は漢字[麥+少]、むぎこがし/香煎) 「瓜きざむやめたく思ふまで刻む」山口波津女 「仏より下げし豆飯減つてゐる」尾熊靖子 「流れ来ぬ流しさうめん待つてをり」國分香稲 「しぎ焼に爺婆の箸出合ひけり」大木あまり 「「ヤッホー」と伽羅蕗を持ち友の来る」浪本恵子 「妻留守の伝言貼りし冷蔵庫」徳丸峻二 「十年を過ぎてうるさき冷蔵庫」村杉踏青 「夏掛や時計廻りに子の寝相」青木澄江 「竹婦人妻にとられてしまひけり」松尾隆信 「寝言みな聞かれてしまふ竹婦人」平湯 晃 「妻よりも少し無口な竹婦人」梅田昌孝 「竹婦人下半身はなかりけり」澤田緑生 「竹夫人われより先に眠るとは」尾野秋奈 「ベッドよりおつこつている竹夫人」大野朱香 「抱籠や一年ぶりの中直り」来山 「くびれたるところがかたし竹婦人」小原啄葉 「源氏名のある団扇より風もらふ」栗山恵子 「腰にある団扇さがしてをられけり」中野壽郎 「柄を立てて吹飛んで来る団扇かな」松本たかし 「へなへなのこしのぬけたる団扇かな」久保田万太郎 「何となくくたびれてをり扇風機」星野立子 「へろへろと走馬燈の游魚かな」後藤夜半 「みな飛んでゆくのもばかり走馬燈」下田実花 「幸すこし不幸をすこし走馬灯」岬 雪夫 「その下の地獄は見せず誘蛾灯」伊藤宇太子 「帰省子に父の医学の古びたり」五十嵐播水 「帰省子を籠の小鳥のいぶかれる」青柳志解樹 「歸省子の大人の部分子の部分」天本美沙絵 「帰省子の喋るは食うはよく寝るは」三本松隆男 「夏休みぴょこんとお辞儀されにけり」加治幸福 「宇宙図鑑祖母が夢中に夏休」西村 操 「盆休み大工おのれの家直す」大牧 広 「夏痩せてちよつと秀才らしくなる」大倉祥男 「起し絵のブーフーウーのウーの家」重松 隆 「暑中見舞二たくだりほどの消息かな」小田島十黄 「裸子のつまみどころもなかりけり」岩淵喜代子 「裸子の尻の青あざまてまてまて」小島 健 「裸の子裸の父をよぢのぼる」津田清子 「道問へば路地に裸子充満す」加藤楸邨 「御院主に裸女肩を抱へ逃げ」河野静雲 「籐椅子を立ちて来し用忘れけり」安住 敦 「故郷のもてなし素足になれといふ」柴田佐知子 「呪のごとく香水ふりにけり」北井茂子 「覚えある香水の香やどきつとす」コスモメルモ 「髪洗ふ女体限界まで曲げて」竹中碧水史 「鏡見てべつかつこうや洗ひ髪」鈴木花蓑 「髪洗うまでの優柔不断かな」宇多喜代子 「夜濯ぎにありあふものをまとひけり」森川暁水 「行水の女にほれる烏かな」高濱虚子 「のうのうと昼寝のひまに世は動く」加藤裕子 「大いなる昼寝の足をまたぎけり」稲垣きくの 「綱垂れて馬遊び居り馬子昼寝」星野立子 「本降りとなりて予定になき昼寝」桂 定風 「山に金太郎野に金次郎予は昼寝」三橋敏雄 「斬られたるごとく昼寝の道具方」吉岡桂六 「家中が昼寝してをり猫までも」五十嵐播水 「飼ひ猫に飽きられ夫の三尺寝」石川喜美子 「女とて大の字が好き三尺寝」野口尚子 「棟梁が一番小柄三尺寝」黒沢正行 「夏座敷二束三文らしき壷」梅木幸子 「何ひとつ置かぬ贅沢夏座敷」田中由紀子 「青すだれ御免蒙つてくゞりけり」大野酒竹 「税金を払はずにゐる簾かな」岸本尚毅 「端居してこの身このままこはれもの」林 翔 「貌に似ぬ南部風鈴音澄みぬ」清川恵子 「大先生本日休診金魚玉」田島京子 「花茣蓙とともにどこかへ消えし夫」八染藍子 「弟子達に問答させて涼み哉」村上鬼城 「老と老雀と雀夕涼み」村越化石 「水中花濡れてゐるとは思はれず」保坂伸秋 「泡一つ抱いてはなさぬ水中花」富安風生 「いきいきと死んでゐるなり水中花」櫂未知子 「花氷盛装男女ゆがみ過ぐ」斎藤徳次郎 「水面にぶつかり沈む浮人形」星野立子 「少年のころの大志よ浮いて来い」乾 坤太 「浮いてこい浮いてお尻を向けにけり」阿波野青畝 「どん底を蹴ってここまで浮いて来い」野口順子 「俳諧は屁のやうなもの浮いて来い」中原道夫 「虫干をして良縁にめぐまれず」岬 雪夫 「虫干しに増えず減らざる母の衣」橋本美代子 「虫干に猫もほされて居たりけり」小林一茶 「騒動記虫干す中に読まれけり」飯田蛇笏 「乏しき書曝す己を曝すかに」井桁白陶 「天瓜粉逃げまはる子の蒙古斑」雑賀純子 「天瓜粉手足まるめてころがして」高橋せをち 「湯上りの子をうらがへし天瓜粉」中村秋晴 「化粧するごと老婆へ天瓜粉」市村芳枝 「蝿叩買ひきて蝿をさがしをり」猪狩稲子 「蝿叩とり彼一打我一打」高浜虚子 「蠅叩き提げて出て来し店主かな」田母神まどか 「蝿追ふや腹這ふ足を打ち合せ」飯田蛇笏 「大和尚蝿打へ手をのばしけり」河野静雲 「やれ打つな蠅が手をすり足をする」一茶 「痛さうな金の網目の蠅叩」井手口俊子 「いざと言ふときにはあらず蠅叩き」成嶋いはほ 「蚤取粉買ひに御僧や夜の町」河野静雲 「あとしざる蚊一匹や蚊遣香」河野静雲 「すこしづつ白骨化して蚊遣香」皆川甲丙 「古蚊帳に入りきらぬほど子を生みし」長谷川かな女 「水に入るごとくに蚊帳をくぐりけり」三好達治 「土用灸に皮ばかりなるお僧かな」長谷川かな女 「玉の肌を焼く怖ろしや土用灸」長谷川かな女 「死んでいい筈の背中に土用灸」小島美智子 「森番に白パラソルの近づけり」仙田敬子 「避暑夫人足の短き犬を連れ」岬 雪夫 「贋ルビーの贋のかがやき夜店の灯」中田多喜子 「しんがりの子のまつさらな捕虫網」ながくさ清江 「母の眼の車内はばかる捕中網」松下津城 「螢籠昏ければ揺り炎えたゝす」橋本多佳子 「水鉄砲父を射つときかがやけり」軒口敏之 「声かけて水鉄砲の的になる」杉浦典子 「声かけしばかりに水鉄砲くらふ」檜 紀代 「死に下手がまたも撃たるる水鉄砲」おおば水杜 「母が子へ水鉄砲のためし撃ち」奥野ただし 「草矢うつ羊がへへと後向く」俵谷美智子 「草矢にて射とめし妻と半世紀」戸田善藏 「草矢には二の矢てふものなかりけり」中野壽郎 「算数は苦手草笛得意なり」石津春美 「好きな子の手花火に花火近づきぬ」石 寒太 「揚花火誰の前にも真正面」落合水尾 「夏場所や前も後も異国人」富樫風花 「釣堀を眺めてくらす二階人」星野立子 「ぬつと来て又ぬつと来て夜釣人」橋本輝枝 「鮎の宿おあいそよくて飯遅し」山口青邨 「山小屋に雨が狂はす米の量」黒木野雨 「腹あしき僧こぼし行く施米哉」与謝蕪村 「水着脱ぐにも音楽の要る若者たち」横山白虹 「まつはりて美しき藻や海水着」水原秋櫻子 「縄張つて夜に干す水着滴れり」島方峰庵 「これはもう裸といへる水着かな」大野朱香 「青海に額ぶつけて泳ぎ出づ」滝 春一 「水遊とはだんだんに濡れること」後藤比奈夫 「これ以上濡るるは難し水遊び」佐藤和枝 「深みまで曳いてゆかれる浮輪の子」安部元気 「抱へきれざるビーチボールほしがりて」庵崎京子 「潮浴びに来て砂埋めにされたがる」小林守男 「手をあげて足をはこべば阿波踊り」岸風三楼 「夏芝居堅物某出てすぐ死」小澤 實 「弁当が奈落へ届く夏芝居」甲士三郎 「出遅れし男幽霊夏芝居」伊東仲介 「いうれいに出口教へてもらひけり」しの緋路 「噴水の向うの人もひとりなり」沼尻孝子 「噴水の背丈を決める会議かな」鳥居真里子 「噴水や地に墜ちやすき志」武田菜美 「夏季手当先に洋服買ひて待つ」村岡阿由美 「斜に石置くのみにして水盗む」守屋井蛙 「水盗むとは石ひとつずらすだけ」早川志津子 「水盗むことを覚えし異国妻」笠原杜志彦 「水盗み来て愛想良き異国妻」佐藤凌山 「水盗む咎を重ねて老いにけり」佐野克男 「水喧嘩恋のもつれも加はりて」相島虚吼 「雨乞のまさかの雨の降つて来し」久保英美 「田を植えてかかわりのなき搭景色」和田悟朗 「子に踏ます田植疲れの土踏まず」高橋花月 「道とへばみな笠動く田植かな」楽只 「早乙女と呼ばれつつみな老いにけり」長岡達江 「雨上りみな田植笠畦に置き」星野立子 「東京に尻向け田草取る青年」山崎十生 「太陽と一対一の田草取」八染藍子 「喜々として田植機一人舞台かな」丸山信栄 「金を食う田植機の馬鹿ボルト折れ」高井稲子 「尻押させぐいと曳揚げぬ田植牛」西山泊雲 「たふれたる麦の車の輪が廻る」橋本鶏二 「降ずとも竹植る日は蓑と笠」松尾芭蕉 「先生が瓜盗人でおはせしか」高濱虚子 「水蹴立て浅瀬をわたる鵜匠かな」水原秋櫻子 「首筋を掴まれて鵜の畏まる」井手千二 「北海に胸を開きて烏賊干さる」森 玲子 「金魚売買へずに囲む子に優し」吉屋信子 「息しづかに干瓢長く長く剥く」津田清子 「溝浚真面目すぎるが厄介で」北柳あぶみ 「育てたる木の枝はやも払ひけり」山口珊瑚 「鉄骨のエキサイティングポーズかな」武田伸一 【行事】 「母の日の嫁の手料理無洗米」榊原紘子 「寝なさいと叱って母の日の終る」白川順子 「父の日の張り子の虎の武者ぶるひ」大倉祥男 「父の日を過ぎてネクタイ買ひにゆく」大倉祥男 「父の日の市民農園父ばかり」星野麥丘人 「手紙添へ父の日に着く育毛剤」北原勝彦 「子供の日子供はみんな出はらいひて」岩瀬春灯 「はつ幟一日親のはなの穴」米翁 「鯉幟あげしばかりに日照雨かな」高橋淡路女 「鯨のむごとき室戸の鯉のぼり」川村河邨 「菖蒲湯や何時か女も天下取る」湯浅真理子 「菖蒲湯の熱きに耐へて男なる」中野甘雨 「着順は至極明瞭草競馬」川村河邨 「競べ馬一騎遊びてはじまらず」高濱虚子 「一着の馬も馬面ラ草の絮」朴 天童 「祭すみ太鼓ころがしゆきにけり」細見綾子 「さりげなく強ひられている祭寄付」須藤薫子 「裏山を四股名に祭相撲かな」堀川草芳 「序の舞を火蛾仕る薪能」高橋たか子 「山開き大落石の居坐りて」菅間杏可 「溺れ役息吹き返す海開き」大星たかし 「形代や何でも水に流す国」橋本善夫 「水責めのさまに形代沈みけり」深沢暁子 「医者殺し探して歩く薬の日」山田満子 (医者殺し:げんのしょうこ) 「剃りたての頭がづらり隠元忌」河野静雲 「クーラーの世は世と団扇撒かれけり」百合山羽公 (団扇撒:うちわまき) 「ほろ酔の行者もをりぬ藤切会」鈴木かよ (藤切会:ふじきりえ) |
動 物 植 物 |
【動物】 「羽抜鶏といふより声の嗄れし鶏」能村登四郎 「いつせいに腹を立てたる羽抜鳥」佐怒賀正美 「目白きて紅き椿にさかしまに」星野立子 「行々子大河はしんと流れけり」一茶 「小心なものほど騒ぎ行々子」藤本朝海 「声ほどに姿は見えず行々子」宮脇寿子 「たべ飽きてとんとん歩く鴉の子」高野素十 「しんがりの軽鳧の子いつも急ぎをり」荻野しゆん吉 (軽鳧の子:かるのこ) 「ふはふはのふくろふの子のふかれをり」小澤 實 「まだうつらうつらしてゐる籠鵜かな」明石洋子 「かはせみに川の早口ことばかな」笹木千賀子 「青蛙おのれもペンキ塗りたてか」芥川龍之介 「青蛙とにかく青でゐたりけり」玉城一香 「雨蛙泰然として小さきかな」岸本砂郷 「恐る/\芭蕉に乗つて雨蛙」夏目漱石 「泣きたいことそんなにあるんか雨蛙」三谷幸正 「傘持つて行けと鳴き出す雨蛙」角 雅行 「蟾蜍(ひきがへる)どの面下げて畏る」小出秋光 「ひき蛙お前もごぜんさま待ちか」川合憲子 「跳び方を考へてゐる蟇」杉本千代子 「蟇の鳴く東京大学通りぬけ」杉本千代子 「蟇歩む見えざる鎖引きずりて」大畠新草 「蟇梵語一音発しけり」柴田英彰 「蟇地球を尻の下に敷く」福田貴志 「一家言ありさう蟇の罷り出る」金田一てる子 「だぶだぶの皮のなかなる蟇」長谷川櫂 「牛蛙おのれのこゑに鳴きやみぬ」武田憔人 「悪声とおのれ思はず牛蛙」倉橋羊村 「学問は尻からぬけるほたる哉」与謝蕪村 「夕螢恋の始を点滅す」赤尾恵以 「ホーホーほうたる来いさつきのあの子変声期」柴田南海子 「水の面にじいと音して螢の火」能村登四郎 「蛍狩甘い水などあるものか」田村千勢 「蛍飛ぶ草書行書の火を曳いて」塩川雄三 「孫つれて来てすぐ帰る夏の蝶」星野立子 「空蝉の背なのファスナー外れをり」宗川春子 「空蝉のごとく服脱ぐ背を開けて」加藤三七子 「空蝉のいづれも力抜かずゐる」阿部みどり女 「油蝉水銀ぐんぐん引上げる」池上みゆり 「蟻の列しづかに蝶をうかべたる」篠原 梵 「蟻の道まことしやかに曲りたる」阿波野青畝 「蟻の通路に一服盛つてなむあみだ」岡戸美智子 「蟻のごと働きし夫無職なり」弓田敏子 「山蟻の曲ることなく急ぎをり」中村初枝 「急ぐ蟻急がざる蟻すれ違ふ」中村初枝 「広げたるロードマップを蟻迷ふ」川村河邨 「一日は一日蟻も人間も」吉岡翠生 「先頭もしんがりも無く蟻の道」斉藤葉子 「亡びし樹にぞろぞろと羽蟻ぞろぞろと」西東三鬼 「年老いし蟻を見掛けしことのなし」高田風人子 「手をあげて蟻沈没す蟻地獄」橋本鶏二 「誤算かな雨の溜りし蟻地獄」倉橋羊村 「わが前を夫その前を道をしへ」金藤優子 「迷つたら戻つておいで道をしへ」鳥居美智子 「みちをしへ道草の児といつまでも」水原秋櫻子 「此方へと法(のり)の御山のみちをしへ」高濱虚子 「斑猫のはなから道を逸れにけり」麦生田誠 「死真似のやうに死にたる金亀虫」佐野和太留 「死んだ振り長く続かず黄亀虫」大野伊都子 (黄亀虫:こがねむし) 「かぶと虫昔いぢめし男の子」黛まどか 「くはがたの死して西瓜の捨てらるる」花眼亭椋鳥 「仏壇の燐寸(マッチ)を借りて毛虫焼く」市村芳枝 「焼かれゆく毛虫ら何の殉教ぞ」加藤裕子 「毛虫落ちてままごと破る木陰かな」言水 「したたかは女の勲章毛虫焼く」漆原邦子 「滋賀県の許可なく毛虫這いまわる」稲葉 直 「一日一善毛虫を踏み潰す」吉木フミ子 「蜘蛛の囲をぬけし揚羽や水に落つ」長谷川かな女 「蜘蛛の囲に蜂大穴を空けて遁ぐ」右城暮石 「ふさはしき家とや蜘蛛の住みつきぬ」高橋光子 「思惟像の肘を吊りたる蜘蛛の糸」菊地弘子 「己が囲をゆすりて蜘蛛のいきどほり」皿井旭川 「蛆虫のちむま/\と急ぐかな」松藤夏山 「夜ふかく饗宴の酒をすふ蚊かな」飯田蛇笏 「解らぬ句の草田男にくし蚊のにくし」松崎鉄之介 「老僧の骨刺しに来る藪蚊かな」高濱虚子 「叩かれて昼の蚊を吐く木魚かな」夏目漱石 「武者隠しに隠れてゐし蚊にさされけり」荒木久典 「本丸にひそみゐし蚊のたち悪し」柳沼千恵子 「夕(ゆうべ)には死すとも蚊なり夏の虫」宗朋 「スカートの内またねらふ藪蚊哉」永井荷風 「孑孑の念佛をどりや墓の水」小林一茶 (孑孑:ぼうふら) 「蟆子に血を与へては詩を得て戻る」中村草田男 (蟆子:ぶと) 「蚤のあと数へながらに添寝かな」一茶 「すこしづつ子を押し真夜の蚤をとる」篠原 梵 「尺取虫傍目もふらず尺を取る」清崎敏郎 「酌婦来る灯取虫より汚きが」高濱虚子 「威儀の僧扇で払ふ灯取虫」高濱虚子 「遁走のごきぶり遂に叩かるる」雑賀純子 「落し文三くだり半とはつゆしらず」松田伊都子 「水馬休めばすぐに流さるる」三島晩蝉 「あめんぼと雨とあめんぼと雨と」藤田湘子 「水馬水ひつぱつて歩きけり」上田五千石 「円周率解くまで回れ水すまし」渋谷雄峯 「のつけから舟虫勢揃ひしてをりぬ」九鬼あきゑ 「満つる潮ぞくぞくと舟虫を生む」川島彷徨子 「舟虫の散つたふりして皆をりぬ」渡辺真帆 「いち早く蛇見つけけり蛇嫌ひ」黒岩喜洋 「とろとろと火を吐きにけり蛇の舌」上村占魚 「此山に住みける烏、獣、蛇」高浜虚子 「南無南無と数珠振つて蛇追へる婆」堤 高嶺 「立札は蝮いまにも出る気配」小林 稔 「霊長類ヒト科蝮を食みてをり」須佐薫子 「歯朶にゐて太古顔なる蜥蜴かな」野村喜舟 「子守宮の駆け止りたるキの字かな」野見山朱鳥 「ゐもりゐるゐるゐるゐるといへば去ぬ」辻 桃子 「夏の牛聖者のまなこで糞をする」泉風信子 「鹿の子のふんぐり持ちて頼母しき」村上鬼城 「蝙蝠の逆さでゐたり生き通す」玉城一香 「ひるかへり金魚愉悦の泡を吹く」丸山嵐人 「泳がねば身の錆殖ゆる大金魚」森澤照子 「あらぬ方見て出目金の近づき来」中村初枝 「水槽のグッピー猫を金しばり」橋本末子 「熱帯魚画廊に飼はれ絵の一部」坂上史琅 「ちぬ釣のおもしろからぬ貌のまま」古舘曹人 「いしもちや人の数ほど釣れてゐず」遠山芳子 「床屋から出て来た貌の穴子かな」川崎展宏 「うなぎやの大小すてし氏素性」富安風生 「長靴に鯰を入れて子の帰る」永岡はな 「松魚舟子供上りの漁夫もゐる」高浜虚子 (松魚:かつお) 「鬼おこぜ石にあらずと動きけり」加藤楸邨 (虎魚:おこぜ) 「俎や青菜で拭ふ烏賊の墨」松瀬青々 「代る代る蟹来て何か言ひては去る」富安風生 「待ちぼうけひとり言めく蟹の泡」國武和子 「生きてゐるあぶくを一つ山椒魚」金藤優子 「梅雨鯰跳ね源内の起電箱」加藤一三六 「村長さん一生懸命鮑焼く」高橋呂々子 「どの口も海酸漿に歪みをり」金子洒音留 【植物】 「牡丹の首のすわらぬ子のやうに」荻原朋子 「牡丹を活けておくれし夕餉かな」杉田久女 「声出せば散るやも知れず白牡丹」浜田光彦 「仏より牡丹だいじに牡丹寺」岬 雪夫 「天使の喇叭綺麗な嘘を吐いてゐる」丸山嵐人 「向日葵に覗かれてゐる立たされ児」深沢暁子 「日を追はぬ大向日葵となりにけり」竹下しづの女 「花あふひ子を負へる子はみな男」星野立子 「百合の花花粉に意地のごときもの」清原洋子 「一変化二変化そして七変化」永川洵子 「卯の花やこゑかけて嬰に泣かれたる」橋本郁子 「サルビアを咲かせ老後の無計画」菖蒲あや 「百日草百日咲いて退屈す」梶本きくよ 「女来と帯纏き出づる百日紅」石田波郷 「ままごとに父の口真似柚子の花」米田俊則 「桐咲くやあっと言ふ間の晩年なり」田川飛旅子 「あんずあまさうなひとはねむさうな」室生犀星 「ハイビスカス最初の花は向うむき」平野 卍 「濡れるだけ濡れて帰る子てまりばな」坂石佳音 「夏薊に水鏡したる醜婦かな」長谷川かな女 「十薬やこの世に途中下車をして」篠田くみ子 「見てしまひたるは幽霊草の足」黒田冬史朗 (幽霊草:銀竜草、幽霊茸) 「クラス会にマドンナ二人捩れ花」北尾章郎 「萍に亀乗りかけてやめにけり」松本たかし (萍:うきくさ) 「うき草や今朝はあちらの岸に咲く」乙由 「苺ジャムつぶす過程にありつぶす」竹下しづの女 「茎右往左往菓子器のさくらんぼ」高浜虚子 「国家よりワタクシ大事さくらんぼ」攝津幸彦 「青林檎少女はいつも反抗期」大西幸子 「親竹とはぐれたるかに今年竹」小島みゆき 「筍に口上かきし使かな」長谷川かな女 「茄子苗を嫁のごとくに選びいる」三橋喜代 「駅長の机の下に茄子の苗」木村里風子 「定年の息子が箱に茄子を植う」道野かつ代 「水桶にうなづきあふや瓜茄子」蕪村 「採る茄子の手籠にきゆアとなきにけり」飯田蛇笏 「詩も川も臍も胡瓜も曲りけり」橋 關ホ 「人来たら蛙となれよ冷し瓜」一茶 「瓜畑に交番巡査来てをりぬ」多田薙石 「叩かねば気の済まぬもの西瓜買ふ」牛澤宣子 「新じやがののつぺらぼうを皿に売る」松崎鉄之介 「万有引力あり馬鈴薯にくぼみあり」奥坂まや 「玉ねぎを有るとも言へず又もらふ」北原かずを 「夏大根抜く能登に足ふんばつて」杉浦典子 「愚に還れと庵主の食ふや茗荷の子」村上鬼城 「殿は蕗さげてくる歩く会」真下耕月 「蕗を煮て男を残し出てきたり」阪野美智子 「紫蘇もんでゐる老人の地獄耳」飯田龍太 「万緑や仁王立ちなる屋根職人」平尾信子 「万緑や子育て出口まだ遠し」市村栄理 「バスの来る方をみな見て夏木立」長沢常良 「狛犬の金歯赫々木下闇」河野静雲 「緑蔭や聖者の顔して蛇使い」川崎澄子 「女ばかり刺す虫らしや草茂る」中田晴子 |