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アンダーカット
射出成形では金型に溶融した材料を流し込み、冷却固化させてから取り出す。このとき、金型は半分に割る。割る面のことをパーティング面と言う。成形品に薄らと跡が残っていることがある。これをパーティングラインと言う。
パーティングラインで割っても型から取り出せないことがある。このような形状のことをアンダーカットと言う。アンダーカットは避けたいが、避けることが出来ない場合がある。このような場合はさらに細かく金型を割る必要がある。このように細かく割った金型の部分のことを入れ子とかスライドコアなどと言う。このような金型では型が開くとまずスライドコアを成形品の取り出しの邪魔にならないところに移動させてから成形品の取り出し操作に入る。スライドコアは型開閉動作を利用して行われることが多い。
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アニール
日本語では「焼鈍」と言う。金属由来の言葉だが、プラスチックでも広く使われている。ほとのどのプラスチック成形品は内部応力を持っている。これが使っているうちに少しずつ緩和していく。それは悪いことではないが、その過程でバランスが崩れ、変形したり寸法変化を起こし、さまざまなトラブルの原因になる。す。これを防ぐためにはあらかじめ内部応力を減らしておく必要がある。内部応力は隣り合っている分子同士の位置が悪く、機会があれば安定な位置に動こうとする特性だ。
そのためには分子を動かしてそれぞれの分子がより安定な位置に動かしてやれば良い。そのためには温度を上げてやれば良い。この操作のことをアニールと言う。もっとも温度を上げすぎると融けてしまうので、応力が抜ける過程で変形が起きることがあるのでアニールを行う場合はあらかじめこの変化を織り込んでおく必要がある。
なお、結晶性の材料は分子間の結合が強いので、アニール処理の効果があまりないことがある。 |
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イオン交換樹脂
無機物にはイオン性のものが多い。これを吸い取ってしまうのがイオン交換樹脂だ。イオン性のものを取ってしまうので、たとえば水処理などに使われている。
イオンにはプラスとマイナスがあるので、イオン交換樹脂にも2種類ある。イオンを吸ってしまった樹脂は酸やアルカリで洗浄するとイオンを外れ、元の状態に戻り、再度使用することができる。
使い方は簡単だ。小さな粒状をしているイオン交換樹脂をタンクに入れておく。これにイオンを含んだ液を注いで攪拌すれば、液中のイオンがなくなる。処理が終わったら排水し、酸かアルカリを入れる。するとイオンは酸、アルカリと結合して、イオン交換能力が回復できる。この操作を連続的に行う装置も開発されている。 |
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異形押出(いけいおしだし)
プラスチックパイプはドーナツ状のすきまから溶融樹脂を連続的に押出して成形する。このような成形法を押出成形と言う。押出成形は樹脂の出口の形状を変えてやればいろんな成形品を作ることが出来る。一文字状のノズルであれば板が出来る。コの字型に押し出せばレールになる。その他、C型、I型、H型とさまざまな形状の押出が行われている。
複雑な断面形状の押出のことを異形押出と言う。特にサッシなど建材分野で広く使われている。成形材料から見ると、かなり難しい成形法だ。いろんな形状のノズルから出た溶融樹脂がノズルの形状を保っていることが難しいからである。形状を保つには粘度が高く、容易には流れないこと、温度が変化しても収縮が小さいことなどが望ましい。この要件を比較的良く持っている塩化ビニールが多く用いられている。 |
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移動側と固定側(金型冷却)
射出成形金型の熱的環境は移動側と固定側では全く異なる。固定側は高温のノズルに接触している。また、スプルーには溶融樹脂が高速で流れ込む。一方、移動側は高温の樹脂に触れる時間が短い。型構造で見ると、突き出し機構を設ける都合上、型板の後ろが空洞になっている。このため空気接触面積は移動側の方が大きい。 このように、移動側と固定側では熱的な環境が全く異なる。したがって、同系統の冷媒を直列でつなぐ冷却方式ではうまく行かないことが多い。できれば独立した温調系列を持ってそれぞれ独立して型温度や冷媒流量を設定できるようにすることが望ましい。 |
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インサート成形
プラスチックと金属の複合体を金型の中で作ってしまうことが出来る。このためには金属部品をあらかじめ金型の中のしかるべき場所に装着しておく。この状態で溶融樹脂を流し込めば樹脂が金属部品の周辺をおおって固まり、複合体が出来ると言うわけだ。このような成形をインサート(挿入)成形と言う。
取り付けネジの固定、回転軸の取り付けなどに広く使われている。磁石やコイルの挿入は電子部品の効率的な生産として定着している。
インサート物は金属だけではない。布や紙をインサートしてろ過器を作るとか、ガラスを装着して光学部品を得るなどの例もある。 |
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インフレーションフィルム
ポリ袋などを作るフィルムは円筒状をしている。これをつくるには溶融した樹脂を円筒状に押し出す必要がある。通常は上向きに押し出す。押し出された円筒状の樹脂の内側に圧力をかける。そうすると樹脂はまだ融けているから風船のように膨らむ。そして薄くなると冷えやすくなり、固まって筒状のままフィルムになる。これを折りたたんで巻き取れば連続的に筒状のフィルムが製造できる。
このようなフィルム製造法をインフレーション成形という。空気で膨らませて薄くするので、小さい装置で、比較的安価にフィルムをつくることが出来るので、包装分野では主流の製造法になっている。 |
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入れ子
射出成形の金型は型板に成形品に相当する空隙を彫りこんで製作される。空隙を削り出すのは簡単ではない。複雑な形状になると手に負えない。そんな場合でも、小さく分割すると、簡単な形状をしている場合がある。このため、空隙部分の一部または全体をバラバラにして部分ごとに作り、組み立てて金型を作ることがある。たとえば道路標識などに使われるダイヤ模様の反射板は小さいな三角柱を寄せ集めて作る。三角柱であれば研磨も容易だ。
バラバラの単純な形状をした部品のことを入れ子と言う。この構造の金型では入れ子の周囲にスキマが出来る。これが成形した時に空気の逃げ道にすることが出来る。これを意図的に行うことが多い。このため、入れ子の合わせ精度は慎重に設計する必要がある。 |
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ウエルド
射出成形では溶融した材料を金型の中に流し込む。成形品の形状が複雑だと流れも複雑だ。特に流れが合流するところが問題になる。合流した部分では材料の混ざり合いが不十分なので表面に薄い線が残ったり、性能が低下したりしている。合流部分をウエルドと言うことがある。表面に残った後はウエルドラインと言う。
ウエルドを消すには材料が充填中に冷えないようにしてやればよい。このため、流動中は金型を高温に保つことが行われる。金型が高温のままだと固まらないので充填が終わった後冷却してやる必要がある。これがうまくいかない。金型は鉄の塊だから、温度の上げ下げが簡単でないからだ。このためいろんな流儀が提案されている。
外観上のウエルドが消えても分子の絡み合いが起きにくいため、性能的には完全でないというデータもある。これを防ぐにはウエルドを貫く流れを作っていやる必要がある。これにもいろんなことが提案されている。 |
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エバール
ポリビニールアルコールと言う材料がある。水に溶け単体では糊や接着剤として使われている。水にとけない工夫をしたものはビニロンと言う繊維になっている。吸湿性があるので好都合だ。成形材料としても使われており、「水に溶ける成形品」として特殊な用途に使われている。もう少し汎用性を持たせるため、エチレンとの共重合も行われている。エチレン分の割合にもよるがポリエチレンとほとんど変わらない成形性を持っている。
この材料が大ブレークをした。フィルムにすると親水性があるため水蒸気は通すが他のガスは透過しない。この性質を利用して食品包装ではなくてはならない材料になっている。ポリエチレンと貼り合わせたり、多層にして、ビンやチューブに使われる。この材料は日本でしか作られていない。数少ない我が国が技術を独占している材料だ。 |
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塩ビ(ポリ塩化ビニール)
塩ビは嫌われものだ。これが不思議だ。それだけを燃やせば酸性ガスが発生し、炉を痛めたり酸性雨の原因になる。ところが今時対策が出来ていない炉は少なくとも日本にはない。難題といわれたダイオキシンも対策も順調に進んでいる。他に思い当たるのは可塑剤のホルモン嫌疑位だがこれは数ある可塑剤のうちの一部で、すでに使用されていない。
塩ビは性能が優れており建材では好んで使われている。可塑剤で硬さを変えると言う離れ業をこなす。ルイビトンが使いつづけているのはこのためだろう。それだけではない。重量の半分は塩素であると言う資源的な特徴がある。石油価格高騰が問題となっている昨今、石油依存が半分であると言うことは貴重な存在だ。
塩素はソーダバランスを言うのがあって、ソーダ系薬品を作ろうとすると複製してしまう、言って見れば副産物だ。石油依存の反省を込めて見なおされるべきプラスチックだ。
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塩化ビニリデン(サラン)
電子レンジ対応のラップは今までビニリデンフィルムしかなかった。便利さに注目して様々な複合フィルムが提案されているが本格的な普及は見られない。このビニリデンフィルムがアメリカと日本でしか作られていないことをご存知だろうか。ヨーロッパでは輸入品なので結構高価なため、あまり普及していない。そんなこともあって日本はこのフィルムの世界一の消費国になっている。アメリカ人に比べ、家庭での料理がまだ残っていることも理由のひとつだろう。
ビニリデンフィルムには塩素が大量に含まれている。このため、環境や健康に悪い影響を与えると言う指摘が多くある。このような指摘を考えるとき、市場の状況も考慮に入れる必要がある。
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エボナイト
プラスチックの歴史をたどっていくとエボナイトに行きつく。エボナイトはゴムに硫黄を入れ、加熱して作る。通常のゴムも生ゴムに硫黄を入れて弾力性を付与する。この操作を「加硫」と言う。加硫時に加える硫黄の量によってゴムの硬さを調整することが出来る。硫黄を大量に加えると硬くなり、弾力を失い「エボナイト」になる。プラスチックが登場する前は電気部品の絶縁体、筆記具などの日用品ではほとんど唯一の材料だった。
最近、エボナイトの語源を知った。「エボニー」は黒檀(こくたん)のことだそうだ。高級木材だ。確かにきれいに成形されたエボナイトは美しい。ちなみに、エボナイトが黒いのは炭素を補強材に添加していたためで、黒くないエボナイトも作れないこともない。しかし、性能、価格からいって炭素配合はリーズナブルだ。これを高級品の黒檀にちなんだ命名をしたのは大したセンスだ。
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延伸
PETボトルが軽量な理由は分子が延伸されているからだ。PET延伸とは鎖状の長い分子を力の加わる方向に引きそろえることを言う。分子が勝手な方向を向いているとあまり強くない。そこで好ましい方向に引きそろえると驚くほど強度が向上する。この技術は繊維で実現した。繊維の場合は繊維軸方向に引きそろえてやればよいが、フィルムやボトルの場合はニ方向に引きそろえてある。
引きそろえるには引っ張ってやればよい。ただし、引っ張るときの温度が重要だ。温度が低すぎると分子が動かない。高すぎると分子が勝手に動き出してしまい、引きそろえが進まないし、せっかく引きそろえてもすぐ乱れてしまう。
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押出成形
マカロニの作り方は想像出来るだろうか。円環状の口金から小麦粉をこねたものを連続的に押し出す。プラスチックでこれと同じ成形をすればストローやホースが出来る。このような成形法を押出成形という。原理から分かるように押出成形では断面が一定で長いものが出来る。断面は円形に限らない。細い口から出せば糸になる。偏平なノズルを使えばフィルムやシートができる。C型に出してカーテンレールを作ったりすることが広く行われている。サッシなど建材では複雑な断面をしたものが作られている。複雑な形状のものは特に異形押出と呼ばれることがある。
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温度制御
プラスチックの成形には必須の温度制御は典型的なフィードバック制御だ。対象物の温度を測定し、その結果で加熱の程度を加減する。古典的な制御は温度の上限と下限を設定しておいて上限に達するとヒータを切り、下限を下回るとヒータのスイッチを入れると言う方式が採られていた。昔使われていたサーモスタット(金属の熱膨張を利用してスイッチの入切を行う)はこの方式だ。この方式は精度があまり高くない。そこで考えられたのが時間帯比例方式だ。これは定期的に温度を測定し、測定結果と設定温度とを比較し、差を求める。この差に応じて次の測定時までのヒータ通電時間を設定する。例えば比例帯を±5℃の場合、設定値+5℃になると加熱を完全に止め、−5℃では通電する。その中間の場合は設定値からの偏差に応じて加熱を加減する。例えば測定温度が設定値より3℃低い場合は次の測定周期まで、80%の能力で加熱する。
精密な温度測定では時間帯を短くすれば良い。30秒ごとに制御するより毎秒制御した方が温度精度は向上する。最近はIC技術の進歩で、電力周波数ごとに制御できる方式もある。このような制御は実質電圧(電力)制御であるとみなすことが出来る。 |
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