パールカラー
 真珠の表面は非常に薄い膜が何層も巻かれているのだそうだ。これは貝の中に異物が入ると分泌物で異物を何重にも包んで刺激を避けるのだそうだ。この膜は各層の厚み光の波長と同じくらいの厚さなのだそうだ。光の波長に近い層が何層も重なっていると、それぞれの境界で光が反射する。反射した光は膜の厚さ分だけずれているため、干渉と言う現象が起きる。このため、見る角度によって特定の色が強調される。これが真珠の光沢なのだそうだ。  プラスチックでこれを実現するには薄い膜を何層も重ねて作ることは難しい。そこで、光の波長くらい小さい粒子をプラスチックに混ぜることが考えられた。

パーティング面
 キューピー人形を見ると、耳から、肩、腕を通って足からくるぶしまで両側に線が入っているのが分かる。これは表側と背中側の金型があり、これを合わせて型を作っているからである。このように成形品に残る金型合わせ部分の線のことをパーティングラインと言う。金型はこの線に沿って割れるので、割れる面のことをパーティング面と言う。
 キューピーをよく見ると、手の位置が不自然なのが分かる。異常に背中側に寄っている。これは型から成形品を取り出すことを考えればわかる。型を合わせた部分で成形品の断面積が最大である必要があるからだ。手が前の方にあると型を割っても成形品は前側の型についてしまい、取り出すことが出来ない。
 テトラポットを想像してみてほしい。このような複雑な形状になると型を1か所で割っても成形品が取り出せない。そのようなときは何か所かで割る。このためパーティングラインが複雑に何本か出来る。
半合成樹脂
 天然物だけでは加工しにくいので、化学的に処理して加工しやすくした材料のことを半合成と言うことがある。プラスチックの世界でもこの種の材料が先行した。それが「セルロイド」だ。セルロイドはパルプに硝酸を反応させてつくる。しっかり硝酸を反応させると「綿火薬」と言われる爆薬になる。プラスチックとして使う場合は反応させる商戦の量を必要最小限にして危険性を軽減している。セルロイドはアセトンに溶解する。また、樟脳を加えると可塑性が出て、さまざまな形状を簡単に与えることが出来るようになる。
 セルロイドはアメリカのハイヤット兄弟によって発明されたが、生産は日本がほぼ独占していた。それは当時、日本は台湾を領有しており、ここで採れる樟脳を使うことが出来たからだと言われている。 硝酸の反応量を押さえたとはいえ、燃えやすく戦後は硝酸を酢酸に代えた、アセチルセルローズに転換した。

非球面レンズ
 レンズの研磨を見たことがある。レンズを一つ一つ研磨している。しかも通常は球面しか磨けない。最近は非球面でも研磨可能になったが研磨コストが高価になる。最近はプラスチックレンズが増えているがその理由は非球面レンズが割合簡単に作れるためだ。プラスチックの場合は金型さえ作ればいくらでも成形出来る。したがって、非球面の金型でもたま手間暇かけてもペイする。
 非球面が出来ると収差が出ないため、レンズの枚数も減らすことが出来る。レンズ自身が軽い上、枚数も減らせるので大変な軽量化が可能になる。特にレンズを動かしているオートフォーカス機構との相性が良く、広く使われている。そんな事情があり、今やプラスチックレンズの生産量はガラスレンズを上回るレベルになっている。

ハウジング
 電器製品の外装を調べると面白い事実が分かる。最初は金属製だったり木製だったりする。量産が進むとプラスチック製になる。プラスチック化は慎重に進められる。壊れやすくなったとか、性能が落ちたと言われないようにしなければならないからだ。あらゆる使用状態を想定して設計されるため、過剰品質になりやすい。この状態が落ち着くと使われ方が分かってくるこのもあり、過剰な部分のそぎ落としが行われる。もちろん主眼はコストダウンだ。この一環でプラスチック材料も見直され、より安価な材料へのシフトが起きる。使用量の削減も進む。このため、ハウジングにはポリスチレンやポリプロピレンが多い。
 使用形態が変化すると高級材料に変化する場合もないわけではない。電話機、パソコンなどは携帯化によって落とす可能性が多くなったため、より耐衝撃性の高い材料へのシフトが起きた。
非接触式温度測定
 温度を測定しようとして温度計を対象に接触させると対象物の温度と温度計の温度に違いがあるため熱の授受が起き、対象物の温度も温度計の温度も変化する。従って熱電対を小型化することは応答性や精度を向上させるのに有効だ。しかし、これにも限界がある。そこで非接触の測定が注目される。物体は温度に比例して赤外線を放射しているので、このエネルギー量を測定すればよい。赤外線温度計と称されているものがこれだ。新型インフルエンザ流行以来、各空港に備え付けられている、体温測定装置はこの例だ。離れた対象、動いているものの温度が一点だけでなく、二次元分布として測定できるのは画期的だ。しかし、この方法には問題がある。表面の状態や色によって赤外線の放射率が異なるからだ。正確に測ろうとするとものごとに補正する必要がある。また、透明なものは裏にある物体の温度を測ってしまうこともある。
表面硬化
 携帯電話はプラスチック製なのでキズが付きやすい。おのため、表面にシリカが塗布されている。シリカはガラスや石に匹敵する硬さを持っている。実際の性能はそこまで行かないが傷つき防止効果が大きい。もっと深刻なのは透明性が求められる部品だ。レンズなど光学的な性能が要求される成形品ではキズがつくと曇ったり、乱反射が起きたりする。このため、大気に触れる部分には硬化処理が施されている。眼鏡用のレンズは軽いため、プラスチック製のものが多い。プレスチック眼鏡が普及したのは、すぐれた材料や成形自術が進歩したことも大きな力になったが、表面硬化がうまく行き、耐久性が向上したことの寄与も忘れてはならない。

微多孔膜
 フィルムに小さな孔を明けるとろ紙が出来る。大きさのそろった小さな孔が明いていればいろんなものの分離に使うことが出来る。これが微多孔膜だ。孔の大きさによっていろんな用途に使われる。血液中の尿素だけを通す膜は人工腎臓に使われている。ビールや酒から酵母を取り出(この場合は酵母の通らない孔が明いている)膜は生ビールや生酒の製造に使われている。水処理、食品の塩分調整など多様なところで使われている。
 膜の作り方には色々あるが、溶剤法という方法がある。これは膜になる材料を溶剤に溶かして作る。溶剤に溶かしたドロドロの液をガラスの上に薄く延ばしておいておく。すると、溶剤が揮発し、やがてガラスの上に薄い膜が出来る。この膜には小さな孔がたくさん明いている。この孔は溶剤が揮発するときの通り道だ。この現象はホットケーキやお好み焼きを焼いているとき、表面にたくさんの孔が出来るのと似ている。孔の大きさは溶剤の揮発のさせ方で孔の大きさを調整することが出来る。日本は孔の調整が大変上手く、高品質の微多孔膜を大量に生産している。

ヘジテーションマーク
 複雑な金型だと、材料の流れも複雑だ。材料は基本的には圧力損失の小さいところを探して流れる。流路の中に急に狭まったり広がったところがあると材料はそこで流速が変化する。極端な場合はしばらく止まってしまう。流れが止まると固化が進む。ひどい場合は表面が固まってしまうことがある。しかし、他の部分の充填が進むと圧力が上がり、再び流れ出す。このような現象が起きると、止まっていた間に固まった部分と新たに供給された材料がうまく融け合わない。ひどい場合はスジが見える。これをヘジテーションマークという。外観上問題になるだけではなく、性能の違いから割れやすくなったりする。
 悪いことにヘジテーションマークは成形品の厚みが変化したり、コーナーだったりする。このような部分は応力集中が起きやすい。ヘジテーションマークのトラブルを防ぐには、製品デザインの改良、成形条件の吟味が必要なことはもちろんだが、応力が集中しないように工夫してやること大切だ。

ヒンジ
 プラスチックの箱で本体とフタが一体になっている製品を見たことがないだろうか。ヒンジの部分は薄くなっており、簡単に開閉できるようになっている。使い込むとヒンジの部分が白くなり、壊れそうに見えるがなかなかこわれない。このような製品は融けた樹脂を金型に流し込んで作る。その際、ヒンジの部分はヒンジを交差する方向に樹脂を高速で流すようにする。すると樹脂の分子が流れ方向になびく。この状態で冷却固化すれば、ヒンジにはヒンジをまたぐ方向に樹脂がならぶ。樹脂の分子は柔軟だが外力で切れるようなことはない。したがってフタを開け閉めしても簡単にはこわれない。

プラスチックの王様
 強烈な特性からフッ素樹脂はプラスチックの王様と言われている。その特徴とは非粘着性、耐熱性、低摩擦係数、耐薬品性などである。このためフライパンのような調理具、軸受けやスライドに使われる。特に潤滑油が使えない、宇宙空間とか水中や高温にさらされる場所ではなくてはならない。耐薬品性は化学機器で能力を発揮している。しかし、世の常で万能のものはない。通常のプラスチックに比べ短所も少なくない。その最たるものは加工性だ。まず加熱して融かそうとしても融けない。溶剤を使うことも出来ない。ここで成形には特殊な技術を要する。エナメルにして他の材料に塗ろうとすると持ち前の「非粘着性」を発揮してしまいすぐはがれてしまう。おなじみのフフライパンはフッ素樹脂層の裏側は金属とのなじみが良く、表はいかなる食材もこびり付かせないと言う見事な二重性格を演じているハイテク商品だ。もう一つの泣き所は強度が余り高くない。これは非粘着性と関係がある。他の物質となじまないということは自身の分子同士もそんなに強い力で結合していない。このため、力が加わると分子同士が簡単に離れたりずれたりしてしまう。

プラスチックの女王様
 プラスチックには女王様もある。これは外観が美しいプラスチックと言う意味だ。アクリル樹脂が女王と呼ばれている。透明度がもっとも高く、屈折率も大きい。このため古くからガラス代替分野で使われてきた。特に航空機の窓には軽い点と割れにくい点が買われ、今でも使われている。テーブルウエア、レンズ、光ファイバーなどにも多く使われている。特に光が情報処理の重要な地位を占めるに至り、なくてはならない材料になっている。プラスチックはガラスに比べ成形が容易だ。特に非球面とか複合焦点レンズとなるとガラスでの実現は実現がきわめて困難な場合が多い。我々の身近な商品ではめがねがある。ほんの数グラムの違いだがプラスチックレンズの軽さは使用感を大幅に改善した。プラスチックは軟らかく、キズつき易いので、めがねの場合は表面に特に硬い膜で被って使われている。なお、我々がもっとも身近なガラスである、窓ガラスにはプラスチックは耐火災性が劣るため、特別な例以外には使われていない。

プラスチックペン
 フェルトペンでさらに細字がかけないかと言う要求が特に日本では強い。それに応えて登場したのがプラスチックペンだ。爪楊枝のようなプラスチックの細い棒の中心に米の字状(*状)の孔を貫通させている。これにインクを流す仕組みになっている。インクをスムースに流すためには孔の断面積は大きい方が良いが、毛細管現象を利用しているため、幅の狭い孔にしたい。このため、孔が米の字型になっている。細かい形状には様々な工夫がほどこされている。複雑な孔を精度良くあけるのは簡単ではない。また、先端は紙にこすり付けられるため、磨耗しにくい材料が選ばれている。

プラスチックボディ
 プラスチック屋は車のボディをすべてプラスチックにしたいと思っている。しかし、これは難しい。通常の乗用車はシャーシとボディが一体になっているからだ。鋼板の骨組みとボディは立体的に一体化されており、これ全体で強度を持たせるようにしている。この構造は少ない材料で強度を確保するのに大変適している。これの中にプラスチックを混在させることは極めて難しい。
 ところが最近、この構造に組み込まれていない部分が続々プラスチック化されている。つまり、ボンネット、フェンダー、ドアモジュール、テールゲート、ルーフなどだ。これらは開閉や取り外しが必要なため、別構成になっている。そこがプラスチック化のポイントだ。

プラスチックレンズ
 レンズはガラス製と言うのが常識かもしれないが、今は違う。生産量ではプラスチックレンズの方が多い。理由は安いからだ。金型さえしっかり作れば、同じものを短時間に大量に生産できる。しかも、仕上げが要らない。ガラスのレンズでは気が遠くなるような研磨工程がある。これが不要な利点は多い。特に最近活発な非球面レンズになると、個別に研磨工程を設定しなければならず、簡単ではない。特にこの分野でプラスチックレンズの優位性が発揮されている。
 軽量であることも重要だ。眼鏡はこれが買われてほとんどプラスチックレンズに変わった。カメラなどでも自動焦点でレンズを動かす必要のあるものはこの機構の簡易化、省エネのためにプラスチック化が進んだ。

ファスナー
 構造体は材質が何であれ、部品を組み立てることによって作られる。組み立てにはいろんな方法が使われるが、機械的な係止が一般的である。係止という言葉は耳慣れないが、ファスナーをいえば分かりやすいかもしれない。典型的な例はネジ止めだ。材料が木材の場合は、クギと言う便利なファスナーがある。金属ではネジ止め、ボルト止めが一般的だ。
 強度が劣り、ネジが緩みやすいプラスチックはネジ止めがニガテで、ネジの谷の部分からクラックが発達して破壊してしまう事故が時々起きる。もちろんクギも使えない。そんな中で、専用のファスナーが発達した。絵を使わないで説明をするのは難しいが、プラスチックの柔軟性を利用して、押し込むだけで係止ができるので大変便利だ。様々な形式が工夫されている。プラスチックで成功すると、今度はプラスチック以外の分野でも使われるようになっている。セメントクギとか、ベニヤクギなどとと言う名称でDIYのいろんな売り場で見かける。

フェルトペン
 ペンのインキを導く毛細管が1本しかないのに対し、フェルトペンは芯先全体に非常にたくさんの毛細管がある。このため、インキが広くゆきわたらせることが出来るため太い字を書くことが出来る。最初は本当にフエルトフエルトを使っていたようだ。今はほとんどが合成繊維のトウといわれている繊維の束を使う。繊維の束に樹脂をしみ込ませ固めて作る。繊維の束の構成や、樹脂のしみ込ませ方で芯の硬さとインクの出方を調整する。ここで太字用と細字用も作り分けられる。毛細管をスムースにインキが流れるためにはインキとのなじみが良いことが必要だ。従って使う繊維や樹脂はインキとの相性も考慮する必要がある。油性と水性では材料が違う。

粉末塗装
 塗料は一般には高分子物溶液で、塗装後溶剤を蒸発させれば高分子物だけが残り、強固な膜を形成する。しかし、溶剤は作業環境上あまり好ましいものではない。そこで溶剤を使わない塗料が考えられた。これにもいろいろな方法があるが、粉末を吹き付けるのもひとつのやり方だ。しかし、これだけでは塗膜にならない。粉末を連続化する必要がある。通常は熱を加え、粒子を溶融させる。これで連続的な膜にすることは可能だが、化学反応を起こさせ、より安定な物質に変えることも行われている。
  表面の光沢も問題になる。粒子がそのままの形で残っていると凹凸があるため、光沢が得られない。そこで粒子が溶融したとき、粒の形が崩れ、適度に流れて平滑になるようにしている。流れすぎると液ダレがおきてしまうので、大幅な流れが起きる前に化学反応が進んで硬化する必要がある。このタイミングがむつかしい。

ボトルキャップ
 ビンの栓は古くはコルクだった。それが王冠になって信頼性が圧倒的に高くなった。王冠は鉄板に13の凹凸をつけることにより、確実なシールをすることが出来る。この凹凸は12でも14でもいけない。王冠のプラスチック化が検討されたこともあるがうまく行かなかった。剛性が桁違いに違う上に、塑性加工が出来ないからだ。
 最近はプラスチック製のスクリューキャップが台頭してきた。初期のものはシール部に別の柔らかいプラスチックが使われていた。王冠が鉄板とコルクを使っていたことが尾を引いていた。今はシール部の形状を工夫し、ワンピースになっている。
 成形法は圧縮成形という古いタイプの成形法を採用している場合が多い。この方が生産性が高いからだ。このほかTEバンドと言う、封印機構がほどこされている。これは締めるときは壊れなくて、開ける時には切れる仕掛けだ。キャップと言えども大変な技術が込められている。

ホットメルト
 接着剤には溶剤が揮発して固まるものと、化学反応で固まる2液性のトラブルがもとがある。加えて第三の接着剤とでも言うべきものが最近多く使われ始めている。
 これがホットメルトと言われるもので、一種のプラスチックだ。プラスチックだから熱を加えれば融ける。ホットメルトは加熱して融けた状態で接着しようとするものに塗布する。接合部が冷えて樹脂が固まれば接合は完成する。温度は設定が正確に管理できるほか、上げ下げは迅速に行えるので工業的に広く使われている。
 複写機のトナーやアイロンで接着する洋服の芯地も類似の樹脂が使われている。

ポリアセタール
 ポリアセタールは最も金属に近い樹脂として、金属部品のプラスチック化の先頭に立っていた。金属製の部品に比べると製作が簡単だ。金型さえきちっと作っておけば後はいくらでも同じものを作ることが出来る。もう一つ大きい特徴は注油が要らないことだ。機械の中には油を嫌うものが沢山なる。例えばVTRではテープに油が付着したらスリップして回らなくなる。もし給油が必須の材料だったらメカ部とテープ走路を完全に分離する必要があったはずだ。このような例は食品やテープ、紙などに多くあり、もっぱらポリアセタールの部品が使われる。
 ところが最近はそのような用途が減少気味だ。例えば機械式のタクシーメーターは沢山の歯車が使われていたが、電子式になって全く使われなくなった。このように情報機器の多くは電子化によって、機械部品が不要になるからだ。

ポリアミド
 →ナイロン樹脂

ポリエチレン
 化学構造がもっとも石油に近いので、安価に供給でき、台所用品などでは主流の材料になっており、生産量も多い。技術が成熟しており、硬いものから柔らかいものまでつくり分けることが出来る。また、成形法が多様なのもこの材料の特徴だ。フィルムはレジ袋、ごみ袋でおなじみだ。ブロー成形の灯油缶やシャンプーボトルも身近だ。地震対策で水道管やガス管がポリエチレンに代替しつつある。硬い鉄管より揺れには強いのが面白い。繊維にするとたわしや網戸に使われている。
 我々の身近にはないが、タンク類もポリエチレン製のものがある。ごく大型になるとFRPに負けるが、数百リットルのいった大型ものまである。この大きさになると金型を作るだけで大変なため、簡易型で済ますことが出来る、回転成形と言う手法が使われる。プラスチック(熱可塑性)で最大の成形品はポリエチレンのはずだ。

ポリエステル
 PETボトルとフリースに使われるエステル繊維は化学的に見るとポリエステルと言う同じ素材が使われている。ポリエステルが最初に実用化されたのは繊維だ。このとき、理論的に好ましい性能を予測して化学構造をきめ、狙い撃ちして合成されたといわれている。繊維が出来てからは染色できないと言う問題があったが、先行していた、アセテート繊維用の染料が使えることが分かり、開発が比較的順調に進んだ。しかも、アイロン不要の高性能のため、普及も速かった。このため、「幸福な繊維」と呼ばれたほどである。
 幸福は繊維だけでなかった。フィルムはきわめて耐久性が高かったため磁気テープのベースに大量に使われた。ボトルにも使われた。また、成形品も性能が優れており、電気絶縁材料として使われている。繊維、フィルム、ボトル、成形材料と4分野を持つ材料は珍しい。

ポリカーボネート
 かつては衝撃に強いプラスチックとして有名で、ヘルメットをバットで何回もたたくコマーシャルがあった。このような分野でもつかわれてはいるは、最近は情報メディアとして注目されている。CDに始まるディスクがポリカーボネーとの主力分野に成長してきた。しかし、この分野が簡単に使えたわけではない。薄い円盤を精度高く製造することは並大抵のことではなかった。特に表面に刻まれている、情報を確実に転写することは大変難しい。
 もう一つはごみの問題だ。情報メディアはごみを極端に嫌う。ごみがあると情報が読めなくなったり、間違えて読んでしまうからだ。この分野では日本が強い。日本の物つくり風土が活きる用途だ。
 情報関連用途が順調に育ったおかげで、環境ホルモン嫌疑がもたれた、食器、乳幼児用品のでかいからはあっさり撤退することが出来た。

ポリスチレン
 第二次大戦でレーダー技術の格差が戦況を不利にしたと言われている。その格差の一つが絶縁材料だった。この格差を埋めるべく、ドイツから技術導入されたのが我が国のポリスチレン登場だったと言われている。
 ポリスチレンはCDのケースなどに使われている、透明の材料だ。特徴はまず透明で美しいことだ。また、比較的成形が容易で仕上がりも美しい。そして上述したように、まず電気絶縁性が優れている。このような伝統があるためか、電機製品で良くつかわれている。ワンウエーのコップなどの食器もスチレン製のものが多い。緩衝材や断熱材に使われる発泡スチロールはポリスチレンを発泡させたものだ。
 歴史が古いこともあって、いろんなものを混ぜて性能を変えることも盛んに行われている。特にゴム分を添加して、割れにくくした材料はハイインパクトポリスチレン(HIPS)と言われ、電気器具の外装にはなくてはならない材料になっている。

ポリマーアロイ
 プラスチックには多様な要請がある。これを満たすのに、いちいちポリマー設計から始めていては大変だし、経済的にも不利になる。このため、既製のポリマーを混合することが考えられた。通常、異種のポリマーは相溶性がない。このため、異種のポリマーを無理に混合すると裂けたり割れたりしやすくなる。これでは意味がない。そこでお互いに溶け合うような薬剤を添加する。これが複合材料製造のノウハウになっている。
 異種のポリマーを混合して新しい材料を作り出すことをポリマーアロイと言っている。合金になぞらえた命名だ。ポリマーアロイによって得られる性能は原料ポリマーの中間になることが多い。「アロイ」の名称にふさわしいような意外な結果が得られることはあまりない。にもかかわらず、新しいポリマーを合成するよりははるかに手軽に多様なニーズぬ応えることが出来るため、益々盛んになっている。