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マヨネーズチューブ
マヨネーズのチューブを分解してみよう。本体の部分を切り取り、注意深くはがしていくと3層に分かれる。内側と外側がポリエチレンで、中間にエバールと言う樹脂がサンドイッチされているためだ。ポリエチレンは安価で丈夫なので容器・包装分野では広く用いられている材料だ。中間のエバールは酸素を通さない性質がある。ただし、高価なので大量に使うことはできない。また、水分を透過する性質があり、単独では使いにくい。そこで、ポリエチレンで挟み込んで使っている。エバール層のおかげで酸素を通さないため、マヨネーズの腐敗は変色、変質を防いでいる。したりすることはない。なお、エバールは日本で誕生し、世界に供給されている。
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ムリ抜き
射出成形では金型に溶融した材料を注入し、固める。この成形法では成形品が金型から外れる必要がある。そこで成形品が固まった後で金型を割って取り出せるようになっている。複雑な形状のものだと何カ所かに割る必要があり、金型が大変複雑になってしまう。複雑になるということは経済的に不利になるだけでなく、型構造的に不利になり、耐久性が劣ったり、精度が悪くなったりする。
金型の構造を出来るだけ簡単にして、多少の引っかかりは成形品の方を変形させて抜いたしまうこともおこなわれている。これを「ムリ抜き」と称している。幸いプラスチックは弾力性があるので、型から取り出した後、形状がほぼ元の通りに回復する。もちろん、完全回復ではないので精密成形には適していない。どの程度ムリ抜き出来るかは材料や要求精度にもよるが、引っかかりが成形品の10%程度以下であれば可能性があると言われている。 |
メッキ
プラスチックは電気を通さないので直接電気メッキをすることは出来ない。メッキをするにはまず電気が通るようにする必要がある。そこで、最初に化学メッキで薄い金属の膜を成形品の表面に付け、電気が流れるようにする。こうすれば通常のメッキが可能になる。 しかし、単純に金属層が表面にあるだけでは実用的なメッキとは言えない。金属とプラスチックでは密着性が小さいためである。密着性を上げるには成形品の表面に凹凸をつけると良い。そこで、成形品を化学的に処理する。もっともメッキがしやすいと言われている、ABSは化学的な特性の異なる成分を混合されている。このため、細かく見ると化学的な性質の違った部分がある。これを利用して、ある部分だけ溶解しやすい薬剤で処理して成形品の表面に微小な穴を多数明ける。この上にメッキをすればメッキ層と成形品の接触面積が増加し、実用に耐える耐久性を得ることが出来る。 |
溶接
プラスチックは加熱すると融けるので、金属のように溶接することができる。接着剤のような他のものが介在しないので、うまくすれば高性能な接合が安価で実現できる。要領は溶接する部分だけを速く融かし、融けたらしっかり固定して冷やして固めることだ。私は摩擦溶接というのをやったが、接合部を強く摩擦して発熱させ、この熱を利用してプラスチックを融かす。この方法だと短時間で高温になり、他の部分が融けないので都合がよい。このほか超音波振動でゆすったり、レーザーを当てて発熱させたり様々な方法が工夫されている。 |
よごれ防止
プラスチック製品を長い間部屋に置いておくと表面が黒く汚れてくることがある。長く放置すると乾拭きくらいでは取れないくらい強固な汚れになっていることがある。これは、静電気のせいだ。これを防ぐにプラスチックの表面に静電気がたまらないようにしてやればよい。もっともか簡単な方法は表面に湿らせば良い。水は電導性があるので静電気を大気や周辺に逃がす働きがある。
表面を湿らすには室内の湿度を高くすればよいが、一年中高湿に保つことは難しい。このため、プラスチックの表面に水がくっつきやすくすることが行われている。具体的には界面活性剤を塗布すれば良い。成形品に塗布しても良いし、成形材料にあらかじめ混ぜておいてもよい。この処理は自分でも出来る。ホコリを十分除去した製品に繊維用の帯電防止スプレーを塗布すれば良い。 |
ラミネートフィルム
食品包装にプラスチックフィルムは欠かせない存在になった。言うまでもないことだが包装の目的は腐敗防止だ。腐敗を防ぐには原因になる菌の侵入防止、菌の生育に必要な酸素と水の遮断が有効だ。本当はどれかひとつが確実に達成できていれば腐敗は防げるが、安全を見れば用件を出来るだけ多く達成しておいた方が良い。これがなかなか難しい。特に酸素と水を同時に遮断することが出来ない。プラスチックの特性を調べて見ると酸素を通さないものは水を通し、水を通さないものは酸素が通りやすい傾向があるからだ。
そこで複数の材料を張り合わせたフィルムが作られる。これをラミネートフィルムという。特に日本では食品包装用に多く使われている。
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流通革命
かつて、商店街には八百屋、魚屋、酒屋、肉屋、パン屋、小間物屋など専門店が店を連ねていた。そしてそれぞれの店を回って買い物をするのが当たり前だった。販売も対面式、量り売りだった。これでは売る方も買う方も不便であると言うことになり、ワンストップ、セルフサービス方式を採るスーパーが登場した。これによる流通経費の節約ははかり知れない。これを実現するためには工場で販売単位にあらかじめ包装され、家庭で開封されるまで品質が保証される必要がある。安価で内容物の品質が維持出来、かつ取り扱いが容易なプラスチック包装資材が開発された。新聞紙、竹の皮、もみ殻などの資材に代わり、袋、フィルム、チューブ、トレ―、ボトルなどが次々登場した。包装技術の進展が流通システムの変換を可能にしたと言う見方もできる。技術の役割を考えるのに興味深い現象だ。 |
リブ構造
プラスチックは柔らかいため、構造部分に使おうとすると剛性不足になることが多い。剛性を上げるには厚みを増せばよいが材料費がかさんだり、重くなったりして得策ではない。そこで考え出されたのがリブ構造だ。リブとは肋骨のことで、成形品表面に肋骨状の突起を何本か設ける。突起は高いほど剛性が上がる。この方式を採用すれば重量をあまり増すことなく剛性を上げることが出来る。各種容器や外装に広く使われている。
金属製品や建築でもリブ構造をとることがあるが、工作機で加工する場合、リブを残して削り出すのは大変時間がかかるため、通常は後で溶接することが多い。この点、射出成形では型さえ準備できれば一気にリブ付き構造の成形品を得ることが出来る。さらに、リブが表面積を増やす効果があるため、冷却が速い。生産上も単純な厚み増加に比べ有利である。 |
リサイクル
プラスチックを加熱すると溶融するから、金属類と同様に廃棄プラスチックを溶融すれば再利用可能である。原理的にはその通りだが、実際に再利用しようとすると難しい。理由にはいろいろある。まず、使われているプラスチックの種類が多いことを挙げることが出来る。種類の違うプラスチックは融け合うことは難しい。このため、廃棄物を選別すると言う操作が必要になり、これに大変なコストがかかってしまう。
金属に比べ溶融温度が低いことも再利用を難しくしている。再生時、金属の場合は低くても数百℃に加熱される。この過程で多くの共雑物は分解される。ところがプラスチックの場合は200℃前後だろう。このレベルでは金属や有機材料などほとんどの物質は分解されることなく、再生材料に残留することになる。このため、再生材料は性能がそんなに高くない。
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離型剤
射出成形では金型の中に溶融樹脂を高圧で注入して固化させる。このため、樹脂が金型の壁面に強くこびりつく場合がある。このようなケースでは成形品が出来ても金型から取り出せないと言う問題が起きてしまう。このような場合、型壁に成形品がこびりつかなくする薬剤を材料に添加しておく。このような薬剤のことを離型剤という。離型剤にはいろいろあるが、界面活性剤の場合が多い。界面活性剤は無機物に親和性を持っている部分がある。成形すると離型剤はこの部分で金型にビッタリつく。するともう一方の油分がキャビティの内側にならぶことになる。この状態であれば溶融樹脂は油を引いたフライパンに入れられたようなもので、金型にこびりつくことはない。
離型剤の性能は温度、成形材料の種類などによって挙動が違う。このため、通常の射出成形用の材料では最も適して離型剤があらかじめ添加されている。 |
冷却水路(金型冷却)
射出成形の金型には冷媒流路を設け、低温の冷媒を流して、温度を維持することが行われている。冷媒としては水が使われることが多い。熱は温度差によって移動する。したがって冷却水路壁面が最も温度が低く、遠くに行くに従って温度が高くなる。また、冷媒は熱をうばうと温度が上昇するから、入口は低温で、出口の温度は高い。
金型はこの影響を受けた温度分布を持っている。通常、冷却水路は型設計の最終段階ですき間のあるところに設けると言う設計が多いが、このような安易なアプローチで良いわけがない。 |
レジ袋
容器リサイクル法の形成で、レジ袋への風あたりがさらに強くなった。そもそもレジ袋は省資源のエースとして登場した、プラスチック技術の精華だ。技術の説明は省略するが、現在使われているレジ袋の厚みは10ミクロンを切っている。今でも高級な店で使われている、それ以前の技術で作られた袋は薄くても50ミクロンはある。
プラスチック袋が資源の無駄使いだと言われ続けてきた。スーパバッグと称される紙袋のほうが地球環境にやさしいと言われていた時代もある。今のタイプのレジ袋の石油使用量は紙袋より少ない。紙袋は石油のほかに森林資源をも使用するから、画期的な環境負荷低減を達成した。これが日本で開発されたことは誇ってよい。この技術は環境対策にも資源対策にも大いに活用すべきであり、禁止するという発想はおかしい。 環境汚染というとなにかものを取り上げて、スケープゴートに祭り上げるのが常だが、元凶は人間の行動なり、考え方であることを忘れてはならない。
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レンズ
かつてレンズはガラス製と言うのが常識だった。しかし、今は違う。生産量ではプラスチックレンズの方が多い。理由は安いからだ。金型さえしっかり作れば、同じものを短時間に大量に生産できる。しかも、仕上げが要らない。ガラスのレンズでは気が遠くなるような研磨工程がある。これが不要な利点は多い。特に最近活発な非球面レンズになると、個別に研磨工程を設定しなければならず、簡単ではない。特にこの分野でプラスチックレンズの優位性が発揮されている。
軽量であることも重要だ。眼鏡はこれが買われてほとんどプラスチックレンズに変わった。カメラなどでも自動焦点でレンズを動かす必要のあるものはこの機構の簡易化、省エネのためにプラスチック化が進んだ。 |
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