戸倉山・山行記 99年9月12日



南箕輪村から見る戸倉山(左)。伊那富士と呼ばれるようにその姿は富士山に似ている。その右は高烏谷山。
最近、地元の里山や低山に親しみを覚えるようになった。近くの山だからその日の天気や気分次第で午後からでも気軽に出かけられるのが良い。でもこの安易さが危険になる場合もある。(今回の山行ではないが)
今回は、伊那谷で伊那富士と呼ばれ親しまれている戸倉山に行って来た。戸倉山は、最近はガイドブックにも紹介されるようになった。伊那山脈深くにあり、里山とは言えないのかも知れない。

5万図では、長谷村と駒ヶ根市を結ぶ女沢(おなさわ)林道上女沢峠から稜線沿いのルートだけが書かれているが、ガイドブックにあるように、駒ヶ根市からのルートの方が一般的のようだ。女沢峠から山頂までの登山道は良く整備されており、 子供や初心者でも問題なく登れる。(しかし女沢峠まで至るのにマイカー利用が必須である)  箕輪町からの私は、当然アプローチの短い女沢峠からとした。家を9時頃に出た。


女沢峠にしても伊那市から新山林道の新山峠を経て女沢峠へ行くのが最短であるが、伊那市富県に来て見ると林道新山線が崩落で通行止めとなっていた。これは予想していたことなのですみやかに長谷村にまわり、林道女沢線を登った。 長谷村側の林道起点は152号線の戸台への入り口の橋を渡ったところ。途中から未舗装の1車線となるが特に対向車が来ることもないし、危険なところはない。峠に近づくと登高意欲をそそる形の整った戸倉山が良く見えて来る。


峠付近から間近に見る戸倉山
女沢峠自体が明確に分からないので、登山口に指導標一つくらいはあるだろうと予想して探してもなかなか見つからず、峠付近を行ったり来たりして無駄な時間をかけてしまった。ようやく林道脇に指導標を発見した。 上空を通る送電線を長谷側から3度目(最後)にくぐり抜ける辺りである。 指導標は「竜東遊歩道」を示すもので、これに消えかかったマジックで手書きで「戸倉山1.5時間」と書き添えられている。遊歩道は戸倉山山頂を経て駒ヶ根側に行き来できることを意味すると思われる。 装備を整えて歩き出したのは10時50分だった。

10分程で尾根に出る。伊那側から心地良い風が吹き上げて来る。両側はカラマツ林になっていて展望はない。その代わりアキノキリンソウが慰めてくれる。アキノキリンソウは全コースで終始見られた。 緩い登りになってピークを過ぎると下りになる。この辺りの伊那側の山腹はカラマツ林から白樺の林に代わっている。 再び緩い登りで2つ目のピークを過ぎ、左よりになった道は登った以上に下る。この辺からクマザサが出てきて水平に近い稜線になる。地形的にはここからが戸倉山の尾根と言う感じである。 歩きにくかったササは100m程でなくなり一安心。両側の樹種はカラマツ林になる。

しばらく平坦だった尾根道は徐々に傾斜を増して来る。一汗かいた頃、急に東側(長谷村側)の展望が開けるところに出る。まずはここで小休止とする。鋸、仙丈岳が近い。戸台に続く道路も見える。秋晴れの良い天気だ。 ハナイカリが群生している。
明るい草の尾根道は50m程で終わり、また樹林の中に入り45度くらいある斜面を登る。砕けた花崗岩混じりの土や枯葉の傾斜面はステップがまったく切ってないので油断すると滑る。 そういうところにはロープが用意されているので心配ない。湿気が多いところが好きな、あの独特のはたきのような白い花びらを付けたオクモミジハグマが大変多く見られる。

ようやくこの登り難い急斜面が終わると「風神の風穴」と書かれた標柱が立っているところに出る。岩が積み重なった小さなピークの取り付き部分である。ちなみに風穴のようなものは探しても無かった。 ここから上数10mの岩尾根がこのコース唯一深山の雰囲気を感じさせる部分であるがロープもあるので危険は無い。この岩尾根が頂上への最後の登りかと思われたが、頂上は平坦な道をもう5分程先であった。


頂上から南アルプス仙丈岳と北岳を望む
 
賑やかな人の声が聞こえて来て、そこが山頂だった。(12時15分) 低山らしくやさしい小さな山頂は十数人の人が昼飯を食べているところで足の踏み場もない程であった。会話からすると関西方面の人達らしい。山頂には石の祠がある。樹木の多い低山の山頂にそぐわず展望は良く、 東は長谷の谷を挟んで大きく仙丈岳が、その右に北岳から塩見岳までの南アルプスが霞んでいる。 西は駒ヶ根市東部のたおやかな山並みが一望できる。中央アルプスも当然見える筈なのだが、雲に遮られていて見えなかった。秋をいやおうなしに感じさせるマツムシソウがわざとらしく山頂のまわりの草地だけに何輪か咲いている。山頂の南側には写真の面白い石仏が置かれていた。道祖神も置かれているがこれはごく最近の作のようだ。 南側には駒ヶ根市中山からの登山道が来ている。これが竜東遊歩道なのであろう。ガイドブックはこのルートを紹介している。山頂にいた人達もこのルートを通ってきたらしい。

1680mの三角点が見当たらないので探していると、単独の人が東側の別の方にあると言う。頂上直下に新築されたばかりの避難小屋の付近は白い綿毛となったヤナギランが数本。その脇を通り平坦な道を行くと5分程で一等三角点のある場所を見つけた。 この頂上付近の平坦な地形がこの山を富士山のように見せているのだろうか。こちらの峰は樹木の中で眺望はなかった。


山頂にある石仏

一等三角点は少し離れたところにある

再び先ほどの山頂へ戻り、最後の写真撮影と、もう生涯二度と来ることは無いかも知れない山頂を瞼に焼き付けて1時に山頂を後にした。女沢峠は2時着。寄り道して自宅へ戻ったのが4時だった。


PS.このページのような名も知れぬ低山の山行記を読んでくれる人は日本広しと言えども一体どれだけいるのだろうか。多くの人に読んでもらおうとは思わない。 本当に山好きな人が読んでくれるのなら、たとえそれが一人だけでも私は嬉しいと思う。そんな人はきっと何かの縁があるのでしょう。メールを待っています。
[戻る]