黒沢山 99/10/10
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伊那谷北部西側に立ちはだかる山の中で、箕輪町から伊那市にかけて一際目立つのが里山・黒沢山である。地元の人はこの山を毎日、朝な夕な見るとは無しに見て暮らしている。 里から見て左隣は経ヶ岳だがこちらの方は奥まっていて山頂は見ることができない。二峰からなる山頂を持つ黒沢山の標高は2127mと里山としては高く、その伊那谷側斜面(東面)は 雪の少ない地方なのにべったりと雪が張り付き、春遅くまで残雪が残る。
里山歩きの楽しさが分かって来た私は1,2ヶ月前からこの黒沢山に登ることを計画した。いつも眺めている伊那谷側から登りたいと思うのが人情で、 まず地図で道を調べた。箕輪町上古田と言う地籍から林道が1200m付近まであり、そこから1500mの主稜線に出る道はあるようだ。稜線に出てから山頂までは 水平距離3Km、高低差600mで恐らく背丈以上ある笹を漕ぐことになる。さらに悪いことにこの林道は6月の集中豪雨で途中で通行止めになっている。一方里からの主尾根の 直登は多いにそそられるが経験の浅い私にはその自信はない。思案の末、最も確かなルート、すなわち全く裏側になる横川谷からの経ヶ岳登山道を 利用することにした。経ヶ岳登山道は3年ばかり前に一度登っているが、所用時間を甘く見て時間切れで経ヶ岳へは達していない。
10月10日日曜日。天気快晴。明日も休みなのが嬉しい。8時に自宅を出ていつもの道、通い慣れた林道を通って9時に横川渓谷三級の滝入り口(経ヶ岳登山口)へ到着。朝方の冷気が残っている谷は、まだ早いのか人影もない。 あと一月もすれば素晴らしい紅葉に染まるこの谷を想像しながら身支度を整えて歩き始めた。
三級の滝
今年は夏頃から横川にも熊が出るとかいうので、昨日100円ショップで鈴を3個買って用意して来たのでその賑やかなこと。でも出ないに越したことはない。沢に降りて鉄製の橋を渡ったり、沢から離れたりしながら15分程で三級の滝に着く。 滝はまだ陽がさしていないので暗い。滝壺に前から横たわる大きな木は始末した方がいいのにと思う。登山道は滝壺の横の梯子を登る。滝を越えるこの部分は岩の道でなかなかいい雰囲気だ。 上からは三段になった滝全体が見渡せ、下で見るのとは違った姿が楽しめる。
ここからしばらく左岸の笹の道をを沢に付かず離れず進む。ザレを横切る部分も出るがロープが備えられていて心配ない。 その後流れにかかる丸太の橋で流れを渡って左岸、右岸を数回行ったり来たりする。沢が広いので赤テープに注意していないと道を誤る。
いい加減うんざりする頃、左から小沢が合流する地点を過ぎる。工事か何かで使用した丸太が捨てられて積み重なり、見事に苔むした上を 滑らないように注意して登ると林道の橋に出る。この林道は、大洞林道と言って、三級の滝入り口に至る途中に起点があるが封鎖されていて一般車は利用できない。 もしこの林道が利用でき、車が入れれば登山口からここまでの1時間20分がなくなる。特に疲労の溜まる下山の時は大変楽になるし、時間的にも余裕が出来るのに残念だ。林道はこの少し先で終点になっている。 ここからはいよいよ、山頂から西南に延びる主尾根に出るための支尾根に取り付くことになるので暫く休憩する。
コメツガの原生林の痩尾根
気ままな一人の山だし、もう少しのんびりと休んでいたかったが体が冷えて来たので出発することにした。 再び沢を5分程辿り、更に平らな笹の道を進んでいよいよ支尾根に入る。深山幽谷の雰囲気を感じさせるコメツガの原生林の痩尾根は岩や木の根で足がかりのある所もあるが、殆どはステップのない斜面の急登 である。相変わらず展望はない。「あと30分で主稜線」の指導標を過ぎると黒沢山から北西に延びる稜線が見えるようになる。
急に明るくなって西南に延びる主尾根に出た。そして黒沢山から谷を巻くように経ヶ岳主尾根へ続く稜線、経ヶ岳主稜線も見える。 山頂はすぐそこに見えているのに指導標には「山頂まで40分」と書いてある。見えているのは山頂ではないのだろう。コメツガと思われる大きな立ち枯れの木が2000mの稜線を思わせていた。 稜線を山頂に向かって歩く。風化した岩の稜線は今の時期これと言って見るべき花もないがそれでも気分はとても良い。ゴゼンタチバナが渋く紅葉していて赤い実が印象的だ。
遠く槍、穂高を望む
ふと北に目をやると遙か彼方に穂高連峰、槍ヶ岳その高さを誇っているのが見えた。
山頂近くの稜線の立ち枯れ
鞍部に降り、再びやや急な笹の道を登ると立ち枯れの木も多くなった。登り切ると指導標があり、左に進めば山頂、右は経ヶ岳登山道である。経ヶ岳へは右に稜線を行くが、笹尾根でかなりまだアップダウンがあり苦労しそうだ。 今日は黒沢山なので左に行く。行ってすぐ、稜線上を大きな木が折り重なって倒れている所があり、進むことが出来ない。2,3年前に日本海を抜けた台風の時、長野県は多くの倒木があったがその時のものだろう。トラバースして進むとようやく笹原の山頂らしき ところへ着いた。
山頂間近の最後の登りは笹の道
三角点の標石があるので間違いないだろう。伊那谷が眼下に見え、大泉ダムが光っている。いつも里から見ている山。その山から今日は逆に伊那谷を見ている。伊那谷から吹き上げる風が一しきり笹を波立たせ、 独り占めした静かな山頂はサワサワとした音を立てて歓迎してくれている。しばらく至福の時間を過ごす。
2127m 三等三角点の標石を発見
山頂から見ると、南側伊那谷側から尾根直登は時間もかかり、いかにも難しそうだ。また北側桑沢山から続くアップダウンのある笹尾根も 大変そうだ。13時5分、独り言で「じゃ、これで帰るよ」と言い残し、山頂を後にした。
紅葉したドウダンツツジ
復路は往路を忠実に辿る。往路では気が付かなかったが、主稜線上の逆光の中のドウダンツツジの真っ赤な紅葉が素晴らしかった。林道の橋から三級の滝入り口までの沢歩きには往路に増してうんざりしてしまった。 今回も誰にも会わない山歩きが出来て満足だった。
99/10/10 黒沢山(三級の滝経由)
8:00 自宅発 9:00 三級の滝入り口 10:20 林道発 12:00 稜線発
12:50 山頂着 13:05 山頂発 16:20 三級の滝入り口着 17:15 自宅着
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