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実は二児山(ふたごやま)は一度登りに来ている。たかが低山と甘く見た結果、果たせなかった。この山は家からはるか遠くに特徴的な双耳峰でいつも見えるが故に特別の思いがあり、
どうしても登頂したいと考えていた。前回の反省から、たとえ赤布のような道しるべがなかったり、広い尾根でかつ見通しが悪くても
確実に行き帰りが出来るような方法はないかと思案して準備をした。それがハンディGPSの購入である。
知る人ぞ知るGARMIN社のETREXで、こんなものが2、3万で手に入るのだから使わない手はない。
家の回りや近くの山麓でその実力を調べた結果、充分使用できると判断した。カシミールで2.5万図を読み、
ルート上の経由点を何点か入力したので後はGPSの指図に従って歩けば良い筈である。また万一の場合も考え、通じる可能性は少ないだろうが携帯電話を持参することにした。
一方、前のように帰り道の印とする赤テープは持参しなかった。 |
5時半に家を出る。曇っているが大丈夫だろう。(このところ夕立を含め、何週間も雨がないので今日に限って雨になることはないなどと勝手に考える。)
高遠から152号線(秋葉街道)を市野瀬、分杭峠と進む。「これより北高遠領」の碑がある分杭峠は1420mの高所でおまけに早朝なので涼し過ぎるくらいだ。
高遠の方は霞んでよく見えない。全く車に出会わないまま6時50分には林道入り口の大鹿村儀内路に着。
 ため池 |
ここから東に向かって山道に入る。今年は大雨が降らないので通行止めの可能性は少ないはずだ。舗装ありダートありの山道はうねうねと続く。途中の北川牧場への分岐があるがそれには入らずに進む。
やがて二児山南西側尾根から落ちる大きなナギにかかる新しく赤い上金橋を通過すると
程なくして黒川牧場への入口に至る。(ここの標高1700m) ここからは二児山が望める筈だが今日は霞が濃くて見えない。
林道はさらに等高線に沿って南に延び、その先は塩川上流の集落を経て再び152号線に戻る。
牧場はこの入口からはるか上の、二児山につながる主尾根の直ぐ下までのなだらかな斜面に広々と拡がっている。鮮やかな緑がひときわ目にしみる。
入口には開閉自由の牛の逃走防止ゲートがあり、これをを開けて岩礫の道を(車で)登れるだけ登っていくが相当な悪路である。
車道の行き止まりに車を置く。ここはすでに標高2022mの地点。二児山との標高差は200m余りしかなく、
これで山登りとは言えないのかもしれない。ここには牛たちの水飲み用のため池がある。遠目に見ると緑の絨毯の中のため池は青空を映して絵になるが
近づいては見ない方がよいことを言っておく。
支度をしていると知らぬ間に牛が一頭車に寄ってきて、鼻息を荒げながら「おまえ何処の者だや」とでも言うように様子を伺っている。
前来たとき、放置している間にウィンドウをべちゃべちゃになめられた形跡があったので
「またか。いやだなあ。」と思いながら車を少し移動した。
 なだらかな樹林を拓いた牧場には切り株が点在する
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出発は8時10分。適当に牧場を横断して斜面に取り付けばものの100m余りで主尾根に達することが出来るが、
余りにも牧場の景色が爽快なので、すぐに尾根に登らずに笹に隠れている牛の○ンコを踏まないように気をつけながら牧場内を歩いた。
だんだん晴れて来てはいるがときどきガスが流れ、寒いので長袖に着替える。
笹原の露でズボンの裾が濡れて気持ち悪い。
ガスが去って主尾根の鞍部がわかったのでこの部分に取り付くことにした。道らしい道はなく獣道を辿る。
この主尾根は塩見岳のとなりの本谷山から北西に延び、二児山を経て分杭峠あたりまで続く長い尾根となっている。
ガイドブックにも載っていない二児山へはこの尾根を行くのが妥当と考えた。
あまり起伏のない尾根上を水平距離約1.7kmで頂上に達せられる。しかし広い尾根であり、見通しが悪く、
踏み跡や赤布もあるにはあるが見失う恐れはありそうだ。
GPSには150mおきに経由点を入力しておいたので、次々に経由点を適切に案内してくれることになっている。
 山頂までの尾根は原生林に覆われる |
取り付いた尾根の標高は約2060mで、ここから水平距離にして約800mで2160mまで上がる。途中数カ所岩峰が出るが無理に通らなくても巻けば良い。
尾根とは言えシラビソとカバの木と苔の若い原生林である。北八ツを思い出した。獣によって樹皮が剥き取られた木が多数ある。
高山植物は樹林下なのでゴゼンタチバナやマイズルソウは終始見られるが、いわゆるお花畑は全くない。途中バイケイソウが小さな群落を作っているところがあり残り花が見られた。
左の125号線の谷側からの涼風が心地よい。樹林がとぎれるところではゴルフ場のような感じで黒川牧場や北川牧場が望める。
GPSは実際に設定通りに次々と経由点をポイントしてくれる。
だれにも行き会うことのないような山で道に迷うかも知れないと言う不安感は感じない。精神的にはすごくよい。
しかし意外だったのは樹林が少し濃く、空が覆われていると思いの外衛星を捕捉出来なくなることだ。
そうするとこのクラスのGPSでは経由点への方向、距離の案内は失われる。
これは事前の家の近くの山麓の試行で分かっていたことであるが尾根上でも捕捉出来なくなるとは意外であった。
GPSに100%頼っての樹林内の山歩きは充分な注意が必要である。(付記参照)
 「山頂はもうすぐ」を感じさせる景色 |
2160mあたりからはほとんど平らな尾根でやはり小さな岩峰がいくつか現れるが特に問題はない。2190mのピークを過ぎ、
2150mの鞍部まで降ると最後の登りである。
立ち枯れの木々が目だってきて頂上間近を感じさせる。いつのまにか10時ちょうどに山頂(東峰)に到着してしまった。
山頂の周りは木々に囲まれて展望は期待したほど良くない。2243mと刻んだ三角点の通常の標石と1m程の高さの御料局三角点の標柱がある。
山頂(東)からの西峰は樹林越しにただの盛り上がりに見える。北側は急傾斜でガレており、小瀬戸側か
らは登れそうもない。
 東峰の山頂にある三角点標柱 |
あまり気分が乗らなかったが予定していた西峰にも行ってみることにした。
踏み跡がわからず、幼木のシラビソが密生した樹林をかいくぐり始めたが藪以上のすごさで「そこまでして」
と言う軟弱な思いが頭をよぎり、諦めて退却しかけたが落ち着いて探すと踏み跡を発見。
西峰に行くには5、60m降って鞍部に降りる。降り始めてすぐGPSは感度を失って使えなくなった。
 山頂から見る西峰は丸い丘のよう
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コンパスと地図と時々現れる赤布に助けられ、西峰頂上らしきところにはたどりつけた。
伊那の方から見ると二児山はきれいな双耳峰に見え、西峰も結構尖った頂上らしく見えるのだが本当にここがそうなのだろうか。
付近に間新しい「絶景の所まで200m?」の看板があり、
行ってみた。そこは断崖絶壁の岩峰上の1地点であったが先端までは出るのはやめておいた。それは余談になるが、近頃は歳のせいか精神的な病気なのか木の上、
橋とかビルの窓際とかの高いところに立つと足がすくんでぞくぞくする気分になり、「いっそ落ちて見るか」と言う本能的には理解し難い誘惑におそわれるようになってしまった。
そのためこのような場所はあえてさけている。
西峰を11時出発。同じコースを戻る。東峰への登り返しでかなりバテてしまった。
この時間になるとすっかり晴れて、今登ってきた西峰がよく見える。が、しかしやはりただの盛り上がりにしか見えない。
11時45分に東峰出発。
のんびりと稜線散策を楽しみ、写真を撮りながら歩く。
まったく迷うことなく牧場に戻ったのが14時くらいだったか。車のウインドウはなめられてはいなかったので一安心。
はじめからおわりまで牧場もコース上も全く人に会わない静かな1日であった。
またGPSの便利さが改めてよくわかった1日であった。(2001年8月6日)

帰りぎわに、今登って来た二児山を見納める
(西峰のみが見えている) |
 未登頂者の書き置き? |
 携帯GPS etrex summit |
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<付記>
GPS使用上の注意点:
山登りやトレッキングではGPSは、見通しが利かなく、指導標もないような樹林やガスった尾根道などで使用すると非常に便利ですが、
上空が樹木の枝葉で覆われるとあっけなく感度を失います、GPSを過信するのは禁物です、
というのが今回初めてGPSを使った山歩きの感想です。対応としてはGPSが働いている時に経由点への方向をしっかり覚えておき、
GPSが感度を失ったらその方向へ真っ直ぐに進みながら空が開けるところに出ることです。
今回もこのような場面は何度もありヒヤリとさせられました。 なおGPSは、指定した位置に対してはあくまで直線で結んだ方向と距離を示しますので
いくら方向を示しているからといって(特に視界がない時)それに盲目的に従って進んで崖など入り込んだりしないように注意してください。 (それ以前に隣接する通過点が崖を挟むような入力自体が間違っていますが)
GPSの機能で、歩いたコースを自動的に記録(ログ)し、
帰りはそれをガイドをする機能(トレースバック)があります。しかしこれはあまり使えないと思う。
コース中には場所によりGPSが働かなくなる箇所があり、ログがとぎれてしまうからです。
このようなログではトレースバックに使えない。やはり面倒でも経由点を何点か入力してそれに対して方向、距離をポイントさせるのが良いと思います。
なお山歩き用にGPSを買うなら高度計と磁気コンパス付きのものを奨めます。
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