サーモエラストマ−
 ゴムとプラスチックは違う。コムのような弾性を出すためには架橋と言う操作をしなければならない。ところが分子構造の工夫でプラスチックで反発弾性の高いものが出来るようになった。すると通常のプラスチックのように成形しただけでゴムと同じ性能のものが出来る。架橋の必要がないので大変便利だ。このようなプラスチックのことをサーモエラストマ−とか単にエラストマ−と呼ばれている。ではゴムはエラストマ−に完全に置き換わってしまうかと言うとそうでもない。架橋されていないから高温になると溶けてしまうからだ。つまり耐熱性はそんなに高くない。
 それでも、プラスチックと同じ装置で加工できる気軽さから、熱のかからな電気製品や自動車部品などに多く使われている。

サーマルショック
 プラスチックやセラミックなどの非金属材料は熱伝導が悪いうえ、熱膨張係数が大きい。このため、急激な温度変化を受けると熱膨張のアンバランスが起き割れることがある。ガラスを急加熱すると割れるのはこのためである。
 割れやすさを調べるための試験が「サーマルショック」だ。プラスチックの場合、マイナス30℃と120℃の箱を準備しておき、試料を箱に入れ変えることにより試験する。箱の温度、保持時間、入れ替え時間などは用途や材料によって異なる。
 サーマルショックは実用試験としての意味が大きく、テストピース単品試験をしてもあまり意味がない。特に金属など他の材料と組み合わせた製品の場合は熱伝導や熱膨張が異なるため、実用試験として重視される。

射出成形
 プラスチックの成形で最も広く使われている成形法だ。射出はインジェクションの訳語だ。注射を意味する。このことから分かるように、型の中に融けたプラスチック材料を細い孔から金型の中に注入する。金型は製品の形にくりぬかれており、射出された材料を冷やして固めればどんな形状のものでも作ることが出来る。もっとも製品が出来ても取り出せなければ意味がない。金型はどこかで割れる必要がある。しかも割れたところは面積が最大でないと取り出せない。取り出せる要件は他にいくつもある。
 融けた材料が入ってくる時、金型は既に低温に維持されている。そして、その温度を維持して固体の成型品が得られる様になっている。うまく取り出せることと、速く均一に冷えるようにすることが型設計のポイントだ。

射出圧縮成形
 射出成形で溶融樹脂が金型の中で固まる時、収縮が起きる。すると金型と同じものが出来なくなってしまう。精密な成形をするためには溶融樹脂の圧力を出来るだけ高くして収縮するのを防いでいる。しかしこの方式には限界がある。加圧している成形機と金型はゲートでしかつながっていないから、ゲート付近は圧力をかけることが出来るがゲートから遠い部分を押えることが出来ない。
 そこで考え出されたのが「射出圧縮成形」だ。この成形法では溶融した樹脂を型に流入させるとき、金型を少し開いておく。流入が終わった適当なタイミングで金型歩とんラいの状態にする。すると金型全体に強い圧縮応力が加わるため、型の前面にわたって収縮を抑えることが出来る。CDのように薄くて広い面積を持っている成形品に適した精密成形法だ。

小ロット成形
 わが国は乗用車、OA機器、音響機器など高度な組み立て商品に特化することによって経済発展を遂げてきた。このことが生産技術体系にも強く影響をしている。高品質な組み立て商品を安価に大量に生産することにかけては今なお他に追従を許さない。しかし、特異としているこの分野も安価な労働力には勝てず、生産工程の空洞化が進んでしまった。
 量産品が後発者にキャッチアップされたら、より高級な少量生産品に特化するのが常識だが、これが出来ない。出来ない理由は明らかだ。前記したような特定の特性を持った商品の生産に特化しすぎたためだ。高級品も中級品も同じような発想で工程が組まれる。生産ロットが小さくなってもそれに応じた体制を組むことが出来ない。この克服が今後の課題だと思う。この点に限れば量産品を日本に奪われ、散々苦労を経験したったドイツをはじめとするヨーロッパ諸国に学ぶことはたくさんある。

シート成形
 プラスチックの板やシートはTダイ法という方法で作られる。プラスチック原料は加熱すると液状になる。これを一文字状の隙間から連続的に押し出せばシート状になる。これを表面が冷たいローラーで挟み込む。溶融プラスチックが押し出される速度とローラーの回転速度がバランスしていれば、厚みが一定でローラーで表面が整えられたシートを連続的に作ることが出来る。出来上がったシートが厚ければ、適当な長さに切って積み重ねていく。薄いシートはドラム状に巻き取れられる。
 なお、厚みの薄いものはフィルムといわれるが基本的には同じ方法でつくることが出来る。

真空キャビティ
 多くのプラスチック製品は金型の中に熔融した材料を流し込んで成形する。熔融した材料は粘度が高く、様々な工夫が行われる。これに気を取られて、形の中に空気が入っていることを忘れてしまうことがある。空気は粘度も低いが問題になることがある。邪魔をして材料が入らないところが出てくる。空気を抱き込んで泡だらけの成形品が出来ることもある。金型に残り、逃げ場を失った空気は断熱圧縮され、高温になり、樹脂を分解することもある。
 このように様々な悪影響を及ぼす空気を型の外に逃がしてやる溝のことをガスベントと言う。空気と樹脂では粘度が異なるため、通常は問題ないが、溶融樹脂がベントに入り込んでバリになることもある。精密な成形品では成形前にキャビティ減圧しておく場合もある。このような方法を真空キャビティと言う。

真空蒸着
 プラスチックは電気を通さない。したがって電気メッキが出来ない。そこで考え出されたのが蒸着と言う方法だ。この方法では成形品を真空容器の中に入れる。ここで空気を抜きながらアルミニウムの蒸気を発生させる。するとこれがプラスチックの表面に沈積し、表面が銀色になる。このままでは不安定なので、表面に保護膜をつければ銀色のプラスチック製品が出来上がる。アルミの層は極めて薄いため柔軟性を損なわないと言う特徴があるたため、包装フィルムなどにも広く使われている。我々が銀紙だと思っている、お菓子の包装などの多くは蒸着フィルムだ。
 保護膜を黄色に着色すれば金色になる。同じ銀色でもわずかに青もがかかったものはニッケル、赤みのかかったものはクロームといろんな金属の光沢を似せることが出来る。化粧品容器などではこんな技も使われている。

真空キャビティ
 多くのプラスチック製品は金型の中に熔融した材料を流し込んで成形する。熔融した材料は粘度が高く、様々な工夫が行われる。これに気を取られて、形の中に空気が入っていることを忘れてしまうことがある。空気は粘度も低いが問題になることがある。邪魔をして材料が入らないところが出てくる。空気を抱き込んで泡だらけの成形品が出来ることもある。金型に残り、逃げ場を失った空気は断熱圧縮され、高温になり、樹脂を分解することもある。
 このように様々な悪影響を及ぼす空気を型の外に逃がしてやる溝のことをガスベントと言う。空気と樹脂では粘度が異なるため、通常は問題ないが、溶融樹脂がベントに入り込んでバリになることもある。精密な成形品では成形前にキャビティ減圧しておく場合もある。このような方法を真空キャビティと言う。

スクリュー
 ほとんどのプラスチック用成形機にはスクリューと言われる大きなネジ状の棒が入っている。スクリューを回すとプラスチック原料はネジの谷のところに沿ってネジの先端に向けて送られる。この間、外部から熱を受けて溶融させる役割をする。すなわちスクリューはプラスチック原料の送り装置だ。
 スクリューには様々な仕掛けがある。ある部分は溝を深くする。あるいはわざと山を切ってみたりする。形状の工夫によって、プラスチック原料に随伴してくる空気を除去したり、良くかき混ぜることにより均一な溶融プラスチックが得られるようにしている。
 さらに面白いのは2本のスクリューをかみ合わせて、回転することも行われている。こうすることにより、送りを確実にしたり、混合を促進させたりする。

スライドコア
 プラスチック成形品は成形が終わったら金型から取り出す必要がある。通常、金型は2つに割れ、成形品が取り出せるようになっている。複雑な形の成形品は金型を割ったくらいでは取り出せないことがある。成形品を取り出そうとするとき引っ掛る部分をアンダーカットと言うことがある。成形品を取り出すとき、金型の一部を引っ込めて取り出せるようにすることが出来る。金型のこのような仕掛けをスライドコアと言う。型が閉じたときには元の位置に引っ込んで金型の一部を構成し、高温高圧に耐える必要がある。このため、スライド部で広く使われている、ボールベアリングとか潤滑油が使えない。 作動が確実で、耐久性を持たせることは簡単ではない。

ストリッパープレート
 射出成形では金型の中に溶融した材料を流し込み、これを冷やして固め、型を割って取り出す。型溶融樹脂は高温、高圧で金型の中に射出されるので、型を開いても成形品は金型にこびりついており、簡単には外れない。そこで型の内側から棒を突き出して成形品を押し出してやる。この棒のことを「突き出しピン」と言う。この方法だとピンの頭の跡が成形品にのこる。これを防ぐには成形品の平面の部分を見つけて、その部分全体を突き出す。この部分をストリッパープレートと言う。コップのようなものだと縁全周で付き出す。この場合、ストリッパープレートは円筒状をしている。
ストレスクラック
 プラスチックの破壊原因は応力だけでなく温度、薬品、光などがある。これらは単独で破壊原因になるが、複合するとより強力にプラスチックをおかす。このことを複合負荷と言う。その中で、応力と薬品との組み合わせがストレスクラックだ。これにはプラスチックの種類ごとにいろんな薬剤が知られている。たとえばポリスチレンは何もない状態ではアルコールに耐えるが、これに応力が加わると小さな応力でもクラックが発生することがある。クラックの発生はアルコール濃度、応力レベル、温度などが複雑に影響する。
 この現象で重要なことは多くのプラスチック成形品は残留応力を持っている点である。残留応力が大きい場合は全く外力を加えないのにクラックが発生することがある。この性質を利用して残留応力の簡易検出法にされている場合さえある。

生物由来プラスチック
 生分解性プラスチックは土中の水分と酸素、バクテリアによって分解する。注意しなければならないことはこれらは大気中にも存在するてんである。したがって大気中でも分解が進む。この特性から電気製品や車など長期間使用されるものに適用しようとすると分解を抑える添加剤を使用してある程度の年数性能が劣化しないようにしなければならない。その結果、使用後、廃棄されても添加剤が活躍して生分解を阻止する。このため、生分解性が損なわれてしまう。
 それでは、何のための生分解性プラスチックか分からなくなってしまう。そこで考えられた理屈が「生物由来」だ。確かに生分解性プラスチックの多くは植物原料から作ることも出来る。ここから、石油資源節約をしていると訴えたいのだろう。生物原料は多くは食糧資源と競合する。食糧問題が石油資源問題より軽いとは言い切れないから、地球環境に貢献しているとは必ずしもいえないと思う。

生分解性ポリマー
 環境問題の切り札のようにいわれているが、本当にそうだろうか。生分解性を発現させるには高分子鎖に酸素を導入する必要があり少なからぬコストが発生する。コストは環境負荷とみなすころができる。そして出来たものは現行のポリマーに比較して材料としての性能は劣る。生分解性だから、耐久性も極端に悪い。ある自動車部品の開発では、耐久性を高めると生分解性が損なわれるというジレンマに陥った。結局生分解性を犠牲にせざるを得なかった。
 期待されている、包装材分野でも問題が多い。特に食品包装では菌の遮断力がないため、在来材料との複合化が必須だ。また、大気中の水分、酸素、雑菌でも分解が進むから「鮮度管理」と言う新たな手間が発生する。
 私がもっとも懸念していることは、大量に出回った場合、好プラスチック菌が異常繁殖し、菌相が変わってしまうことだ。これは環境破壊の何ものでもない。

成形サイクル
 射出成形などでは、材料を融かす、型に流し込む、冷却する、の3段階を繰り返すことによって成形品を得る。この一周期のことを成形サイクルと言う。日用品なら大きいもので1分程度、小さいものは10秒くらいかかる。通常、サイクルのうち冷却が最も時間が長いので冷却を強化すると成形サイクルが短縮できることが多い。経済的に見れば成形サイクルは短い方が良い。しかし、あまり速く成形しようとすると、製品の寸法精度が低下したり、割れやすくなる。このため、経済性と性能のバランスをとる成形サイクルが追求される。ブロー成形など他の成形法でも同じ意味で使われる。

繊維
 合成繊維用の材料はアイロンに耐える耐熱性、延伸が可能な結晶性、そして染色性が必須の要件だ。この中の耐熱性はエンジニアリング樹脂と共通だ。エンジニアリング樹脂には結晶性のものと非結晶性のものがある。このようなことから、合成繊維とエンジニアリング樹脂とは同じ材料が使われていることが多い。ナイロンとPETはその例だ。
 合繊のパイオニアDuPontがエンプラでもパイオニアだ。ナイロンは同社のブランドが普通名詞化した言葉であり、「エンプラ」はDuPontの造語であることはこのような歴史的経緯から必然性がある。

切削
 プラスチックは融かして成形するため、切削することはあまりない。切削してみると、結構難しい。これは刃物との摩擦熱で表面が融けてしまうことがあるためである。これを防ぐには刃を切削した後の面にできるだけ接触しないようにすればよい。これは刃の形状を調整すれば達成でいる。もう一つの問題は、金属を切削するときに比べ、刃の摩耗が意外に速い点だ。これは金属を切削する時、刃の表面に固い皮膜ができるためだ。プラスチックはそんなわけにはいかない。柔らかいと思って油断をすると大変なことになる。

接着剤選定
 壁に両面接着剤付きのフックを長く使っていると、突然はがれることを経験されたことはないだろうか。これは掛けたものが重すぎて接着剤が少しずつ変形し、やがて剥離してしまったためである。両面接着剤はゴム系の接着剤が使われており、長い時間連続的に力が加わっていると、小さな力でも変形が進む。このため、変形が大きくなりやがてはがれてしまうと言うわけだ。力が連続して加わる用途にはエポキシ樹脂のような硬い接着剤を使えば良い。もっとも固い接着剤には両面接着性はない。
 固い接着剤にも弱点がある。振動が加わる用途ではクラックが進展して破壊することがある。柔らかい接着剤では振動で割れるようなことはないので、このような用途ではゴム系の接着剤が適している。

セロファン
 セロファンは我々の周りではほとんど見かけなくなった。セロファンだと思っているものもほとんどがプラスチックフィルムだ。多くはポリプロピレン製だ。ポリプロピレンのフィルムは通常はセロファンより柔らかく、透明度も低い。これを2軸延伸すると腰が強くなり、セロファンそっくりになる。このフィルムのことをOPPと言う。セロファンとOPPでは性能はかなり違う。OPPは水分をほとんど通さない。防湿性が必須のタバコの包装に使われている。セロファンは酸素を通さないと言う特徴があり、ラーメン袋ではポリエチレンフィルムと貼り合わせて使われる。