久々に美容院にいった。
相変わらず、予約もなしで飛び込み。ワンピース姿の私はスッピンにまとめ髪、片手に小説。
今日は夕方だったので、お店には2人のお客様がいた。
待ってる間、読みかけてる遠藤周作の「真昼の悪魔」をペラペラめくり、熱中しはじめた頃にシャンプーが始まった。
人にしてもらうシャンプーは、やっぱり気持ちいい。このお店には、通い初めてもう3年ほどのお付き合いになる。
そのサロンに通う頻度は、2,3ヶ月に1回。
決して頻繁に通っているワケではなく、ひどいときは半年行かない、のんびりペースの私。
初めて通いだしたのは入社2年目の今頃。仕事の方向が定まり、どんどんと技術向上計画を設定し、やる気になっていた頃。それまでずっと何の変哲もないラウンドカットのストレートロングを通していた私は、もっとイキイキしてみたい!と思い、ごく控えめなショートカットにしてみようと思い立って、そのお店にふらりと立ち寄った。
そのときから、私は店長の杉浦さん(男性)に、指名してるワケではないけどいつも担当して頂いている。
(多分、私の髪は髪も染めてないし、傷みやクセがなく、コシがあるため、美容師さんに気に入られる髪質だからだと思う・・・)
通いだして3回目、こういう髪型にしたいんだけど・・・という相談をしたら、「初めてここ来たときは何にも手を加えてない素直なストレートだったでしょ。それをショートにするとき、ここの髪を切ったから・・・で、その後このあたりを揃えたでしょ。だから・・・」と話し出した。
あれ?この店はカルテでも置いてあるの?
しかし、そんな事はまったくなく、すべて杉浦さんの頭の中に入っているそうだ。
1回目、2回目・・・と、彼は私の髪型遍歴を、初入店以来、全部覚えている。もちろん、髪質も、嗜好も・・・。
決して暇な店ではなく、むしろこのあたりでは流行ってる店だと思う。
でも、最初から最後までヘアスタイルに髪質にカットのくせまで全部覚えてて、アドバイスしてくれる店は初めてだった。
このサロンが休みだったため、一度だけ他の美容院にいった時は、ちょっと揃えてもらっただけなのだけど、次にこのサロンにいったら、髪をブロッキングしたりしながら、何度も何度も首を傾げ、考え込んだ後、いいにくそうに「別の店、行ったよね?」と言われた。
「せっかく君の目標のスタイルにするためうまく調整してたのに、カットのデザインがまったく乱れてる・・・」と怒られた。
何故って、彼は長期的なヘアデザインのアドバイスをしてくれるから・・・。今の髪型のラインに、さっぱり、かつ飽きずに手入れしやすいアレンジを加えながら、半年後にはいつの間にかずばっと目的の髪型へと導いてくれる。
一度でも他のサロンで揃えてもらうとすぐ判ってしまうのに、半年ずっと伸ばし放題にしていたカットラインはすぐにどういうカットをしたか判別してくれる。そして、何よりも彼のカットは非常にまとまりが良い。
そして、「パーマをかけてみたい」「色を染めてみたい」というリクエストには、頑なに首を横に振り、君の髪質では後悔する。それに似合わない。とはっきり言ってくれ、具体的に説明してくれる。そして絶対に私のイヤな髪型にすることなく、色々とトレンドを取り入れて、こんな髪型も似合うよって冒険をさせてくれる。(だから、いつも仕上がりが楽しみ!)
精神的に参って、ハゲが出来た時も、いち早く初期の頃に教えてもらったのも彼からだった。
本当に、私にとっては「ここじゃなきゃダメ!」ってくらい、安心して自分の髪を任せられる唯一のお店。
(何だか思い切り力説してるわ。だって気に入ってるんだもん)
今日は、半年後を目標に、別の髪型のカットラインを整えてもらった。
シャギーを入れても構いませんという言葉に、「シャギーは、髪が傷むから。2回に1回しかしないほうがいいよ」と、レイヤーラインで切りそろえてもらう。
目の前で魔法のように、不揃いだった髪がそろってゆく。
美しく職人的な鋏さばき。
帰りがけに、「11月から、支店出すから、僕も10日おきにあっちとこっちを往復する。だからいない時があるから、電話して確認して」と声を掛けられた。
新しいお店は栄に出すそうだ。彼や、彼のスタッフの腕だったら、こんな田舎の街に埋もれてるのはもったいない。遅すぎるって気もしないでない。ほとんど宣伝もしない、小さなサロンだったけど、私にとってはカリスマ美容院だった。
なんだか、ちょっと自分のことのように嬉しかった。
お客様に対して、誠実にプロ意識をもって臨む店長は、カット中には何も口を聞かないから、私は彼の人間性を知らない。しかし、その中のプロとしての姿勢は、いつも気を張りつめたように、こちらに伝わってくる。
そして、決して押しつけじゃない、顧客の気持ちを考えた提案。
私のような技術職に携わっている人間にとっても、彼の仕事の姿勢から、学ぶべきものは多い。
職は違うけれど、仕事人として、私は彼を尊敬する。
私は、顧客の本当の満足度を考えて仕事をしているか?と、いつも自分に問い直す。
本当に、顧客が求めているサービスとは何かと考える。
顧客要望とは、顕在的要望、そして潜在的要望の2通りに別れる。
顕在的要望とは、その名の通り、顧客の、口で述べる要望である。
こちら側(プロ)は、その言葉により、まず自分の価値観内で、顧客のニーズの位置をはかる。
潜在的要望とは、こちら(プロ)側が引き出してやらないと、顧客の満足は得られない。
ただ、顧客の言うとおり、サービスを行うことは、誰にでも技術があればできる。
しかし、美容師や私のような技術職は、それらをトータルコーディネートした結果によって、顧客満足度が決まるのだ。
常に相手の立場にたち、向かないサービスと必要なサービスをより分ける目。そして、きちんとアドバイスした結果をサービスとして提供する。
それが、プロとしての、役割だ。
仕事って、どんな仕事でもプロ意識を持って望むべきってキモチを、いつもこのサロンに行く度再認識する。
私自身も、私でしかできない仕事を精一杯プロ意識をもって臨まないとね。 |