太陽系オリエンテーリングのやりかた


   ―――― 2004年  太陽系オリエンテーリング の記録 ―――――


  ふだん何げなく目にしている都市ガスの丸いガスタンク。
 もしも、太陽があのガスタンクの大きさだとしたら、地球や他の惑星は
 どのくらいの大きさで、どれくらい離れたところにあるのだろう。
























  数字だけでは分からない太陽系の大きさを自分の目で確かめるた
 めに、私たちは『太陽系オリエンテーリング』と名づけた惑星探検に
 チャレンジしました。

  その様子を紹介しながら、
『太陽系オリエンテーリングのやり方』を
 まとめてみました。夏の一研究で何をやろうか悩んでいる君、スケール
 の大きな研究で、みんなをビックリさせちゃおう。

 

★ はじめに

  太陽系オリエンテーリングを安全にするために、守ってもらいたい
    ことを書きます。

  ● 望遠鏡、双眼鏡、望遠レンズのついたカメラでは、絶対に本物の
    太陽を見ないこと。太陽の光で目が焼けてしまい、目が見えなく
    なります。(失明します。)

  ● 無断でガスタンクのある施設や、小学校などの建物にはいって行
    かない。必ず会社の人や学校の人に、こういうことをしたいと話し
    て、許可をもらってから行動しましょう。




1.最初に太陽になるものを決めよう

@ 太陽になるものは、街の中にいくつかあります。たとえば アドバルーン
  とか、ビルの上の給水タンクとか、大玉送りの玉、とかね。
   でも太陽系オリエンテーリングをするには、太陽になるものの直径が
  分からないと始まらないので、直径が計れるものを選びましょう。



A てっとり早いのが都市ガスのガスタンク。 ちょっと大きな町にはきっ
  とあるはずです。
ガス会社の人に、こういうことをしたいので 直径を教
  えてくださいと頼めばきっと教えてくれますよ。

  

B 今回、私たちは長野駅の近くにある、直径 23mのガスタンクを選びました。


C ガスタンクもあんまり大きすぎると、太陽の周りを回る惑星も大きくなって
  まうので、
直径 20mくらいのが理想的です。



D 近くにガスタンクがないときは、学校の校庭にラインマーカーで円を描いても
  いいです。
でも、ちゃんと先生に話してからやりましょう。 直径 22mの円に
  すると、地球は作りやすい大きさにな
ります。




2.計算しよう

直径 (km) 軌道長半径 (km)
太 陽 1,392,000
水 星 4,878 57,890,000
金 星 12,102 108,160,000
地 球 12,756 149,600,000
3,474 384,400
火 星 6,792 227,990,000
木 星 142,984 778,360,000
土 星 120,536 1,426,710,000
天王星 51,118 2,870,930,000
海王星 49,528 4,498,260,000
冥王星 2,340 5,906,270,000
@ 計算をする前に本物の太陽系のデータを
  調べよう。
  今回のデータは科学雑誌 『ニュートン』 の
  中からお借りしました。

   (解説)

   
「軌道長半径」(きどう・ちょう・はんけい)
   というのは、
だ円を描いて太陽の周りを
   回って
いる惑星軌道の長い方の半径と
   いう
ことです。
   


A 最初に「縮尺(しゅくしゃく)」の計算をしま
  す。
縮尺というのは、本物をどのくらい縮
  めてあるかを示す分数で、「何万分の1」
  というふうに表わします


B 本物の太陽の直径は 1392000 km(139万2千キロメートル)、ガスタンクの
   直径が 23mだから、
「縮尺」は次のように わせます。


          ガスタンクの直径          23 m           1
   縮尺 = ────────── = ──────── = ────────
         本物の太陽の直径      1392000 km     ???????



C ??????? は、次の割り算で答が出ますね。


            60521739
        ────────    →  だいたい 6000万分の1  ということです。
   23 m ) 1392000000 m


   (注意)

    縮尺はあまり細かな数字にすると、このあ
    との
計算が大変なので、何千何百万分の
    1くらいの
ざっくりした値でいいです。


D 縮尺が計算できたら、この縮尺にもとづいた
  惑星たちの大きさと、太陽からの距離を計算
  しましょう。



    (大切なこと)

    パソコンや電卓を使えば簡単に答が出ちゃう
    けど、それは検算用に残しておいて、
ここは
    筆算でやってみよう。
り算の力がつくぞ。




E 水星の計算例です。


   ★ 直径は・・・        8.13 cm
               ──────
     60000000 ) 487800000 cm



    太陽からの距離は・・・ 0.964 km
               ──────
     60000000 ) 57890000 km



F 全部の惑星の計算が終わったら、ひと休み
  して、計算結果を一覧表にまとめてみよう。







3.6000万分の1の惑星を作ろう


@ 惑星作りにピッタリなのが、これ
          ↓



   これは手工芸の「手まり」の芯にする発泡スチ
   ロールのボー
ルです。手工芸屋さんではいろ
   いろなサイズのボールを売っていますので、
   必要な大きさに近いものを買ってきます。
    

 A いくつかの店を回ってみましたが、一番大きな
   サイズはどうやら
20cmのようですので、それ
   以上の大きな惑星は
絵を描くことにしましょう。




B 6000万分の1だと地球は 21.3cmなんですけど、しかたがないので
  20cmのボールを使いました。
だいたいの大きさがわかればいいので、
  このくらいの誤差(ごさ)は大目にみましょう。(微笑




C 惑星の写真は 『ニュートン』 なんかに
  のっていますので、それを参考にして
  ポスターカラーで色をぬります。


 (注意)

  ポスターカラーは水性のものを使い
  ます。油性だと
発泡スチロールが溶
   けてしまうよ。


 (色ぬりのコツ)

  ぬる前にボール全体を細かいサンド
  ペーパーでこすっておくと、色がよく
  つきます。





 D 20cmをこえる惑星たちを作れるような、大きな
   球はなかなか見つからないので、大きな紙など
   に絵を描くことにします。


 E 天王星、海王星は
模造紙や大きなサイズの
   障子紙を使うと描けますが、木星や土星にな
   ると直径 2m以上なりますので、できれば
   使い古したシーツやカーテン ぬいあわせ
   てキャンバスにすれば丈夫になります。



F  とは言うものの、実は今回の太陽系オリエンテーリングでは大きな布が
  手にはいらなくて、木星と土星は
描けませんでした。あらためてチャレンジ
  しようと思っています。





4.惑星たちは太陽からどれくらいはなれているのだろう


@ 太陽となるガスタンクの位置が分かる地図を用意します。私たちは

   18,000分の1 (1万8千分の1) の長野市の地図と

  250,000分の1 (25万分の1) の長野県の地図を使いました。


A ガスタンクを中心にして、それぞれの惑星と
  太陽との距離を半径にした円を書きます。
  地図の端には距離を表わす目盛りがついて
  いるので、それを使ってキロ数を計りましょう。


B こうして書いた円は惑星の軌道というわけでは
  ありません。実際の惑星は 「真円」 ではなく
  「だ円」の軌道を回っています。冥王星なん
  かは、海王星の軌道の内側にはいりこむほ
  どずれた「だ円」軌道を回っています。


C でもまあ太陽系オリエンテーリングでは、惑星
  が太陽からだいたいどれくらい離れているの
  かイメージできればいいことなので、この円を
  惑星の軌道と呼びましょう。
  ・・・誰にも迷惑かからないしね。


D では次にこの軌道の上にある惑星ポイントを探します。
  

  惑星ポイントとは、惑星軌道の線の上にある目立つ建物です。
    できればみんなが知っている公共施設がいいですね。私たち
    は軌道の線の近くにある「小学校」をポイントに選びました。

  ★ 本当はこの惑星ポイントから、ガスタンクが肉眼で見えると
    いいのですが、長野駅近くにあるガスタンクは周りをビルに
    囲まれ
ていて、遠くからはなかなか見えないのです。

  ★ 地球ポイントからガスタンクが見えれば、日食の実験ができ
    るんですけどね、、、。




5.さあ、太陽系オリエンテーリングに出かけよう


@ 今までやってきたことは太陽系オリエンテーリングの
  準備作業です。
  「えー?ここまでが準備作業??」
  はい、実はこれからが本格的な太陽系オリエンテーリ
   ングです。

A 6000万分の1の惑星たちと地図とを持ち、ガスタンクを
  スタート地点にして、水星ポイント、金星
ポイント、地球ポ
  イント・・・
と、訪ねて回り、それぞれの場所で記念撮影を
  します。



 B 火星ポイントくらいまでは歩いて回りたいもの
   です。
   木星から先のポイントは、バスや電車を使っ
   たり、お父さん、お母さんに車で連れてっても
   らわないと、ちょっとたいへんですね。


 C 冥王星ポイントまでたどり着いたら、太陽系オ
   リエンテーリングは終了です。





 D さあ、みなさん、太陽と惑星たちの大きさの
   違いがわかりましたか?

   惑星たちが、太陽からどれくらいはなれた
   ところを回っているのか、頭の中でイメージ
   できるようになりましたか?

   そして、もっともっと地球のことや宇宙のことを
   
知りたくなりましたか?

   もしそうだとしたら、太陽系オリエンテーリン
   グは大成功!」です。




5.しあげ

@ 最後に、それぞれの惑星ポイントで写した写真を
  地図の上にはりつけると、わかりやすくなるし、
  記念にもなります。

A 紙や布に描いた惑星は、壁にはるとすてきな壁紙
  ポスターになりますし、発泡スチロールの惑星は、
  糸でつるしてモビールにすると、宇宙に浮かぶ星らし
  くなり、あなたの家は一気に『宇宙家族ロビンソン』!





6.応用コース

@ 太陽系オリエンテーリングをやっていると、あんなこともしてみたい、
  こんなことしたら面白そうなんてことがいろいろ思い浮かびます。
  もしも時間があったら、みなさんもチャレンジしてみてください。



A 「惑星ポイント認定証を送っちゃおう。」

  今回みたいに小学校を惑星ポイントにしたら、ちょっと厚い紙に写真をはって
  認定証を作って、その小学校の天文部に送ってみよう。「貴校を水星ポイント
  に認定します・・・」なんてね。
  太陽系オリエンテーリングの仲間の輪がひろがるかもね。

  


B 「光の速度を実感してみよう」

  6000万分の1の地球を作るときに、ついでに月を作ってみました。
  月の直径は 3474 km、地球からの距離は 384400 km です。
  光の速度は
秒速 30万キロですから、地球から月までは約 1.3秒で届きます。
  地球と月を縮尺にあわせた距離において、さあ君もこの距離を光と同じ 1.3秒
  
走りぬけてみよう。
  ちなみに月面着陸に成功したアポロ11号は、地球から月まで行くのに4日間
  かかりました。














C 「地球の空気の厚さを調べてみよう。

  私たちが生きていられるのは、地球に空気があるからです。ではこの空気の厚さは
  どのくらいあるのでしょうか。6000万分の1の地球を手にとって、空気の厚さがどれ
  くらいあるか想像してみてください。

  1cm?
  3cm?
  10cm?

  地球を包む空気は上空に行くほど薄くなりますが、地表から500kmくらいまでは
  存在し、その高さまでを「大気圏」(たいきけん)と呼んでいます。

               1
   500km × ────── = 8.3mm
             6000万分

  空気があるといっても、地上 400kmに浮かぶ宇宙ステーションやスペース
  シャトル
を見ても分かるように、そこはほとんど真空い近い空間です。

  「ああ、そこには空気があるのか」と実感できるのは、スペースシャトルが地
  上に戻ってくるときに、空気とのまさつ熱で機体が燃え出す地上から100km
  くらいの高さでしょう。

  流星もこのくらいの高さで、空気とのまさつ熱で燃え出して光り輝きます。
  100kmというと、
6000万分の1の場合、約 1.7mmになります。

  セロハンテープを短く切って、1.7mmの厚さになるまではり重ねてみると
  空気の厚さが実感できますよ。


  (参考)
      ジェット旅客機の飛ぶ高さ =地上から    10km(→ 0.17mm)
      オゾン層の高さ       =地上から    25km(→ 0.4mm)
      建設中の宇宙ステーション=地上から   400km(→ 6.7mm)
      気象衛星ひまわり6号   =地上から 36000km(→ 60cm)
  

D 「地球以外の惑星の衛星(えいせい)も作ってみよう。」

  地球には「月」という名前の衛星がありますが、他の惑星にも月と同じような
  衛星がたくさんあります。

  火星  = 2 個
(フォボス、ダイモス)
  木星  = 61個
(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、、、)
  土星  = 31個
(タイタン、ディオネ、レア、、、)
  天王星= 27個 (ミランダ、アリエル、チタニア、、、)
  海王星= 13個 (プロテウス、トリトン、、、)
  冥王星= 1 個 (カロン)

  雑誌「ニュートン」から、直径や軌道長半径のデータを調べて、惑星と同じように
  計算して作ってみよう。根気のいる仕事だけど、できたらすごいぞ。
  「61個も作れないよ!」っていう人は、王星のカロンだけでも作ってみてください。
  これはおすすめですよ。






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